レビュー : Perfect World -完美世界-

独自の世界観が魅力の東洋ファンタジーMMORPG

Perfect World -完美世界-

Text by ginger
2007年4月10日

 

»  中国から鳴り物入りでやってきたMMORPG「完美世界」も,いよいよ国内正式サービスがスタート。4Gamerでも何度か取り上げてきた本作を,欧米の本格MMORPGを得意とする4Gamer編集部のgingerが,本格MMORPGの視点で今回あらためてレビューする。

 

 4月9日に正式サービスが開始された「Perfect World -完美世界-」は,自由度の高いキャラクターメイキングや,幻想的なグラフィックスが特徴的なMMORPGだ。開発元である北京完美時空網絡技術有限公司(Golden Human)は,中国のエデュテイメントソフト大手として知られており,自社開発による3Dエンジンを用いた,初のオンラインゲームである本作の完成度は,意外なほどに高いレベルでまとまっている。中国のゲーム開発力の躍進を感じさせられるタイトルだ。

 

 

パンダだって戦う,独特すぎる世界観が魅力的

 

広大な世界と,美しい風景が本作の魅力の一つ。冒険の舞台は,草原から荒れ地,雪原,ダンジョンへと続いていく

 本作の世界観は,中国発というところから連想されるような勧善懲悪や義理人情といった,いわゆる武侠色は薄い。その代わりに,木火土金水の五行属性や,スキルウィンドウを表示するための「対極図」を模したアイコンなどに見られるように,陰陽五行思想ないし道教的世界観をミックスした,独自の東洋ファンタジーとなっている。
 この道教的世界観は,装備の強化に用いる「魂の石」や,スキルに設定された五行属性,NPCとの会話など,ゲームプレイの端々で感じられる。「仙人」や「仙術」,仙境「三十六の洞天」や「七十二の福地」といった単語が,本作の世界観を彩るキーワードとしてたびたび登場する。

 

 とはいえ,プレイヤーが選択できる種族は,人間,エルフ,妖族となっており,まったくの東洋モチーフというわけでもない。選択できる職業は種族ごとに決まっており,人間であれば「戦士」「魔導師」,エルフであれば「精霊師」「弓使い」,妖族の場合に限り,男性キャラは「妖獣」,女性キャラは「妖精」となっている。
 自由度の高さで知られる本作のキャラクターメイキングでは,「目」にこだわったキャラエディットの紹介記事にあるように,女性キャラクターのカスタマイズに力が入るところだが,もう一つ注目すべきは妖獣ではないかと思う。妖獣は男性型のみで,カスタマイズの自由度も低いのだが,何といっても選べる外見が特徴的だ。いわゆる獣人タイプで,虎,ライオン,狼といった猛獣に混じって,あろうことかジャイアントパンダ型も選択できるのだ。
 ジャイアントパンダといえば,中国は四川省を中心とした竹林に生息し,笹や竹を主食としている,子供にも大人気の愛くるしい動物だ。生息数は非常に少なく,その保護のために年会費5万円也で里親になることもできる。そんな大熊猫が,妙に上半身ムキムキの二足歩行獣人となり,両手斧を力強く振り回して,パーティのメインタンクを張ったりする。その姿たるや,まさしく妖獣の名に恥じないアヤシさで満ち溢れている。

 

 しかも,妖獣と妖精は,レベル9からは獣型に変身するスキルが使用可能となる。パンダ獣人であれば,パンダに変身できるに違いないと踏んだ筆者は,早速レベル上げを開始し,念願の変身スキル「ビーストモード」を習得した。
 驚くべきはここからである。いざスキルを使用してみると,変身した結果はなぜか白虎。いや,ここまで引っ張っておいて,それはないんじゃないの??? どうやら妖獣は,人型時の容姿に関わらず,変身後の姿は白虎(妖精の場合は,妖狐)と決まっているようだ。
 ゲームの仕様であれば仕方ないともいえるが,ここはあえて“何かの間違いである”と声を大にして言わせてもらいたい。あくまで個人的な要望ではあるものの,今後のアップデートでは,ぜひともパンダ変身の実装をお願いしたい。

 

本作には,数多くの街や村が存在する。左から順に「剣仙城」「樹下の都」「万獣の要城」となっており,それぞれ人間,エルフ,妖族の最初の拠点に当たる

 

あまりに個性的すぎるパンダ。両手武器を振り回し,パーティのタンク役をこなすパンダが拝めるのは,おそらく本作だけだ 元はパンダなのに,変身後の姿は白虎なのが残念すぎる。しかし,お湯をかぶると人間の姿に……なったりはしない ダンジョン内のモンスターは非常に強力だ。ソロでは苦戦すること必至なので,パーティを組んで挑戦しよう

 

 

二段ジャンプと飛行を軸にした移動方法が新鮮

 

高いところを見つけたら,とりあえず登ってみたくなるのが人情というもの。飛行はせずに,あえて二段ジャンプでよじ登るのがマナーだ(?)

