封神演義をベースにした世界観
対人戦をウリにしたMMORPG「天道オンライン」。美形や可愛らしいキャラがもてはやされる昨今,敢えて強面のキャラを選択できることも(ある意味)特徴だ |
「天道オンライン」は,韓国のLIZARD Interactive社が開発したMMORPG。日本国内での運営はハイファイブ・エンターテインメントが行っており,2006年9月に実施されたチェックアップ(クローズドβテスト),10月に開催されたブラッシュアップ(オープンβテスト)を経て,11月7日より正式サービスが開始されている。なお,ビジネスモデルは,基本プレイ料金無料のアイテム課金制となっている。
本作のベースとなっているのは,中国に古くから伝わる娯楽文学作品の「封神演義」。封神演義自体には,道教や神仙思想,仏教などの要素が色濃く反映されており,中国独特の世界観が構築されている。日本でも,封神演義をベースにした創作小説や漫画がいくつか出版されているので,ご存知の4Gamer読者も多いことだろう。
道教,神仙思想などと書くと尻込みしてしまうかもしれないが,本作で重要なのは,主に封神演義に登場する「対立する二つの国家」の存在であり,事前知識などがなくても十分に楽しめる。
プレイヤーは,初プレイ時に「周」「殷」いずれかの国家を選択する。国家による職業の違いはないので好みで選んでも問題ないが,注意すべき点は「1サーバーにつきいずれか1国家しか選択できない」こと。この記事を書いている時点では,一つのサーバーしか稼動していないため,国家を変更するにはアカウント内のすべてのキャラクターを削除するか,別のアカウントを取得しなければならない。この点に関しては,今後のプレイヤー数増加に伴うサーバーの追加に期待したいところだ。
最初に選択可能な職業は以下の3種類で,それぞれ男女がある。また各職業ともレベル10に達して昇級クエストをクリアすれば,二次職に転職できる。
●戦士
高い防御力と生命力,回復力を特徴とした職業。二次職はタンク向きの「金剛力士」と,バフ/デバフに長けた「魔戦士」。
●刺客
攻撃速度の速さを特徴とした職業。二次職は刀剣を使った近接攻撃を主体とする「斬刀客」と,弓を使い遠距離攻撃を行う「弓鬼」。
●術士
各種の魔法を駆使する職業。二次職は,攻撃魔法とデバフに特化した「魔道士」と,ヒーリングおよび状態回復とバフに特化した「道仙」。
主に前衛となる戦士。見た目どおり体力に優れており,また回復力も高い | アタッカーとなる刺客。攻撃速度を生かした素早い戦闘が可能だ | 術士は,二次職で魔法攻撃特化か回復特化に分かれる |
技術(スキル)の習得は,ツリー形式になっている。既得の技術を強化するか,新しい技術を習得するかで悩むところだ。また,各種の能力値もレベルアップごとにプレイヤー自身で振り分ける形式となっている | プレイヤー間のアイテム取引は,露店ではなく委託販売形式で行われる。そのため,販売中でも狩りなどのほかの行動が取れる |
「技術」と「派閥」を利用した戦闘システム
刺客系列の職業では,蓄積された「連携ポイント」が敵のアイコンの周囲に表示される。ここで「連携ポイント消費」属性の技術(スキル)を使えば追加攻撃が発生する |
本作は,キーボードのW/A/S/Dによる移動に対応しているが,それ以外は極めてオーソドックスな,クリックタイプのMMORPGである。したがって,数多くある同タイプのゲームをプレイした経験があれば,操作方法にとまどうことなく,すんなりとプレイできるだろう。
ただし,チュートリアルクエストが用意されているわけではないので,まったくの初心者であれば,事前に公式サイトで操作方法などをチェックしておく必要がある。操作自体はそれほど難しくないとはいえ,過当競争に陥る最近のMMORPGマーケットで新規顧客を増やしていくことを考えると,この点はマイナス要因だといってもよいだろう。
