― レビュー ―
生誕10周年を迎えた本格派プロ野球シム
戦略プロ野球2006
〜響け歓声,届け感動〜
Text by キーオ林
2006年7月21日

 

■ペナントレースを長期的視野で勝ち抜け!

 

試合中の画面は固定で,カメラが打球を追う,クロスプレーでアップになる,などといった仕様はない。最近のゲームとは思えないほどの地味めなゲーム画面ではあるが,ちょこまか動く選手が可愛らしく,これはこれで味がある

 視聴率低下により,関東地方では地上波による巨人戦中継が全試合は行われなくなってしまうなど,最近,人気が凋落しつつあると言われるプロ野球。しかしこの春の,結果として日本代表が見事に優勝したWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)はかなりの高視聴率を記録しており,まだまだ野球人気は衰えていないと思う。
 そんなプロ野球が熱くなる季節といえば,やはり夏だ。7月中旬現在,セ・パ両リーグ共に上位チームによる激しい首位争いが行われており,残り約3か月になったペナントレースがどう展開するか,予断を許さない状況にある。

 

 6月29日,「戦略プロ野球2006〜響け歓声,届け感動〜」(以下,戦プロ06)が発売された。システムソフト・アルファーが毎年発売している本格派プロ野球シミュレーションゲームシリーズの最新作である。変化の激しいプロ野球のシステムを新作リリースのたびに反映させ,さらにインターネットを使って最新のデータを配信するという手法を取り入れたことなどで注目された本シリーズも,今年ではや生誕10周年。現状,今年唯一の国産PC版プロ野球シムということで,本作の発売を心待ちにしていた人も多いのではなかろうか。

 

 戦プロ06は,豊富かつ緻密な選手データとペナントレースの息詰まる展開がセールスポイントで,アクションの要素は一切ない。基本的には,一人の監督としてチームを指揮し,130試合以上の長いペナントレースを乗り切り,最終的にチームを優勝へと導くのが目的である。ペナントレースを乗り切っていくには,目先の一勝をもぎ取るだけではなく,長期的な視野で戦っていくことが要求される。
 日本プロ野球機構の正式許諾を得ており,12球団に所属する約800名もの選手がすべて実名で登場する。また,試合が行われる各球場も忠実に再現されており,阪神と楽天の交流戦用のユニフォームまで収録されているなど,徹底的に細部までこだわっているのが本作の大きな特徴だ。
 とはいえ,いくら外観にこだわっても,肝心なゲーム部分がおろそかになっていてはどうしようもないだろう。では,戦プロ06の野球シミュレート部分はどのようになっているのかについて分析していきたいと思う。

 

さすがは日本プロ野球機構の許諾を取っているだけあり,各球団のホームグラウンドがきっちり再現されている。フルキャストスタジアム宮城の外野席増設やスカイマークスタジアムの芝目の変更なども再現。2005年度版と見比べるのも面白いかも

 

試合の結果はスポーツ新聞風になっている。かなりの種類があるが,どれも実際のスポーツ新聞のパロディ風だ 公式サイトでは,オリジナルのチームを配信中。プレイヤーの作ったチームもアップされる予定のようだ 画面だとちょっと分かりづらいが,楽天の交流戦用ユニフォームもしっかりと再現されているのだ

 

 

■挙動に不審な点はないが,采配には疑問アリ?

 

試合中の采配はそのつどメニューを呼び出して選択しなければならない。それぞれの指示をキーに対応させるなど,ちょっとした工夫があれば,今以上に試合運びがスムースになっただろう

 本作にアクション要素はないが,試合はリアルタイムでさくさく進行する。あんぐり口を開けてぼんやり見ていると,たちまち自軍が大ピンチに陥ってしまったりするので,やはり監督としては要所要所で適切な指示を出さなければならない(まぁ,何もしないでも,もの凄い勢いで打線が爆発して勝っちゃう試合とかもあるけど)。
 というわけで,4Gamerでは初レビューとなるシリーズでもあるし,戦プロ06の試合の様子について,シリーズ全般を通じてとくに変更がない部分も含め,ざっと紹介していくとしよう。

 

 監督が出せる攻撃の指示は「セーフティバント」「ウェイティング」「一発を狙え」「送りバント」「盗塁」「スクイズ」「エンドラン」「バスター」「まかせる」の9種類。そして守備時,投手へは「長打警戒」「一球外す」「敬遠」「走者警戒」「全力投球」「まかせる」の6種類が,守備への指示は「左シフト」「右シフト」「長打警戒」「バント警戒」「前進守備」の5種類がある。それぞれがどのような内容なのかは言わずもがなだが,果たして,このコマンドを多いと見るか少ないと見るか?

