― レビュー ―
ゴルフ史に残る名プレイヤー達と,時を超えて戦えるゴルフシム
タイガー・ウッズ PGA TOUR 06
Text by UHAUHA
2006年3月23日

 

■タイガー・ウッズを叩きのめせ! リアル系ゴルフシムの最新作

 

ゴルフに興味がない人でも名前は知ってるであろう,ゴルフ界のスーパープレイヤー「タイガー・ウッズ」の名を冠する本作。タイガー・ウッズになりきってプレイできるほか,オリジナルゴルファーを作ってウッズに挑める

 一概にゴルフゲームといっても,「みんなのゴルフ」「スカッとゴルフ パンヤ」のような,遊び要素を多く含むカジュアルなタイプとは別に,リアリティを追求した「ゴルフシミュレータ」といったタイプが存在する。今回紹介する「タイガー・ウッズ PGA TOUR 06」は,まさにシミュレータ系のゴルフゲームだ。

 世界的な知名度を誇るプロゴルファー,タイガー・ウッズが監修し,米PGA TOURの公認も受けている本シリーズ。収録されているコースはPGA TOURチャンピオンシップコースの12コースで,タイガー・ウッズが2005年シーズンに優勝を飾った,世界最古のゴルフコース「St Andrews Links」をはじめ,「Pabble Beach Golf Links」「Paradise Cove」「Pinnacle Course at Troon North」「Plantation Course at Kapalua」など,有名なコースが収録されている。
 登場するゴルファーも,ゴルフ界のスターと呼べる人ばかり。タイガー・ウッズはもちろん,トム・モリス,スチュアート・アプレビー,アダム・スコット,コリン・モンゴメリなど,現役/引退を問わずスーパーアスリート達が登場する。

 本作はゴルフツアー(大会)に参加して,ランキングトップを目指すだけの,ありがちなゴルフゲームではない。ゴルフシミュレータに,プレイヤーを楽しませるためのアイデアを大胆に盛り込んだ,今までにないタイプのゴルフゲームである。

 

グリーンでは,芝目はグリッドで表示される。緑,黄,赤の順に傾斜がきつくなる。ラインを読んでパットを決めよう タイガー・ウッズのスイングフォームは,モーションキャプチャで再現されている。ダイナミックなスイングは必見 ロングパッドやチップインなどを決めると,リプレイ再生される。スーパープレイは保存され,あとで鑑賞できる

 

トーナメントではギャラリーの歓声や,ゴルフ中継のアナウンサーの声も聞こえる。歓声があると気分も盛り上がる 天候の変化だけでなく,トーナメントでは先にラウンドしている組の残した,ショット跡まで再現している 上空からコースを眺めると,起伏がよく分かる。起伏や芝の状態などが緻密に計算され,ボールの軌跡が再現される

 

 

■マイゴルファーを育て,世界ランキングの頂点を目指せ

 

ライバルズモードでは現代のゴルフだけでなく,時を超えて往年の名プレイヤーと対戦できる。タイガー・ウッズは生まれていなかったはずの1920年代にもウッズが登場。歴史を感じさせる衣装にも注目

 まずは本作の「ゲームモード」および,ウリの一つである「オリジナルゴルファー」の作成と育成について見ていこう。そう,なんと本作では自分の分身であるゴルファーを作り,世界のトッププロ相手に経験を積んで育成していけるという,贅沢な要素があるのだ。

 

■ゲームモード

 

 「ライバルズモード」(RAIVALS MODE)は,ゴルフ史に残るゴルファー達と勝負し,史上最高のゴルファーを目指していくモード。単なるスコア勝負だけでなく,自分は3DOWNから始まるマッチプレイだったり,ニアピンやパットの勝負だったりと,さまざまな条件の勝負が用意されている。
 一つの挑戦をクリアすると新たな挑戦が出現し,最後には「その時代」のチャンピオンに挑戦する。「その時代」というのは,実は現代から過去へ,過去から現代へと時代を行き来しながらライバルと戦うという,摩訶不思議な展開なのだ。過去に行くと服装や使用するクラブまで当時のものに変わり,ノスタルジックな雰囲気が漂ってくるという,かなり斬新なアイデアだ。

 一方の「ツアーモード」(PGA TOUR)は,少しずつ実力を磨いていき,PGA TOURへの参加を目指すモード。これはいわゆるキャリアモードのようなもので,最初は小さな試合に出場し,徐々にイベントやトーナメントに参加して好成績を出していく。やがてQスクール(プロテスト)に招待され,合格すれば晴れてプロとなり,PGA TOURに参加できるようになる。トーナメント形式の試合だけでなく,友人との遊びゴルフ(?),会社の上司達との接待ゴルフ(しかも賭けゴルフだ)なども楽しめる。

 どちらのモードも,プレイヤーの腕に合わせてAIゴルファーの強さも調整されているようで,ゲームが進むほど接戦になることも多くなり,緊張感のある勝負が楽しめる。ときには,スーパーショットを連発されて完敗なんてこともあるので,心して挑戦していただきたい。ランキングトップへの道のりは長く険しいのだ。

