― レビュー ―
この夏サービスインにしては,さすがにちょっとレトロ(?)なMMORPG
Travia Online Japan
Text by 川崎 政一郎
2006年8月16日

※本稿は8月15日(正式サービス中)のゲーム内容に準じています

 

トラビア大陸に降り立った冒険者が
国家間戦争に身を投じていくMMORPG

 

トラビアオンラインは「基本料金無料+アイテム課金」のMMORPG。先月より正式サービスへと移行した,時期的には今が旬のタイトルである

 今回プレビューとして紹介する「Travia Online Japan」(以下,トラビアオンライン)は,ゼロオンラインが7月12日から国内運営しているMMORPGだ。韓国では2003年よりサービスされており,累計150万人の会員数という実績を持つ。ちなみに国内でのビジネスモデルは,基本プレイ料金無料+アイテム課金制を採用している。

 

 トラビアオンラインは,お馴染みの“クリックゲー”タイプのオンラインアクションRPGだ。プレイヤーは「トラビア大陸」に降り立った冒険者として,過酷な世界を生き抜く……というバックストーリーで,対モンスター戦だけでなく,ゆくゆくは個人戦やギルド戦,国家間戦争といった,さまざまなタイプのPvPが楽しめる。

 

 実際にプレイヤーがPvPに参加できるのは先の話なので,まずはゲームの概要からチェックしていこう。操作方法はマウスの左クリックで攻撃(押しっ放しで連続攻撃),右クリックであらかじめ選んだスキルを使用。数字キーでポーション類のアイテムを使い,ファンクションキーで右クリック用のスキルを選ぶ。このあたりは,現在数多くリリースされているクリックゲームのスタイルを踏襲している。画面レイアウトについても同様で,文章で説明するよりも,おそらくは画面写真を直接見てもらったほうが理解は早いだろう。

 

 プレイヤーが選べる職業は,「ウォーリア」「アーチャー」「クレリック」「マジシャン」の4種類。それぞれの職業と性別は固定されており,ウォーリアとマジシャンが男性,アーチャーとクレリックは女性だ。キャラクター作成時のカスタマイズ面では,フェイスタイプや髪型などの変更といったことは行えない。3Dグラフィックスが主流の現在では珍しく自由度の幅が狭いが,これに限らず,ゲーム全体にレトロな雰囲気が漂っているといえるだろう。

 

 四つの職業の役割は,名前から伝わるイメージとほぼ同じである。ウォーリアとクレリックが直接攻撃タイプ,アーチャーとウィザードが間接攻撃タイプで,間接攻撃タイプの職業は攻撃のときに「矢弾」やスキル使用に必要な「マナ」を消耗する。序盤では,モンスター1体を倒すのに20回前後の攻撃を必要とするため,矢弾などの消費量は意外とばかにならない。したがって,直接攻撃タイプのウォーリアとクレリックのほうが,序盤のハードルは比較的低いといえる。

 

 キャラクターを作成し終えると,まずはトラビア大陸の東方に位置する「アンダラッサ公国」の冒険者としてスタートする。ゲームの序盤はここを拠点にして,レベルアップに励むことになる。しかし最初に所属しているアンダラッサ公国は,かつて強大だったものの,今は政治体制などが崩壊寸前という危うい状態。そこでゲームの中盤以降では,新興国である「ディーバ帝国」または「自由同盟ヴリトラ」のどちらかに亡命することになる。この2国は対立しており,つまりキャラクターの亡命以降はPvPが可能になるというわけだ。

 

モンスターを完全に倒さなくても,攻撃するたびに経験値が増えていく。現在の経験値は,画面左上に緑色で表示されている 序盤はいくつかのクエストが用意されている。これらのクエストを経て,最終的にキャラクターは二つの国のどちらかへと亡命する 最初にプレイヤーが選べる職業は4種類。しかしキャラクターは1アカウントごとに三つしか作成できないので,悩ましい

 

ウォーリアは序盤から二刀流を扱えるのが強み。同じ近接攻撃タイプの職業でも,攻撃力はクレリックよりかなり高い アーチャーなどの遠隔タイプの職業は,敵に接近される前に多くのダメージを叩き込める。ただし矢弾の消費は早い 最初はワールドの最東端が舞台となるが,次第に行動範囲は西へと広がっていく。ワールド全体では,かなりの広さがある

 

 

職業によって大きく変わるプレイスタイル

 

