― レビュー ―
極めて貴重な"2D対戦弾幕シューティング"
東方花映塚
〜Phantasmagoria of Flower View.
Text by 八重垣那智
2005年10月14日

 

■シューティングで遊ぶ楽しさと幸せのために

 

 今回紹介するのは「東方花映塚 〜Phantasmagoria of Flower View.」(以下 東方花映塚)というタイトルである。ジャンルはシューティングで,俗語を使って言い換えれば"縦シュー"。さかのぼれば「スペースインベーダー」を祖先に持ち,ある意味,日本で最も伝統的なコンピュータゲームに属する製品だ。

 ただ,少々変わっているのは,東方花映塚がありきたりなスクロール型シューティングではなく,非常に珍しい「対戦シューティング」というスタイルを採用している点にある。現在のPCゲーム界において希少種と言える2Dシューティングでありながら,その中でも特異なスタイルを備えた東方花映塚が,どれだけPCゲームプレイヤーを幸せにしてくれるのか。今回はそこにこだわって掘り下げていきたい。

 

 

■単純に見えて複雑なゲームシステム

 

倒すべきなのは,眼前の雑魚の向こう側に居る,隣のアイツなのだ

 右が東方花映塚のプレイ画面だが,対戦シューティングを名乗っているだけあって,プレイフィールドは左右に分割されている。左右それぞれに,いわゆる通常のシューティングゲーム用フィールドが展開されているのだ。どちらのフィールドにもプレイヤーキャラクター(以下 自キャラ)がおり,ゲーム内で対戦する"主体"は,この自キャラ同士になる。

 

東方花映塚を特異な存在にしている要因の一つがこのキーコンフィグだ。スロー移動と吸霊展開は常に同時発生となる点に注意が必要。Chargeを選択するとチャージが独立し,ショットとスロー移動&吸霊展開が共用に。Slowを選択すると,スロー移動&吸霊展開が独立し,ショットと溜め射ちが共用になる

 操作は基本的にゲームコントローラで行う(キーボードでも可能だがお勧めしない)。レバーや十字キーにより自キャラを移動させ,攻撃系はショット/ボム/スロー兼吸霊展開(後述)/特殊攻撃用チャージという四つのアクションを三つのボタンにバインドする(割り振る)方式だ。すべてを単独のボタンに割り振ることはできず,スローと特殊攻撃用チャージのどちらかは,"ショットボタンの押しっぱなし"にバインドするしかないのである。このため,スローとチャージをどのように設定するかは,戦略的にかなり重要になる。ただ,最初はあえてデフォルトのバインド設定のまま,ゲームシステムの理解を優先したほうが賢明だ。

 対戦のイメージは,互いのフィールドに妨害用のキャラクターなどを送り合うという意味で,対戦パズルゲームに近い。相手と直接撃ち合うのではなく,間接的に攻撃するわけだ。ショットなどで自分のフィールドの敵――本作には「妖精」と「幽霊」の2パターンが存在する――を攻撃し,飛んでくる弾や妖精/幽霊をかわす。
 最大10ポイントのライフ制が採用されており,ダメージを受けるとこのライフが減る。ダメージは攻撃方法ではなく,"最後にダメージを受けてから何秒経過したか"によって,1〜6の範囲で増減する(時間が経てば経つほど大きくなる)。そして,先に対戦相手のライフが全部尽きればこちらの勝利である。

 対戦における攻撃システムは少々複雑だ。まず理解する必要があるのは,自分のプレイフィールドにいる妖精は,ショットが命中したときの爆風で誘爆する点。次に,爆風を当てると,画面を埋める小さな弾や他の妖精,幽霊を誘爆させられる点。そして,幽霊は弧の形のままだと"硬い"うえに爆風が小さいが,スローボタンと同時に発動する「吸霊展開」で移動を止めると,妖精と同じように簡単に破壊でき,しかも妖精並みの爆風が発生するという点だ。

 