戦闘は極めてオーソドックスだが,職業によっては「技術(スキル)」の使用を促進するようなシステムが存在する。
例えば刺客系列の職業の場合には,「連携ポイント」というシステム(いわゆるコンボ)が用意されており,攻撃技術は「連携ポイント上昇」および「連携ポイント消費」の2種類に大別できる。
まず「上昇」属性を持つ技術の使用に成功すると「連携ポイント」が蓄積されていく。そして「消費」属性を持つ技術の使用に成功すると,蓄積された「連携ポイント」が消費され追加ダメージを発生させるのだ。「連携ポイント」は6段階まであり,蓄積量が多いほど追加ダメージも大きくなる。なお,この「連携ポイント」の使用は敵1体に対してのみ有効であり,複数の敵にまたがって使用することはできない。攻撃対象の選択が重要となるので,対人戦では腕の見せどころとなりそうだ。
また戦士系列には「憤怒ゲージ」システムが用意されており,こちらは攻撃を受けるたびに蓄積していく。最大値に達すると「金剛力士」なら特殊な技術が使用可能となり,「魔戦士」なら自動的に攻撃力と攻撃速度が上昇する。憤怒ゲージのたまりが悪いので,対人戦ではその恩恵を受けづらいものの,なかなか興味深いシステムだ。
残念ながら術士系列には,こうしたシステムが用意されていない。少々さびしい気もするが,もともと術士系列は技術主体の職業であるため,敢えて技術の多用を促すシステムを取り入れる必要はないのかもしれない。
プレイヤーをはじめ,NPCや各モンスターは,7種類ある「派閥」のいずれかに属している。「派閥」間には9段階の友好度が設定されており,プレイヤーとの友好度が低い「派閥」のモンスターはアクティブに,逆に高い場合にはノンアクティブになるといった効果がある。また,この効果はプレイヤー対モンスターの関係だけではなく,モンスター同士の場合にも発生する。したがってフィールド上では「派閥」の違うモンスター同士が殺しあっている場面に出くわすこともあって面白い。対モンスター戦では,そうしたモンスター間の派閥を利用して,危機を脱する(効率良く狩りをする)ことも可能である。
しかし,上記のようなシステムがあるにもかかわらず,戦闘は単調になりがちである。というのも,技術に関しては一旦効率的な組み合わせを発見してしまえばそれを繰り返すだけ,モンスターに関しては各エリアに数種類いるのだが,結局ノンアクティブなどの御しやすいタイプを選んで,数レベルの間ずっと同じものを狩り続けるだけという状態に陥りがちだからである。単純な時間効率で考えると,レベリングはそれほど遅くないはずなのだが,この単調さによって,かなり早い段階で飽きが来てしまう感は否めない。緊張感を高めるために,プレイヤーの各「派閥」に対する友好度変化の頻度を高くして,アクティブ/ノンアクティブの切り替えを早めるなどの調整がほしいところだ。
戦士系列の職業では,攻撃を受けると,自分のアイコンの周囲に表示されている「憤怒ゲージ」が蓄積する | プレイヤーと各「派閥」の友好度の確認。友好度が低い「派閥」のモンスターはアクティブになる | 「派閥」の友好度はモンスター間にも存在する。友好度の低いモンスター同士を近づけると,MPK(対象となるプレイヤーキャラクターにモンスターを押しつけ,殺そうとする行為)ならぬMMK(?)が発生する |
真骨頂は各種の対人戦。12月の攻城戦実装に期待
マップ中央の白で表示されているのが中立地帯。同じく赤は「周」で青は「殷」となる。中立地帯ではレベル50以上のプレイヤー同士でPKが行われる |
