― レビュー ―
スポーツ系FPSとして王道的進化を遂げた,待望のシリーズ最新作!!
Quake 4
Text by 三須隆弘
2005年11月25日

 

■6年の歳月を経て復活したシリーズ最新作

 

6年ぶりに帰ってきたシリーズ最新作「Quake 4」。今回は発売前からシングルプレイのイメージが先行しており,ストログ(Strogg)の機械的で殺伐とした恐ろしいデザインが本作の印象となっている

 FPSを遊んだことのあるゲーマーならば,その名を知らぬ人はいない超メジャー作品「Quake」。筆者が最初にハマったPCゲームであり,インターネット対戦がまだそれほど一般的ではなかった1996年,28800bpsのモデムで遊ぶ,ラグだらけのマルチプレイが本当に楽しくて楽しくて,寝食を忘れるほど遊んだ名作中の名作だ。
 その後,1997年にはグラフィックスやシングルプレイのストーリー性を強化した「Quake II」が,1999年にはシングルプレイを一切排除し,マルチプレイのみに特化した「Quake III ARENA」が登場。Quakeシリーズは世界的なゲーム大会での競技種目になるなど,まさにスポーツ系FPSの代名詞といえる作品になった。

 

 そんなQuake III ARENAからはや6年,世界中のゲーマー達を待ちに待たせたシリーズ最新作「Quake 4」が登場した。光と影が織りなす恐ろしくも美しいフィールドを舞台に,Quakeワールドが甦ったのだ。第4作では“しっかりとしたストーリー性のあるシングルプレイ”が,第2作以来の復活を遂げているのが特徴である。

 

 本作には「DOOM 3」のエンジンをベースに改良したものが採用されている。そのせいか,舞台となるストログ(Strogg)の惑星は,暗闇や金属の質感など,パッと見の印象はまるでDOOM 3の火星基地だ。しかしゲームのレスポンスに関しては,こちらのほうがだいぶ軽くなっており,DOOM 3ではガクガクだったPCスペックでも,割ときれいな画面設定でそれなりに遊べる。もちろんハイスペックPCを持っているなら,相応に高画質なゲームが楽しめる。

 

エンジンは「DOOM 3」改良版。光と影や金属の質感など,かなり雰囲気は似ているが動作はずっと軽い グラフィックスは非常に美しい。モニターに映った情報や計器類も細かい。写真は地球の戦艦の内部だ テクスチャの質感も驚き。海兵隊員の刈り上げの剃り跡や,着ているアーマーの質感に注目してほしい

 

エアダクトやパイプだらけの基地内。どこぞの火星基地を思い出す。壁に磔にされた人間がイヤすぎ 敵の異星人,ストログ(Strogg)は生物とメカを融合させたようなデザイン。見るからに悪そうだ 敵の基地内では,生体部品とされた人間達の姿が。かなりグロテスクでダークな雰囲気で進んでいく

 

 

■映画的な演出や仲間との協力を取り入れて進化したシングルプレイ

 

巨大なクモ型メカが主人公の分隊を襲い大ピンチ! 今回,シングルプレイではこういった映画さながらの大迫力の演出がとても多かったりする

 シングルプレイのストーリーは,Quake IIからの完全な続きとなる。ストログと呼ばれる異星人に壊滅的打撃を受けた人類が,敵の本拠地に反撃作戦をかけるという展開。主人公はライノ分隊と呼ばれる精鋭部隊の新入りで,仲間と共にさまざまなミッションをこなしていく。
 特徴的なのは,今回は仲間との協力が多い点だ。本作ではマップのさまざまな場所で先行した海兵隊員が散発的に戦っており,いろいろな形で主人公をサポートしてくれる。これらの味方はスクリプトで決まった場所に配置されており,ときには戦いに同行し,一緒に戦ってくれる(入れ替わりは激しい)。物語の都合上,死ぬためだけに登場する味方なんかもいるのだが,これらの演出が絶妙で,かなりドラマチックだ。今までこういった演出部分には,あまりというか,まったくこだわってなかったQuakeシリーズとは思えない作り込みで,世界観や雰囲気を大いに盛り上げている。

