― レビュー ―
日本でも注目され始めている“武侠”を分かりやすくアレンジした,クリックタイプのMMORPG
熱血江湖オンライン
Text by 川崎 政一郎
2006年8月2日

※本稿は7月26日(正式サービス移行時)のゲーム内容に準じています

 

武侠を題材にしたクリックタイプのMMORPGが登場

 

「熱血江湖オンライン」は,7月26日に正式サービスへ移行したばかりのMMORPG。基本プレイ料金無料,アイテム課金スタイルだ

 エムゲームジャパンの「熱血江湖オンライン」は,7月26日より日本で正式サービスがスタートしたMMORPG。韓国の人気コミック「熱血江湖」を題材としており,韓国,中国,台湾といったアジア地域でも,すでにサービスされている。
 公式発表によると全世界での累計会員数が3500万人,さらに同時接続者数が60万人というのだから驚きである。本稿ではそのレビュー記事をお伝えしよう。

 パッと見は可愛くてコミカルなグラフィックスだが,本作のテーマは,ずばり「武侠」である。日本でも少しずつ人気の出てきた「武侠」だが,まだ詳しく知らない人も多いだろう。簡単に説明すると,正義のために行動しようとする精神の“侠”に,手段としての“武”(武術)が加わったもの。中国や韓国などのアジア圏においては,大衆娯楽として,この武侠はかなりメジャーな存在なのだ。「新・天上碑」「破天一剣」「墨香オンライン」「英雄オンライン」など,武侠をテーマにしたMMORPGも割と多い。

 いかついイメージの「武侠」を,思いっきり可愛くデフォルメした独特のグラフィックスが最初に目につくが,ゲーム内に登場する固有名詞を見てみると,なるほど武侠らしいネーミングが確認できる。例えば,本作に登場する職業は「刀客」「剣士」「槍手」「医師」の四つ。キャラクターレベルは「等級」,マジックポイントは「内功」などといった具合だ。最初は「なんだこれは?」と思うかもしれないが,同じ漢字文化ということもあり,なんとなく意味は分かるだろう。本作はこういった武侠世界的な要素を,日本人でもなるべく理解しやすいように噛み砕いているところが,大きなアピールポイントといえる。

キャラクターの外見や町並み,そして固有名詞といったさまざまな部分に,「武侠」らしさが反映されている。この独特な雰囲気こそ本作の特徴
 ゲームシステムに話を移そう。本作はアジア地域ではもはや定番といえる,いわゆる“クリックゲー”タイプのMMORPGである。操作方法はマウスの左クリックで移動,ダブルクリックで攻撃,そして右クリックでスキルなどを使用する。視点変更は,画面の端にカーソルを移動させることで可能。このゲームジャンルではお馴染みの回復ポーションは数十個単位でスタックでき,スキルと同様に右クリックで使用可能だ。このように,ゲーム中のほとんどの操作を簡単なマウスで行える。

 現在実装されている職業の内訳は,メレー(打撃)系が三つとヒーラー(回復)系が一つといったところだが,これをもう少し詳しく説明しよう。「刀客」は体力面に優れ,いわゆるタンク役に適した職業である。「剣士」は攻撃の命中率が高く,バランスがとれた職業。そして「槍手」は防御面は弱いものの,最大の攻撃力を誇る職業。ヒーラー系の「医師」は,序盤から回復系のスキルを唯一使える職業だ。医師だけがほかと大きく違っているのだが,スキルなど具体的な違いはのちほど詳しく説明しよう。

 基本的なゲーム展開は,何はともあれモンスターとの戦闘に明け暮れつつ,レベルアップ。やがて新たなクエストを依頼されるようになり,クエストを遂行する過程でもひたすら戦闘を重ね,その積み重ねでぐんぐん成長していく,という流れ。クリックタイプMMORPGの王道ともいうべきスタイルだ。

 また,レベルアップを軸にしたキャラクターの育成関連が充実しているのが,本作の特徴の一つだ。各職業はレベル10,35,60,80で「昇任」,すなわち上位職へのクラスチェンジを行える。また,レベルが35以降は「正派」と「邪派」に分岐され,ゆくゆくはその両者がPvPで対立,というテーマもはらんでいるのだ(今後導入予定とのこと)。
 では「剣士」を例に,クラスチェンジの流れを見てみよう。

 

 

序盤はソロプレイ,パーティプレイのどちらでもゲームを進められるバランス。クリックタイプのタイトルの中でも,比較的やさしめな作り アカウント内に最大で4キャラクターを作成可能。ゲームプレイ時のサーバーは複数から選べるものの,使用キャラクターは共通している 戦闘を繰り返してレベルアップすると,自動的に新たなクエストを行えるようになる。「次に何をやったらいいの?」と困ることは少ないだろう

