meuniereさん作 「マビノギ」
2007年8月10日
※レビューコンテストの性質上,エントリー原稿をそのまま掲載します。ただし,諸般の事情により4Gamer編集部で,必要最低限の修正を行っている場合がありますので,ご了承ください
MMOでもダイエットは必要!?
ネクソンジャパンが2005年4月からサービスしている「マビノギ」は,アニメ調のトゥーンレンダリングで描かれた3Dグラフィックと,ケルト神話をベースに作られた独特の世界設定が魅力のMMORPGだ。
姿や年齢を変え,覚えたスキルと能力を受け継いで強くなっていくという独自の転生システムを初め,マウス操作でありながら単調になりにくいアクション操作や,祭壇に捧げたアイテムによって無限に変化するダンジョン,そして,職業という概念がなく,自由にスキルを選んで覚えられるのが本作の特徴である。
選べる種族は人間,エルフ,ジャイアントの三種類(2007年6月現在)。キャラクター作成画面では性別,年齢,顔の形,髪型,髪の色,目の形,目の色,口の形,肌色と選ぶ項目があり,トゥーンレンダリングを生かした多彩な容姿が作成できる。
中でも面白いのが体型の変化だ。本作では年齢によって身長が変化し,10歳と17歳以後の姿とでは,人間でおよそ1.5倍の差がある。
また,本作では食べ物や飲み物を摂取すると空腹によって減ったスタミナの上限値が回復するのだが,食べたものによって上半身,下半身,体重の3つの箇所で体型が変化していく。例えば,えびの天ぷらを食べていると体全体が太っていき,木の実を食べ続ければ逆に体全体が痩せていく。理想の体型を維持するために,常に食べ物に気をつけなければならないというのは現実世界でも同じことだが,食べた物によってステータスの変化もあることから,体型を気にしない人であっても必ずしも無関係であるとは言い難い。
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| 10歳時の体型。キャラクター作成時の項目にも注目してほしい | 17歳時の体型。明らかに10歳時よりも体格が大きい。能力値にも変化が見られる | ダンジョンに入るにはアイテムを入り口の指定場所(祭壇や碑石など)に落とす。アイテムの種類によって毎回ランダムにダンジョンが変化するのだ |
レベル制度+スキル制度
スキルにはランクアップに必要な修練方法とその回数,及び1回ごとの経験値が定められており,経験値が一定値を満たすとアビリティポイント(以下,AP)を消費してランクアップが可能になる。ランクアップ時にはステータスの上昇やスキルの性能向上といった効果を得られるので,スキルをランクアップさせるほど,キャラクターの能力は強くなっていく。
では,通常のレベルアップではどうなのか。
実は,経験値によって上昇したレベルとそれによって得られた能力は,転生で(任意だが)リセットされるため,これは一時的な能力上昇でしかない。代わりに,転生時には覚えたスキルとランク,ランクアップ時に上昇した能力は受け継がれていくので,プレイヤーはレベルアップ時に得られるAPを消費してスキルを上昇させ,その恩恵であるステータス上昇のボーナスによってキャラクターを育てているわけだ。ゆえに,本作はレベル制度でありながら,スキル制度を兼ね備えていることになる。
戦闘はアクションゲーム風? それともターン制?
左クリックで行き先を決めて移動,右ドラッグでカメラ視点の手動変更……と,基本的な操作はマウス操作のほかのMMORPGと大した差はないが,攻撃時にはタイミングよく左クリックを繰り返すことによって,近接攻撃なら最大3回まで連続攻撃が繰り出せる。
特に,連続攻撃の最後の一撃を決めると敵は大きく後ずさりをするか,後方へ吹き飛んでダウンする。一見,アクションゲームのように見える派手な演出だが,実は,本作の戦闘では双方の攻撃開始から一方のダウンまでが一種の「ターン」になっている。つまり,当てた攻撃の種類,ダウンの有無,仰け反り方の大小,防御の有無などでどちらに先手が回るか決定されるということだ。
もちろん,何もしなければ敵に攻撃権が渡されるし,敵が何もしなければこちらが攻撃可能になる。だが,ただ迂闊に攻撃しているだけでは反撃されるだけで,プレイヤーは相手の行動をよく観察しながら,次に何のスキルで迎撃するかを考えなくてはならない。
そう,攻撃というよりは「迎撃」なのだ。本作の敵のAIは非常に優れており,防御も行えば反撃もきちんと行うし,連続攻撃も繰り出してくる。敵によっては,ガードをいきなり止めて攻めてきたりなど,トリッキーな攻撃も多い。単純に能力による強さもあるが,MMORPGの中でマビノギのモンスターほど頭のいいモンスターはいないと言っても過言ではないだろう。
アタック以外のスキルはすぐに行えるものではなく,入力してから約1秒の間(スキルがランクアップすると短くなる)に準備時間がある。攻撃をガードされたからすぐにこちらもガードで反撃を防ぐ,ということはできず,攻撃,防御のタイミングがしっかり分けられている。ゆえに,戦闘方式は半分がアクション操作,半分がターン制になっているのだ。
忘れっぽい住民と根気よく仲良しになろう
NPCとの会話時には,アドベンチャーゲームのような会話ウィンドウが開かれ,バストアップのキャラクター絵と共に会話が進められる。画面の右端にはノート型のウィンドウが開き,キーワードのリンクを選択するとそれについてNPCが応えてくれる,という仕組みだ。