左のプレイフィールドで説明する。十六夜咲夜(いざよいさくや)というキャラクターを自キャラにすると,一定時間をかけて自キャラの移動方向と逆に扇型の吸霊展開が行われる。キャラクターによっては,自キャラの周囲一定範囲,縦方向無限,プレイフィールドすべて(!)というタイプもある。最終的には,吸霊展開の使い勝手が自キャラ選択を大きく左右するだろう。中央から右の画面を見ると分かるように,吸霊エリアにぶつかった幽霊は「自爆霊」と呼ばれる状態になって丸くなる

 

一定量の幽霊を自爆霊状態にしたところで,やってきた妖精編隊の先頭を攻撃。すると,青い爆風が発生する 爆風は周囲の小さな弾,妖精,自爆霊を巻き込んで連鎖していく この例では,プレイフィールドの右側ほとんどを一掃できた。プレイフィールド内に赤いシミのようなものが見えるが,これは今回の連鎖によって生じた,相手フィールドへの攻撃弾だ。相手フィールドに入ると弾になって相手を襲う(すぐ下の(1)に相当)

 

今度は右のプレイフィールドで見てみよう。因幡てゐというキャラクターは,自キャラを中心に横長楕円風の吸霊展開を行う。前述した十六夜咲夜以外のキャラが幽霊を自爆霊化すると,自爆霊は少しずつ画面上方に上がって行き,一定時間後,赤く点滅し始める(左)。さらにしばらく経つと,一瞬透明化(自爆)して(中央),そのときに自キャラがいる方向へ,爆風では消せない,大きな弾をバラ撒くのだ(右)

 

 このルールを身体で覚えると,ようやく対戦相手をどう攻撃するか,という段階に進める。攻撃方法は,以下の3種類である。

 

(1)自分のフィールドにいる敵を倒すことによる弾や特殊攻撃

 最初はそんな余裕がないかもしれないが,自分のプレイフィールドに出現する敵の編隊を連爆させたり,そこに小さな弾を巻き込むなどして,一撃で多くの敵や弾を消すと,それに応じて,対戦相手のプレイフィールドに一定量の弾や,「EXアタック」と呼ばれる特殊攻撃を送り込める。これはボクシングのジャブに当たるイメージだ。ただ,任意に攻撃しているという実感が湧きにくいのが難点だろうか。

 

キャラクターによって,互いのフィールドに及ぼす攻撃が大きく異なる。決まり切った"攻略法"がどんな相手にも通用するなどといった単純な勝負ではない EXアタックは直接攻撃とは限らない。左のプレイフィールドを斜めに覆っているのは,メディスン・メランコリーというキャラクターが送り込んだ「スィートポイズン」。画面が見えづらくなり,さらに自キャラの速度が大幅に低下する。二重になっているとほとんど動けないほど凶悪だ

 

 

(2)チャージ攻撃
鈴仙・優曇華院・イナバ(れいせん・うどんげいん・いなば)のレベル4チャージ攻撃「栄華之夢(ルナメガロポリス)」が右のプレイフィールドで炸裂中。放射状の弾幕圧力は感じるものの,まだ絶望的なものではない。ただ,ボスの攻撃は,何度も送り込むことでパワーアップしていくので,舐めてかかるのは厳禁だ

 東方花映塚では,敵を倒していくことで,プレイフィールド下部に表示されているゲージがたまっていく。レベルは1〜4があり,2〜3ではゲージを一定量消費することで自キャラ固有の弾幕(大量の弾)を,レベル4では同じくゲージを消費することで自キャラの化身を「ボスキャラ」として相手のプレイフィールドに送り込める。ゲージがごっそりなくなるのを覚悟すれば,ボムボタンで瞬間的に発動させることも可能だ。いずれの方法もユーザーが意図的に行う攻撃なので,タイミングは難しいが,攻撃している実感が湧きやすいのも確かである。

 

 

