― レビュー ―

レビューコンテストYatagarasuさん作品

Yatagarasuさん 「GunZ Online」

2006年11月2日

※レビューコンテストの性質上,エントリー原稿をそのまま掲載します。ただし,諸般の事情により4Gamer編集部で,必要最低限の修正を行っている場合がありますので,ご了承ください。

蝶のように舞い,蜂のよう撃つ!
新感覚オルタナティブシューティングアクション

 

 「GunZ The Duel」(以下,GUNZ。邦題はGunZ Onlineで,こちらは以下,JGunzと表記)は韓国MAIET Entertainmentが開発した三人称視点のオンラインアクションシューティングだ。
 銃を用いたFPS的な要素と剣を用いたアクションゲーム的な要素,さらにコンボやキャンセルなどの対戦格闘ゲーム的な要素をも取り入れたスピード感のある戦闘システムが特徴で,数あるオンラインゲームの中でも類を見ない異色かつ意欲的な作品となっている。
 現在,日本でもCJインターネットジャパンの「ネットマーブル」を通じて正式サービスが行われ,人気を博している。
 独自の世界設定を持ってはいるものの,ストーリーを伴ったシングルプレイ,あるいは与えられた指令をこなしていくミッションモードのようなものは存在しない。早い話,一人で遊ぶようには作られておらず,完全にプレイヤー同士の対戦に特化したオンラインゲームであると言える。

 

 

珍しくないけれど新しい!?

 

某映画を彷彿とさせるアクション,壁走り。決してネタではなく,素早い移動が可能なため,実戦でも多用される

 W/A/S/Dで移動,左クリックで攻撃,Spaceバーでジャンプ。基本的な操作はFPSで馴染みのあるそれだが,そこにさらにダッシュ,壁走り,壁を蹴っての二段ジャンプ,ガードなどのアクション性の強い要素が加わってくる。
 最初はキーボードでの激しい操作にとまどうかもしれないが,いわゆる「もっさり感」がないので,キャラクターを思い通りに動かせるようになるのに苦労はしないだろう。また,馴染みのある三人称視点なので,一人称視点が苦手という人も取っつきやすいと思われる。
 ダッシュや壁などのオブジェクトを使ってのアクションは,家庭用ゲーム機のアクションタイトルではそう珍しいものではない。しかし,それら多くのコンシューマのアクションタイトルでは,コントローラの制約によるものか,ボタン一つで自動で目標に照準を合わせてくれるモノがほとんどである。そして,完全に手動で照準操作を行うゲームでこのようなアクションシステムを有したものを見つけることは少ない。
 つまり本作は,“ありそうでない”タイプのゲームなのである。

 

近距離武器を一つ,遠距離武器を二つ,アイテムを二つ,指輪を二つ,そして頭,胴,パンツ,手,足の5か所それぞれに防具を装備できる。しかし,重量制限,レベル制限があるので,装備の選択肢は限られてくる 基本的な操作は一般的なFPSとそう差異はない。クライアント自体にマウスへの割り当て機能はなく,そのため外部ツール遮断機能の導入で,一部のマウスのサイドキーがゲーム内では使えなくなった プレイヤーは自由に,対戦形式,マップ,人数,ラウンド数,制限時間,FF(Friendly Fire),レベル制限などのルールを設定し,マップを作成できる。対戦形式は9種類で,デスマッチ,チームデスマッチ,そしてアーケードの格闘ゲームのように1対1で勝抜戦をするデュアルサバイバルなどが人気だ

 

 

「例えば物陰に隠れて相手をスナイプするよりも,弾丸を刀で
はじき飛ばしながら突撃するほうが有利なゲームなんですよ」

 

切り上げは,地面に足がついている状態であればいつでも出すことができるが発動が遅く,射程も短い。しかし,防御不能であり,打ち上げた相手が空中で受け身に成功し着地するまでの間,問答無用で無防備にできる。相手が無防備な間に追加攻撃を当てることができれば大きなダメージを与えられる。また相手が受け身に失敗しダウンする場面になれば,(第三者が妨害しなければ)勝利は確実と言っていい。しかし,浮いている相手への追加攻撃は容易ではない