スキルの表示はツリー形式ではないので,次に何を覚えるのかが少々分かりにくい。このあたりは公式サイトで事前にチェックしておこう

 この手のジャンルに慣れたプレイヤーなら,本作はマニュアルを読まずともサクサクと進められる。なので具体的なノウハウ面に関する,いくつかの説明をしておこう。

 

 まずはキャラクターの成長システムについて。キャラクターのレベルが1上がるたびに,ステータスポイントを5,スキルポイントを1獲得する。ステータスには「筋力」「素早さ」「知能」「幸運」の4種類あり,職業によっては注ぎ込むことでボーナスを得られる特性項目がある。ウォーリアは「筋力」,アーチャーは「素早さ」,ウィザードは「知能」,そしてクレリックは「筋力」と「幸運」といった具合である。これらの特性ステータスにポイントを割り振っていくと,5単位で通常攻撃のダメージやスキル効果などが1アップする仕組みだ。

 

 スキルポイントは新たなスキルの習得,または習得済スキルのランクアップ時に必要となる。例えばウォーリアを例に挙げると,「スラッシュ」(最低レベル1)→「初級デュアルマスタリー」(レベル1)→「初級ツーハンドマスタリー」(レベル9)→「ピアス」(レベル15)といった順番である。新たなスキルは拠点エリアのNPCから購入する必要があるが,ゲーム内においてスキルツリーといったものが確認できないため,少々分かりづらい。また,いったん割り振ったスキルポイントは通常の手段では戻せないので(これは課金アイテムで可能となる予定),習得し忘れのないように気をつけよう。

 

 スキルをランクアップさせると,当然ながらその効果も上がっていくわけだが,ここで少々注意。アクティブ系スキルの多くは,ランクアップによって消費するマナ量も増えてしまうのだ。これは元々マナ量が少ないウォーリアにとっては深刻な問題で,仮に「スラッシュ」にスキルポイントを10前後割り振ると,場合によっては一度使っただけでマナが底を尽きてしまう可能性がある。与えるダメージ量だけを考えれば,特性ステータスだけにポイントを注ぎ込めば順調に上がっていくものの,スキルの面も踏まえると,マナ量を増やす「知能」にもバランスよくステータスポイントを割り振っていきたい。

 

 何度かキャラクターを作ってチェックしてみたところ,四つの職業の中ではクレリックのバランスが,序盤では最も優れていると感じた。クレリックがレベル1から使える「ヒール」は,ヒットポイントをほぼ全快する効果を持ち,それでいて消費マナがたったの6しかないのだ。ほかの職業における初期スキルが,10〜35程度のマナを必要とするのに比べれば,「ヒール」のコストパフォーマンスはズバ抜けている。必要なマナ量は自然回復だけでカバーできるほどで,無補給で長時間戦い続けることも可能だ。したがって,よほどの強敵と戦ったりしなければ,体力やマナの回復ポーションの使用量を少なく抑えられるので,これから始める人は参考にしてほしい。

 

 また,モンスターの視野がほかのタイトルと比べてかなり狭いのは,覚えておいて損はないだろう。仮にピンチに陥ったとしても,画面半分ほどの距離を逃げるだけで,すぐに追ってこなくなる。本作は倒したモンスターがすぐリポップするので,ぼーっとしていると,いつの間にか複数の敵と戦う状況になりがち。そういった場合も,落ち着いて距離を置けば有利に展開できるというわけだ。

 

 レベル上げの作業自体は比較的単調になりがちだが,そこでぜひとも活用してほしいのが,モンスターからマレに得られる「モンスター退治令」だ。流れとしては,インベントリでこの退治令を右クリックすると200秒間のカウントダウンが始まり,指定されたモンスターを時間内に倒すとボーナスを得られるというもの。ゲーム中盤以降のレベル上げには長い時間が必要となるので,この討伐依頼書を使いこなしていきたい。

 

 ちなみに,レベルが100に達したキャラクターは「一時転職」,さらにその先には「二次転職」も用意されている。最終的にはレベル300まで上げられるので,本作のキャラクター育成は相当やりがいがあるだろう。

 

スキルを頻繁に使わないのなら,マナはさほど必要ない。ウォーリアなら「筋力」にほとんどのステータスポイントを割り振るのもアリだ スキルをランクアップさせるときは,消費マナ量の推移に注目。あまりにもこれが多くなるのなら,ランクアップせずに現状維持するのも手 クレリックのヒールはとても重宝する。体力回復ポーションをほとんど使わなくて済むので,お金を貯めるのも比較的楽な職業だろう

 