 二つのモードのほかに,好みのコース,ゲームモード(StrokeやMatchなど11種類),サイドゲーム(バーディなら2$を払うなど)を設定してプレイできる「カスタムモード」(CUSTOM),自由にコースを選び,好みの場所からショットを打つ練習ができる「プラクティスモード」(PRACTICE)が用意されている。
 また「プレイオンライン」(PLAY ONLINE)では,LAN接続による4人までのマルチプレイがサポートされている。なお,サポート対象外となるが,EA SPORTS Onlineサービスを使って世界中のプレイヤーと対戦するオンライン対戦も用意されている。オンライン対戦用のランキングもあるので,世界のトップを目指してみてはいかがだろうか。

 

ツアーモードでは,カレンダーにあるイベントやトーナメントに参加する。面倒な試合はやらずに先に進んでも構わない ツアーモードのイベント「上司たちとのゴルフ」。プレイの賭け金が設定されているので,遠慮なく儲けさせてもらおう マルチプレイなどでは,サイドゲーム(賭け金)を設定しておくと,スコア勝負だけではない熱い戦いが楽しめるだろう

 

過去の時代では,服装やクラブもその時代のものを使用する。かなり古くさい服装に感じるが,これも味があって良い 試合で使用するクラブセットを設定できる。お金を貯めてクラブを購入し,自分にあったクラブを見つけ出すのも楽しい イベントやトーナメントに出ると経験値が得られ,経験値を割り振って能力を上げていく。すべて最高にするのは大変だ

 

■オリジナルゴルファー作成と育成

 

 ライバルズモードとツアーモードのプレイには,「オリジナルゴルファー」を作成する必要がある。オリジナルゴルファーは,試合を重ねていくことで経験値が得られ,その経験値を使ってさまざまな能力を強化していけるのが大きな特徴だ。

 ゴルファー作成(プロファイル)では,ゲームの難度(NOVICE,INTERMEDIATE,ADVANCE,EXPERT),利き腕,スイング方式(後述)などのほか,身長,体型,顔の形,目の位置などを詳細に設定できる。皺やそばかすの量,お腹の出具合といった部分までスライドバーにより微調整が可能という,妙なこだわりよう。
 しかし,これがなかなか思い通りの容姿(?)にならず,思い描いているゴルファーを作り出すのはかなり苦労する。ランダムで作成してくれる機能もあるが,男女とも「ううっ,これ人間?」というような,かなりキツい容姿のゴルファーが生まれやすい。せめて,もう少し美形のゴルファーを作れてもよかったような……。この美的センス,お国柄ってやつだろうか。

 またプロファイルでは,試合で得た賞金を使って,使用するクラブ,ボール,シャツ,シューズの購入,コースに持っていくクラブセットや服装も設定できる。サングラス,腕時計,ピアス,指輪,タトゥーなど数多くのアクセサリーも用意されており,ちょっとしたオシャレも可能だ。
 これらのアイテムは,最初からすべて購入できるわけではなく,イベントやトーナメントを制することで少しずつロックが解除されていく。定番仕様ともいえるが,すべてのアイテムを手に入れたい! と,コレクター魂をくすぐるあたりがポイント。

 ゴルファーの育成要素についても見てみよう。強化できるのは「POWER」(飛距離),「LONG GAME」(全力の場合の精度),「SHOT MASTERY」(レッスンの上達度),「SHORT GAME」(チップ,ピッチ精度),「PUTTING」(パッティング精度)の5項目。所持する経験値を各項目に割り振ることで,最高100まで能力を上げられる。しかし能力が高くなるごとに,上昇に必要な経験値も多くなるので,完璧なゴルファーに育て上げるには根気と時間が必要だ。

 また,作成したゴルファーは最初,高度なショット技術を持っていない。レッスン(LESSON)を受けてスキルを習得することで,チップ,ピッチ,スピンといった18種類のショットが打てるようになる。前述のSHOT MASTERYの能力を上げればレッスンを受けられるが,当然,費用がかかり,高度なショットほど値段も高い。とくに序盤では資金面で苦労することになるのだが,実はスコアに大きな差が出るところだけに,早めに多くのショットタイプを習得しておきたい。

 

オリジナルゴルファー作成画面では,顔,体型など,スライドバーによって異様なほど細かく設定できる。アクセサリー類もピアスや指輪など豊富に揃っているので,自分の分身をオシャレにしよう

 

本文でも触れたが,ランダムを使って作成したゴルファー達。こういってはなんだが,あまり感情移入できないような連中ばかりが現れる。とくに女性ゴルファーは,美人どころか人間とも思えないような……

 

 

■マウスジェスチャでショット! ひと味違うマウススイング

 

マウスジェスチャによるスイングが面白い。正確なショットを打つには,クラブごとに合ったヘッドスピードで振り下ろすことが重要だ。画面に表示できるスイングアナライザーで,どこが悪いのかが分かる

 ゴルフゲームでは,ボールを打つための操作方法にいろいろな種類があるが,本作ではマウスジェスチャによる「スイング方式」と,インパクトメーター上を移動するバーをクリックで止めて行う「タイミング方式」の両方がサポートされており,合計5種類のスイング方法から選べる。スイング方法の選択は,前述したゴルファー作成(プロファイル)で設定する。

