― レビュー ―

レビューコンテスト藤 瑞樹さん作品

藤 瑞樹さん 「R2BEAT」

2006年11月2日

※レビューコンテストの性質上,エントリー原稿をそのまま掲載します。ただし,諸般の事情により4Gamer編集部で,必要最低限の修正を行っている場合がありますので,ご了承ください。

 家庭用の「パラッパラッパー」,アーケードの「ビートマニア」から始まった,いわゆる「音ゲー」。基本的なルールは,流れてくるリズムや音楽に合わせてタイミングよくキーを叩くという単純なものだが,うまくクリアできたときの達成感はひとしおで,短時間でも気軽に楽しめる点から,一時期は音ゲーブームも巻き起こった。
 現在,音ゲー人気は一段落し,このジャンルが好きな一定数のユーザーにより支えられているという印象はあるが,プレイしたことはなくても,ゲームの1ジャンルとしての「音ゲー」といえば,聞いたことのある人も多いのではないだろうか。

 

 

音ゲー+レース=???

 

買い物が楽しいショップ。コーディネートのセンスが問われる?

 さて,今回紹介するのは,その「音ゲー」に,なんとレースゲームの要素を加えたという「R2BEAT」だ。
 公式サイトでは「走りながら演奏する新感覚音ゲー」と謳っているが,簡単にいうと,障害物競走で避ける操作がリズムに合わせてキーを叩く操作に相当し,タイミングが合うと,それがBGMとして流れている音楽と一体化して演奏となる,といった具合である。
 確かに「新感覚」という言葉どおり,「R2BEAT」は筆者が知っている今までの音ゲーとは相当違っている。今までの「ビートマニアタイプ」の音ゲーは,基本的な画面のレイアウトや操作感覚などは正直模倣の域を出ていなかった。ところが,「R2BEAT」は画面だけ見れば音ゲーだということが分からないくらいに,既存のイメージから解き放たれている。
 もちろんゲームではアイデアが新しいということ以上に,遊んで面白いかが一番重要なのだが,最初にプレイした際の印象も決して悪くはない。走るという行為のスピード感に加え,障害物を避けるという動作が,自然にリズムに合わせてキーを叩くという操作にマッチして,うまく演奏となったときの達成感は既存の音ゲー以上といえるかもしれない。
 さて,オンラインでレースの要素があるとなれば,当然ほかのプレイヤーとの対戦プレイということになるわけだが,「R2BEAT」には二つの対戦モードが用意されている。
 一つめは「アイテム戦」。レースの途中に出現するアイテムをうまく使うことによって,ライバルを邪魔したり,ライバルからの攻撃を防御したりといった駆け引きを楽しめるモードだ。アイテムの要素(後方のプレイヤーに有利なアイテムが出やすい)が適度なハンデとなり,上級者から初心者まで一緒になって遊べる,「R2BEAT」イチ押しのモードである。
 そしてもう一つは「スピード戦」。こちらは,不確定な運の要素は一切なく,純粋に決められた譜面を正確に叩けるかどうかを競うモードだ。だが不確定要素がない分,数回一緒に走れば腕前からレースの結果もほぼ見えてしまうため,対戦としてこちらのモードを遊び続けるプレイヤーはそう多くはなく,もっぱら練習用のモードとして使われる。
 そして,この二つのモードにはそれぞれ「個人対戦」「チーム対戦」というモードが用意されているので,厳密には四つの対戦モードがあるということになる。  そのほかに,一人でじっくり練習が行えるトレーニングモードも用意されているので,いきなり対戦プレイは不安だという初心者も安心してほしい。

 

 

今までになかったチーム対戦が熱い!

 

トレーニングモードのシングルプレイ。これだけでも音ゲーとしては十分遊べる

 それでは対戦の各モードについてもう少し詳しく紹介してみよう。
 スピード個人戦は,一人用のトレーニングモードと基本的に同じプレイができるので,事実上の練習モードとして多く利用されている。
 それに対して,アイテム個人戦はいま一つ人気がない。筆者はその理由として,結果が運の要素に左右され過ぎるからではないかと感じている。
 例えば最大人数の6人で走った場合,大量の攻撃が飛び交うこととなるのだが,比較的防御アイテムの出る確率が高いTOPを走っている場合以外は,流れ弾の爆弾や,強力な全体攻撃アイスロックを成す術もなく食らう場合が多いのだ。
 その結果,レース中にアイテムをうまいタイミングで使ったかどうかより,ライバルからアイスロックが来たときに,防げるアイテムを持っていたかどうか,という点だけで勝負が決まってしまう場合が実に多い。これが「運次第」と言われるゆえんである。

 