(3)ボーナスポイントによる攻撃

 敵を一定時間内に連続して倒すことによって,プレイフィールド左上に表示されている「スペルメーター」と呼ばれるスコアが上昇する。そして,それが10/30/50万といった一定の点数を超えるごとに,(2)のレベル4と同じボスキャラを相手に送り込める。自動的に発生するため,最初は(1)と同様,感覚を掴みづらいが,(2)で説明したゲージを消費しないのと,発生のタイミングが固定されているという決まりごとがあるので,タイミングを把握して,うまく使いこなしたい。

 

右プレイフィールドに注目。スペルポイントが10万ポイントを超えた時点で,ゲージ消費攻撃と同じエフェクトがかかり,次の瞬間,レベル4攻撃が相手側へ送り込まれる

 

 

 これらの攻撃システムを理解して実際の戦闘を行ってみると,かなり強力で理不尽な攻撃を送り込まなければ,思うようなダメージを与えるのは難しいことに気づくと思う。
 ならどうするかといえば,いかにしてボスキャラを送り込んで相手のプレイフィールド内で暴れ回らせるかが,戦いの中心になる。ただし,ボスキャラはボスキャラによって送り返せる(「ボスリバーサル」できる)。せっかく送り込んでも,場合によっては即座にボスリバーサルされ,逆に自分の致命傷にもなりかねないのである。(2)と(3)のバランスまで理解して,勝利への道を探さなくてはならないのだ。

 

 結局のところ,ルールや状況に対する的確な判断や,合理的な対応といったものを突き詰めていけるかどうかが,このタイトルを楽しめるかどうかの分水嶺となる。もちろん目の前の相手から送られてきた弾幕をかわしたりするのも,勝利のカギの一つではあるが,単に相手の自滅まで耐え忍ぶだけの戦略では,実を結ばない。
 最初は,自分のプレイフィールドを見渡すことすら難しいはずだ。しかし,勝利のためには,自分が送りこんだ攻撃が対戦相手のフィールドでどんな弾幕を描いているのか的確に理解し,さらには相手のフィールドで意図的に阿鼻叫喚の状況を展開することが求められる。一般的なシューティングゲームと東方花映塚を決定的に隔てているのは,二つのフィールドを同時にコントロールする必要があるという,この並行展開にほかならない。

 

右のプレイフィールドから送り込まれたレベル4攻撃を,左側がスペルポイントによるボス発動でボスリバーサルした瞬間。後手に廻るようだが,ボスリバーサルは,ボーナス点が"×2"になるので,スコア的にはかなり美味しい 鈴仙・優曇華院・イナバ同士の戦いに見る,EXアタックの「メタフィジカルマインド」。両プレイフィールドに炸裂している赤い丸がその正体。かなり大きくて厄介だが,実際に接触判定が出ている時間はそれほど長くない 左プレイフィールドの自キャラがダメージを喰らったところ。このとき自キャラはあらぬ方向へ強制的に動かされてしまうので,下手するとさらなる窮地に追い込まれることがある。自キャラが半透明になっている間は無敵だが,無敵時間は短いから,とにかく最後まで集中力を切らさないことが重要だ

 

 

■プレイを重ねると,自然にキャラクターへの理解が深まる

 

難易度は全部で4段階。もったいぶった名前になっているが,上がヌルくて,下がアツいと実に単純である

 ゲームモードは基本的に2種類。1人で,コンピュータを相手に9ステージを戦い抜くストーリーモードと,コンピュータや別のプレイヤーと1対1で対戦するためのマッチモードがある。どちらも,画面にバラまかれる弾の密度と速度によって決定される難易度(攻撃の激しさ)を4段階から任意に選択できるようになっており,プレイヤーの巧拙に対応できる。

 東方花映塚では,自キャラの選択肢が最大16あるのだが,インストール直後に選択できるのはわずか5。(例外はあるものの基本的には)ミスしようがコンティニューしようが,とにかくストーリーモードをクリアすることで,使用できる自キャラの選択肢が増えていく仕様だ。プレイ回数を重ねて,ゲームに慣れてくるころには,自キャラの選択肢が増えているというわけである。

