― レビュー ―
賛否両論!? ぐぐっとカジュアルになったレインボーシックス第4弾
トム・クランシーシリーズ
レインボーシックス ロックダウン
Text by Gueed
2006年3月8日

※画面写真は開発中のものを使用しています。予めご了承ください。

 

よりカジュアルにフルモデルチェンジ
歴代ファンの物議を醸しそうなシリーズ第4弾

 

空,地面,そしてキャラクターと,投射したり反射したりする光の加減が絶妙で実に美しい,ロックダウンのグラフィックスエンジン。屋内と野外で,まったく違う表情を見せてくれる

 「トム・クランシーシリーズ レインボーシックス」といえば,「多国籍特殊部隊による対テロリストミッションを楽しめる!」という,見る人が見ればそれだけでご飯3杯は食べられそうな,知らない人でも字ヅラから暗視ゴーグルやガスマスクなどが十分想起できるであろう,硬派な特殊部隊アクションのシリーズ。「The Six」(指揮官)のジョン・クラーク率いるチーム「Rainbow」が,国際的犯罪組織と最新兵器で渡り合う,現代戦の最も研ぎ澄まされた部分を描いたタクティカルシューティングである。

 

 いうまでもなく,トム・クランシーが著した原作小説「レインボーシックス」は,読んでおきたい。小説では,SAS,GSG-9,FBIのHRT(人質救出チーム)といった各国の特殊部隊から,エリート兵士を選りすぐって編成されたRainbowの隊員が,事件と聞けば西へ東へ,ときには司令官の娘と結婚して子宝を授かりながら戦う姿が描かれる。これを読めば,各特殊部隊の装備の特徴やラペリング降下で足を折らない方法,突入時にフラッシュバンの爆音から耳を守るコツといった,極めて実用的な知識を得られるはずである。

 

 話を戻すと,本作はそんなレインボーシックスシリーズの第4作。スニーク要素のあるシューティングフェイズ,進入経路とチーム連携を吟味するプランニングフェイズ,リアルなオブジェクトモデリングなど,数ある特殊部隊アクションの中でも最もマニアックなことで知られる同シリーズの最新作だ。

 

 ただ本作は,2005年に発売された同名のXboxタイトルの移植作であり,ベース部分は極めてコンシューマライクだ。PC版における前作「レインボーシックス 3 レイブンシールド」(以下,RvS)の発展系を想像している人は,今すぐ頭を切り換えよう。第4作はPC版の旧3作とはまったくの別物であり,どちらかというと,もともとコンシューマ専用に生み出された「レインボーシックス:ブラックアロー」(以下,ブラックアロー)の系統だといえる。

 

 今回のRainbowのお相手は,ナノテクノロジーで合成したウィルスを用いて,先進国のリーダーを暗殺,政府を転覆せんとする国際的テロ組織GLF(Global Liberation Front)。どうやら彼らは,最終的にNATOのサミットでウィルスをバラ撒こうと企てているらしいということで,強面集団のチームRainbowにお呼びがかかる。
 Rainbowは,チームリーダーであるドミンゴ・シャベスを中心に,パリから地中海沿岸,またサハラ砂漠などを転戦し,GLFのグローバルネットワークを破壊すべく,人質救出や爆弾除去など,それらしい任務を遂行することになる。

 

 あ,ちなみに原作もゲームシリーズも知らない人のためにちょっと説明しておくと,上記のように「ナノテク」や「ウィルス」などの未来的ターム(どちらも現代にあるけど)が頻出するが,本作は現代を扱った作品だ。ブラックアローでは2007年という設定だったので,おそらく本作もそのあたりだろう。ついでにシリーズのファンのためにいっておくと,心臓が発する周波を探知して人の位置を捕捉する,R6ならではのスペシャルガジェット「ハートビートセンサー」は,本作には登場しない。

 

R6で一番楽しいドア前。隊員にドア破壊,フラッシュバン投擲などの指示が出せる。右のポスターは……ゲーム内広告? 本作ではアイアンサイトが使用可能。ちなみにデフォルトではレティクルなし設定で,ゲームオプションでONにできる 室内のグラフィックスクオリティも見てのとおり。ちなみに一番奥の頭の薄い人は,言うことを聞かない人質。撃ちたい