 

街でクエストの依頼を受けて,その目的をクリアするために戦闘を重ねるというのが主な流れ。ゆくゆくは正派と邪派の争いに身を投じる道も 医師を除いた三つの職業は,同じ直接攻撃タイプということもあり,プレイスタイルが比較的似ている。ちなみに画面は「槍手」のキャラクター 「医師」は遠距離攻撃が可能というのが大きなアドバンテージ。韓国版では弓を用いる職業が実装されており,日本での実装にも期待したい

 

 

気功,武功とに分かれたスキルは
職業によって構成が大きく変わる

 

刀に炎を宿らせて攻撃するスキルを使った瞬間。職業別に用意された,これらのスキルを駆使すれば,より強力な戦闘を行える

 続いては,本作の成長システムについて。成長関連で中心となるのは,常時発動する「気功」(パッシブ系)と,プレイヤーの操作で発動させる「武功」(アクティブ系)に大別された「スキルシステム」だ。このパッシブとアクティブとで,習得する流れが違っている。

 「気功」ことパッシブ系スキルは各職業に5種類ずつ用意されており,キャラがレベルアップするたびに,いずれかのパッシブスキルに1ポイント割り振ることで強化していく。本作には,レベルアップ時に基本ステータスへのポイント振り分けはなく,どのパッシブ系スキルにポイントを注ぎ込むかで,キャラクターの個性を出していくわけだ。
 パッシブ系には,「最大攻撃力を増加」や「内功(マジックポイント)を上昇」などといったものがある。またクラスチェンジ後は,気功の種類は5種類からさらに増える。

 「武功」ことアクティブ系スキルに関しては,職業ごとに習得する順序とレベルが決まっている。例えばレベル10で「急転烈風」,20で「砕刑断木」,30で「狂風残影」といった具合(いずれも攻撃タイプ)で,どのスキルを習得すべきかで悩む必要がないのが,ライトゲーマーにとってはありがたいかも。
 また,これらのアクティブ系スキルは単独で使ってもよいが,複数を組み合わせる「連閃」という要素により,まるでコンボ技のように立て続けに繰り出すこともできる。とくに,攻撃系のアクティブスキルを複数習得するゲーム中盤以降においては,ボタン一発で痛快な連閃アクションを満喫できるだろう。

 「刀客」「剣士」「槍手」の3職業はスキル習得の基本路線が似ているが,「医師」はプレイスタイルが大きく異なる。例えば攻撃系の三つは,レベルが10になるまで一切アクティブスキルを習得できないが,医師はヒーラーという性質上,レベル1から回復系のアクティブスキルが使用可能なのだ。そしてもう一つ,現時点では医師だけが遠隔タイプの攻撃スタイルというのも大きい。

 医師の通常攻撃力は意外と高く,射程距離ぎりぎりから戦闘を開始すれば,敵に接近される前に半分近くのダメージを与えられる。つまりスキルによって自分の回復を行える医師は,直接攻撃を行うほかのクラスよりもポーションの利用頻度が低く,ソロ活動に秀でた万能タイプといえる。もし,ほかのクラスをプレイして戦闘がキツいなと感じたのなら,一度医師でキャラクターを作ってみるとよいかもしれない。

 お次は装備品についてだが,防具はキャラクターのレベルが10上がるたびに新たな鎧を装備できるという仕組みで,外見からある程度の強さのランクが判別できるようになっている。そのため,装備の選択肢が広いとはいえないが,ゆくゆくはキャラクターが「正」「邪」の2派に分かれて争うことになることを考えると,外見で判別しやすいおかげで助かる面もある。

 武器のほうは,キャラクターのクラスによって装備条件が定められている。剣士を例に挙げると,クラスチェンジ後の「剣達」以上にならないと,中ランクの武器は装備できないといった具合だ。

 

ステータスウィンドウ下部にある5種類のアイコンが,パッシブ系のスキル。レベルアップ時に1ポイントを割り振り,常にその効果を得られる アクティブタイプのスキルは,習得ステップが固定されている。スキル使用時に必要な内功は,本作では自然回復するので頻繁に使っていける 医師に限り,レベル1から回復系のアクティブスキルを使用可能。この職業はオールマイティにこなせるので,初心者におすすめだ

 

