― レビュー ―
3年ぶりに帰ってきた国産コンバットフライトシミュレータ
スーパーエアーコンバット4
Text by Murayama
2006年10月5日

 

システムソフトのフライトシムの歴史

 

本シリーズのオリジナル機体「MI.C.A.D.O」(Multipurpose Intercepter-Computer Assisted Direct Operation)は「4」でも健在

 システムソフトといえば「大戦略」や「天下統一」というイメージが強いが,実はフライトモノの開発にも長い歴史を持っている。ここで紹介する「スーパーエアーコンバット4」のルーツを探ると,1985年にリリースされた「立体版遊撃王」にたどり着き,システムソフトは実に21年間に渡ってフライトシムをリリースしてきたことになるわけだ。
 途中でレシプロ機をテーマにした「零戦記」などもリリースしているが,基本的にはエアーコンバットシリーズがメインとなっている。これは余談だが,「立体版遊撃王」の開発に携わっていた時枝敏也氏が,同作の開発にあたって3DCGツールを探していたが,どうも好みに合うモノが見付からず,結局自力でツールを開発した。実はこれが3DCGツール「Shade」の始まりというのも,実に興味深いことである。

 2006年9月22日,最新作の「スーパーエアーコンバット4」がリリースされた。先に断っておくが,本作はフライトシムとしては初心者向きの内容なので,本格派のフライトシムを期待すると落胆することになるが,ケレン味たっぷりの演出や攻略心をくすぐる要素など,システムソフトらしさが満載の作品だ。さっそく紹介していこう。

 

■システムソフトのフライトモノの歴史

  • 1985年 立体版遊撃王
  • 1989年 エアーコンバット 遊撃王II
  • 1991年 エアーコンバットII
  • 1991年 エアーコンバットII シナリオ集Vol.1
  • 1992年 エアーコンバットII シナリオ集Vol.2
  • 1992年 エアーコンバットIII
  • 1993年 零戦記
  • 1997年 スーパーエアーコンバット
  • 1997年 スーパーエアーコンバットII
  • 2000年 スーパーエアーコンバットIII
  • 2004年 戦闘妖精雪風〜妖精の舞う空〜
  • 2006年 スーパーエアーコンバット4

 

オープニングのワンシーン。離陸,地対空の戦い,爆撃などのシーンが展開される。爆発などの演出がハリウッド映画のようで過剰な感じだが,戦闘機の魅力をよく伝えており,これからの戦いに期待感がふくらむ内容となっている

 

今回は12種類の機体が登場する。垂直離着陸機なども含まれており,機体ごとの挙動の違いも再現されている 出撃前には武装を選ぶ。といっても細かい設定などはなくパックを選ぶ感じ。初心者にも分かりやすい内容だ 敵にロックオンされると警告してくれる。ECM(チャフ/フレアのことだろう)を使用して,ミサイルを回避せよ

 

 

キャンペーンモードを攻略して新機体をゲット

 

ミッションブリーフィングはアニメ調のCGと音声によって行われる。やや子供っぽい感じもするが,これはこれでいい

 本作では,キャンペーンモードの「STORY」,ひたすら撃墜していく「ARCADE」,23種類の操作が学べる「TUTORIAL」といった3種類のゲームモードが収録されており,難度はNORMALとHARDの2種類が選択可能。メインとなるのはSTORYで,これはイスラム過激派およびその敵の紛争地帯と化した,20XX年の中東全土を舞台にしたシナリオが楽しめる。激化する紛争地帯の混乱を収拾するために,国連は私設軍隊を持つ企業に呼びかけ,私設軍隊GFP(Global Private Forces)を編成して投入することを決定した。しかし中東には統一朝鮮と中国が侵攻を開始しており,紛争はさらに激化の様相を呈していた……。というのがバックストーリーだ。

 STORYは「ブリーフィング」→「ミッション攻略」の繰り返しで進行していく。システムソフトらしいと思わされたのは,この手のフライトシムは基本的にストイックで,ブリーフィングなどはさらっとしたものが多い中,本作では国産らしくアニメ調のキャラクター(教官)が登場して,ケレン味のあるブリーフィングなどが楽しめる点。フライト開始時や終了時にも僚機から通信が入って茶化されたり,仲間同士の掛け合いが音声で行われるなどの点は良い。シミュレーションというよりも,ゲームらしさを押し出した作りになっているといえる。
 操作は非常に分かりやすく,テンキーで機首の上下/左右,AとSでエンジン出力の調整,Spaceバーでミサイル,Shiftキーで機銃,Bでエアブレーキ,Ctrlキーでターゲットの変更,Wで武器の変更などといった感じ。パッドなどにも対応しているのはありがたい。

 最初に搭乗できる機体は,F-16CとEF2000のみ。だが,シナリオが進むと新しい機体が使えるようになる。機体は全部で12種類(F-16C,JAS39,Rafale M,EF2000,F-15C,AV-8B+,F/A-18E,F-2,F-35C,F-35B,F-22A,MI.C.A.D.O)で,本シリーズのファンなら大喜びのオリジナル戦闘機であるMI.C.A.D.Oが,今回もちゃんと登場するのは嬉しいところだ。さらに各機体には,ペイントが異なるシークレット機体もあるようだ。
 ちなみに一度クリアしたステージは,何度でもやり直せるので,再度チャレンジしてハイスコアを叩き出したり,文頭で紹介したアーケードにチャレンジしたり,新機体の挙動や運動性能を楽しんだりするのもいいだろう。

 

ミッションの進行によって増える機体。すべての機体を出現させたい。あえて低い能力の戦闘機に乗り換えるのも面白い

 