 

 中でも特筆したいのがゲーム序盤のヤマ場,主人公が敵に捕らわれてからの展開だ。Quake IIでも「人間ミンチ工場」みたいなショッキングなシーンが出てきたが,あの恐ろしいグロテスクな施設が,最新のグラフィックスで超リアルになって再登場である。まさに圧巻というか驚愕であり,そこから先はもう,ゲームに釘付けになってしまった。
 そう,2005年5月の4Gamerの記事で,すでに明かされているので書いてしまうが,途中で主人公がストログに捕らわれ,生体改造手術を受けるハメになるのだ。ベルトコンベアで運ばれる主人公を,電動ノコギリや,ぶっといミシン針で容赦なく切り刻む機械。飛び散る鮮血。絶叫。卒倒しそうなほど恐ろしい地獄絵図を,自分視点で見ているしかない状況。筆者は本作に関してまったく予備知識や前情報を断って遊んでいたため,「こんな演出を考えたデザイナーはどうかしてる!」(褒め言葉)と,かなりの衝撃であった。

 

 シングルのゲーム内容は,まさに撃ちまくり系のFPS。ひたすら撃って敵を倒すというスピード感ある展開で,敵は常に主人公に対し,ヤル気マンマンで襲い掛かってくる。敵の巡回路を見越してのスニークアクションとか,ガジェットを駆使しての謎解きとかはまったくなく,そもそも本作はそういった要素を楽しむゲームではない。
 敵や味方のAIもかなりシンプルというかストレートな出来で,敵を見たら近くの障害物に隠れながら撃つ,もしくは突撃してくるくらいのレベル。こう書くと単純なゲームのように思えるが,実際に遊んでみるとこれはこれで,かなり楽しい。いわばシューティングとして基本に忠実に,“避けて撃つ”部分に特化した仕様であり,余計なことを考えずに,アドレナリン全開で戦闘を楽しむゲームなのだ。

 

 ただ,敵が扉をぶち破り仲間を引きずりこむなど,映画顔負けの演出はてんこもりで,雰囲気は常に盛り上がる。また戦車やロボットに搭乗しての特殊な戦闘シーンも多く,輸送車を敵の襲撃から守ったり,メディックを敵から守りつつ味方の待つ場所まで送り届けたり,はたまた廃棄物処理施設でゾンビの襲撃に脅えたりと,ステージもミッションもかなり多彩で,ラストまで飽きることはないだろう。

 

今回,シングルプレイは孤独な戦いではない。行く先々で海兵隊が仲間になり,一緒に作戦を遂行してくれる 味方は戦闘時はちゃんと物陰に隠れたり,しゃがんで障害物を利用したりしながら戦ってくれるなど結構賢い エンジニアがバーナーで扉を焼き切り,左の海兵隊員が偵察に突入すると……。こういった演出が本当に多い

 

敵に捕まった主人公が大変な事態に。目をつぶりたくなるようなショッキングなシーンだが,最大の見せ場だ 最終洗脳直前で仲間に救出された主人公。すぐそばの鏡を見てみると……。この展開はかなり驚きました 敵基地から脱出後,味方の基地で体のあちこちを調べられる主人公。ロボコップのワンシーンみたいだ

 

 

■スピーディで爽快感あるマルチプレイは,まさにスポーツ系FPS!

