» Xbox 360版から遅れること約半年という短期間で,PC版に移植された「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」。DirectX 10の正式サポートや,「Steam」を通じた配信など,PC版ならではといえるトピックがPCゲーマー達の話題になったが,ゲームとしての魅力や完成度は,どれほどのものなのだろう。UHAUHA氏/Gueed氏という遊びのプロ達に,大いに語ってもらった。
Xbox 360版から半年,世界中で大ヒットした
ロスト プラネットがPC版で登場
ロスト プラネットがPC版で登場
極寒の惑星を舞台に,未知の生物エイクリッドと,敵対する人類との戦いが描かれたロスト プラネット。キャンペーンモードは,良質のストーリーと随所に挿入されるリアルタイムレンダリングムービーで,さながら映画のように楽しめる |
2006年12月に,カプコンがXbox 360向けにリリースしたアクションシューティング「ロスト プラネット エクストリーム コンディション(以下,ロスト プラネット)」。すでに全世界で140万本以上が出荷されているミリオンタイトルである。カプコンらしいストーリー展開,ゲーム性,緻密なグラフィックスなどが話題となり,さまざまなメディアで取り上げられただけに,Xbox 360を持っていない読者でも,そのタイトルくらいは聞いたことがあったろう。
当サイトでも逐次情報をお伝えしてきたとおり,そんなビッグタイトルが,Xbox 360版の発売から約半年という短い期間でPCに移植された。ついにロスト プラネットが,PCで遊べる日がやってきたのである。
ロスト プラネットは,Valveのゲーム配信システム「Steam」を通じて配信されている。店頭で購入できるメディア付きのパッケージ版も販売されているが,こちらもSteam経由でゲームを起動することになる。
Steamの詳細については「こちら」の記事を参照してもらうとして,Steamを経由する利点は,認証機能により,メディアを入れなくてもゲームが起動できるところにある。また,ゲームの追加マップやアップデートパッチなどがリリースされたときも,ゲームを起動した際に自動で更新されるので,常に最新状態のゲームが楽しめるわけだ。
ロスト プラネットのもう一つの大きな特徴としては,DirectX 10の正式サポートが挙げられる。「こちら」の記事を見ると分かるように,Windows Vista/DirectX 10対応グラフィックスカードを用意すれば,ライティングやシャドウなどの特殊効果の表現が,DirectX 9.0c環境よりもはるかに豊かになるのだ。
また,Xbox 360版の最大解像度は1280×720ドットであるのに対し,PC版では2560×1600ドット以上の解像度がサポートされている。それなりのPC環境が整っていれば,Xbox 360版とは比べものにならないほどのリッチなグラフィックスが味わえるという点は,PC版の最も分かりやすい魅力といえよう。
ちなみに,筆者は未だにWindows XP環境ということもあり,今回のレビューで使用した画像はDirectX 9.0cのものだが,それでも,ロスト プラネットのグラフィックスは美しいの一言である。グラフィックスオプションもかなり細かく設定可能(関連記事は「こちら」)なので,プレイ環境に応じた最適な画質設定でプレイできる点もうれしいところだ。
さて,やや前置きが長くなってしまったが,ここからは,ロスト プラネットがどういうゲームなのか,どこに魅力があるのかをお伝えしていこう。
戦いの舞台となるフィールドは雪原,洞窟内,施設内,火山地帯など変化に富んでいる。地形の特徴もうまく表現されており,地形に応じた戦術が求められる場面も少なくない |
主人公のウェイン(左)をサポートする謎の男 ユーリ(中央)。そして,ルカとその弟のリック(右)。主人公ウェインの役は,人気韓国人俳優のイ・ビョンホンが熱演している。それにしても,極寒の世界なのに胸元が眩しいルカが美しすぎる |