 上記はGUNZの開発総責任者,Kim, Young Ho氏の言葉である(関連記事)。有利,不利はとりあえず置いておくが,GUNZは銃器を多用するFPS的なゲームであるにもかかわらず,近接戦闘になる場面が非常に多いのが特徴だ。
 プレイヤーキャラクターの耐久力が比較的高いうえにヘッドショットによる即死がなく,ダッシュによる高速移動,壁を使った立体的な動きが可能なため照準を合わせづらい。つまりは遠距離では仕留めづらく,それゆえに相手に近づくことが比較的容易,というのも要因ではある。しかし,それだけではない。近接戦闘において相手に大きなダメージを与える機会を作りやすいというゲームデザインのために,多くのプレイヤーが近接戦闘による一撃必殺を狙いに行くのである。
 “一撃必殺”とは単純に剣やナイフなどの近接武器の攻撃力が高い,ということではない。近接武器の装備中には,単純に“切る”通常攻撃のほかに,相手を一時的に行動不能に陥れる“マッシブストライク”,防御不能で敵を空中に打ち上げる“切り上げ”(短剣を装備している場合は相手を押し倒すスタン攻撃)といった特殊な攻撃を使用可能。少し誤解を生むかもしれないが,これらは格闘ゲームにおける“コンボの始動技”と考えてもらうと手っ取り早い。つまり,これらの攻撃を受けた相手は一時的に無防備になり,そこに攻撃を仕掛ける大きなチャンスが生まれる。使いこなすのは容易ではないが,自在に使いこなし勝負を一瞬で決めたときの快感はなかなかのものだ。
 相手の行動を予測し,攻撃する,避ける,防御する。一瞬の判断ミスが致命的な隙を生み,一瞬の好判断が逆転の鍵になる。GUNZは,FPSなどのガンシューティングで軽視されがちである密着した際の戦闘を,息もつかせぬ緊迫感のある攻防に生まれ変わらせた。

 

相手を一時的にスタンさせることができるマッシブストライク。しかし,近接での攻防中に発動するには,まず相手の近接攻撃をガードしなければならない。いわゆるカウンター技と考えてもらうと分かりやすい。課金アイテムの“コイン”を装備することにより,マッシブストライクにさまざまな特殊効果を付加できる ガード中は攻撃できない。さらにダッシュやタンブリングなどの高速移動も制限され,歩くことしかできなくなる。ガードの判定があるのは前方/上半身のみで,足元は無防備になる。しかし,ガード判定内への攻撃ならば遠距離武器,近距離武器にかかわらず完全に無力化し,さらに近接攻撃を正面から防御すれば相手を一時的に無防備な状態にできる

 

 

銃と剣の融合した戦闘スタイル“KS”とは……

 

通常,壁蹴りジャンプを行った後は,地面に足がつくまで,ダッシュなどの行動に制限がかかる。しかし壁蹴りジャンプ後,空中で近接攻撃を行うと,それらの制限が解除される。WF(WallFlying),通称“壁斬り”はこの現象を利用し,連続で壁蹴りを行い壁を登るテクニックだ。WFを駆使すれば,画像のような足場がかなり制限されるフィールドでも縦横無尽に動き回ることができる

 FPS的な銃撃戦を可能とするならば,いくら操作性が高かろうと,ナイフや剣の出番など“ありえない”と,熟練したFPSプレイヤーならば当然思うだろう。
 実際,いくら“速さ”と“硬さ”があろうと,アクション性が高かろうと,それだけでは高度なエイミング技術を持つプレイヤーにとって,敵が近づく前に迎撃するのはそう難しくないことだと思われる。だが,GUNZでは現実として密着した近接戦闘に及ぶ場面が多々あり,それは奇襲などの特殊な状況に限った話ではない。「GUNZプレイヤーのエイミング技術が未熟であるから」と,単純に言い切ることもできない。
 では,なぜか。GUNZには,高度なエイミング技術を持ったプレイヤーすらも驚かせる,高速移動,連続攻撃を可能とする“KS”というテクニックが存在するためだ。

 

 KSとは,空中で近接攻撃を行うことにより発生するディレイキャンセル,行動制限が解除されるなどの現象を主に利用したテクニックだ。これを応用し,派生するさまざまなテクニックを駆使することにより,銃と剣が融合した攻防一体のアクションが常に高速で移動しながら行える。銃撃を弾き飛ばしながら剣で切り,死角へ移動しながら銃を撃ち,距離を潰し,相手の自由を奪い一瞬で勝負を決める,そんなアクションが可能になる。
 連続したキー操作を繰り返し正確に行う必要があるので,使いこなすにはそれなりの練習と経験が必要になるが,習得すれば,まさに新感覚の戦闘を体験できる。
 なおKSは,公式ではほとんど触れられていない裏技的な代物ではあるが,イベントでGM自身が使用しているので,使ったからといってアカウントを停止されるようなものではないと,一応,補足しておく。

 

敵の銃撃をガードで弾きながら突進することを可能にするKSテクニックBS(ButterflyStep)。空中ダッシュ中に,近接攻撃,ガードを連続で素早く行うことによって,攻撃判定とガード判定を残したままダッシュが可能になる なぎ払うように銃撃を行うSS(SlashShot)。空中での近接攻撃モーション中に近接武器を遠距離武器に持ち替えることによって,通常,武器持ち替えによって発生する遠距離武器の発射までの硬直時間を短縮するKSテクニック。このテクニックを利用することにより,斬撃と銃撃を連続で行うことができる

