― レビュー ―
撃ちまくりなアイツが3年ぶりに帰ってきた
シリアスサム II
Text by 朝倉哲也
2005年12月28日

 

■Ahhhhhhhhhhhhhhhh! 待ってたぜサム!

 

世の撃ちまくり系FPSファンが待ちに待った,サムシリーズの最新作がついに遊べる! 今年の冬休みはサムで決まりだろう

 世の中に「撃ちまくりFPS」というジャンル(?)を定着させた,最大の功労者ともいうべきシリアスサムシリーズの最新作「シリアスサム II」(原題 Serious Sam II)が,国内でサイバーフロントから12月22日に発売された。
 シリアスサム以前の,「DOOM」「Quake」といったFPSの元祖ともいえる作品の頃から,ワラワラと現れる怪物を撃ちまくるという心躍るシーンはあった。だが,この頃の撃ちまくりというのは,限定されたシーンでの出来事であることが多かった。
 だが2001年,“画面を埋め尽くさんばかりに現れる敵を,ひたすら撃って撃って撃ちまくる”ことに特化したFPSが,ついに登場した。それが本シリーズの第1作となる「Serious Sam: The First Encounter」である。
 底抜けに明るい青空の下,広大な屋外マップを埋め尽くす勢いで現れる敵モンスターを,どう見てもオツムのほうは優秀とは思えない主人公のサム・シリアス・ストーンが,腕っ節にモノをいわせて突き進むという単純明快なゲームは,瞬く間に世界中で大勢のファンを獲得。2002年には続編「Serious Sam: The Second Encounter」も発売され,撃ちまくりFPSのキングとしての座を不動のものとした。
 そして2005年,待望のシリアスサム IIが登場となったわけだ。

 

前作にも増して個性的なクリーチャーが大挙して登場するので,弾の続く限り思う存分に撃ちまくってやろう

 

ブリキでできたオモチャを思わせる,ちょっとレトロなデザインのロボットも登場する かと思えば,ファンタジーでは定番のドラゴンも現れる。こいつはボスの一人 今にも,お腹のあたりのボンデージファッションがはちきれそうな,オバチャン風の悪魔

 

 

■シリーズの特徴を残しつつ,技術的にパワーアップ

 

一度クリアしたステージは,好きなときに選択してプレイできて嬉しい。全42ステージもあるので遊び応えも十分だ

 シリアスサムシリーズの特徴として,「やたら明るい色使いで描かれたグラフィックス」「能天気とか“おバカ”という形容詞がピッタリくるキャラクター」「ストーリーはあるがプレイ中はほとんど気にならない」「とてつもなく広い屋外マップ」などが挙げられるが,シリアスサム IIでも,その特徴はいかんなく発揮されている。

 

 パッと見のグラフィックスは前作と変化がないようにも見えるが,やはり確実に美しくなっている。あいかわらず青空は抜けるように青く,木々の緑とのくっきりとしたコントラストはとても美しい。
 なんでも,今回使用されているグラフィックスエンジン「Serious 2 Engine」は,前作の100倍の3D描画能力に加えて物理演算が可能というスグレモノ。さほど使いみちはないものの,椅子などのオブジェクトを持ち上げたり放り投げたりも可能で,そういった物理処理に頼った仕掛けも,たまーに登場する。

 

 おバカ系キャラクターも相変らず健在だ。主人公のサムからして,脳ミソまで筋肉のような男だが,登場する敵にも一風変わったのが多い。
 一輪車でキコキコと近づいてきて爆発するピエロとか,頭部が爆弾になっているマッチョマンなどというおフザケ系から,頭が恐竜で体がロボット(しかも脚が逆関節で鳥のように歩く)のヤツ,下半身が戦車のようなキャタピラで,上半身は悪魔というSFサイバー系,体が人間で腕が鳥の羽という伝説のハーピーみたいなヤツや,ほうきに乗って空を飛ぶ,とんがり帽子を被ったワシ鼻の魔女といったファンタジー系など,シリアスサム IIはバラエティに富んだ敵が登場する。

 

 ストーリーは,とある世界のバランスを保つ重要な役割を果たしていたメダリオンが,バラバラになって飛び散ってしまったので,それらを集めて世界を救うべく,サムは謎の3人組の力で異世界に放り込まれるのであった。……正直,あってもなくても問題ないようなストーリーだ。実際,シリアスサム IIの(海外,日本を問わず)公式サイトのどこにも,普通あるべきストーリー紹介がないというところからして,このことを雄弁に物語っているといえるだろう。

 

 マップは,ジャングル,沼地,火山地帯,未来のハイテク都市,豪雪地帯などさまざまで,全42レベル用意されている。ゲームの雰囲気は常にステージに左右され,トロピカルなシューティングになったり,SFシューティングになったり,はたまた地獄のようなシューティングになったりと,サムも大忙しである。
 例えば豪雪地帯のマップは,寒さのあまり,一定時間を過ぎるとサムの体力が徐々に下がっていく。さらには視界が氷によって閉ざされ,だんだん見えなくなっていくというオマケもついている。そのため,マップの各所にある避難小屋のような場所を見つけて体を温めねばならないのだ。
 中には時間制限のあるマップも登場する。これは,一定時間以内にチェックポイントまでたどり着かないと,タイムアウトした時点でゲームオーバーという厳しいもので,すべてのチェックポイントを見つけるまで,迷路のようになっているマップを走り回ることになる。当然ながら敵も出てくるので,戦ったり逃げ回ったりしながらチェックポイントを探すこととなり,かなり厳しい戦いとなる。どのステージでも,ただ撃ちまくればいいというわけではなく,いろいろ考えられている。

 

 ……と説明しておいて言うのもナンだが,基本的にシリアスサム IIのプレイに細かいことは何もいらない。プレイヤーがすべきことは,弾を拾い武器を集めて,出てくる敵を撃ち殺して先に進むだけ。まさに単純明快そのものだ。

 

固定砲座も多く登場する。うまく使えば弾薬の節約にもなるし,かなり強力だが,一定のダメージを受けると壊れてしまうので注意

 

爆弾を持って笑いながら突っ込んでくる,一輪車に乗ったピエロ サム最強の武器は,この爆弾。画面上の敵すべてを一掃できる 散らばったメダリオンを集めるため,サムを呼び寄せた謎の3人組

 

 

■プレイのスケールが,少し小さくなった……かな?

