― プレビュー ―
刀と銃で異星人やゾンビと戦う,トンデモ系設定が魅力的なMMORPG
LOST ONLINE
Text by 大路政志
2006年10月11日

※本稿は9月26日(オープンβテスト)時点でのゲーム内容に準じています

 

最大のウリは,「X-FILE」的未来を彷彿とさせる世界設定?

 

 9月22日にオープンβテストが開始された「LOST ONLINE」は,エムゲームジャパンが提供するMMORPG。いわゆる「Diablo系アクションRPG」の操作系統が採用されており,PCゲーマー(RPGファン)にとっては,比較的遊びやすいタイプの作品といえる。背景やキャラクターが(基本的に)2Dグラフィックスで表現されていることもあり,必要環境/推奨環境も低めに抑えられているから,操作難度/動作環境の両面において,プレイしやすいMMORPGといえるだろう。

 

 しかし,「無難なMMORPG体験」を求めてLOST ONLINEに手を出すと,そのユニークな世界観に,アッと驚かされるに違いない。同作の舞台となるのは,突出した科学力を誇る「異星人」(ゲスト,と呼ばれる)によってコントロールされた架空世界の「もう一つの日本」なのだ。この世界では,1963年の「ジョン.F.ケネディ大統領暗殺事件」も,1969年の「アポロ11号月面着陸」も,1991年の「湾岸戦争勃発」も,すべてその背後に「異星人」や「管理者」(異星人が地球に送り込んだゲストの尖兵)が暗躍しているのである。
 ゲームのスタート地点は2002年の浅草。異星人やW.I.T.O(World Integrate Treaty Organization,世界統合機構)軍による侵攻で,ほぼ無政府状態となった日本を舞台に,プレイヤーは反W.I.T.O勢力であるEL.A(Eternal Alliance:エターナル連合)側の立場として戦うことになる。
 まるで映画「X-FILE」の延長線上にあるかのような,“トンデモ”テイスト溢れる世界観は,決して万人受けするものではないだろう。だが,逆に一部のマニアにとっては,極めて魅力的な世界観ともいえるし,一般的なファンタジー/SF設定には食傷気味だという人にとっても,なかなか興味深い「遊び場」として機能するはずだ。実在する銃器なども装備品として多く登場するので,ミリタリーファンにとっても要チェックのタイトルといえるだろう。

 

「政府」「エイリアン」「陰謀」といった単語が好きな人なら,楽しめること請け合いの世界観。過去/現在/未来を股にかけ,異星人の手によって崩壊しつつある世界を救い,歴史を修正するのだ

 

 

アクション性の高い,刺激的な戦闘が楽しめる

 

ゲームスタート直後のキャラクター。ある意味衝撃的なルックスだが,カスタマイズの幅はかなり広い

 LOST ONLINEのキャラクターメイキングは,名前と性別が設定できるだけという,いたってシンプルな作りになっている。とはいえ,ゲームを進めていけば,さまざまな衣装やカツラ(プレイヤーキャラクターはスキンヘッドなので,カツラをかぶることで自由に髪型が変えられる)が手に入るし,現時点では未実装だが,「警察庁」「正規軍」「情報局」という3種の職業(所属)に就くことも可能。武器の種類も,世界各国の鈍器/刀剣類や,さまざまな銃器が登場するので,アバター性は思いのほか高いといえるだろう。

 

ややクセはあるものの,一般的なクリックゲーに近い操作感覚。DiabloタイプのアクションRPGをプレイしたことがある人なら,簡単に覚えられるはずだ

 ゲームは,2002年の東京都台東区役所地下1階からスタートする。前述したように,本作はいわゆるDiabloタイプのアクションゲーム(一般的にはクリックゲーと呼ばれる操作系統)だ。地面を左クリックすればそこへ移動し,対象を右クリックすれば攻撃を繰り出す。ターゲットを調べたり,会話をしたい場合は,Ctrlキーを押しながら左クリックすればいい。
 クリックタイプのアクションRPGにしては,若干クセのある操作系統ではある。とはいえ,台東区役所地下1階はチュートリアルエリアとなっており,アルファ訓練センター/ベータ訓練センター/オメガ訓練センターでの(各種ゾンビや変異生命体との)戦闘を経験すれば,操作技術は一通り身に付くはずである。

 