輸送機を守るシナリオや敵艦船を相手に戦うシナリオなど,さまざまなシチュエーションが用意されている ミッション終了後には,飛行ルートや敵機の撃墜ポイントが表示される。これを見て次の戦いに役立てよう リプレイデータを保存して,あとから閲覧する機能もある。いろいろなアングルで機体を眺められるのだ

 

 

“飛ぶことの楽しさ”を教えてくれた

 

機体などのテクスチャは少々粗い。今のPCであれば,もっと精度の高いデータを扱うことも容易に思えるのだが残念

 フライトシムとして評価すると,本作は少々物足りないように思えた。どちらかというと本作は“フライトシム風味の3Dシューティング”といった感じで,飛ばすこと自体の難度は非常に低い。
 燃料が尽きているのに5分以上も飛び続けて,敵機を撃墜して帰投可能,高度計が「m」,速度計が「km/h」表示(高度と速度表示はオプションで変更可能),爆発のエフェクトが派手すぎ,敵機に対してミサイルを複数同時に発射できないなど,フライトシムとしては明らかにおかしな部分もある。
 といっても,本作にフライトシムの難度を求めるというのは,ひょっとしたらナンセンスかもしれない。というのも同シリーズは,昔からフライトシムとしてのリアリズムや難しさは追求しておらず,誰もが気軽にフライトシムの雰囲気を味わえるというテイストを追求してきたからだ。だから離陸や着陸も非常に楽で,離陸は成功すれば画面はブラックアウトして戦場に到着しているし,ミッションが終了するとブラックアウトして着陸寸前の画面に切り替わる。あとはエアブレーキで速度を落として,ギアを下ろし進入角度さえ間違えなければ,らくらく着陸完了だ。
 さくさく展開するので,全体的にプレイのテンポはかなり速い。これが本格派のフライトシムだと,空港と自機の角度が合わなくて,空港の上空をグルグル飛んだあげくに燃料切れで墜落といったこともあるわけで,こうしたお手軽感こそエアーコンバットシリーズの大きな特徴である。「4」をプレイしたときに,「エアーコンバット節」を感じてしまったのは筆者だけではないはずだ。
 実は筆者は「エアーコンバット 遊撃王II」でフライトの面白さに目覚め,自信満々に本格派フライトシムに挑んで凹んだ経験がある。今となっては本格派のフライトシムでも楽しめるようにはなったが,その今があるのは“飛ぶことの楽しさ”を教えてくれた本シリーズがあったから,といってもいいだろう。「4」をプレイして同好の士が生まれてくれれば幸いだ。

 

地上物として登場するのは,空港,敵基地,敵兵器のみ。雰囲気だけでもいいので,地上オブジェクトがほしかった 空母での発着もある。ちなみに高度計がメートル表示なのは,ビギナーには逆にありがたい? 三人称視点でのプレイも可能。こうなるとフライトシムというよりも3Dアクションといった印象がより強くなる

 

離陸は簡単。出力を最大にして,機首をちょっと上げるだけでよい。横風にあおられるなどの要素はないようだ 接近戦はほとんどない。基本的にミサイルの応酬とECMによるミサイル妨害がほとんど。ここまで近付くことは稀 プレイ中の視点変更は前後左右の四か所。レーダーだけではなく,ときには目を使って敵を確認することも重要だ

 

 

グラフィックスの品質向上が今後の課題

 

 最後にいくつか要望を。すべてのフライトシムがこうなっては困るが,中にはこういうスタイルのものが一つくらいはあってもいいと思う。誰もが楽しめるお手軽フライトシムという路線は,このまま続けてもらいたいものだ。
 しかし本シリーズに課題があるとすれば,グラフィックスだろう。今日のフライトシムは,ハイスペックなPCであればため息が出るほどの高画質で,ロースペックのPCであれば低画質で快適なフライトを……というのが定番なのだが,本作の画質に関してのオプションが,起動時に解像度と,シャドウやフルスクリーン表示のオン/オフだけというのは,ちょっと寂しいものを感じる。
 また全体的に,モデルやテクスチャなどが高精度ではないため,地表や海面がぼやっとしていて距離感がつかみづらいという難点もあった。ぜひ次回作では,スペックに合わせた画質で,迫力のフライトや空中戦を体験させてもらいたいものだ。景色や戦闘機のディテールなど,「見た目」を楽しむのもフライトシムの楽しみの一つなのだから……。
 それからもう一つ。ぜひともネットワーク対応にしてもらいたい。ほかのフライトシムでもマルチプレイに対応しているものは増えていることだし,ぜひ本シリーズでもマルチプレイを取り入れてもらいたいものだ。ミッションなどで僚機が登場するのを見ていると,友達と一緒に飛べたら……と思うのは当然だろう。
 現状フライトシムというと,海外のものばかりで国産はごく少ない。だからこそ本シリーズには頑張ってもらいたいのだ。これまでの本シリーズの流れを考えると,フライトシムとしての精度は追求しなくてもよいが,せめて画質や迫力の面で海外のフライトシムに追いつき追い越す努力をしてもらいたい。なかなかに難しいことだと思うが,ぜひとも高い志を持って次回作の開発に乗り出してほしい。

 

 

タイトル スーパーエアーコンバット4
開発元 SSアルファー,アクアシステム 発売元 システムソフト・アルファー
発売日 2006/09/22 価格 1万290円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/ME/2000/XP,CPU:PentiumIII/1GHz以上(Pentium 4以上推奨),メインメモリ:128MB以上(194MB以上推奨),グラフィックスメモリ:64MB以上

(C) 2005 SystemSoft Alpha Corporation

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http://www.4gamer.net/review/sac4/sac4.shtml