極寒の惑星「EDN-3rd」を舞台に,
未知の異形生命体「AK」との戦いが始まる
未知の異形生命体「AK」との戦いが始まる
高い攻撃力,防御力を誇るロボット兵器,VS。ウェインが乗降する際の可動ギミックなど細かいところまで表現されており,メカファンなら必見である。どことなくマシーネンクリーガーに似ていると感じるのは,筆者だけだろうか? |
時は実験年代T.C.-80。人類は住み慣れた地球を離れ,極寒の惑星「EDN-3rd」への入植実験を開始するが,惑星に住み着いていた未知の異形生命体「エイクリッド」(以下,AK)」の攻撃を受け,撤退を余儀なくされる。
しかし,人類はAKの体内に「サーマルエナジー」(以下,Tエナジー)と呼ばれるエネルギーがあることを発見し,そのTエナジーを,新たなエネルギー源として利用する方法を開発。そして,Tエナジーを動力にする対AK兵器「バイタルスーツ」(以下,VS)を投入し,再び極寒の惑星へと向かったのだ。
ところが,人類を待ち受けていたのはAKだけではなかった。惑星では,かつての撤退時に取り残された人々からなる「雪賊」同士の,勢力争いが繰り広げられていたのである。
そんな中,雪賊のユーリは,氷漬けのVSの中からウェイン(主人公)を発見する。ウェインは,父ゲイルが率いる部隊の一員として,惑星の施設を捜索していたところ,巨大AK「ミドリメ」の攻撃を受けていた。その戦闘で父は殺され,ウェインはVSのコクピット内で意識を失ったまま,氷漬けにされていたのだ。
自分の名前と,ミドリメのこと以外の記憶を失ったウェインは,残された記憶を頼りに,父の仇であるミドリメを倒すべく,ユーリ達と行動を共にするのであった……。
ロスト プラネットにおけるキャンペーンモードの導入ストーリーは,上記のようなものだ。プレイヤーは,ミドリメとの戦闘によって父親と記憶を失った男,ウェインとなり,計11のシングルプレイキャンペーンを戦い抜く。
ミッションの前後(あるいは途中)にはムービーシーンが挿入されており,次々と判明する新たな事実や,徐々に取り戻されていく記憶,そして登場人物達との間に生まれるさまざまなドラマなどが,まるで映画のように展開されていく。
それぞれのミッションは設定された目的を達成するとクリアとなる。一部のミッションにはちょっとしたルート分岐があるものの,パズルや謎解き要素は一切なく,とにかく現れる敵を蹴散らしながら突き進んでいき,ミッション最後に登場するボス敵を倒すというゲーム展開だ。ある意味,オーソドックスなアクションシューティングといえるだろう。
極寒の惑星が舞台であるが,ミッションは,凍てつくような雪景色の中で繰り広げられるものばかりではない。施設内や市街地,高低差の激しい洞窟内,溶岩が流れ落ちる灼熱地帯などなど,変化に富んだマップが用意されている。
どのミッションにも広大なフィールドが用意されており,本当にEDN-3rdという惑星が存在するかのように,きめ細かく表現されたグラフィックスは圧巻。余裕があれば,じっくり景色を堪能するのも楽しいだろう。
グラフィックスの美しさもさることながら,サウンドも効果的に使われている。ゲーム中は基本的に環境音のみとなっているが,ミッションのクライマックスを迎えるようなシーンでは,管弦楽風の音楽が流れるのだ。そういった局面では,思わず「勘弁してくれよ!」と言いたくなるような,カプコン作品らしいサプライズが待ち受けているわけだが,無事にそこを切り抜けると,音楽がスーッとフェードアウトし,環境音だけの世界に戻る。特別な戦いを音楽で演出する手法は,プレイしていて非常に気持ちがいい。
同作のストーリー展開,グラフィックス,サウンドを総合的に見てみると,やはり「映画のような」という形容がしっくりくる。筆者がSF映画ファンだからということもあるのだろうが,ゲームの世界へグイグイと引き込まれるような「魅せ方」は,ロスト プラネットの大きな魅力といえるだろう。