ゲーム開始時にはほとんど空白のノートだが,会話の中で何かしらキーワードが出てくると自動的に記録され,選択の一つに加えられる。何でもない単語もたくさんあるが,時には何でもない会話からクエストに必要な単語が登録されたり,スキルについて尋ねるとスキルが覚えられるようになったりと,NPCを通したゲームの進行には欠かせない。しかも一つのキーワードについて何種類かパターンが用意されているものもあり,ただの「こんにちは」で終わらないところがまた面白い。
各NPCには隠しパラメータで好感度があり,プレゼントをしたり会話をしたりすると段々親しくなっていく。店の主人であれば,仲良くなることで通常売られていない秘密の商品が購入できるようになったり,クエストが発生したりと,NPCでありながら奥の深い付き合い方ができる。
だが,時間が少し経つと,NPCはプレイヤーのことをどんどん忘れていってしまう。この謎についてはメインストーリーである「女神降臨」を進めていくといずれ分かることだが,つまりは時間と共に好感度があっという間に下がっていってしまうのだ。
普段は必要な時にだけ好感度を上げればいいのだが,そのためには好物となるプレゼントをたくさんあげなくてはならない。大抵のNPCはアルバイトをすることでも仲良くなれるので,根気よくバイトをして自然と仲良くなる方がいいだろう。もちろん,お気に入りのNPCとずっと仲良くいられるには,常に優しく接して上げなくてはならないので,それなりの根気と財産が必要である。
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| 初めて会話したときはこのような挨拶だが……。(画像左)親しくなるとセリフも変わってくる。(画像右)商店を経営するNPCなら普段売られていないアイテムを売ってくれることも | |
マビノギを象徴する生活
本作は「日常」や「生活」がテーマになっている。おそらく多くのプレイヤーがプロモーションビデオなどで初めに興味を抱くのが,稲刈りや羊の毛刈りといった生活要素だろう。
例えば,ナイフを装備して羊をクリックすると羊の毛を刈ることができるのだが,羊が動けば失敗するので止まっている間を狙わなくてはならない。手に入れた羊の毛は「紡織」スキルによって糸になり,その糸を使って更に布を作ったり,裁縫の材料に使用される。同じように,稲刈りの場合は,鎌を装備し,稲をクリックすると1回に付き1本の稲が取れる。
いずれも,採取可能な回数が定められており,例えば羊の毛を刈っていると「これ以上刈ると羊がかわいそうだ」と表示され,しばらく時間が経たないと毛が生えてこない。つまり,モンスターのように体力を持ったMOBがどこからか現れるというわけでもなく,同じMOBから資源となる要素が生まれ,或いは再生するというわけだ。
余談だが,βテスト時にはアルバイトで羊を取り囲むプレイヤーが殺到し,いつまで経っても羊が刈れないという,羊にとっては可哀相(?)な事件が起こっていた。
今はサーバーやチャンネル,町の数が充実しているため,アルバイトや羊の毛刈りで満員になることはほとんどない。それよりも,最初に訪れるティルコネイルやイメンマハなどの町村に過疎化が起こっている方が問題になっているぐらいだ。
また,本作の生活系スキルには,ちょっとしたミニゲーム感覚の要素が備わっているものもある。
例えば「裁縫」スキルなら,針の糸を制限時間内にマウスのクリックとドラッグでジグザグ状に指定された場所に通していく。スキルランクが低いと針の位置がぶれてしまってまともな服が出来上がらないこともあるが,練習を重ねてランクアップすると最高級品が作れるようになる。
「料理」スキルの場合は三つの材料を料理ごとに定められた分量になるようにクリックで配分を調整する。正しく作れると星5つの「究極料理」が完成し,更に完成度が高ければ,食べた直後に料理マンガのような派手な演出のおまけムービーが観られる。
材料を選択して,作る,すぐにできるという,結果だけを見て終わるような単調作業の生産ばかりであればすぐに飽きてしまう人も多いだろうが,完全なランダムではなく,生産過程を自ら操作し,その結果ができあがったものに影響するとなると,比較的楽しんで物作りに励めるはずだ。
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| 料理の作成画面。画像では分からないが,実際にはゲージの先がぶれて動いている。ちなみに,この回は星5つの究極料理が出来上がったが,残念ながらムービーが見られるほど完璧ではなかった | 完全な究極料理を食べるとこのようなムービーが。ムービーには何種類かあり,どれも料理マンガのように派手な演出だ |
急速に広がっていくマビノギの世界
現在のワールドマップ。マップ左側に見える,シドスネッターからバンホールまでの縦に長い「ウルラ大陸」がサービス当初のマップだが,右側の「イリア大陸」はその5倍以上もの広さになっている。中央にある「ソレア」の東一帯がまだ実装されていないようだが……
本作の舞台である「エリン」と呼ばれる世界は,昨年9月の大型アップデート(Chapter2)で新しいマップ「イリア大陸」が追加され,正式サービス2周年を迎えた現在では,当初の舞台「ウルラ大陸」の約5倍以上もの広さを持つ地域に広がりつつある。これまでは生活やダンジョン探索がメインだったのも,Chapter2からは「探検」「新種族」という,以前よりも広がりのある新要素が追加されている。
また,アップデートの頻度も高く,本家の韓国版に遅れを取らず新要素が追加されている点にも非常に好感が持てる。
常に新しい生き方と新しい冒険を提供してくれているマビノギ。基本料金は無料なので,興味を持ったらぜひ一度遊んでみてほしい。