 パンダにはいろいろな意味でかなり意表をつかれたが,ゲームシステム面に目を向けると,本作はいたってオーソドックスなMMORPGだ。キャラクターの育成は,レベルアップによって得たステータスポイントを,各ステータスに自分で割り振る方式で,スキルは,敵を倒したり,クエストを達成したときに得られるSPとお金を消費して習得/強化を進めていく。
 本作には,すでにかなり多くのクエストが用意されており,序盤から中盤にかけてはクエストを中心にプレイを進めていくことで,非常にテンポよくレベルが上がる。クエストは,特定のアイテムを集めるものや,NPCの間を行ったり来たりするおつかい系,一定数のモンスターを倒す討伐系など,一般的なものだ。その中でも,恋人との約束を果たせなかった女性が,いまでも亡霊となって待ち続けている,といった悲恋物が比較的多いのが,どことなく中国っぽい。
 筆者がオープンβテスト中にプレイをしてみた感触では,スタート時から飛行ツールを持っているエルフ以外の種族が,飛行クエストを受けられるようになるレベル30までは,これらのクエストをこなしていくことで,ほぼソロプレイでも到達できそうだ。おそらく,このあたりがゲーム的に一区切りがつく段階で,その先はパーティプレイが推奨されるバランスになると思われる。

 

 この“飛行”も,本作の大きな特徴の一つで,種族ごとに異なる飛行ツールがある。人間は空を飛ぶ剣,エルフは翼,そして我らが妖族に用意されているのは……空を飛ぶエイである。エイといえば,下面にエラのついた,平べったくてウネウネとした体でゆったりと泳ぎ,煮付けにしたりムニエルにしたりと,調理法の和洋を問わず淡白な味わいを楽しめる,あの魚のことだ。まあ確かに,何となく空を飛びそうな体型ではあるが,一体何故エイなのか,カレイやヒラメではダメなのか,といったことは深く考えてはいけないのだろう。
 上述のように,エルフ以外の種族が空を飛ぶためには,レベル30で受けられる飛行クエストをこなす必要がある。しかし,高所に到達するもう一つの手段として,すべてのキャラクターはゲーム開始時から二段ジャンプができるようになっている。もともとジャンプ高度の高い本作だが,この二段ジャンプによって,かなりの高い場所へも跳び移れる。ちょっとした建物の屋根くらいは軽々と跳び越えられるうえ,遠くを見渡すときにも便利だ。また,一見登れなそうに見える場所でも,地形の当たり判定の甘いところを突いて跳び乗れることがある。ジャンプだけで,どこまで高くよじ登れるか挑戦してみるのも面白いだろう。

 

エルフなら,レベル1から地上が霞んで見えなくなるほどの高度で飛ぶことも可能だ。ただし,あまり長時間は飛行できない 白虎に変身した狼が,エイに乗って空を飛んでいる。この白虎の上には,さらにプレイヤーキャラが乗れる。もう何が何やら…… 本作には,数多くのクエストが用意されている。受けたクエストは,クエストウィンドウで一覧できるので便利だ

 

キャラクターは,レベルアップで得たステータスポイントを,各ステータスに割り振ることで成長していく スキルは,各職業のマスターから教わることに。頑張れば,すべてのスキルをマスターすることもできそうだ 街中のNPCは攻撃できないが,なぜか犬や猫などはスキルで攻撃できる。しかし,胸が痛むのでオススメはできない

 

 

遊び応え十分だが,深く楽しむためには少々試行錯誤が必要

 