回避にも利用できるジャンプ。リロード中に攻撃やジャンプはできないが,ジャンプ中であれば攻撃やリロードが可能ということを覚えておくと便利だ | 高所への移動や緊急回避に使えるロープアンカー。ぶら下がりながら上下移動も可能なので,敵集団の中に飛び込まなくても高所から一掃できる | 同時に携行できる銃器は2種類で,新たな銃器を拾うと現在使用中の銃器と交換される。同種であれば残弾数が増える |
ダメージは小さいものの,連射能力が高いマシンガン。中型AK相手でも,うまく火力を集中できれば大ダメージを与えられる | 単発だし,リロードに時間がかかるし,なにかと使い勝手の悪いロケットランチャーだが,その破壊力は大きな魅力である | ライフルはズームを使うとスコープモードになる。コクピットむき出しのVSならば,兵士をヘッドショットで倒して奪い取れる |
VSの両腕に当たる部分のアタッチメントにより,VS用武器の付け替えが可能だ。VS用武器を取り外して(拾って)ウェインが使うこともできる | VSはTエナジーを利用しており,ジャンプやダッシュなどを使用すると,減りが早くなる。VS搭乗時はTエナジーの残量に注意しよう | VSのライフゲージ(ダメージゲージ)がなくなると爆発する。脱出しないと死んでしまうので,急いで緊急脱出。連打! 連打! |
特性の異なる武器の使い分けや,
バイタルスーツの仕様が面白い
バイタルスーツの仕様が面白い
場所によっては,無闇に動き回るとどんどん敵が集まってきてしまい,手に負えない状況になる。複数の敵に攻撃されたら回避は難しい。あらゆるテクニックを駆使して対処したいところだ。ちなみに,こういう場合にはハンドグレネードを使うと効果的 |
スクリーンショットを見れば分かるように,本作は主人公が手前側に表示される,三人称視点のアクションシューティングだ。ウェインの操作については,移動がW/A/S/Dキー,視点移動/照準合わせがマウス操作で,攻撃が左クリックとなっている。
ほかにも,アクション(Eキー),ロープアンカー(Cキー),ジャンプ(Spaceキー),しゃがみ(左Ctrlキー),左右90度ターン(左Shift+AキーまたはSキー),リロード(Rキー),武器切り替え(マウスホイールクリック)など,多くのキー操作が用意されているが,このあたりは一般的なTPS/FPSとさほど変わらないので,PCゲーマーにとっては比較的プレイしやすいのではないだろうか。
筆者は最初,キーボード+マウスでプレイしてみたが,(ゲームパッド操作と比べて)マウス操作によって正確に敵が狙える点が心地よかった。しかし激しい戦闘シーンでは,移動しながら攻撃,リロード,ダイブ(移動キー+左Ctrl+Spaceキー)といった操作を素早く行う必要があるため,若干左手が忙しい場面もあった。キーアサインを自分の好みに設定するといいかもしれない。
なお,ロスト プラネットはXbox 360版として開発されたゲームなので,「Xbox 360 コントローラ for Windows」または「Xbox 360 ワイヤレス コントローラ」との相性が抜群だ。巨大AKの移動時や,銃撃時,被弾時,VSに搭乗しているときなど,さまざまなシーンでコントローラが振動するので,臨場感が増す。もちろん,一般的なPC用ゲームパッドでもプレイできるが,筆者としては,上記いずれかのコントローラをオススメしたい。
本作に登場する武器は,銃器がマシンガン,ショットガン,ライフル,ロケットランチャー,エネルギーガン,プラズマガンの6種類。そして投擲兵器としてハンドグレネード,ディスクグレネード,プラズマグレネード,ダミーグレネードの4種類が登場する。同時に携行できるのは銃器2種類,投擲兵器1種類となり,初期装備はマシンガンとハンドグレネードという組み合わせだ。しかし,フィールド上のあちこちに武器が落ちているので,現地調達で好みの装備を調えていける。
銃器はそれぞれに特徴があり,威力は弱いが連射できるもの,破壊力はあるがリロード時間が長いもの,弾が敵を追尾するもの,残弾数制限はないがサーマルエナジーを消費するもの,対AK/対VSに有効なものなどがある。どのタイミングでどんな武器を入手/使用するかは,ミッション攻略の大きなポイントだ。
