DirectX 10に対応した「GeForce 8800」が登場したものの,ミドルレンジ向け市場は依然としてDirectX 9世代。2006年第4四半期を迎えて成熟したこの市場では各社がしのぎを削っており,結果としてメーカーによるクロックアップや,独自仕様を搭載したオーバークロックツールの搭載が,半ば当たり前のようになっている。
マザーボードメーカーとしては日本でも比較的知られている一方,グラフィックスカードメーカーとしてはまだ無名のBIOSTAR MICROTECH(以下BIOSTAR)も,やはり同じような戦略で日本市場攻略を目指しているようだ。だが少し異なるのは,同社オリジナルのオーバークロックに,グラフィックスカードのコアおよびメモリ電圧を設定できる「V-Ranger」という機能が含まれている点だ。実際に動作させた結果を,読者にお知らせしたいと思う。
カード自体はごく普通
自動&手動オーバークロック設定ツールを用意
自動&手動オーバークロック設定ツールを用意
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| ΣGate V7603GS21 メーカー&問い合わせ先:BIOSTAR MICROTECH |
今回入手したのは,「ΣGate V7603GS21」(ΣGate:シグマゲート)と名付けられた,GPU(グラフィックスチップ)にGeForce 7600 GSを搭載する製品。一見したところ,NVIDIAのリファレンスデザインによく似たカードといった印象だ。
入手した個体の動作クロックはコア400MHz,メモリ1.4GHz相当(700MHz DDR)。搭載していたメモリはSamsung Electronicsの1.4ns品(K4J52324QC-BC14)なので,メモリクロックはチップの仕様上,ほぼ上限いっぱいである。
冷却機構は45mm角相当のファンを内蔵したGPUクーラーのみ。口径が小さいのは少々気になったが,実際に動作させてみると,(筆者の主観だが)あまりうるさくは感じなかった。一方グラフィックスメモリにはヒートシンクもなにもなく,電圧変更が可能な製品としては若干心許なく映る。BIOSTARのサイトにある製品写真では,ヒートパイプ付きのメモリヒートシンクがあったので,このカードについては直前に仕様が変更されたのかもしれない。
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| GPUクーラーを取り外してみると,いよいよリファレンスカードと区別が付きにくくなってくる。なお,GPUのリビジョンはB1だった | |
V-RangerはWindows上からGPUコアクロックやメモリへの供給電圧を変更できるソフトウェアで,グラフィックスカードのBIOS(VBIOS)設定を変更することにより,その機能を実現している。
BIOSTARはこの仕組みを「世界初」と謳っているが,これは誤りだ。AOpenは以前,それこそマザーボードのBIOSと似たビデオBIOS画面を表示させて,そこから電圧変更ができる製品を出していたことがある。またMSIからは,同社製マザーボードとの組み合わせ時という条件はつくものの,同様の機能「Dual CoreCell」が,ミドルレンジ以上のグラフィックスカードで現在も提供されている。BIOSTARが世界初を主張するには,例えばV-Rangerがハイエンドからローエンドまで,すべての製品ラインナップをカバーするなどという,思い切った方策が必要になるはずだ。
現状を把握したところで製品を詳しく見てみると,ΣGate V7603GS21にはオーバークロックツール「BIOSTAR VGA Over Clock」が用意されている。とくに“BIOSTAR専用グラフィックスドライバ”などといったものは必要なく,同ツール自体は,少なくとも最近のRelease 90世代ドライバで問題なく利用できた。もっといえば,他社製のGeForce 7ファミリー搭載カードでも利用自体は可能である。
BIOSTAR VGA Over Clockの外観は下に示したが,竜をモチーフにしたUIが特徴だ。インパクトがあってよいが,例えばディスプレイ解像度が1024×768ドットクラスだと画面の3分の1を占めるほど大きく,有り体にいうと邪魔である。また,各機能のボタンが竜の目や羽など,デザイン重視で配置されていることもあって,正直使いづらい。デザイン重視のUIとは別に,使い勝手重視のシンプルなUIも用意してほしかった。