 スイング方式は,本作では「TRUE SWING(V)」「TRUE SWING(H)」が用意されている。初期設定のTRUE SWING(V)は,マウスを手前に動かすとバックスイング(クラブを上に上げる),奥に動かすとダウンスイング(クラブを振り下ろす)というもの。もう一方のTRUE SWING(H)は,右に動かすとバックスイング,左に動かすとダウンスイングとなる。バックスイング時に,どのくらいマウスを引くかでショットのパワーを調整し,真っ直ぐ打ちたければマウスを直線的に引いて押し出す。左右にずらしながら押し出せばフェードやドロー,フックやスライスといった,ボールに回転をかけたショットが打てる。

 個人的には,この「スイング方式」をお勧めする。本作の真の奥の深さ,難しさ,面白さは,スイング方式でないと味わえないだろう。実は単純にバックスイングだけでパワーを決定しているのではなく,使用するクラブによってダウンスイングの速度(CLUB SPEED),スイングにかける時間(TEMPO)が異なり,合わせて打たないとパワーが弱まったり,まともに飛ばなかったりする。
 ドライバーなどの長いクラブの場合は,バックスイングをして,溜めてから振り下ろすが,逆にアイアンなど短めのクラブでは,溜めずにすぐに振り下ろすといった部分が再現されており,使用するクラブごとにスイングするテンポも変える必要がある。

 また,スイングはプロファイルの難度設定の影響を受ける。初心者向けの難度「NOVICE」は,マウス操作に少し慣れれば比較的真っ直ぐ飛ばせるが,難度「INTERMEDIATE」以上になると,少しのズレもやがては大きなズレとなり,真っ直ぐ飛ばすのもままならない。このへんは自分の腕に合わせて設定したいところだが,腕に自信のある人は,やはり「EXPERT」でプレイしてほしいところだ。

 一応,タイミング方式も書いておくと,3回のクリックでスイングする「3-CLICK」,2回のクリックでスイングする「2-CLICK」が用意されている。まぁオーソドックスな方法なので説明する必要はないだろう。
 また,ゲームパッドでのプレイもサポートしている(スイング方式で「GAMEPAD」を選ぶ)。USB変換コネクタでプレイステーション2のコントローラを試してみたが,十字ボタンによる方向操作,アナログスティックによるスイングなど問題なく使用できた。とはいえ,やっぱり本作はマウススイングで挑戦してほしいところだ。
 余談になるが,本作はマイクラブ,マイボールを使い,実際にスイングしてボールを打ってゲームに反映させる,「Golf Launchpad」(ゴルフランチャーパッド)という周辺機器にも対応している。国内ではGDEX Online Storeが取り扱っており,マウスやキーボードなんかでプレイしていられない! という,こだわり派の人は導入してみてはいかがだろうか。

 本作をプレイしていて最も感じたのが,ボールの重さや動きの素晴らしさだ。リアルを謳うゴルフシムでも,たいていボールの重さを感じられることは少ないのだが,本作ではバウンドした後の軌跡や,ラフやバンカーに入ったときのボールの動きから重力感が感じられるのだ。実際にはボールを打ったときの感触が得られるわけはないのだが,画面の中に再現される,ショット音と共に飛んでいくボールの動きを見た瞬間,感触のようなものが伝わってくる。美しく再現されたコースも相まって,あたかも実際のコースでプレイしているかのような感じでプレイできるのだ。もちろん,傾斜や芝目によるボールの動きも緻密な計算のうえで再現されており,一度プレイすれば,世界中のゴルフゲームファンから完成度が高いと賞賛されている理由が分かるだろう。

 最近はゴルフシムもめっきり数が減り,手軽に楽しめる「スカッとゴルフ パンヤ」など,カジュアルなゴルフゲームに押され気味だが,一風変わったリアル系ゴルフシムに仕上がっている本作の面白さは,多くの人に味わってほしいところだ。

 

多くのカメラアングルがあるので,スーパープレイを出したときはさまざまなアングルで見直して酔いしれよう タイミング方式のショットでは,スイングメーターが表示される。メーターが小さいため,ゲージ移動が速く感じるかも 多彩なショットを使い分けるには,レッスンでスキルの習得が必要だ。すべてのスキルを使ってスコアを伸ばしたい

 

スキルを習得できるレッスン。高度なスキルほどレッスン費用は高くなるが,それで試合に勝てば賞金で取り戻せる 獲得トロフィーがラウンジに飾られる。ボール棚には,初バーディなどの記念ボールがリプレイと共に保管される ライバルモードとツアーモードは悲しいほど下位からスタートする。コツコツとライバル達を倒してトップを目指そう

 

タイトル タイガー・ウッズ PGA TOUR 06
開発元 Electronic Arts 発売元 エレクトロニック・アーツ
発売日 2006/02/23 価格 オープンプライス
 
動作環境 N/A

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http://www.4gamer.net/review/tigerwoods06/tigerwoods06.shtml