敵の出現数が多いので,命中精度の低い「ばらまき型」の銃器にも価値がある。銃器のタイプとその用途は,クリックタイプのMMORPGとしては,かなりうまく表現されているように思える

 なお,繰り返しになるが,本作はいわゆるクリックゲーだ。白兵戦用武器を用いて敵を攻撃するスタイルに関しては,(オート攻撃モードは用意されているが)まるでモグラ叩きのような感覚で,モンスターを次々と,ひたすらクリックする作業が中心となる。だが,ほぼすべての白兵戦用武器が投擲可能(ディレイタイムは設定されているが,回数制限はない)だし,銃器を装備している場合,クリックした地点を撃つので,プレイヤースキルの優劣は,従来のクリックゲーよりも反映されやすい。
 また本作では,Spaceバーでジャンプ動作が行える。ジャンプは持久力ゲージを消費するので連発こそしづらいが,滞空中は食らい判定が消える(無敵状態)ので,上手く活用すれば,被ダメージをかなり軽減できるだろう。同様に持久力ゲージを消費することで「走る」こともできるので,移動/ジャンプ中も可能な射撃と組み合わせれば,状況に応じた戦術が楽しめるわけだ。
 もちろん,パーティを組んだり,強力な武器を装備したり,回復アイテムを使いまくったりすれば,難しいことを考えなくてもゲームは進められるので,ゲームに不慣れな人も心配しなくていい。本作の意外とテクニカルなゲーム性は,中級〜上級者向けのフィーチャーと考えていいだろう。

 

アルファ訓練センター/ベータ訓練センター/オメガ訓練センターはチュートリアルエリアとして機能する。一通り攻略すれば必要な装備が揃い,レベルも上がり,操作方法も身に付くはずだ

 

 

奥行きのあるキャラクター成長システムも魅力的

 

キャラクターはレベルアップのほかに,別途スキルを覚えることでも強化できる。ただし,一般的なMMORPGよりも,スキルの効果(必要性)はやや控えめに設定されているので,スキル未習得でも,ある程度は頑張れるはずだ

 本作の基本的なゲーム展開は,クエストを絡めつつ,ゾンビやミュータントといったモンスターをバリバリとなぎ倒し,ひたすら経験値とお金を貯めてキャラクターの強化に励むという「ハック&スラッシュ」タイプだ。
 この手のタイトルの場合,「戦闘システム」と「キャラクター強化システム」が大きな評価ポイントとなるわけだが,戦闘システムに関しては前述したとおり,合格点といっていいレベルだと感じた。
 キャラクター強化システムに関しても,なかなかの充実っぷりだ。キャラクターの成長は基本的に「レベル制」で,敵を倒したときやクエストクリア時に得られる経験値が,一定値に達すればレベルアップする。レベルアップすればステータスポイントが5点得られ,それを生命力/体力/持久力/技術/知能/速度といったステータスに振り分けられるわけだ。

 

変異体モンスターを倒すと,経験値の代わりに「褒章」ポイントが得られる。これは,NPCを通じて同ポイントのお金,もしくは2倍の経験値と交換できるようになっている。お金を重視するか,レベル上げを急ぐか,プレイヤーが任意に選択できる点が嬉しい

 プレイヤーの間では,例えば近接戦闘特化型なら体力/持久力/速度/知能を集中的に伸ばし,銃撃戦特化型なら技術/持久力/体力を集中的に伸ばすなど,さまざまなステータス振り分けパターンが研究されている。筆者の場合,いわゆる特化型のステータス振り分けが不安だったので,生存率を高めるために,技術>速度>持久力>体力という感じで優先度を設定し,銃撃戦重視の振り分けパターンを実践した。
 しかし,銃撃に必要な弾薬が重く,常に重量オーバーで移動力が低下していたし,速度のステータスは,近接戦闘武器の攻撃速度が上がるものの,銃撃戦でのメリットは薄い。レベル15までキャラクターを育てたが,次は技術>持久力>体力の三点に絞るか,体力>速度>持久力>知能を優先してスキル使用も考慮した近接戦闘タイプを育てようか……,などと,あれこれ悩んでしまっている。
 レベル15程度のキャラクターだと,最初のマップ(時代)である2002年浅草のクエストをこなしていれば,案外簡単に育てられるゲームバランスなので,(序盤クエストを攻略しつつ)ゲーム内通貨を稼ぐついでに,さまざまなタイプのキャラクターを育成しているプレイヤーも多くいるようだ。筆者を含めたプレイヤーの動向を見ている限りでは,リプレイアビリティもなかなか高いといえるだろう。
 なお,キャラクターのレベルアップ以外の要素として,武器/防具の改造や,弾薬の種類による銃撃能力の変化など,やり込みがいのある要素が盛り込まれている。ゲーム内倉庫はアカウント単位で管理されているので,同一アカウントならアイテムの受け渡しも簡単だ。そういった点も,リプレイアビリティを高める要因の一つなのかもしれない。