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GPUとメモリの動作クロックが表示されている。3D性能テストボタンを押すと,簡易的な3Dテスト(下の画面2点を参照)が行われ,設定したクロックのパフォーマンスと安定性を検証できる。フリーのユーティリティソフト「ATITool」に用意されている「Show 3D View」とよく似た印象 |
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| 3Dテスト実行中の様子 | |
自動オーバークロック設定より
クロックの上がらないV-Ranger
クロックの上がらないV-Ranger
さて,ここで重要なのは,自動オーバークロックボタンとV-Ranger起動ボタン,そしてオーバークロックテストボタンだ。自動/手動を問わず,オーバークロック設定後はこのテストボタンを押してカードのセルフテストを実行し,パスすることで初めてその内容が有効になる。
ちなみに今回入手した個体で自動オーバークロックを実行すると,コア540MHz,メモリ1.68GHz相当に設定された。この設定はファイルに書き出せるので,3Dパフォーマンスが必要なゲームをプレイするときだけ,大きくクロックを引き上げる設定を読み出す,といった使い方が可能だ。
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| V-Ranger |
V-Ranger起動ボタンをクリックすると,ライセンスへの同意を求めるダイアログが表示されたあと,三つの円状パネルからなるUIが現れる。上のパネルにクロックや電圧が表示されており,左下でそれらをスライドバーから変更でき,さらに右下はリアルタイムのGPU温度表示と,過熱警告を発する温度の設定が可能となっている。
というわけで,V-Rangerを使ってみたのだが,まず,電圧を変更しない場合,コア560MHz,メモリ1.46GHz相当が上限だった。自動オーバークロック実行時より,コアは20MHz高いものの,メモリは220MHz相当も低い。
では,V-Rangerを利用して電圧を手動設定するとより高いクロックを実現できたかといえば,答えはノーだ。そもそもBIOSTAR VGA Over Clockは,自動オーバークロック時に,電圧を自動調整し,必要な場合に適宜高い電圧を供給しているようなのである。
しかも,自動オーバークロック設定とV-Rangerではオーバークロック設定時のテスト内容が異なり,手動設定が可能な分だけ,テストも厳しくなっている気配。試しにV-Rangerから(自動オーバークロック設定時と同じ)コア540MHz,メモリ1.68GHz相当に設定すると,電圧をいくら上げても,テストは完走しなかった。
要するに,V-Rangerを利用しても,オーバークロックの限界値がさらに上がるわけではないのだ。自動オーバークロックで適宜利用されているなら,電圧変更ギミック自体には意味があるわけだが,少なくとも試した範囲では,V-Rangerによる手動設定に意義が見いだせなかった。
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そこで,先ほどのBIOSTAR VGA Over Clockで+/−ボタンを使いながらオーバークロックの限界を探ると,メモリクロックを上げることはできなかったが,コアクロックは560MHzまで上昇した。
というわけで,V-Rangerの効用を探るという当初の目的からは予定が少々変わってしまったが,念のため,オーバークロック設定の効果をチェックしてみることにしよう。今回は,カードのリファレンスクロックと,試用した個体でV-Rangerの限界となったコア560MHz,メモリ1.46GHz相当,そしてBIOSTAR VGA Over Clockの限界であるコア560MHz,メモリ1.68GHz相当の3パターンで,ベンチマークスコアを比較してみる。
テスト環境は表のとおりで,4Gamerのベンチマークレギュレーション2.1準拠とするが,今回はオーバークロックの効果が分かればいいので,テストは標準設定のみとする。また,「3DMark06」は,2.1に準拠せず最新のBuild 1.1.0を利用し,さらに低解像度から高解像度までスコアを取得。ゲームアプリケーションは「F.E.A.R.」(Version 1.08),「GTR 2 - FIA GT Racing Game」(以下GTR2),「Linage�供廚�4本に絞った。

















