― レビュー ―
最重要指名手配(モスト・ウォンテッド)を目指すストリートレース
ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド
Text by UHAUHA
2006年1月12日

 

■市街地を舞台とした暴走レースゲームの最新作

 

「ニード・フォー・スピード アンダーグラウンド」の流れを汲み,過去のシリーズの集大成と言える本作。国産車やスーパーカーを駆り,実在するかのように再現された都市を舞台として,ライバルとのストリートレースや警察とのカーチェイスを楽しめる

 市街地を舞台に市販車でレースを行うドライビングゲーム,ニード・フォー・スピードシリーズ。1作めが発売されてから早10年が経つという,エレクトロニック・アーツの長寿シリーズだ。全世界で2500万本以上を売り上げる大ヒットシリーズだしコンシューマゲーム機でも発売されているので,日頃ドライビングゲームはやらない人でも名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。
 2005年12月,9作めとなる最新作「ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド」が登場した。

 

 モスト・ウォンテッドに登場する車は,派手なエアロパーツやバイナル(ボディに施した模様)が目立ち,どちらかというと「アンダーグラウンド」系の作品といえる。だがモスト・ウォンテッドには,アンダーグラウンドには登場しなかったランボルギーニやポルシェなど憧れの高級車を含めた37車種(ノーマル32台+ボーナスカー28台)の車が登場し,パトカーとのカーチェイスという要素も盛り込まれている。さながら,過去のニード・フォー・スピードの集大成といった内容だ。

 

 本作の舞台は,一般車が往来する公道。「ROSEWOOD」「GRAY POINT」「DOWNTOWN ROCKPORT」「POINT CAMDEN」という,四つのエリアに分かれた広大な市街地マップが用意されており,一つの都市がまるまる再現されている(架空の都市だが)。
 各エリアには,隠れ家となるセーフハウス,チューニングパーツの購入などを行うショップ,車を購入できるカーディーラーが点在している。マップはかなり広大だが,ナビ機能が使えるので道を憶えていなくても安心だ。とはいえ,レースやパトカーとのカーチェイスに勝利するためには,マップを頭に叩き込んでおくのがベストだろう。

 

 ゲームモードはストーリーに沿って展開される「シナリオモード」,指定された車種,コース,イベントでさまざまな課題に挑戦する「チャレンジシリーズ」,クイックプレイや独自にレースをカスタマイズして楽しめる「アーケードモード」が用意されている。もちろん,LANやインターネットを利用した「マルチプレイ」もある。
 本稿では,本作のメインである「シナリオモード」を中心に見ていこう。

 

 主人公は,ストリートレーサー「レーザー」との賭けレースの罠にハマり,愛車(BMW M3 GTR)を奪われたうえ,現場に来た警察官に逮捕されてしまう。一方レーザーは奪い取った車で勝利を重ね,ついにブラックリスト(指名手配者リスト)の頂点へと上り詰める(それはこの世界では名誉なことなのだ)。主人公は愛車を取り戻すため,協力者であるミアと共に,ブラックリスト・ランカーになることを決意する。
 シナリオモードには上記のようなストーリーが用意されており,愛車を取り返すべくストリートレーサー達に戦いを挑む。それは「モスト・ウォンテッド」(最重要指名手配者)という,ストリートレーサーにとって栄えある称号を目指すことでもあり,同時に,パトカーに追われる道に足を踏み入れることを意味する。

 

一般車も走っており,一瞬の判断が明暗を分ける。わざとぶつけてライバルやパトカーの邪魔をするのもアリ 広大なマップの中を自由気ままに走れる。ゴルフ場,スタジアム,刑務所などもあり,ただのドライブも楽しい 4エリアはそれぞれ特徴が異なり,移り変わる風景を楽しめる。だが,レース&逃走中は風景を見ている暇はない

 