さて,本作最大の特徴となるのは,各種の対人戦である。舞台となる大陸は大きく三つに分かれており,西側が「周」,東側が「殷」,そしてその中央が中立地帯となっている。もちろん中立地帯に進出すれば,すぐにでも敵対国家のプレイヤーをPKできる。しかし実際に中立地帯にたどり着くためには,プレイヤーキャラクターがレベル50前後に達していなければならない。まあ,テレポートアイテムを使用すれば低レベルのプレイヤーであっても移動は可能だが,そこまでする必要はないだろう。
したがって当面は,自分の国家内で1対1の「比武」や集団戦の「門派(ギルド)戦」といった対人戦闘を楽しむことになる。これらは当事者同士が宣戦布告および承諾をしあうことによって開始されるため,一方的なPKにはならず,「比武」という言葉に象徴されるとおり,互いの武力を比較するという意味合いが強い。PKを嫌うプレイヤーなら,ずっと自国にいれば安全だ。
一方,RvR(国家戦)は,今のところ運営が不定期に開催するイベントだけである。これは「三仙島」と名づけられた専用のエリアで行われるもので,「周」「殷」それぞれの陣地には「魂石」が配置されている。ルールは,敵国の「魂石」を攻撃して早く破壊したほうの勝利という非常にシンプルなもの。とはいえ,攻守のバランスを考えなければ勝利を掴むことは難しく,団結力とリーダーの統率力が問われる格好の場といえる。
こうした大人数が参加するRvRでは,高レベルのプレイヤーばかりが活躍するものになりがちだが,本作では低レベルプレイヤーでも比較的楽しめる仕様になっている。無論,低レベルプレイヤーが前線に出て「魂石」を攻撃することは難しいが,自国の「魂石」付近で,攻めてきた敵国のプレイヤーを迎撃するのは十分に可能。とどめは刺せなくとも移動速度を低下させるデバフや,毒効果のある技術などで貢献できるのだ。
なお筆者の体験では,10レベル以上差のある格上の敵プレイヤーに対しても,こうした技術が結構な確率で成功していた。低レベルだからといったような理由をつけて諦めるのではなく,「いかにして国家の勝利に貢献できるか」ということを考えれば,どんなプレイヤーでも楽しめるというわけだ。
また今後は,従来のアイテムより効果の高い各種回復薬などの課金アイテムをうまく使った戦略が編み出され,それによって戦局が大きく変化することもありうる。
さらに12月には,より本格的な「攻城戦」が実装される予定となっており,対人戦の幅がより一層広がる。攻城戦は国家内にある関門や城の利権をめぐって門派同士で争う「関門戦」「内乱」と,国家間で争う「国家戦」に分かれている。攻城戦開催のスケジュールや得られるメリットについては,まだ詳細が発表されていないが,実装されればかなりの盛り上がりを見せそうだ。
いずれにしても,本作の魅力は各種の対人戦につきる。単調な戦闘のせいでレベリングが苦痛になるかもしれないが,レベルが上がればそれだけ対人戦の楽しみ方も増えていくはずだ。単純なPKから本格的なRvRまで,さまざまな形式の対人戦を楽しみたいという人は,今後のアップデート内容に期待しつつ,ぜひ本作をプレイしてみてほしい。
中立地帯にはアイテムを使ってテレポートできるが,モンスターのレベルはかなり高い。無理して行く必要はないだろう | 「比武」は,プレイヤー同士の承諾があれば町の中でも行える。くれぐれもほかのプレイヤーの迷惑とならないように気をつけたい | イベントの国家戦で,三仙島の各陣地に配置された「魂石」。攻めるだけでも守るだけでも勝利することはできない |
レベル20のプレイヤーでも,レベル50の相手プレイヤーに一矢報いているのがお分かりいただけるだろうか(「連携ポイント」参照のこと)。低レベルでも戦いに貢献できるため,非常に楽しみの幅が広くなっているのだ | 個人の戦績は,「戦争情報」に記録されていく。しかし数字にこだわり過ぎると,大局の判断を見失いかねない |