本作のマップは広大だ。どこかの大陸の一部分のようなので,今後のアップデートによって世界が広がっていくのかもしれない

 本作のマップはかなり広い。全体マップを見ると,どこかの大陸の一部分のようだが,現状でも十分な広さといえる。種族ごとにスタート地点となる街があり,街の雰囲気や周辺の風景などが異なるので,新たに別の種族を育ててみたいと思ったときに新鮮な気分でレベル上げができるのは嬉しいところだ。
 マップの広さだけではなく,本作では生産はもちろん,魂の石による装備品の強化,競技場(アリーナ)内でのPvPや,正式サービス開始時に実装されたギルド戦である「領土戦」などの対人戦要素,ペットへの騎乗など,ほかのMMORPGにある要素は,ほぼ網羅されている。そのぶん,やれることが多すぎて,本作で初めてMMORPGに触れる人にとっては,かえって何をしていいのか分からなくなってしまうかもしれない。
 また現在は,正式サービス開始に伴い,有料アイテムの販売も開始されている。ゲーム内で確認できる「乾坤袋」(アイテムショップ)には,武器や道具,ファッションアイテム,高性能な飛行ツール,騎乗用ペットなどが用意されている。飛行ツールや武器などには使用期限が設定されているが,ファッションアイテムや騎乗用ペットは一度購入すれば無期限で使用できる点は評価したい。こうしたアイテムを購入しないでも十分に楽しめる現状から考えると,これほどの遊び応えのあるMMORPGを,かなりの部分無料で楽しめるというのは,非常にコストパフォーマンスが高いことにもなる。

 

 最後にいくつか,残念に思う点を指摘しておきたい。本作は,東洋風の世界観を大きな魅力としていながら,ゲーム内の多くのNPCやスキル名は(西洋風,というか英語の)カタカナ表記となっている。その一方で,原文の漢語(熟語)を,深い意味を考えずに,そのまま日本語として使用しているなど,世界観の統一という点では,ややちぐはぐな印象を受ける。場面によって,カタカナ表記であったり漢語調であったりするために,「スキル」「仙術」「魔術」は同じものなのか,といった混乱を招きやすい。
 またインタフェースは,必要な機能こそ一通り揃ってはいるものの,いま一つ洗練されていないように思われる。チャットウィンドウやスキルスロットを調整するためのアイコンの絵柄が直感的でなかったり,ミニマップ上では確認できるNPCが,マップを拡大した状態では確認できなくなってしまったりと,細かな使い勝手の面で,やや不満が残る。
 生産や武器強化,PvPといった,さまざまなシステムが用意されているものの,そこへプレイヤーを誘導する道筋が弱いのも,本作の課題だろう。序盤のプレイは,クエストを核としたレベル上げが中心となりがちだが,周辺に散りばめられたさまざまな要素への導入部となるクエストやチュートリアルが,もう少し欲しいと感じた。総じて,試行錯誤しながら自力である程度ゲームシステムを探索していく意欲を持ちさえすれば,本作は十分に楽しめるゲームであるといえよう。

 

生産は,まずは材料集めから始まる。しゃがみ込んで草を摘んでいる後ろ姿に,どことなく哀愁を感じる…… 実際の生産は,生産NPCのところへ材料を持っていき,必要なアイテムをセットするだけ。お手軽だが,ちょっと味気ないかも 装備品の強化に用いる魂の石は,合成師を利用して上位のものを作成できる。種類が多すぎて少々ややこしいのが難点だ

 

NPCは時折,分かったような分からないようなことを喋るのが困りもの。日本語訳のさらなる改善に期待したい 全体マップは,任意の地点をクリックすることで拡大できる。この状態でNPCの位置を確認できないのが残念 乾坤袋のネーミングは,必要に応じて大きさが変化し,中に何でも入れられる宝貝に由来すると思われる

 

■■ginger(4Gamer編集部)■■
SE,医療系フリーライターという前職を経て,2006年「第6回 4Gamerレビューコンテスト」で特別賞を受賞,それから間もなく4Gamerスタッフの一員となった経歴を持つ。4Gamerには数少ないキャラゲー,ギャルゲーのファンであると同時に,「Ultima Online」「EverQuest」の熱心なプレイヤーでもある。MMORPGへの造詣が深く,4Gamerでは主にMMORPGタイトルの記事執筆を担当している。いつもかぶっている帽子と,口癖の「うへぇ」がトレードマーク。
タイトル Perfect World -完美世界-
開発元 洪恩軟件(Golden Human) 発売元 シーアンドシーメディア
発売日 2007/04/09 価格 基本無料(アイテム課金制)
 
動作環境 OS:Windows 98SE/2000/XP(+DirectX 8.1),CPU:Celeron/1GHz以上,メインメモリ:512MB以上,グラフィックスメモリ:64MB以上,HDD空き容量:10GB以上,ネットワーク環境:256kbps以上

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