 

装備のアップグレード(改造)は,キャラクターの戦闘力を高めるためには欠かせないシステム。銃器や刀剣類だけでなく,防具のアップグレードも可能だ

 

 

意外と「遊べる」秀作。今後のアップデートにも期待したい

 

最近のMMORPGと比較すると,グラフィックス面では若干見劣りするものの,これはこれで味がある。荒削りだが力強いキャラクターデザインや,かなり丁寧に(効果的に)描き込まれている背景グラフィックスに,好感を抱く人も少なくないだろう

 そのほかにも,LOST ONLINEには多種多様な仕様が盛り込まれている。いくつかは未実装のものだが,ここで軽く紹介しておこう。
 まず,ゲームをプレイしていて思わず感心してしまうのが,「リアリティ」や「生活感」を演出する,さまざまなギミックである。画面を見れば分かるように,ゲーム内に再現された“もう一つの日本”は,なかなかよく出来ている。地形や建物が忠実に再現されているわけではないものの,日常的に目にする看板や,実際に足を運んだことがある地名などが,ゲーム内に多数登場している。日本人であれば,街並みを眺めているだけでも面白いはずだ。

 

どこかで見たことのある看板や風景が多数存在するので,ときにはじっくりと観光してみるといいだろう

 

 また,街中に存在するベンチや郵便ポスト,タクシー,バスなどが,単なるオブジェとしてだけでなく,しっかりとゲームシステムに直結している点にも,感心させられる。ちなみにベンチ(椅子)は,調べることで休憩でき,郵便ポストには銀行の個人ロッカーと同等の機能(いわゆる倉庫)が付与されている。そしてタクシーやバスは,規定の賃金を支払えば,移動手段として利用できるのだ(いずれは,移動手段として電車が追加されたり,乗り物としてバイクが登場したりするようだ)。

 

 

 協力型ミッションクエスト「アサルト」や,ストーリー仕立ての連続クエスト「キャンペーン」,対人戦闘が楽しめる「アリーナ」など,ルーチンワークに陥りがちなゲーム展開のスパイスとして機能する仕様も,盛りだくさん。筆者のキャラクターではまだレベル/装備が足りないものの,ゲーム内の「パラレルワールドシステム」を利用すれば,未来や過去の日本に移動し,より刺激的な戦闘や,核心に迫ったストーリー展開が楽しめるようだ。
 LOST ONLINEは現在オープンβテスト中だが,エムゲームジャパンによると,基本プレイ料金無料/アイテム課金制の正式サービスが,近日中に開始される予定となっている。キャラクターのモーションや一部のグラフィックスの粗さ,インタフェース周りの分かりづらさなど,ゲームの「手触り」は若干ざらついている印象を受けるが,ゲーム性そのものに関しては,意外なほど(?)の秀作。世界観やストーリー展開に関心があるという人には,ぜひプレイしてもらいたいものだ。

 

パラレルワールドシステムのおかげで,現代だけでなく,未来や過去の日本を舞台に冒険できる。未実装の時代を見ると,「1582年 日本 本能寺」などという,非常に興味深いマップが……

 

タイトル LOST ONLINE
開発元 MonsterNet 発売元 エムゲームジャパン
発売日 2006/10/23 価格 基本プレイ料金無料(アイテム課金制)
 
動作環境 Windows 2000/XP,Pentium III/800MHz以上,メモリ 256MB以上,DirectX 9.0以降に対応したビデオカード,ビデオメモリ 32MB以上,HDD空き容量 6GB以上

2006 Published by MGAME JAPAN Corp. Copyright(C)2006 Monsternet.All Rights Reserved.

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http://www.4gamer.net/review/lostonline_pre/lostonline_pre.shtml