 

今回は乗り物も充実している。攻撃も強力なので,ぜひ見つけ出して活用したいところだ

 さて,実際にゲームをクリアしてみての感想だが,正直なところ少し爽快感が足りなくなった気がする。たしかに大量の敵モンスターを,大量に用意された武器弾薬で撃ちまくるという図式はそのままなのだが,なにかこう,今一つノリ切れないのだ。「なぜだろう」と考えていたのだが,ゲーム全体のテンポに問題があるように思える。

 

 シリアスサム IIは,レベルとレベルの間に長めのCGムービーが挿入されるのだが,まずこれが原因の一つとなっていそうだ。英語の聞き取りが得意でない筆者にとっては,この長いムービーを眺めている間に,気持ちの昂ぶりが冷めてしまうのだ。
 また,ワーっと出てきた敵をドッカンドッカンと倒して,ふうと一息つきながら移動しているうちに,次の敵がワーっと来るという繰り返しになるのだが,肝心のこの部分が単調な攻撃に終始してしまい,メリハリがうまくついていないように感じられる。

 

 次に,マップが少し狭めなのも気になった。“はるか地平線の彼方から,豆粒のような無数の敵が走り寄ってくる”という,あの印象的な光景がなくなってしまい,狭いエリアに(といっても普通のFPSの屋外マップよりは広いところが多いが)それなりの数の敵を押し込むことで,敵を多く見せている,という気がしないでもない。
 シリアスサム IIは海外ではXbox版も発売されているのだが,ゲーム全体のスケールが少し小さくなったように感じられる理由は,もしかするとそのあたりと関係しているのかもしれない。シリアスサムの第1作からのファンである筆者としては残念である。

 

 とはいえ,やはり撃ちまくりゲームのキングであることは確かだ。このところFPSの新作というと,リアル志向でスニーク要素が強かったり,クリアするための手順を考えなければいけないようなものが多い。たまにはシリアスサム IIのように,タイトルとは裏腹にシリアスに考えずともよいゲームで,思いっきり暴れまわってみよう。
 サイバーフロントでは,本作と同時にシリーズ第1作「Serious Sam: The First Encounter」と,第2作「Serious Sam: The Second Encounter」も同時発売した。シリアスサム IIを気に入ったなら,必ずやこの前2作も気に入るはずである。値段も安めなので,ぜひ購入を検討してほしい。

 

 もう一つ,忘れちゃいけないのがマルチプレイ。一般的なFPSでは,マルチプレイというとデスマッチやキャプチャー・ザ・フラッグなどの対戦形式が盛んだが,本作では協力プレイ(Co-op)のみ収録されており,これが本作にマッチしていてバツグンに面白い。
 Co-opは,参加するプレイヤー全員が主人公のサムとなって,現れる敵を共に撃ちまくるというもの。あっちでドッカンドッカン,こっちでバリバリと,それはもうド派手な戦闘が随所で繰り広げられる。Co-opには,シングルプレイにはない連帯感と競争心があり,これがゲームを面白くしているのだ。
 死んでしまってもすぐに復活できるし,対戦とは違ってプレイヤー間の腕の差があまり現れないので,オンラインゲームに慣れていない人でも,シングルプレイとあまり変わらない感覚でプレイできる。まだプレイしたことがないというなら,すぐにでも試してみよう。

 

 ところでシリアスサム IIのプレイにあたっては,近所迷惑にならない範囲で,なるべくデカイ音でプレイすることをお奨めする。しけた音でチマチマと撃ちまくるよりは,数段面白さが増すので,ぜひお試しを。

 

5段階に分かれた難度調整で,FPS初心者でも安心。難度を表す絵が笑える 雪原マップでは,あまり長く外にいると画面が凍りついて視界が悪くなる 時間制限のあるマップでは,落ち着いてチェックポイントを見つけよう

 

スナイパーライフルはかなり強力だが,連射できず入手できる弾も少なめ 協力プレイ(Co-op)で,もう一人のシリアスサムと一緒にクリーチャーと戦う 空を飛ぶ敵も多く登場する。サムもオモチャみたいなヘリに乗り込んで応戦だ

 

タイトル シリアスサム II
開発元 Croteam 発売元 サイバーフロント
発売日 2005/12/22 価格 オープンプライス
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以降),CPU:Pentium 4/2GHz以上(Pentium 4/2.60GHz以上推奨),メモリ:256MB以上(512MB以上推奨),グラフィックスカード:GeForce 3&4以上(MXを除く)

(c) 2005 Croteam Ltd. Serious Sam 2, the Serious Sam 2 logo, Serious Engine 2, the Serious Engine 2 logo, Croteam and the Croteam logo are trademarks and/or registered trademarks of Croteam Ltd. 2K Games and the 2K Games logo,A Take2 Company logo, and Take-Two Interactive Software are all trademarks and/or registered trademarks of Take-Two Interactive Software. All other marks and trademarks are the property of their respective owners. Developed by Croteam. Published by 2K Games. All rights reserved.

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