月チャンネルの曲を練習する時はRコインを消費する

 さて,今までの音ゲーとは一味違った協力的なプレイを楽しめるのが,これから紹介するチーム対戦だ。
 スピードチーム戦では,個人戦で使えるブースト(一定時間加速できる)のほかに,チームブーストが使えるようになっている。これにより,コンボが繋げられる上級者のチームであれば,個人ブーストが終わったら即チームブースト,そしてその後またすぐに個人ブースト……,といった感じで連続ブースト使用によるスピード感溢れるレースが楽しめる。
 ただしある意味,個人戦以上に腕前の差がはっきりと結果に出てしまうため,まずチーム同士の実力バランスがよほどうまく取れていないと,対戦としてはつまらなくなってしまう。さらに,スピード戦の性質上,自分のミスが即チームの足を引っ張ってしまうという結果につながるため,初心者が気軽に参加できるとは言い難いのが残念なところだ。
 一方,「R2BEAT」の売りともいえる,アイテムチーム戦。こちらはシビアなスピードチーム戦とは違い,多少のミスをしても即チームの足を引っ張るということにはならず,上級者から初心者まで,自分の腕に合わせてチームに貢献することができる。ここが人気のある一番の理由だろう。
 そしてアイテムチーム戦をプレイしていて感じるのが,結果としての勝ち負けよりも,レース中のアイテムの駆け引きが何より楽しいということだ。爆弾をうまく狙って相手チームのTOPを引きずり下ろしたり,TOPだが防御アイテムがなくピンチのときに,味方がアイスロックをうまく治療してくれたり,と目まぐるしく変化するレース展開に,退屈する暇もない。これが,例え負けても,もう1回,とプレイしてしまう原動力となっている。

 

 今までの音ゲーでは,どんどん難しい曲に挑戦する,という楽しみ方しかなかったのが,「R2BEAT」では音ゲーとしてのキーを叩く楽しさはそのままに,アイテムチーム戦でさまざまなプレイヤーと協力したり対戦を楽しむことができる,という部分が非常に画期的なのだ。
 もちろん今までの音ゲーでも,対戦モードがないわけではなかったのだが,同時にプレイしている意味があまりなかったり,ある程度腕の差があれば結果が始めから見えていてしまったりと,繰り返し遊ぶような対戦ゲームとしては物足りないと言わざるを得なかった。
 それが,レースにアイテムという要素を取り入れることにより,レース中に何が起こるか分からない緊張感が生まれ,そしてチーム戦という要素により,たとえ個人戦では勝てない腕前であったとしても,アイテムを使うタイミング次第では十分にチームに貢献することができるという楽しみが生まれたのだ。このアイデアは大いに評価したい。

 

 

今後のバランス調整に期待

 

人気のアイテムチーム部屋が並ぶ。Rコインが多く稼げるのも魅力の一つ

 さて,ここまで見てきたが,もちろん現在の「R2BEAT」に不満点がないというわけでもない。筆者が一番問題だと感じたのは,メインコンテンツだと考えられるアイテムチーム戦において,アイテム出現確率のバランス調整がまだいま一つだという部分だ。
 アイテム戦において,レース中負けているプレイヤーが逆転しやすくなるように,後方を走っているプレイヤーに「強力な」当たりのアイテムが出やすくなるというのは,自然なゲームデザインだ。ところが,チーム戦においては,現在チームが勝っている(チームメンバーの1人がTOPを走っている)状態であっても,そのチーム内のほかの一人がわざと転ぶなどして後方に下がることにより,「チームが勝っていて,なおかつ強いアイテムを狙う」ことが簡単にできてしまうのだ。
 いわば初心者救済のために出る,強いアイテムを狙いにいく作戦というところだが,誰でも簡単にできてしまう割に効果がかなり高いため,この作戦を使わないチームにとっては釈然としないところが残る。そして,この作戦を使うと途中のアイテムの細かい駆け引きなどの部分を無視した,強い効果のアイテム頼みのレース展開となることが多いため,アイテム戦自体が,運がすべてのゲーム,という印象となっている。
 このアイテムバランスの部分さえうまく調節すれば,単なるカジュアルゲームとして終わらない,シンプルだが奥の深い駆け引きが楽しめる対戦ゲームとなれるポテンシャルを秘めている,と感じるだけに,非常に残念な部分だ。
 適度な運の要素は,麻雀やトランプ,バランスのよいカードゲームなどに見られるように,何度も繰り返し遊ばせるモチベーションとなり得る。しかし運の要素が濃くなり過ぎると,ゲーム自体の底が浅くなり,結果としてゲームの寿命が短くなってしまう。
 カジュアルゲームだから底は浅くてもいい,ではなく,とっつきやすいけどすぐに飽きることなく遊び続けられる,腕を磨けば磨いたなりの高度な駆け引きが楽しめる,そんな練りこまれたバランス取りを運営には期待してみたい。

 

TOPなのに3連続で防御アイテムを引けず……平和に見えるが,かなりのピンチ! 1発で勝負を左右するアイスロック。レース展開によっては乱発されることも

 

 

タイトル R2BEAT(旧題RnR)
開発元 Seed9 Entertainment 発売元 NeoWiz Japan
発売日 2006/10/15 価格 基本無料(アイテム課金)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/500MHz以上[Pentium 4以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce 2またはRadeon 7200以上[GeForce 4またはRadeon 8500以上推奨],グラフィックスメモリ:16MB以上[64MB以上推奨],Windows Meでは動作が不安定になる場合あり

(C)2002-2007 Neowiz Japan Corporation., All rights reserved.
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