ポルシェやランボルギーニなどの高級スポーツカーも登場。カスタマイズして爆走できるなんて普通ありえない 追尾されているとパースートブレイカーポイントが表示されるなど,状況に応じて表示の変化するマップが面白い 順番に課題をクリアしていくチャレンジシリーズは,ちょっと遊ぶのに最適なモード。しかもボリューム満点

 

 

■15人の名だたるランカーを倒し頂点を目指せ

 

レーザーの罠にハメられて,奪われてしまったスポコン仕様のBMW M3 GTR。内装がはがされ,ロールゲージが組まれている。ボンネットピンやロールゲージパッドまで再現してあるところが凄い

 主人公が倒すべきブラックリスト・ランカーは合計15人。いきなりレーザーには挑めず,最下位のランカーから倒していくのだが,各ランカーに挑戦するには三つのイベントで条件を満たす必要がある。
 一つめはストリートレースで規定の勝利数を稼ぐ「バトルイベント」。二つめはパトカーの追走からクリア条件を満たして逃げ切る「マイルストンイベント」。そして三つめが,ひたすらバウンティポイント(警察の“逮捕したい度”)を上げることに専念する「バウンティイベント」だ。
 これらの条件を規定数クリアすることでランカーへの挑戦権が得られるのだが,上位ランカーになるほど条件は厳しくなっていく。ランカーに勝利したら,次のランカーに挑戦するために再び条件を満たしていくという流れで,ゲームは展開していく。

 

 レースがメインの「バトルイベント」には,周回コースを走る「ストリート」,スタートからゴールまでの片道コースを走る「スプリント」,短距離を走り抜ける「ドラッグ」,周回コースでラップごとに最下位が脱落していく「ラップKO」,コース上に速度計測地点が用意され,測定合計の高いドライバーが勝者となる「スピードトラップ」,制限時間内にコース上にある料金所を通過しながらゴールを目指す「トールブース」といった6種類のレースがある。
 ランカーによってレースの組み合わせはさまざまなので,得意なレースから挑戦するのがいい。バトルイベントに参加するには,フリーランモードで街中で車を走らせてイベント地点に行ってもいいが,メニューから直接イベントに参加する方法もあるので便利だ。
 ちなみに「アンダーグラウンド2」にあった,市街地を走り回っているライバルにレースを仕掛ける(仕掛けられる)「エンカウンターバトル」は,今回用意されていないのが少々寂しいところ。

 

 レースのポイントとなるのが,爆発的な加速を見せるニトロ(NOS)をどこで使うかだ。モーションブラー効果が生み出す圧倒的なスピード感がたまらないので多用しがちだが,肝心なときに使えなくては意味がない。ニトロゲージは走行していれば回復するため,ニトロを最大限に生かせるよう「ここぞ!」というタイミングで効果的に使っていきたい。

 

 レース自体の難度は比較的低めに設定されており,ライバル車も事故を起こすし,ショートカットを使うと少しだけ有利になるなど,どのレースも何度か挑戦すれば勝つためのコツがつかめる。
 とはいえ,プレイヤーが独走していれば猛烈な勢いで追い上げてくるし,ライバル達が先行していても徐々に追いつけるといったアーケードゲーム的なバランスになっており(賛否両論ありそうだが),接戦の熱いバトルになることが多い。とくに中盤以降は相当な腕か根気が必要になるだろう。

 

 レースや逃走を有利に展開させるために速い車を購入し,カスタマイズして強化したいところだが,これが思うようにいかない。というのも,購入できる車やカスタマイズパーツの多くはロックされており,ランカーを倒すことで解除されるため,なかなか上位スペックへの買い替えができないのだ。逆に,カスタマイズ費用でお金の工面に困ることはほとんどなかった。

 