どこの狩り場にも数多くのモンスターが密集している。その気になれば敵から簡単に逃げられるので,常に1対1で戦うよう心がけよう モンスター退治令のクエストを始めるときは,NPCとの手続きなどは必要としない。退屈なレベル上げ作業に一工夫盛り込んだシステムだ 退治令の種類によって,目的のモンスターは決まっている。数多くを倒さねばならないため,自分よりも格下のモンスターだとクリアしやすい

 

 

どこを切ってもシンプルなクリックゲーム
今後の展開に期待

 

「取得経験値量をアップ」や「デスペナルティを軽減」といった課金アイテムを購入可能。仮にこれらを購入しなくても,それなりにプレイできるバランスだ

 2003年から運営されている韓国では当然,すでにレベル100や200は当たり前といった世界。韓国版では,そういった人達に向けてバランス調整を行っているため,そのままの形で日本版にローカライズするわけにはいかない。このような背景があるため,日本版ではいくつかの面で独自のバランス変更を施しているのだが,どうやらその作業がまだ完全には終わっていないようだ。

 

 中でも気になったのは,拠点エリアの機能が中途半端なこと。例えば「会話」や「取引」といったメニューが用意されていても,その会話内容やアイテムの陳列が実装されていないケースが数多く見受けられる。またNPCの会話内容そのものも,ぶっきらぼうで味気がない。そのため拠点エリア全体が,まるでテストサーバーでプレイしているような印象を受けてしまうのだ。これは時間が経てば解決する問題かもしれないが,すでに正式サービスが始まっているタイトルなので,早急に対処してほしいところ。

 

 単純な翻訳作業のみならず,日本市場に合わせたゲームバランス調整まで行うとなると,その作業量は相当なボリュームであることは想像に難くない。しかも本作の運営を行っているゼロオンラインは,今年の3月に設立されたばかりである。これらの状況を踏まえると,よくがんばってるのかもしれないが,プレイヤーの視点で見ると,どうしても物足りなさを感じてしまうのも事実だ。元々が2003年という少し古めのタイトルということもあり,数多くのアクションRPGがリリースされている日本市場では,少々インパクトが弱い。

 

 だが,それが逆に良い方向に働いている点もある。本作をプレイしてみて良いなと思ったのが,必要とするマシンスペックが極めて低いことである。例えば最低動作環境は「CPU:Pentium III/600MHz,メインメモリ:128MB」,推奨環境ですら「CPU:Pentium III/1GHz,メインメモリ:256MB」となっており,数世代前のノートPCでも問題なく遊べるのだ。最新鋭のグラフィックスを駆使するタイトルが多い中,本作のハードルの低さは,2D作品しか選択肢のなかったライトゲーマーにも新たな選択肢の一つとなるのではなかろうか。

 

 実装されている課金アイテムの種類も,「取得経験値量がアップ」などの定番タイプが多いが,これらが無ければゲームにならない,というほどではない。古いPCしか持っていないが,せっかくの夏休みなので新しいゲームで遊びたい,といった人は気長にプレイしてみてはどうだろうか。

 

クエストなどの必要最低限なもの以外,NPCの会話はぶっきらぼうな内容。いかにクリックゲームとはいえ,世界観にはもう少し気を使ってほしい 自分が装備できるアイテムは,アイコンの背景が青く表示される。しかし目を凝らさないと見落としやすく,職業別に分けるなどの工夫がほしい 敵を倒したときのドロップアイテムは全部地面に落ちる。パーティ編成時は早い者勝ちとなるので前衛職が有利だが,そこは事前に話し合いしておきたい

 

長期間運営されている韓国版では,ギルドや対人戦など,上級者向けコンテンツが用意されている。日本語版をこのレベルまで牽引できるかが鍵だ 全体的な雰囲気は,個人的には「Dark Stone」(1999年発売)を彷彿とさせられた。どことなく昔懐かしい雰囲気が漂うタイトルである Windows 98 SEやWindows Meに対応したタイトルは少なくなりつつある。動作環境の低さは,本作の大きなアピールポイントといえよう

 

タイトル Travia Online Japan
開発元 ZEMI INTERACTIVE 発売元 ゼロオンライン
発売日 2006/07/12 価格 基本無料(アイテム課金制)
 
動作環境 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP,Pentium III 600MHz[Pentium III 1GHz以上推奨],メモリ128MB以上[256MB以上推奨],3D対応のGeforce(グラフィックスメモリ:32MB)以上[3D対応のGeforce2(グラフィックスメモリ:128MB)以上推奨],HD空き容量: 500MB以上

Copyright(C)2006 ZEMI INTERACTIVE INC. All rights reserved.
(C)2006 ZERO ONLINE Co., Ltd.

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