 

 個人的には走者が二塁にいる際にライト方向に転がして進塁打を狙わせるコマンドや,守備時にランナーが一塁にいるとき,ダブルプレイを取りにいく中間守備コマンドが欲しい気がする。現状のコマンド数でも試合を進めるには十分だとは思うが,とくに進塁打コマンドなどは,それがないために,せっかくのチャンスで打つ手がなくなっちゃったりして(ランナー二塁からのヒットエンドランは,打者が空振りすると一瞬にしてチャンスが潰えるため,大事な場面では使用しづらい),監督として実に歯がゆい思いをしたことも一度や二度ではないのだ。本格派プロ野球シムとしては,ぜひとも次作以降で盛り込んでもらいたい要素である。

 

 また,上記コマンド以外にも,ストライクゾーンを9分割した配球スコープから,ピッチャーが次に投げる球を指示したり,打者に絞り球を指示したりできる。筆者は打者の絞り球のほうはあまり使わなかったが,ピッチャーへの配球指示は大いに活用している。現実のプロ野球でも監督などがベンチから配球の指示を出すこともあるし,これはなかなか面白い試みだと思う。次は直球勝負だ!

 

 試合中の選手やボールの挙動には,とくに不自然な点は見当たらない。たまに外野手前のヒットなのにランナーが二塁まで進んでしまうケースがあるが,これは外野の選手の肩力の数値が弱いのが原因である。肩が弱いと強めの内野ゴロでもゲッツーが獲れない場合があり,これはかなり重要なパラメータといえそうだ。

 

 打球のパターンはちょっと少ないようにも感じられたが,許容範囲だと思う。また,ランナーがいるときの牽制球の概念もないようだが,おそらくは,それを入れると試合時間が長くなり過ぎてしまうために割愛されたのだろう。この手の野球シムでは,牽制球の要素が入っているほうがむしろ珍しい。

 

 選手はいいが,CPUの采配には若干の問題があるようだ。例えば,デフォルト設定のままで試合をすると,投手交代のタイミングがやたらと早い。現代のプロ野球は投手の分業化が進み,先発,中継ぎ,抑えがしっかり固定されているチームが多い。そのため,継投のタイミングがある程度早いのは分かる。それにしても,先発ローテーションの投手が各球団で決まっているにもかかわらず,1シーズンを通して規定投球回数に達する先発投手がリーグ全体で10人にも満たない状況は,やはりバランスに問題ありと言わざるを得ない。
 一方で中継ぎ投手の中には,連投でスタミナ値が相当に減っているにもかかわらず,毎試合のように登板させられる投手も出てくる。ヘタをすれば,先発ローテーション投手に規定投球回数に達する選手が一人もいないのに,規定投球回数をオーバーしてしまう中継ぎ投手が出てきそうな勢いだ。実際のプロ野球でそういうことが絶対に起きないとは言えないが,やはり現実味を若干欠いていると指摘されてもおかしくはないだろう。

 

 そのほかにも,1アウトからの送りバントの頻度が高かったりするなど,高校野球ならまだしもプロでは……,といった采配がちょっと目につく。こうした不自然な采配を減らすには「監督設定画面」で各球団の監督設定を変更すればいいだけの話だが,采配がキモとなるゲームであるだけに,あらかじめ,もう少し調整しておいてほしかった。

 

配球スコープを使って投手をリード。打者ごとに得意/苦手なコースや球種は設定されていないようである ピッチャー交代も監督の重要な仕事。調子や相手の打順なども考え,適切なリリーフを送り出そう CPUの監督采配は序盤,中盤,終盤,延長で傾向を変えてセッティングできる。なるべく不自然な采配はなくしたい

 

投手交代のタイミングが早すぎるため,規定投球回数に達している投手がかなり少な目になっている 試合中にも選手の成績を見ることができる。最近5試合の成績も表示されるので,選手交代の参考にするといいだろう 打者成績はOPS(出塁率と長打率とを足し合わせた値)までもが表示される。細かなデータ好きにはうってつけだ

 

 

■ゲームの楽しさが増したGMモード

 

GMモードでは球団の資金限度額によって契約延長と途中解任の条件が異なってくる。年俸の低い選手を中心メンバーとして戦っていけば,資金限度額は低めでもOKだ

 ゲームモードは通常の公式戦のほかに,GMモード,オープン戦,プレーオフ,日本シリーズ,トーナメント(6球団によるものと12球団によるものの2種類),戦プロクイズがある。ここで紹介したいのは,戦プロ06から新たに加えられたGMモードと戦プロクイズだ。