また,VSから専用兵器を取り外し,それを持って敵と戦うこともできる。VS用の兵器ということで,威力は非常に強いのだが,重量があるため移動力が落ち,使いこなすのは案外難しい。
そのVSについて少し詳しく説明すると,自由に乗降可能な戦闘メカで,搭乗すれば,生身の状態よりも攻撃力/防御力が高くなる。本作には計6種類のVSが登場するが,それぞれ戦闘力/防御力が異なるほか,コクピットが剥き出しのタイプ,ジャンプ力があるタイプ,空中移動できるタイプ,ダッシュにより素早い動きのできるタイプ,二足歩行からバイクに変形可能なタイプなど,これまたさまざまな種類がある。
VSを乗りこなすには,いくつかの特殊操作を覚えなければならないが,最初に搭乗する際には操作インフォメーションが表示されるので,初めてのプレイでもそこそこ操作できてしまうはずだ。
ミッションの中には,VSに乗った状態でスタートするものもあるが,基本的には武器と同様,マップ上に“転がっている”ものを調達していく。コクピットが剥き出しの敵VSを発見したら,サクッと敵兵を倒して奪取するなんていうプレイも可能だ。
ちなみに,VSには耐久力が設定されており,攻撃を受けるとゲージが減り,最終的には爆発する。このとき緊急脱出(Eキー連打)しないと,爆発に巻き込まれてウェインは即死してしまう。それほどムキになって連打しなくても大丈夫だが,Eキーを連打している自分の姿を客観視すると,いかにも「緊急脱出」という感じで,なかなか愉快だ。ぜひ一度は緊急脱出にチャレンジ(?)してみよう。
大きなAKは足が速く,攻撃範囲も広い。逃げつつ“弱点”を攻撃していこう。ここを狙ってくださいといわんばかりの,オレンジ色の部分が弱点だ | ヤバイ! と思ったら,緊急回避用のアクション「ダイブ」の出番だ。マルチプレイでも多用するので,思い通りに出せるようにしたい | ロープアンカーを活用した,高所への移動が必須となるミッションもある。敵やAKに打ち込んで攻撃ポジションを変えることや,緊急回避にも使える |
序盤から登場する中型AK ドンゴ。尻尾の先端が弱点だ。高速回転しながらの突進をかわして,背後から攻撃すると楽勝で倒せる | 圧倒的な大きさにチビりそうになったウンディープ。ぜひチビってもらいたいところ。「逃げろ」と言われるが,弱点を狙えば倒すことも可能だ | 生身で敵VSに立ち向かうのは厳しいが,的確に弱点を攻撃すればマシンガンでもなんとかなる。着弾点に貼り付くガムグレネードも効果的だ |
初心者から上級者まで楽しめる
気持ちのいいアクションシューティング
気持ちのいいアクションシューティング
ザコAKは攻撃力こそ低いものの,群れで襲ってくることが多い。巣から出現するため,巣を破壊してからバリバリ撃ち殺すとよい。ザコAKから得られるTエナジーは微量なので,状況によっては,回収のことは忘れて殲滅してしまってもいい |
アクションシューティングというと,主人公は軽やかに動き回り,湧いてくる敵を片っ端から撃ちまくり,巧みに攻撃をかわして進んでいくというゲーム展開がイメージされがちだが,ロスト プラネットには意外と,軽やかさがない。ウェインの動きはもっさりしているし,VSにしても,機動性の高い一部の機体を除いて,全体的に機敏さに欠ける。ザコ相手ならマシンガンなどでも簡単に倒せるのだが,敵VSや中型以上のAK相手では,逃げても追いつかれて攻撃を食らうし,敵VSの猛攻をなかなか阻止できないこともしばしば。ウェインの動きがあまり速くないぶん,ある程度「ダメージ覚悟」のアグレッシブなプレイが要求されるのだ。
とはいえ,ロスト プラネットは比較的「死ににくい」ゲームなので,多少ランボースタイルで突進しても,「あぁ,やっぱり死んじゃった」というケースはあまり見られない。そんな戦い方を可能としている仕様が,冒頭のストーリー紹介でも触れている,AKの体内に宿る「Tエナジー」なのだ。
