― プレビュー ―
Total Warシリーズ第4弾は再び中世ヨーロッパ
Medieval 2: Total War
Text by 奥谷海人
2006年3月28日

 

■作を重ねるごとに進化する,RTSシリーズの決定版

 

まだ発表されたばかりだが,2006年末にはリリースされるという「Medieval 2: Total War」。キャラクターモデルのアップデートやゲームプレイでの工夫など,前作「Rome: Total War」以上の深みある歴史シミュレーションが楽しめそうだ

 セガがThe Creative Assemblyを買収したのが,ちょうど1年前の2005年3月のこと。直後にコンシューマゲーム機向けの「Spartan: Total War」が発表されたこともあり,質の高さで定評のあったPC版Total Warシリーズの行く末を心配していたファンは,筆者だけではなかったはずだ。
 そんな中,今年になって新作「Medieval 2: Total War」(以下,Medieval 2)の開発が明らかになった。Total Warは,2000年リリースの「Shogun: Total War」に始まった,同社のRTSシリーズ。
 ストラテジーというジャンルに,本格的な3Dグラフィックス時代の到来を告げたShogun: Total Warは,ターン制の戦略マップの併用や,何千体にも及ぶユニットの戦闘シーンの迫力など,単なる3D化に留まらない豊富なアイデアで,際立った注目を集めた。続く「Medieval: Total War」(2002年),そして「Rome: Total War」(2005年)と,幾多の拡張パックやMOD作品まで,シリーズを重ねるごとにクオリティやファンコミュニティを充実させており,日本でも根強い人気を誇る。

 

 ゲーム開発を手掛けるのは,元々Electronic Artsをオーストラリアで率いていたMike Simpson(マイク・シンプソン)氏らが2005年に立ち上げた,The Creative Assemblyのオーストラリア支部だ。Medieval 2では,1万体の兵士を表示できるという「Rome: Total War」のゲームエンジンをオーバーホールしたものを利用し,ピクセル単位でのライティングを実装しているのに加え,ダメージモデルや地形レンダリング,キャラクターAIやアニメーションが大きく改良されているという。

 

 

 

 

■さらに細かく描かれる21カ国250種以上の兵士ユニット

 

よく見ると,馬や兵士の防具に違いがあるのが分かる。1体1体が独立した動きをしており,ヘルメットの光り方も微妙に異なっている。従来の“大量の同じユニット”といった不気味さも,ぐっと押さえられているはず

 Medieval 2は,第2作「Medieval: Total War」と同じく中世のヨーロッパを舞台とする。時代は1080年から1530年あたりまで。ちょうどセルジュク朝トルコなどイスラムの勢いが増し,十字軍遠征への決断でヨーロッパが揺れる頃から始まり,モンゴルの来寇,百年戦争などを経験しながらも,やがてプロテスタントの勃興やルネッサンスの開花を迎えるという,ヨーロッパ封建社会の華やかなりし時代である。
 本作で用意されたファクションは,すべてマルチプレイヤーモードでも利用できる,21の国や自治領だ。イギリス,フランス,神聖ローマ帝国,ビザンチン帝国,トルコ,ロシア,ポーランド,スペイン,ポルトガルといった大国。スコットランド,デンマーク,ハンガリー,エジプト,ミラノ,ベネチア,シチリア,教皇領といった小国や都市国家。そしてムーア,モンゴル,ティムール,アステカといった異民族である。
 登場勢力の中に,ヨーロッパ大陸から遠く離れた新大陸のアステカが含まれているのは,かなり意味深。序盤は海を隔ててゆっくりと過ごせそうだが,後半はヨーロッパ文明の侵略に対して,いかに立ち向かうのか。まだ詳細は明らかではないものの,舞台となる地域はすべて一つのマップに収まるという。大航海時代へと続く拡張パックも想定でき,非常に面白い進展が期待できそう。

 

 画面写真を見れば分かるように,キャラクターのディテールは前作より細かくなっている。アーマーや盾,馬の鞍とタペストリーのテクスチャはもちろん,顔グラフィックスも微妙に異なっており,フィニッシュムーブの仕草などのアニメーションも増えて,ある意味不気味だったキャラクターモデルの画一的な風貌が軽減されている。
 今回からは,ユニットがグループではなく個々の兵士ユニットへと分割されているかのように,一つ一つのキャラクターが実際に多様な動きを見せ,モーションキャプチャによる攻撃や防御などの1000種近いアニメーションが,各ユニットに合わせて加えられた。次にどの敵兵を攻撃するのか,顔の向きで判断できるほどだ。

 

 

 

■宗教や都市建設の新概念で,より深いゲームプレイ

 

攻城兵器には,初期型のキャノンまで加わった。城壁は2重,3重にしていくことが可能で,敵の本拠地を攻め落とすのは一筋縄ではいかないはず。この画面では守備側が突撃しているようだが,このような消耗戦も必要になるのか!?

 Medieval 2では,ゲームプレイにもさまざまな改良点が見られる。まずは,「宗教」の概念が鮮明に取り入れられていること。教皇庁を頂点にした中世キリスト教の秩序では,ローマ教皇の意向は政治に重要な位置を占める。このことから,キリスト教国には同盟のようなものが成り立っており,十字軍を送ったり教会を建てたりすることでローマ教皇からの支持率がアップしたり,逆に教皇と近しい国々を攻めると破門の憂き目に遭ったりするのだ。
 教皇にも領主達と同じように寿命や相続の概念があり,より強力な国家を築き上げることで,地位の高い枢機卿を教皇領に送り込めるので,自国出身の教皇を誕生させることも可能かもしれない。イスラム教圏にも同じような組織関係があるのかは,現在のところ判明していない。

 

 また都市建設も,Rome: Total Warとは大きく異なるシステムになった。Medieval 2では,自国の領土を城にするか街として繁栄させるかをプレイヤーが選択でき,防衛拠点として強固な城を作り出すか,はたまた商業都市として多くの収入を得るかが,各勢力の能力や地勢,プレイヤーのプレイスタイルによって決定できるのだ。都市には農民や商人,宣教師などのNPCが存在し,他国に送り出して影響を与えられる。ローマやベネチアなら,ルネッサンスに関わる特別施設があったり,イギリスなら長弓兵の養成所があったりと,変化にも富んでいる。

 

 大航海時代へと突入していく時代背景だけに,本作では海戦も重要な要素となりそうだ。長距離向けの武器や攻城兵器が進化した時代でもあり,合計250種以上というユニットを駆使した,派手なバトルが楽しめることは間違いないだろう。マルチプレイヤーモードに関しては大きな発表は行われていないものの,何か新しい遊びが提唱される可能性は十分にある。
 今回は主な機能をざっと書き出してみたが,年末にはリリースされる予定という本作には,まだまだ未発表の部分も多い。詳しくは,5月にロサンゼルスで行われるE3 2006で発表されるはずなので,今から楽しみに待っていよう。

 

 

タイトル メディーバル2:トータルウォー 日本語版
開発元 Creative Assembly 発売元 セガ
発売日 2007/04/05 価格 7800円
 
動作環境 OS:Windows XP/Vista(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.50GHz以上,メインメモリ:512MB以上,グラフィックスチップ:ピクセルシェーダ1.0対応以上,グラフィックスメモリ:128MB以上,HDD空き容量:11GB以上

(C)2006 The Creative Assembly Limited

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http://www.4gamer.net/review/m2tw/m2tw.shtml