 

 GMモードはその名の通り,ジェネラルマネージャーとして球団と契約をし,シーズンを戦っていくというものだ。通常での公式戦は1シーズンのみだが,GMモードでは3シーズン戦い,さらに成績によっては5シーズンまで任期が増えることになる。また,逆にチームの成績が低迷した場合には,任期の途中で解任される場合もある。
 試合の指揮を執るだけの通常モードとは違い,GMモードでは球団の運営資金の範囲内での選手の調達,解雇などが可能になる。また,選手は試合を通じて経験値がアップし,能力が上がったり,逆にケガや衰えによって下がったりする。
 GMモードにおける選手の能力アップダウンはかなり激しい印象がある。選手の能力値が最大になると「S」の文字が付くが,伸ばす能力を絞ることで,一つくらいなら短期間で簡単にSになる。最大でも任期が5シーズンなので,成長が悠長だと若手選手や新人が使えなくなる,という判断によるのかもしれない。現実のプロ野球において,あまり長打を打たない選手をいくら鍛えたところで,年間30本のホームランが打てるようになることはあまりなく,この仕様については,人によって好みが分かれるかもしれない。

 

 通常モードの公式戦で采配をこなしていくのも楽しいが,ゲームとしては,GMモードのほうがより面白味が増しているように感じる。新人選手の獲得が,現実のようなドラフト会議ではなく,単にリストからピックアップするだけであるなど,やや味気ない面も残っているので,次回作以降もこのGMモードを継承し,さらに進化させてほしいと願っている。

 

 戦プロクイズはその名の通り,野球のクイズに答えていくモードだ。主にルールに関する問題が多いが,プロ野球ファンであれば,クリアするのは決して難しくない内容である。時間もそんなにかからないので,軽く息抜きしたいときなどにちょうどよい感じだ。淡々と問題が出されるだけでなく,9回裏,9点ビハインドの状態からゲームがスタートし,問題に正解すると,その問題の難度に合わせて短打なり長打なりを選手が放ち,逆に不正解だとアウトになる。見事にサヨナラ勝ちを収めればクリアで,ポイントが獲得できる。

 

 このポイントは,GMモードのチーム編成時とオリジナルチームの編成時に,任意の選手に特殊能力をつける場合に必要になる。ちなみに,クイズだけでなく,GMモードの終了時やオープン戦,プレーオフ,日本シリーズ,トーナメントの各モード,およびネット対戦の結果でもポイント獲得が可能である。特殊能力がついている選手とついていない選手とでは,やはりかなり差が出てくるので,なるべく多く獲得したいところだ。

 

 生誕10周年を迎えた戦プロだが,ウィンドウでの起動ができず,必ずフルスクリーンでゲームを行わなければならないなど,「こうだったらいいな」という部分も散見できる。しかしながら,じっくり派のプレイヤーは一球一球を眺めながらコツコツ采配をしていくといったスタイルで遊べるし,逆にせっかちなプレイヤーなら,試合をスキップさせて結果だけを見て楽しむやり方もできたりして,やはり,野球好きなら絶対に遊んでみたいゲームであるのは間違いない。暑い夏の夜はビールを片手に,戦プロ06でじっくり野球観戦,というのもオツなものかもしれない。ちょっとオヤジくさい感じもしないでもないですが。

 

契約の条件とは別に,チーム作りの方針も決める。目標を見事にクリアできればポイントを獲得できる GMモードではキャンプも行われるが,文字情報が伝えられるのみ。主力選手がケガをすることもある ペナント途中で主力選手が負傷して離脱することもあるので,控え選手の層は厚くしておくべきであろう

 

新人選手や新外国人の獲得もGMの仕事。任期を考えると,ある程度即戦力の選手を探し出したいが…… 新モード,戦プロクイズ。野球の形式で進んではいくが,選手交代などはできません,念のため ポイントでつけられる特殊能力にはさまざまな種類がある。しかし必要ポイントは大量で,その獲得は容易ではない

 

タイトル 戦略プロ野球2006〜響け歓声、届け感動〜
開発元 システムソフト・アルファー 発売元 システムソフト・アルファー
発売日 2006/07/06 価格 1万290円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0c),CPU:Pentium III/500MHz以上[Pentium III 1GHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上[256MB以上推奨]),HDD空き容量:700MB以上

(C)2006 SystemSoft Alpha Corporation
(社)日本野球機構承認
NPB BIS プロ野球公式記録使用
フランチャイズ13球場公認

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/senpro2006/senpro2006.shtml