本作では,敵を倒すとTエナジー(オレンジ色の液体)が放出される。回収したそれは,ウェインの腰に付いたエナジーポットに蓄えられていく。
TエナジーはAKを倒すだけでなく,人間タイプの敵兵を倒したり,データポストを起動したり,ドラム缶や貯蔵タンクなどを破壊したりすることでも放出されるので,破壊できるものはとりあえず破壊して,オレンジ色の液体を積極的に回収していこう。
というのも,Tエナジーは惑星で活動するために必要なスーツの活動燃料に変換されるという設定だからだ。それゆえにTエナジーは,なにもしていなくても徐々に減少していく。蓄積量はライフゲージの下にあるTエナジーゲージで確認でき,Tエナジーが切れるとライフゲージが減少し,最終的に死んでしまうという仕組みだ。
さらに,ダメージを受けてライフゲージが減ると,ウェインの右腕に取り付けられた「ハーモナイザー(生命維持装置)」が働き,Tエナジーを利用してライフゲージを回復してくれるため,ウェインは「死ににくい」のだ。
とはいえ,ハーモナイザーが機能するまでには若干のタイムラグがあるため,大きなダメージを連続して食らうと,ウェインは簡単に死んでしまう。ハーモナイザーを過信して突進していたら,「あら? 死んじゃった」なんていうケースもあるので,ジャンプやダイブ,ロープアンカーを使った回避行動は必要不可欠なのである。
ザコ相手ならば,とにかく撃ちまくっていれば簡単に対応できるが,中ボス,ラスボス相手となると,そう簡単には撃破できない。闇雲に乱射しても残弾数が減るばかりで,気がついたら弾切れなんてことにもなりかねない。ロスト プラネットの攻略には,巧みに攻撃をかわしつつ,的確に“弱点”を攻撃するテクニックが求められるだろう。
ボスの弱点は,基本的にTエナジーの溜まっている場所である。敵VSであればエナジーポットであり,AKならば「ここを撃つべし」と言わんばかりにオレンジ色に輝いている部分が弱点となる。敵VSやAKの動きをじっくり見て,攻撃を回避しつつ狙っていくといいだろう。
自分よりも遙かに大きい敵でも,的確に弱点を攻めていけば,面白いようにダメージを与えられる。この,大味ながらも緻密さの求められるアクション性に,筆者は堪えられない魅力を感じるのだ。
もちろん,ミッションのラスボスともなると,簡単に弱点を攻撃させてくれるほど甘くはない。難度EASYとて,それなりの戦術/テクニックを駆使しなければ,苦戦を強いられることは必至だろう。
ちなみにキャンペーンモードの難度は,EASY,NORMAL,HARDの3段階が用意されているが,難度ごとのゲームバランスはかなり絶妙だ。EASY,NORMALであれば,アクションシューティングが苦手な人でも,何度か挑戦を繰り返すうちに,乗り越えられるだろう。「なんてヌルいアクションシューティングなんだ!」と感じてしまう上級者なら,難度HARDに挑戦するといい。HARDでは,(筆者にとっては)ザコキャラさえもが手強く感じるほどのバランスで,各ミッションの対中ボス/ラスボス戦も,複数の敵を同時に相手にしなければならないケースが多いのだ。また,Tエナジーの消耗が早いため,時間との戦いというストイックなプレイも楽しめる。
さらにシビアなゲーム展開を望むなら,難度を問わずキャンペーンモードを一度クリアするとプレイ可能になる「EXTREME」に挑戦してもらいたい。Tエナジーの消費は難易度HARDよりも早く,しかもデータポストが登場しない。また,ラスボス戦の前に確保できる場合の多かった「新品VS」がないなど,なかなかシャレにならない展開が楽しめる。筆者などは半ベソをかいて投げ出してしまうほどの難度だが,我こそはという上級者はぜひ一度お試しあれ。
チョロチョロと動き回る敵兵は,こちらの攻撃を巧みに回避しながら攻撃してくる。ザコとはいえ早く撃退しないと,ダメージも大きい | 生身でVS用武器を使うことも可能。しかし移動しながらの攻撃は不可で,発射後の硬直も長めだ。画像はホーミングレーザーを撃ったところ | 爆発や煙の中からウェインが飛び出させてみると,痺れるほど格好いい。無駄なダメージを受けることもあるが,ぜひ一度試してみよう |