 またランカーに勝利すると,ボーナスマーカーと呼ばれる六つのマーカーから二つを選ぶ「くじ引き」ができるのだが,これが面白い。くじの「?」マーカーは開くまで中身が分からず,中にはお金や逮捕免除権のほか,なんと勝利したランカーの車が入っていることもある。ほかにも,通常では販売されていないカスタマイズパーツが買えるバックルームパスなどが用意されており,ワクワクしてしまう。

 

条件をクリアしないとブラックリスト・ランカーに挑戦できない。上位ランカーになるほど条件は難しくなる バトルイベントとマイルイベントの内容は各ランカーごとにいろいろ。得意なものからクリアしていくとよい ランカーを倒すとできる「くじ引き」が燃える。カスタムチューン済みのランカーの車をもらうのが一番嬉しい

 

エアロパーツ,チューニングパーツ,バイナルを購入可能。外見を変えるとヒートレベル(追跡警戒レベル)が減少 当然? お美しい女性陣も多数登場する。この人は打倒レーザーの協力者であるミア。思わずウットリの美しさ アンダーグラウンド2と同様,さまざまな情報がメールやモバイルメッセージで届く。必ず目を通しておこう

 

 

■パトカーとのカーチェイスこそ本作の醍醐味か

 

アーケードゲーム的な味付けなので敵車には補正が入る。引き離されても追いつける可能性は高い。逆もしかりで,大きく引き離したのに,いつの間にか追いつかれることもしばしば。自然に接戦が多くなり非常に燃えるのだが,賛否両論ありそうな部分でもある

 パトカーとのカーチェイスがメインとなるのが,「マイルストンイベント」と「バウンティイベント」だ。「マイルストンイベント」はランカーごとに“最低2分間追跡される” “追跡中に被害額を20000まで上げろ” “ロードブロックを最低6回かわせ” “190km/h以上の速度でスピードトラップを通過しろ”といった課題が用意されており,課題を達成したうえでパトカーの追走を振り切ればクリアだ。
 もう一つの「バウンティイベント」は,パトカーに発見された状態で始まるが,どんな無謀運転をするかは自由。これといった特殊条件はない。
 この二つのモードは同時進行が可能だったりと,割と融通が利く。マイルストンイベントで課題クリアに挑戦中に別の課題のクリア条件を達成したり,バウンティイベントで逃げ回っている内にマイルストンイベントのクリア条件を達成したりすることもある。そして,どちらのモードもパトカーから逃げ切れば,ランカーへの挑戦に必要になるバウンティポイントが得られる。

 

 パトカーの追跡具合は「追跡ゲージ」で判断でき,パトカーが近づいてくればARREST側に,離れていけばESCAPE側にゲージが進む。パトカーから逃れるとクールダウンモードに入り,この状態で一定時間が経過すれば逃げ切ったことになる。
 クールダウンモード中にパトカーに見つかると再び追跡されるため,見つからないことを祈りながら走ったり,クールダウンゲージの進みが早くなるセーフポイント(マップに表示される)に入ったりなど,隠れて行動することになる。なお,セーフハウスに入れば即逃走完了となるので,マップで位置を把握しておきたいところだ。

 

 パトカーの追走は最初は簡単に振り切れるのだが,違法走行を続けていくと使用する車ごとにヒートレベル(追跡警戒レベル)が上がっていき,パトカーの追跡も厳しくなる。周りを囲んで一気に取り押さえようとしたり,ロードブロック(パトカーを並べて道路を封鎖)を使ってきたり,追跡ヘリまで登場したりするのだから,たまらない。
 中でも怖いのがスパイクベルトと呼ばれる,タイヤをパンクさせる装置。踏んでしまうと走行不能となり即逮捕だが,車内では常に警察無線を傍受しており,ロードブロックがどこに設置されたとか,スパイクベルトがロードブロックの左右どちらかに配置されたといったやりとりが聞ける。ヤツらの先を読んで妨害を回避していくのが,実に楽しい。

 