 

プレイヤーの移動が速く,とてもスピーディな展開のマルチプレイ。まさにスポーツ系FPSな内容。武器の特性や性能もシングルとは異なる

 Quake 4で何より気になるのは,やはりマルチプレイだろう。シングルプレイと同じもっさりした移動速度だと,歴代Quakeとはかなり別物のゲームになってしまう。ところがQuake 4のマルチプレイモードはプレイヤーの移動が非常に速く,Quake III ARENAのようにスピーディにゲームが進行する。最大対戦人数も16人までと多いため,8 vs. 8のチーム戦なども楽しめる。拡張パックで強化しても最大8人が限度だった,DOOM 3とは大きな違いだ。

 

 ゲームモードはDM(デスマッチ),Team DM(チームデスマッチ),CTF(キャプチャー・ザ・フラッグ)のほか,面白いところではTourney(トーニー)というモードも採用されている。これは1対1で戦うトーナメントを行って最強を決めるというモードだが,旧作と異なるのは,複数の試合がブロックに分けられて同時に開催される点だ。おかげで,試合に負けて観戦するしかない退屈な時間は大幅に減った。
 またCTFは,通常のタイプ以外にも「Arena CTF」と呼ばれるモードも追加されている。これはパワーアップアイテムがワンサカ登場し,より過激になったモードだ。

 

 武器に関しては,懐かしの初代Quakeから復活したネイルガン(針を飛ばす武器)や,Quake III ARENAの接近戦武器ガントレット(電動ノコギリの篭手)など10種類を収録。過去のシリーズに登場した武器を再調整したものが多いが,バランスを見ると,ロケットランチャーの弾速が遅く,ライトニングガンがやや弱体化。代わりにレールガンの連射力と命中精度が高まり,対戦でも人気武器になっている。

 

 本作のマルチプレイはQuake III ARENAに近く,単純にデスマッチでワイワイ遊ぶだけでも,なかなか楽しい。スポーツ系FPSらしい爽快かつスピーディな内容で,空いた時間に気軽に対戦するにはもってこいといえる。
 ただそのシンプルさゆえ,最近の「Counter-Strike: Source」や「Battlefield 2」のような高度に進化した対戦用FPSに遊び慣れているゲーマーには,やや食い足りないと感じられる部分もあるだろう。発売から1か月ほど経った2005年11月25日時点では,人がイマイチ少ない。
 まぁ武器のバランスや新ルール,一度発表されて中止になった乗り物のような新要素は,今後のMODやパッチでの展開に期待しておきたい。

 

 とりあえず,Quakeシリーズということで何かとマルチプレイが取り沙汰されがちだが,今回は予想していた以上にシングルプレイが楽しかった。難度的には若干ヌルめではあるが,ストーリー展開にサプライズやメリハリもあり,ボリュームもある。まさにディズニーランドのアトラクションのような内容であり,Quakeシリーズが好きだった人は当然として,ぜひともFPSの初心者にも遊んでもらいたい,まさにFPSのお手本的なゲームだといえる。

 

マルチでのサーバー設定画面。ゲームモードは必要最小限といった感じ。今後,乗り物の登場などに期待したい 快適に対戦したいなら,マシンスペックもかなり重要になってくるマルチ。へぼいPCだとまず勝てない シングルでのワンシーン。Quake IIにもあった人間ミンチ工場が,本作ではこんなにリアルになった!

 

廃棄物処理施設では,捨てられた人間がゾンビになって襲ってくる。ゲームの雰囲気もガラリと変わる ホバー戦車に乗り,巨大なクモ型メカと戦う。ほかの搭乗兵器に二足歩行ロボットなんかも出てくる シングルのミッションは多彩だ。写真は輸送車に仲間と乗り込み,四方から襲ってくる敵を撃退する

 

タイトル QUAKE 4 英語版 日本語マニュアル付
開発元 Raven Software 発売元 ライブドア
発売日 2005/10/27 価格 7329円(税込)
 
動作環境 Windows 2000/XP,Pentium 4/2GHzあるいはAthlon XP 2000+以上,メインメモリ512MB以上,64MB以上のグラフィックスメモリを搭載するRadeon 9700/9800/X300/X550/X600/X700/X800/X850シリーズあるいはGeForce 3/4/FX/6/7シリーズ必須,HDD空き容量2GB以上,8倍速以上の読み出し速度のCD-ROMドライブ必須,DirectX 9.0cをサポートするサウンドカード必須,マルチプレイにはインターネット接続環境必須

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http://www.4gamer.net/review/quake4/quake4.shtml