 

ゲームを進めていくと使用可能になる,風見幽香というキャラクター(右)のステージはひまわりが背景で,EXアタックでは相手のフィールドに花を送り込む。ただし,風見幽香と花の間にどういう関係があるのかについては,ゲーム中でほとんど語られない。気になった人はその"背景"を調べてみると,よりいっそうゲーム世界に浸れるはずだ

 自キャラは,移動速度や特殊攻撃,ゲージ消費攻撃のユニークさによって色づけが行われている。一般的な2Dシューティングよりも,キャラごとの違いは大きい。それだけに,自キャラに16もの選択肢があると混乱しそうだが,それを分かりやすくしているのが,徹底的な記号化だ。すべて女性からなる16の自キャラには,それぞれ因縁やストーリーが用意されており,これらはストーリーモードに存在する自キャラ同士の掛け合いから,想像できるようになっている。
 この記号化そのものはゲーム性と直接関係しないので,本稿では解説しない。ただ,各キャラのあだ名や通称については,インターネットの検索などで調べておくといい。詳しくは後述するが,東方花映塚は「東方シリーズ」と呼ばれる一連の作品群に属するものなので,ゲームコミュニティはかなり成熟している。世界観を理解しておくと,ほかのプレイヤーとの意思疎通が楽になるだろう。

 

夜雀(よすずめ)の妖怪という設定のキャラクター,ミスティア・ローレライ(右プレイフィールド)。キャラクター同士の掛け合いの中には,彼女が鳥であることを踏まえた発言が多い。また,攻撃手段としては,鳥をモチーフにした青い幽霊(通常攻撃では破壊不能)を使ったものが中心となる

 

 なお,東方花映塚には,エクストラモードという,三つめのゲームモードが隠されている。エクストラモードについては,実際に出現させてからのお楽しみということで,解説は割愛したい。
 プレイモード以外では,リプレイ再生とキャラクター/難易度別ハイスコア一覧が可能だ。リプレイは,ゲーム終了ごとに保存するかどうか尋ねられる。最初のうちは,相手のプレイフィールドで何が起こっているのか,ゲーム中に確認する余裕はほとんどない。それだけに,こまめに保存しておくと,対戦相手の研究に役立つはずだ。

 

リプレイデータは最大25個保存できるうえ,特定のステージだけ再生したり,別のプレイヤーのものを取り込んで再生したりできる。さらに,標準で「replayview.exe」というコメントエディタが付属しており,長く保存したいとか,友人に配布したいといったリプレイにコメントを入れておける

 

 

■作品のポジションも理解しておく

 

東方シリーズの魅力の1つである音楽モードはライナーノーツ付き。ゲームプレイでまだ聴いたことのないものについては,曲名と解説が伏せられている

 ゲームの本質が見えてきたところで,このゲームが置かれているポジションを確認しておこう。ここまであえて触れなかったが,この「東方花映塚」は商業流通に乗っているタイトルではない。いわゆる同人ソフトである。
 もっとも,昨今の風潮から見れば,同人といえどあなどれない存在であり,商業作品との垣根は,非常に小さなものになりつつある。同人ショップにインターネット通販と,流通ルートの拡充も著しい。同人ソフトを起点に展開したアニメ作品などの具体例を挙げずとも,もはや市民権を得ているカテゴリであろう。

 さらに,東方シリーズは,シューティングゲームとして歴史がある。本格的なゲーム内容に加え,設定と世界観の充実,しっかりした作中音楽などから,数多くの高い評価を受けてきた。この東方花映塚は,シリーズの中でシューティングゲームとしては9作目に当たるもの。蓄積された技術と信頼,積み上げられる期待は,そろそろ同人ソフトの域を脱しつつあるのかもしれない。