 ロードブロックやスパイクベルトをかわすときなど,繊細なハンドルさばきが必要なときに便利なのが,「スピードブレイカー」と呼ばれる機能だ。これを使うと,専用ゲージを消費するあいだ(走行中に溜まっていく)スローモーションになり,ロードブロックのパトカーとパトカーの間を狙って突進するなど,緻密な運転が可能となる。
 レース時にも効果絶大で,オーバースピードで進入すればクラッシュするような直角コーナーでも,スピードブレイカーを使用することでハイスピードで抜けられる。まさにバレットタイムのレースゲーム版といえる機能だ。

 

 パトカーを振り切るための重要なテクニックはいくつかあるが,手っ取り早いのが「パースートブレイカー」を利用することだ。市街地には,破壊できる巨大オブジェクトがいくつか存在しており(ミニマップ上の△マーク),突進すると巨大なドーナツが転がったり,ガソリンスタンドが爆発したりして,パトカーの追走を阻止できるのだ。

 

 また,絶対に味わいたくないのが「逮捕」。しかしプレイ中は,何度も悲しい逮捕シーンを見ることになる。逮捕されると,犯した違法走行分の罰金を支払うことになり,所持金で罰金が払えなければゲームオーバーだ。罰金を払って釈放されても,同じ車で3回逮捕されると車が没収されてしまう。ちなみに逮捕ムービーもバウンティポイントにより何パターンか用意されているが,それもまぁあまり見たくはないかもしれない。

 

 最後に,シナリオ以外のゲームモードも見てみよう。アーケードモードは「クイックプレイ」と「カスタムバトル」が用意され,サクッとレースを楽しんだり,自由な設定でレースを楽しんだりできるモードだ。
 オンラインではEA.comに接続して,世界中のストリートレーサーと「ストリート」「スプリント」「ドラッグ」で対戦できる。(2006年1月現在)多くのホストが立ち上がっており,対戦者捜しは苦労しないのが嬉しいところ。各レースともオンライン専用のブラックリスト15人を見ることもできるので,レースを重ねてランカー上位に名前を残してほしい。

 

 今回もカリカリにチューンされたマシンを駆って,美しく再現された都市の中でライバル達を相手に爆走し,異常なまでのスピード感を味わえるのがたまらない。しかも映画では見慣れているが,現実ではまず体験できないパトカーとのド派手なカーチェイスも存分に楽しめる。
 マフラーから奏でられるエキゾーストノートと「EA TRAX」のノリノリのBGMをバックに,アドレナリンが体中から吹き出すこと間違いなし。ボリュームあるゲームモード,そしてコテコテのレーシングシミュレーションとは違う独特のスピード感/爽快感/緊張感のゲーム性は,従来のニード・フォー・スピードファンでなくてもお勧めできる。本作で爆走して日頃のうっぷんを晴らしてみてはいかが?

 

スピードトラップではレース順位は関係なく,速度計測点(カメラアイコン)を通過した速度合計で順位が決まる 短距離を走り抜ける「ドラッグレース」。相変わらず悪どいタイミングで一般車が現れるなど,イライラさせられる ニトロ(NOS)の強烈なスピード感は思わずアクセルを緩めてしまうほど。静止画でも十分に速さが伝わるだろう

 

ヒートレベル(マップ左上のマーク)が上がると,パトカーも精鋭部隊が登場する。逃走するのはかなり難しい ロードブロック+スパイクはスピードブレイカーを使うと回避しやすい。体当たりの場合は車両後部を狙うこと パトカーが追尾中にマップに点在するパースートブレイカーに突入すると,崩落して後続のパトカーは巻き込まれる

 

 

タイトル ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド
開発元 EA Canada 発売元 エレクトロニック・アーツ
発売日 2005/12/22 価格 オープンプライス
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/933MHz以上,メインメモリ:256MB以上,グラフィックスチップ:DirectX 9.0c以上に対応,グラフィックスメモリ:32MB以上,HDD空き容量:2GB以上

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