楽しいマルチプレイと苦しいメンバー探し。
ロビー/マッチング機能の低さが惜しまれる
ロビー/マッチング機能の低さが惜しまれる
マルチプレイにはすでにレベル50を超える国内外の猛者がごろごろ。目の前にハンドグレネードを転がしてアンカーで素早く離脱,といった高等テクニックもザラに見られる |
ロスト プラネットのマルチプレイモードは,Xbox 360版ですでに高い評価を得ている。マルチプレイでは,データポストの位置記憶をはじめとしたマップの把握や,VSの操作,アンカーの駆使など,エイミングを含む総合的な技術力が問われる。本作はそのコンシューマライクな見ためとは裏腹に,硬派な一面を併せ持っている。
その一方で,楽しみどころは十分だ。シングルプレイで見られるハリウッド映画ライクな演出が,マルチプレイだからといってまったく衰えを見せないのも,本作の素晴らしい点だ。まばゆい爆発のパーティクルに目をしばたかせながら,アンカーを使ってスパイダーマンよろしくピュンピュンと飛び回る。もうこれだけで楽しくてしようがない。獲得ポイントでキャラクタースキンをアップグレードできるのも,地味に嬉しい。
本作のマルチプレイで遊べるミッション(マルチプレイモード)は,以下の4種類だ。マップは計12枚(デフォルトマップ8枚と,7月20日にSteamで配信された追加マップ4枚)で,だだっ広い雪原から窮屈なオフィスビルまで,バラエティ豊かだ。
【マルチプレイのミッション(ゲームモード)】
「チームサバイバル」
いくつかのチームに分かれて「戦力ゲージ」を削り合う。ゲージは味方が倒されたりするごとに減少する。
「サバイバル」
個人の「戦力ゲージ」を削り合う。いわゆるデスマッチモード。
「データポスト争奪戦」
チームに分かれてマップ上のデータポストを探し,その起動数を競う。すべてのデータポストを起動させた場合も勝利となる。
「フォックスハンティング」
逃亡役となるホストを全員でハンティングする。ホストはタイムアップまで逃げ切るか,戦力ゲージを最大値まで溜めれば勝利となる。
各ミッションのルール設定項目は,主にマップや初期武器,制限時間など,極めてオーソドックスなもの。マルチプレイモードとしてはやや物足りない気がしないでもないが,個人的にはこれぐらいシンプルなほうが嬉しい。複雑なモードは初心者の足を遠ざけるうえ,ルールの組み合わせが多くなることでプレイヤーの分散を招く怖れがある。「マルチといえばこれだよね」といったお約束のミッション設定が暗黙のうちに決まってきそうな,現在のボリュームが理想的だ。
さて前述の通り,本作のマルチプレイはエイミングよりも武器の知識,なによりマップに関する知識の比重が高い。一般的なシューティングタイトルでは,マップの把握が脱初心者の必修科目となるわけだが,本作のプレイヤーはシングルプレイでデータポストの存在をすでに認識しているため,マルチプレイマップのデータポストを見てマップ把握の重要性がすぐに理解できる。演出しかりデータポストの存在しかり,シングルプレイとマルチプレイのゲーム性が大きく乖離していないのが,本作の優れているところかもしれない。
……と,ここまでが本作のマルチプレイの良い部分。繰り返すが,本作のマルチプレイにおける“ゲームの部分”は秀逸である。
しかし,一方で“ゲーム以外の部分”は,かなり疑問の残る内容だ。具体的には,ロビープログラムおよびマッチングシステムの使い勝手に難がある。通常,本作でマルチプレイを始めるには,【ミッション検索(またはミッション作成)】→【参加者が揃うまで待機】→【ゲーム開始】という手順を踏むわけだが,本作はそれぞれのフェイズで問題を抱えている。