防具の性能面における選択肢の幅は,ほとんどない。キャラクターの外見によって,綺麗にレベル分けがなされているといっていい 武器に関しても,「刀客」なら刀タイプのみといった具合で,とまどう余地もない。「合成石」を獲得して強化させるといったことは可能だ 回復ポーションを購入していくと,すぐに所持金が底をついてしまう。お金のやりくりには苦労するので,バザーを積極的に利用するとよい

 

 

基本システムは非常にオーソドックス
武侠の世界観がアピールポイント

 

パーティメンバーが揃って休憩している場面。体内の気を整えるという,いかにも本作の世界観に沿った演出といえる

 ゲームバランスについて触れると,序盤の間はソロプレイでも問題なくレベルアップできる。そしてレベル10前後から次第に,戦闘の合間に休憩する必要性が生じてくる。ポーション大量使用という手もあるが,少々注意。本作では戦利品として獲得できる金銭があまり多くなく,ポーションを購入する費用がすぐに底をついてしまうのだ。自身で回復を行える医師以外のキャラクターは,ゲーム中盤以降の回復面が大きな課題となる。

 そこで役立つのが,「よろず屋」と呼ばれる「課金アイテム」の類だ。例えば課金アイテムの一つ「救命丹」は,「合計で40万」の生命力を回復できる。キャラクターの最大生命力は数百程度なので,救命丹が一つあれば数百〜数千回の使用に耐えうるわけで,この効果は極めて大きい。有料アイテムなしだと少々キツいバランスなわけだが,回復に死ぬほど苦労して困っている人は,購入を検討してみるのも手だろう。

 また,本作で一つ気になったのは,ゲーム規約として禁止されているにもかかわらず,ゲーム内で外国人とおぼしきプレイヤーに,かなりの頻度で遭遇した点だ。もっとも,本作は混雑緩和のために複数サーバーを用意しており,好きな場所でプレイできる(どこでも同じキャラクターを使える)。もし外国人プレイヤーが周囲に多く,何かと問題が生じたら,サーバーを変更するといった手もあるのだが……。
 ちなみに誰が見ても分かるように,おそらくその大半は,中国や韓国からのRMT目当てのアクセスかと思われる。この手の問題はオンラインゲームに常につきまとうだけに,早急な対応策を採ってほしいと願うばかりだ。

 ゲーム全体としては,ゲームシステムがあまりにもオーソドックスすぎるかな,という印象を受けた。また,移動時に遠くをクリックしようとして画面の隅にカーソルを動かすと,しばしば視点が回転されてしまうなど,インタフェースでも細かいところで少々ストレスを感じる。移動についてはカーソルキーやW/A/S/Dキーでも可能にするなど,もう少しプレイスタイルの幅が増えてくれると嬉しい。

 細かい部分で気になる点はいくつかあるものの,日本ではまだメジャーではない「武侠」を,あたかもファンタジーRPGのように気軽に体験できるのは,本作の魅力である。もう一つ,本作の運営を手がけるエムゲームは,アジアではかなりの実績がある運営会社だ。「エムゲーム夏の陣」といったユニークなイベントを展開するなど,“今が旬のタイトル”という見方もできる。アジア圏で絶大な支持を受けている“武侠”とは,いったいどういったものなのか。この部分に興味を持った人は,とりあえず一度プレイしてみてはどうだろうか。

 

町並みや風景から異国の雰囲気が伝わってくる。「武侠」について知らない人でも,すんなりと受け入れられるだろう 各エリアマップに拠点地域が設けられている。死亡時は自動的にそこへ転送される仕組みで,迂闊に遠出するとスタート地点に戻れなくなるかも ライト層が気軽に遊べるように,マシンスペックの要求は控えめな作り。画面描画に関しては,時間の経過による光の加減がなかなか美しい

 

低年齢層にとっては気軽にプレイできる半面,成人のプレイヤーには少々物足りないかも。戦闘とクエストをこなすのが好きという人なら問題ない 街で行き交うキャラクターの外見を見ているのが楽しい。武侠という言葉をあまり聞き慣れない人でも,とっつきやすい絵柄なので安心だ 外国人プレイヤーを多く見かけたが,英語すら通じないのには参ってしまった。まだ正式サービスが始まったばかりなので,もう少し静観したい

 

タイトル 伝承の絆 〜熱血江湖オンライン〜
開発元 MGAME ,KRG SOFT 発売元 エムゲームジャパン
発売日 2006/07/26 価格 基本プレイ料金無料,アイテム課金制
 
動作環境 対応OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以降)[Windows XP推奨],Pentium III 800MHz以上[Pentium 4 1.4GHz以上推奨],メモリ256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスメモリ:32MB以上[64MB以上推奨],HDD空き容量:1GB以上[4GB以上推奨]

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