 

やはりこうしたデザートチックな場所こそ戦争モノらしい。砂漠地帯では砂塵が舞い,プレイヤーの視界が遮られる ドア前のコマンドメニュー。ブラックアローにあった,環状で直感的なリングコマンドは採用されていない ミッションの最後はたいがいヘリでの脱出シーン。去り際にミニガンの掃射があったりして,雰囲気は良し

 

 

体で覚えるコンシューマライクな味付け
よくしゃべる隊員達と激しく突入

 

装備選択画面。各キャラクターにステータスはないので,装備は好みで決める。デフォルト装備のチョイスが謎

 ゲームモードは従来のシリーズ作品と同様,シングルプレイモードとマルチプレイモードの二本立て。
 シングルプレイモードは,「ミッションブリーフィング」(ミッション説明)および,「チームアウトフィッティング」(装備選定)を行ってから,「アクションフェーズ」(実戦)に挑むという流れで進む。上記の2項目は無視して,デフォルト設定をいじらぬままアクションフェーズに進んでもOK。とにかく,ミッション開始までの展開が早いのが印象的だ。
 ちなみに,レインボーシックスシリーズのキモと考えられていた「チーム間の連携」という要素は,“コンシューマ版R6”ことブラックアローで,すでにバッサリと省略されており,本作にもない。

 

 ブリーフィングでは事件の背景が語られ,突入から(必要ならば)人質救出までの道筋,そしてヘリでの脱出地点などが,見下ろしマップを用いて説明される。フィッティングでは,シャベスおよびチーム全体の武器やスーツ,各種携行兵器を選択する。武器ラインナップは相変わらず豊富で,ライフル,ピストル,ショットガン,各種グレネードなど,実在かつ現役のアイテムがてんこ盛りだ。ついでにここでチームメイトの装備も見られるが,各兵士に射撃精度や体力といったステータス的な個性はなくなっている。

 

 前作RvSでは,プレイヤーは複数のチーム,複数のキャラクターを操作できたが,今回プレイヤーが操作できるのは,基本的にチームリーダーであるシャベスのみだ。ミッションの参加チームも1チームで,シャベスは,ブリーフィング時にスタンリーから問答無用で指定される三人のお供のみを引き連れて,戦いに挑む。操作する兵士も切り替えられないので,原作通り忠実に再現されたシャベスの刈り上げが見られるのは,ゲームオーバー条件でもあるシャベスの死を迎えたときだけだ。

 

 ただ,スタンリーやジョン・クラークによる隊員選択は,実はストーリーと密接に関わっている。ミッションの担当兵士は真っ当な理由で選ばれるのがほとんどだが,中にはちょっと強引なものもあって,物語中盤でエディ・プライスが堂々と敵に拉致され縛られているのには,まいった。笑いをこらえつつ見事プライスを救出すると,次のミッションから仲間に加わったりして。このあたり「どうなのトム?」という感じ。

 

 ブリーフィングの後,やはり気になるのはアクション面。さすがここはキチンとコンシューマライクにまとまっていて,シンプルなキーアサインで,事前のお勉強もそこそこに,遊んでいると徐々に慣れていける。このあたりの誘導の仕方はさすがだ。

 

 さて,従来のR6シリーズとの最も大きな違いについて検証してみよう。旧3作が“用意されたミッションに,プレイヤーが自由な作戦で挑める”といったスタイルだったのに対して,本作では“各ミッションが一本道のストーリー仕立て”といったスタイルが採用されている。
 「一本道」という言葉にネガティブなイメージを持つ傾向にあるPCゲーマーだが,まあ待ってほしい。従来のR6シリーズが持っていた自由度こそ,ライトゲーマーにとっては取っつきにくさの一番の原因だったはずだ。つまり本作がライトゲーマー寄りの作りであるならば,この選択は当然のものといえる。その“取っつきにくさ”に魅力を感じていた昔からのファン(筆者もそうなんだけど)は,今回は我慢するしかない。とにかく格段に遊びやすく,“面白さ”がどこにあるのかが分かりやすくなっている。