 そして,もうひとつ触れておかなければいけないのが「ティンクルスタースプライツ」(以下スプライツ)というゲームの存在だ。
 スプライツは最初に1996年にADKがアーケード向けにリリースした対戦シューティングである。オリジナルのNEOGEO(MVS)版だけでなくセガサターン版,ドリームキャスト版が発売されたほか,2005年7月にはプレイステーション2用にリニューアル版「ティンクルスタースプライツ -La Petite Princesse-」がリリースされている。
 スプライツのゲームシステムは,左右分割された画面のそれぞれのフィールドから攻撃キャラを送り合って相手を追い詰める対戦型シューティングである。そう,(開発者も認めているが)東方花映塚がスプライツを下敷きにして成立していることは明らかだ。スプライツと東方花映塚の間には,画面構成だけでなくキャラクター性の強さなど,いくつもの類似点を指摘できる。

 

 もっとも,"対戦シューティング"というコンセプトを成立させている商業作品は,フライトシムやFPSを除けば,スプライツ以外にはないに等しい。先行作品があるということは頭の中に入れて遊ぶべきなのかもしれないが,スプライツの後継者が存在しなかった対戦シューティングというジャンルにとって,大きな進歩になるかもしれない点こそが重要なのだ。

 

 

■シューティングがもたらすモノ

 

東方花映塚では,ステージ6から対戦相手のAIレベルがぐっと引き上げられる。最初は戸惑うだろう。最終ステージとなるステージ9を,最初からコンティニューなしでクリアするのは,多くの人にとって相当難しいチャレンジとなる

 ここまで「東方花映塚」のゲーム内容と魅力について書いてきたが,実のところ,多くの人にとって,この作品は魅力的に映らないかもしれないと筆者は危惧している。
 その理由は,シューティングというゲームジャンルにありがちな難度の高さでもなければ,対戦シューティングのトリッキーなゲームシステムの複雑さでもない。ましてや体験版をプレイした程度では,このゲームが持つ,丁々発止の駆け引きに関連した奥深い面白さが伝わりにくいからでもない。それはズバリ,このゲームを面白いと体感するには,ゲームに向き合うコツが必要と思うからだ。ここでいうコツというのは本作品に固有のテクニックやTipsの類ではなく,もう少し漠然とした,シューティングゲームそのものに対する気構えのようなものである。

 シューティングゲームというスタイルは,今どきのゲームとしては少し特殊な"お約束"が多い。その中でも最たるものが「最後まで行けないのが当たり前」という,ゲームの起承転結に対する独特の捉え方だろう。シューティングゲームはもともと,用意されたシナリオの過程(ステージ)と結末(エンディング)を見知って満足するジャンルではない。目先の課題を解決して次の課題に直面し,その解決を繰り返す。あとはひたすらその繰り返しや,解決方法の質を問い続けることで,満足が引き出されるゲームである。クリアするまでの楽しみではないし,もちろんクリアしただけで遊び終わるものではない。

 言ってみれば,シューティングゲームというのは,心構えしだいで自分がどれだけ楽しく遊べるのかが変わってしまうものなのだ。プレイする前のちょっとした儀式めいた仕草で気合いを入れて,体温を押し上げ集中力を研ぎ澄ます。自分の手にしっくりくるゲームパッドやジョイスティックを探し求めることですら,プレイのテンションを高めてくれる。自分の腕前を客観的に見つめながら,今日できなかったことを明日は1つでも減らそうと努力する。果てのないスコア稼ぎに没頭してみるもよし,リプレイを参考にして,ミスを削ぎ落とすことに価値を見出したりするもよし。自分だけの小さな目標を定めてプレイするだけでいい。その先にはきっと新しい満足と快感が待っており,それを期待するからこそ,今,未熟な結果しか残せない自分を肯定できる。シューティングゲームとは,上手くなることの楽しいゲームなのである。

 そうした遊び方というものは,話で聞いたり頭で考えたりするだけではなかなか身につかない。しかし「だからシューティングゲームは楽しめない」という結論ではあまりに悲しい。
 タイミングよく,今ここに「東方花映塚」という,よくできたシューティングゲームがある。これをプレイすれば,対戦シューティングの面白さだけでなく,シューティングというジャンルそのものを,楽しくプレイするためのコツが学べるはずだ。知らないから遊ばないというスパイラルに陥らずに,それを知るために遊んでほしい。今日よりも上手い明日の自分に会える「東方花映塚」なのである。