 

 

JGunzを蝕む難病

 

 現状のJGunzが有する問題はあまたあるが,最も大きいと筆者が考えるのは,プレイヤーのマナー,モラルの問題である。
 チートやマクロツールの不正使用と,それに端を発する疑心暗鬼により,JGunzのプレイヤー達は非常に殺伐としている。ただの誹謗中傷から内部告発まで,日常的にきな臭い言葉を目にする。「対策しないほうが悪い,皆使っている」という免罪符を掲げ,勝つためにはなんでもするという姿勢のプレイヤーが,残念なことに少なくないのである。
 「強ければ偉い」という対戦ゲームにおいてありがちの勘違いが蔓延し,各個人のプレイスタイル,ゲームへの姿勢を否定する。もちろん,すべてのプレイヤーがそういうわけではないが,公式/非公式のコミュニティ,およびゲーム内で,むき出しの“子供っぽさ”に遭遇し,めまいを覚えることが多々あるのは事実。PCスペック,導入の手軽さ,基本料金無料などとハードルが低いことから,実際のプレイヤーの年齢も一般的なFPSタイトルより低いとは思われるが,それにしても,幼稚な人が多いと感じる。
 言うまでもなく,運営の対策の遅れが原因の一旦を担ってはいるのだが,こういった問題は言ってしまえば“イタチごっこ”である。運営の対策の遅れをプレイヤー側のモラル,自治がフォローし,健全化していくのはオンラインゲームの伝統である。これは運営側のレベルが総じてプレイヤーの要求を満たすに至らないためではあるのだが,残念なことにGUNZにおいて発現した「うさんくさいプレイヤーをさらし上げる」という形態の自治は,結局一部のプレイヤーだけで完結し,フィードバックされることのない未熟なものであった。
 いくらゲーム自体が面白くても,プレイヤー達の雰囲気が悪ければ,新規の人は長居しないだろうし,既存の健全なプレイヤーもいずれ愛想を尽かすだろう。プレイヤーの人口は,とくに対戦ゲームにとっては寿命に直結する大きな要因だ。より長く,より楽しくGUNZを続けたいのであれば,すべてのプレイヤーが,自分の行いを見つめ直すべきだろう。
 言うまでもなく,運営側の迅速な対応は強く望むところである。

 

 

ゲーム自体はオススメ。しかし……

 

 導入の手軽さ,必要なPCスペックが低い,完全日本語対応,基本料金無料という側面から,FPSなどの3Dガンシューティングの世界に興味がある人への入門用という選択肢も考えられるかもしれない。
 ゲーム性から考えれば「リアルじゃなきゃダメ」という人には間違ってもお勧めしないし,「綺麗な映像が大好き」という人にもあまり勧められない。
 すでに熟練したFPSプレイヤーであり純粋なFPSを求めている人には,もちろん単純にはお勧めできないのだが,FPSに挑戦するGUNZに,自分のエイミング/スタイルがどこまで通用するか,受けてたってみるのも面白いかもしれない。
 一人称視点が苦手なため,“狙う”という要素のゲームに興味はあるが実際にやる機会がなかったという人,スピード感のあるアクションゲームを好む人,反復練習でコンボの精度を上げることに快感を覚える人や,一撃必殺/一発逆転という言葉にロマンを感じる人,待つのが嫌いな人,乱戦に突っ込んで暴れたい人,……そのような人達にはぜひ,かじってみていただきたい。
 しかしながら,自分が上達するにつれて,ゲーム性自体ではなく運営とプレイヤーに対してストレスを感じるようになると思われる。のめり込む人やゲーム以外での環境にも気を使う人は,その点を留意しておいたほうがいいだろう。
 さまざまな問題を抱えるものの,既存ではあるが独立していたアクションシステムの融合と,未だかつてない独自のシステムが実現した息もつかせぬ戦闘が,それを補ってあまりあるカタルシスを与えてくれる。不満を抱えながらも,未だにGUNZを離れられないプレイヤーが数多くいることが,その証明だ。

 

 興味を持てたならば,まず始めてみてほしい。その価値はある。

 

 

タイトル GunZ The Duel
開発元 MAIET Entertainment 発売元 ネットマーブル
発売日 2005/10/21 価格 基本無料
 
動作環境 OS:Windows 98/2000/XP,CPU:Pentium III/500MHz以上(Pentium III/800MHz以上推奨),メモリ:256MB以上(521MB以上推奨),DirectX 9.0c以降

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