 

 本作はシューティングゲームには違いないが,ノンストップで走りながら撃ち進んでいく,スポーツ系のFPSではない。マップから敵の位置関係を把握し,抜き足差し足で,いやダッシュしてもいいんだけど,とにかく“射撃以外の要素”で戦況を有利にしていくのが基本。
 Spaceバーで移動/偵察などのコマンドを使い分けて,チームメイトが敵の視界と射線から外れるようにうまく誘導してやる。反対側に敵兵士がいるであろうドアの前に立ったら,チームを待機させてコマンドメニューから突入方法を指示。オープン(ドア開閉)→フラッシュ(フラッシュ・バン投げ込み)→クリア(掃討),ブリーチ(爆破)→クリア(掃討)といった各種突入動作で,できるだけ安全に突入を行う。
 ほかにも,ミッション遂行中は開錠や,セキュリティロックの解除など,ところどころで射撃以外の要素に足止めされる。「セキュリティカメラをキチンと停止させないと,敵が蟻のように湧いてくる」といった仕掛けもありに,ちょっとしたオブジェクティブと銃撃戦の組み合わせによって,要所で難度が上がる仕組みなのだ。

 

 基本的なキャラクターの移動速度は,旧作に比べるとずいぶん速く,軽くなった。また,兵士の体力にはヘルス制が採用されているので,CQB(屋内戦闘)以外はある程度の被弾を覚悟して敵の射線に身をさらすシーンが多い。R6らしい“ワンショットワンキルの緊張感”はだいぶ薄れたものの,“初心者でも最後まで安心して遊べるゲーム”になったといえる。

 

 プレイしていて一番気になるのは,R6シリーズで伝統的にあまり褒められたことがない気がするAIだ。
 とくに味方兵士。キチンとフォーメーションは守るしプレイヤーの命令は聞くしと,実際にいたら好感が持てそうな人ばかりだが,少々素直に過ぎる。ドア前で突入命令である「オープン→フラッシュ→クリア」を設定して,自らは別のドアで待機。ズールーコード(実行命令)を発行して,「GO! GO! GO!」と部屋に飛び込んでみたら,仲間はドアに引っかかっていて自分一人きりでした,なんてこともある。「お,やっと入ってきたな」と思ったら,交戦中にプレイヤーの射線に飛び込んできて「フレンドリーファイア!?」と,こちらを仰ぎ見る。アグレッシブさは買うが,もう少しだけ自我があると嬉しい。

 

CQB主体のR6ではドア突入用の戦術が多数用意されている。生死を決めるのは,主にこのドア突入の瞬間だ 三叉路などの特定の場所で使えるSCOUTコマンドを実行すると,兵士が前方の様子を確認してくれる そこかしこから飛んでくるRPGは脅威だ。ただ発射はスクリプトで制御されているので,二発めからは予測できる

 

左から,ナイトビジョン,化学兵器によるダメージを受けたところ,そしてモーションセンサー。本作しかりスプリンターセルしかり,Red Stormおはこの視覚エフェクトはゲームへの没入感と高めてくれる。ちなみにモーションセンサーは,壁の向こう側の人間を察知できるスグレモノだが,バッテリーによる使用制限あり

 

 

ロビーとサーバーブラウザは改良の余地ありか
リスポーン可の設定もできるマルチプレイモード

 

プレイ中のマルチプレイゲームへ接続すると,ご覧の殺風景な画面へ移動する。せ,せめてカメラ固定の観戦でも……,いや,やはり一/三人称視点,俯瞰視点,全部つけてほしい