 

 

■その先には対人戦がある

 

1.50aプレリリース版を利用すると,制限はあるもののオンライン対戦が可能になる

 さて,ここまで読んで話がまとまったように感じている人も多いだろうが,これだけだと,東方花映塚のすべてを語ったことにはならない。

 では何があるのか。それは,マッチモードにおける対人戦だ。現実には,対戦の面白さを膨らませてくれる,自分と同じ程度の実力を持った対戦相手を確保するのは難しいかもしれない。確保したとしても,同じ場所で同じ時間を共有するのは,学業や仕事がある以上,なかなか難しい。
 ただ,2005年10月上旬現在,開発元である上海アリス幻樂団のWebサイトには,バージョン1.50aというプレリリース版のパッチが上がっている。これを利用すれば,オンラインで対戦が可能になるのだ。つまり,対人戦における"同じ場所"というハードルは消えることになる。

 もっとも,プレリリース版だけに,2005年10月上旬時点では以下に挙げるような問題がある。

 

  • (1)ドキュメントがほとんどないため,オンラインゲーム初心者には設定が難しい
  • (2)Sync設定,キーコンフィグの「Slow」/「Charge」の1P/2P設定を正しく行う必要がある
  • (3)対戦相手といったん接続してしまうと,通常メニューに戻れない

 東方シリーズはユーザーコミュニティが発達しているので,少しインターネット検索を行えば,これ以外の小さなトラブルなども解決できるだろうが,本稿でも軽く触れておきたい。
 まず(1)だが,1.50aプレリリース版パッチを適用すると,東方花映塚のインストールフォルダに「IP.txt」というファイルが作られるので,これを正しく書き換え,かつ,(多くの場合は)ルーターの設定を正しく行えばいい。ルーターの設定については,「バトルフィールド2」の対戦サーバーを構築する記事に詳しいので,そちらを参照いただければ幸いだ。

 

IP.txt(クリックすると拡大可能)。先頭に「;」がある行は「コメント行」と呼ばれ,ゲームからは参照されない。なので,標準でHighになっているSyncの設定をLowに変更したい場合,「Sync = High」となっている行の先頭に「;」を追加し,「; Sync = Low」を「Sync = Low」に書き換えればいい

 (2)について,IP.txt内のSync設定,ゲームオプションのSlow/Charge設定を正しく行わないと,ゲームの進行がおかしくなる不具合が確認されている。(3)は,プレリリース版らしい仕様(不具合ではないと公式見解が出ている)といえよう。キャラ選択画面から素直にAlt+F4で終了させるのが得策だ。

 オンライン対戦パッチは,現状でプレリリース版と銘打つ以上,いずれは正式版が発表されるだろう。商業作品ではないから「いつ」なのか約束はされないが,きっとリリースされるはず。まずは東方花映塚という作品の面白さを知り,そのうえで,ぜひプレイヤー同士の対戦にまで踏み込んでみてほしいと思う。

 

「ver.1.50a」プレリリース版を適用すると,マッチモードで「妖怪 対 妖怪」を選択できるようになり,うまく対戦相手とつながれば,(快適かどうかは通信環境に左右されるものの)オンライン対戦が可能になる。正式リリース版では,より使いやすくなるはず。ちなみに,光回線の場合はボイスチャットを併用すると,より楽しめる

 

タイトル 東方花映塚 〜Phantasmagoria of Flower View.
開発元 上海アリス幻樂団 発売元 上海アリス幻樂団
発売日 2005/08/14 価格 1000〜1500円程度
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 8.0),CPU:Pentium以上[Pentium III/800MHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上,グラフィックスチップ:DirectX 8.0以上に対応,グラフィックスメモリ:32MB以上,パッドコントローラ推奨

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