まずはミッション検索機能(≒マッチングシステム)の部分。検索機能の問題は単純に“――他のプレイヤーが作成した――ミッションが見つからない”ということ。これはゲーム開始済みのミッションが検索対象外となるのが大きな原因だ。この問題は,ミッション参加の機会減少を招くと同時に,今現在ミッションがどこでどれぐらい作成されているか(言い代えれば,自分が参加できる余地がどれぐらいあるか)を把握できないという二重のストレスをプレイヤーに与えている。「見つかりません」という表示を見るたびに,「誰もやってないのかな?」と不安になってくる。
「じゃあ自分でミッションを作ってやれ」とプレイヤーの参加を募り始めたら,次は待機機能(≒ロビープログラム)に泣かされる。ここも問題は非常にシンプルで“他のプレイヤーとコミュニケーションをとれない”点。ロビープログラムにチャットのシステムがない(!)のが主な原因だ。
例えば対戦人数が16人のミッションを作成し,現在12人が参加して待機状態になっているとしよう。その状態で待てど暮らせど誰も参加者が増えない……というのは,まぁ時間帯や運によってはよくあることだ。
ただ通常ならここで誰かが「この人数で始めましょう」「55」などと切り出すところなのだが,チャットシステムがないせいでそれができない。それどころか,ミッション開始権限を持つミッション作成者がキーボードの前にいるかどうかすら確認する術がないので,一人,また一人とミッションを抜けていく――といった状況に陥ってしまう。作成者は作成者で「あと○人/あと○分待ちます」といった内容を伝えられないため,去っていく参加者の背中をさみしく見つめることになる……。というケースも少なくないだろう。
上記二つの問題は,プラットフォームに――Xbox LIVEではなく――Steamを選択した時点で予測できたはずである(ここで「Xbox 360版も仕様は同じ」という論法は成り立たない。プレイ人口の差やLIVE機能のサポートの有無など,状況がまったく異なる)。たしかにどちらも,プレイ人口の増加に伴って解決する問題かもしれないが,そのプレイ人口の増減を握るのもまた上記二つのシステムのはずである。可能であればすぐにでも対応してほしいし,するべきだと多くのプレイヤーが感じているはずだ。
操作に慣れないうちは「NEVEC訓練施設」や「レーダーフィールド」といった狭いマップがオススメだ。敵との遭遇率が高いためエイミングの訓練になる。豊富な(?)障害物はアンカーの練習にも最適だ | マルチプレイでプレイヤーレベルを上げると新しいキャラクターやコスチュームデータがアンロックされていく。比べる必要はないが,実績データをサーバー側に蓄積できる分,Xbox LIVEの方に分があるといえるか |
シンプルなマッチング/ロビープログラムにももちろん利点はあるが,テキストチャットすらできないのには面食らった | 右は一部の人にはおなじみ,Steamのサーバーブラウザだ。こちらはカプコンのサポート対象外となるらしく,使用方法はマニュアルにも一切記載がない |
質の高いアクション性/ストーリー展開が最大の魅力
マルチプレイには難アリだが,良質なアクションシューティングだ
マルチプレイには難アリだが,良質なアクションシューティングだ
ロスト プラネットをプレイすると,非常にもっさりとしたアクションシューティングだなぁ,と感じる人がいるかもしれない。しかし,敵VSやAKを効率よく倒す知識/テクニックが身につくにつれて,極めて高いアクション性が理解できてくる。
なにより,キャラクターを操作していて実に楽しいし,カプコンならではの演出のうまさに,思わず「格好いい!」と声を出してしまうようなシーンが盛りだくさんで,プレイしていて本当に気持ちがいいのだ。
すでに体験版をプレイしている人もいると思うが,まだ未体験の人がいたら,今すぐにでも体験版をプレイして,その面白さを味わってみてほしい。
最後に,当サイトでも多くの記事で触れているのでご存じだと思うが,ロスト プラネットは“重い”部類のゲームであり,最高に美しいグラフィックスで快適に動作させるには,かなりの高スペックPCが必要になる。体験版を楽しみつつ,自分のPCでのベターなグラフィックス設定を確認してから,製品版を購入するといいだろう。