 本作に搭載されているマルチプレイ用のゲームモードは,「Team Adversarial」「Rivalry」「Retrieval」「Free For All」「Co-op Mission」「Terrorist Hunt」と,なかなか豊富。
 ロックダウンで従来作品のマルチプレイから大きく変わったのは,リスポーンの設定ができるようになった点だ。これはE3 2005の時点から明らかになっていた要素。R6のマルチプレイモードよりテンポを良くし,初心者でも難しいルールを覚えずとも楽しめるよう,デスマッチ色を強くする要素ともいえる。「カウンターストライク」のように,完全なオブジェクティブベースで設計されていないR6だけに,同モードの搭載は嬉しい。
 とはいえ,何度もラウンドを繰り返すような狭いCQBマップなどでは,“リスポーンなしの緊張感”の中で戦いたいというのが本音だ。その場合はサーバーの設定でリスポーンをオフにすればいいだけなのだが,ここに問題あり。

 

 いろいろと書きたいことはあるのだが,要約すると「観戦モードぐらいちゃんと作ってください!」ということ。ついでにいうと,サーバーブラウザとロビープログラムの使い勝手もあまりよろしくない。
 シングルプレイとマルチプレイでキーアサインが異なるのと同様,R6の伝統といえば伝統だが,ロビーはサーバー設定と参加者が確認でき,申し訳程度にチャットウィンドウがついている。「うーむ健在」というか,そんな部分は健在されても困るのだが,サーバーに途中参加した場合も観戦モードはなく,ただ「残りxx分xx秒」という表示と睨めっこさせられるだけである。このあたりは,ほかのゲームを露骨にマネてもいい部分だろうから,難しいことは何も考えず最低限の機能だけサクッと実装してほしい。パッチなどで対応できないのかしら。

 

 さて,シングルプレイ,マルチプレイ共に,ゴーストリコンシリーズと同様のカジュアル化が進むR6シリーズ。PC版の前作であるRvSの系統は,今後復活することがあるのだろうか。ただ前向きに捉えれば,おそらくブラックアローも本作も,まだまだレインボーシックスにとっては間口を広げるフェイズなのだろう。

 

 確かに本作は,“RvSの系統”に固執して考えると不満も出るが,“リアル系とスポーツ系の中間に位置するFPS”としては,かなりバランスのとれたタイトルである。シチュエーションへの没入感とシューティングの爽快感をバランスよくミックスした本作は,本シリーズを遊んだことのない人に勧めるには打ってつけともいえる。グラフィックスはキレイだし,操作もシンプルだ。逆にシリーズのファンは,どこまで心を切り替えられるかにかかっている。ローグスピアやRvSとは別物なのだ,と。

 

 この作品を遊んだ初心者が,時代をさかのぼってRvSやローグスピアを遊びたいと思い,そっち系統の魅力に目覚めてくれるといいなあと願っている。

 

製品版でマルチの準備画面を撮影。「Assault」「Sniper」「Recon」「Demo」という兵科,Rainbow側では,お馴染みの隊員が選べる こちらの2枚も製品版から。マルチプレイで使用する専用のキャラクターを作成できる。体つきや髪の色,パッチ用の国旗,また顔の細かいパーツまでが選べるのがミソ。鼻の大きさとか頬骨の出具合とか,ゲーム中にここまで見られる気がしない作り込みもミソだ

 

体験版より。ちょうどリスポーンを待っているところ(あと3.1秒)。カメラは固定で,誰もいないと寂しい キャラクターの移動スピードも上がり,マルチのテンポが非常に良い。スポーツライクなのは喜ぶべきだろうか…… Team Adversarialはチームベースのオブジェクティブマッチ。画面は,監視カメラを解除しているところ

 

タイトル Best Selection of GAMES トム・クランシーシリーズ レインボーシックス ロックダウン 日本語マニュアル付英語版
開発元 Red Storm Entertainment 発売元 フロンティアグルーヴ
発売日 2007/02/02 価格 3990円(税込)
 
動作環境 N/A

(C)2005 Red Storm Entertainment. All Rights Reserved. Ubisoft, the Ubisoft logo, and the Soldier Icon are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries. Rainbow Six Lockdown, Red Storm, and the Red Storm logo are trademarks of Red Storm Entertainment in the U.S. and/or other countries. Red Storm Entertainment, Inc. is a Ubisoft Entertainment company.

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