― レビュー ―
15年ぶりに登場した,秀作SFストラテジーの続編
インペリアルフォース2 cosmic interceptor
Text by Murayama
2005年12月28日

 

■プレイするたびに異なるマップで,繰り返し楽しめる

 

前作から15年の歳月を隔てて,ついに登場した「インペリアルフォース2 cosmic interceptor」。艦艇の設計や,ゲームの進行に合わせた時代の進化,それに伴うゲームスケールの変更など,新要素も盛りだくさんだ

 1990年にPC-9801シリーズ用として発売されたSFストラテジー「インペリアルフォース」は,プレイするたびに新しいマップが生成される「マップジェネレート機能」を大きな特徴としていた。この機能により何度も繰り返して遊べる秀作ゲームとして,多くのファンから支持されていたのだ。ほかにも,資金の概念がないこと,独特の簡にして要を得た戦闘システムなどが高く評価され,続編の要望も多かったらしい。だが残念なことに,続編が登場することはなかった。

 それから15年が経過した2005年12月16日,「インペリアルフォース」の続編「インペリアルフォース2 cosmic interceptor」(以下,インペリアルフォース2)がリリースされた。今回はシステムソフト・アルファーとイレギュラーズアンドパートナーズの,コラボレーションタイトルとなっている。
 今年(2005年)8月に行われた制作発表会では,イレギュラーズアンドパートナーズの代表取締役にして,ネット界では“切込隊長”の名で親しまれている山本一郎氏によって,解説が行われた。それによると,本作は単なる復刻版ではもちろんなく,前作の良い部分を踏襲しつつも,新システムを搭載しているとのこと。前作を夢中でプレイした筆者としては,さらに期待がふくらむというものだ。

 インペリアルフォース2の世界設定は,ほぼ前作のそれ――「宇宙震」の発生で混乱を極めた宇宙空間での群雄割拠――を引き継ぐ。プレイヤーは最初に7系統21種族から一つを選んで国名を付け,マップサイズ/入植率/ゲーム難度を,それぞれ5段階で設定する。するとマップが生成されて,いよいよゲーム開始だ。
 ゲームはセミリアルタイム制で,ユニットの移動が完了したり,敵との戦闘範囲内に突入したり,建造していた艦艇が完成したりしたりといったイベントが発生/完了すると,随時ポーズがかかる仕組みになっている。そのため,プレイヤーからの指示が抜け落ちたユニットが生じにくく,初心者でも無駄のない戦略/戦術が楽しめるのだ。

 

オープニングはテキストと画面エフェクトのみとシンプル。何か“見せる”要素が欲しかった気はする。サウンドについては,ゲームにマッチしていて良い感じである

 

7系統21種族の中から担当勢力を選択する。同系の種族同士では,外交関係が親密になりやすいといった設定があるようだ 国家名はプレイヤーの好みに応じて全角8文字までで付けられる。種族のイメージに合ったカッコいい名前を考えたい 難易度やマップの広さを設定する。難易度設定が上になると思考ルーチンも強くなり,手応えのあるプレイが楽しめる

 

 

■3段階で進化するゲームスケールが国家の拡大を演出

 

プレイの進行につれてゲームシステムが三段階に進化する。終盤の展開がスピーディなのもストラテジーゲームとしては珍しく,興味深い

 本作の見どころの一つに,ゲームの進行に合わせて「探索の世紀」「国王の世紀」「帝国の世紀」と,スケールが変化する点がある。これは「エイジ オブ エンパイア」シリーズなどのように各勢力がそれぞれに資源を溜めて自勢力を進化させるイメージではなく,ゲームの進行に合わせて自動で時代が移るというものだ。
 ゲームをプレイしていて一定の条件が満たされると,ダイアログで世紀が移行した旨が伝えられ,使えるコマンドが追加されたり,艦隊を構成する艦艇数の上限が増えたりする。世紀の移行によって得られるメリットは,プレイヤーもCPUも同時かつ平等だ。

 「探索の世紀」では,偵察艦を使って黒く塗りつぶされた未探索領域を開拓していく。移動については目的地を指定するだけのシンプルなものであり,分かりやすいが正直あまり便利ではない。経由地点,つまりは航行ルート全体を指定できれば,もっとプレイしやすかったとも思うのだが。
 一度偵察した場所は以後ずっと視認可能で,そこを通過する艦隊も見えるようになる。探索の途中で惑星を発見した場合は,突入ポッドを装備した艦艇で占領しよう。そうして各国の探索範囲が一定以上に達すると,自動的に「国王の世紀」に移行する。

 「国王の世紀」になると全惑星の位置が表示されるので,惑星を探すために偵察艦を派遣する必要はなくなる。といっても偵察の必要がまったくなくなるわけではなく,敵艦隊を視認するためには未探索領域をつぶしておく必要はある。
 また「国王の世紀」では,1艦隊あたりの艦艇数が8から16へと引き上げられるので,より規模の大きな戦闘が可能になる。そして,この時代の最も大きな特徴は,外交が行える点にある。外交コマンドは「使節派遣」「不戦条約締結」「軍事同盟結成」の3種類。状況に応じてこれらのコマンドを活用し,無駄な戦いを避けることも重要だ。
 やがて弱小勢力は淘汰され,大勢力のみになると「帝国の世紀」へと移行する。すると,マップの全領域が視認可能になり,艦隊の動きも丸見えに。敵宙域と自宙域の間には丸いアイコン(脅威マーカー)が表示されるようになり,そこを使った総力戦がプレイに加わる。
 敵宙域に侵攻するためには,艦隊を繰り出して,まず敵宙域の手前にある脅威マーカーを自軍の手に収める必要がある。脅威マーカーをめぐる戦いは要するに,宙域間の“制宙権”争いを,シンプルなルールで表現したものだ。脅威マーカーを一定時間占拠できれば,敵宙域まで進出できたことになり,今度は脅威マーカーを占拠した艦隊 vs. 敵の全勢力による戦いとなる。ただし,1回の戦闘には互いに6艦隊しか参加できないため,あふれた分は連戦することで処理される。

 とまあ,少々説明が長くなってしまったが,ゲームの進行に応じてスケールが変化するのは面白い。段階を踏んでコマンドが追加されることにより,単純な展開から複雑な展開へ時間をかけて変化することになるため,初心者でも無理なくコツを掴めるだろう。
 ちなみに,三つの世紀の中で一番遊び応えがあるのは「国王の世紀」だ。ここですべてが決まるといっても過言ではないだろう。総力戦となる「帝国の世紀」は,移行した時点である程度結果が見えており,最後のお祭りといった感じ。多くのストラテジーゲームにおいて,終盤は大量に抱えたユニットのためにダラダラしてしまうわけだが,本作ではうまく解消されている。

 

内政には経済などの要素もあるが,基本的な方向性を決めたら,こまめに変えなくても大丈夫 「国王の世紀」では,外交のルールが追加される。使い方次第では武器より効果的な要素となる CPU側から交渉を持ちかけてくることもある。口調などに種族の特徴が出ていて面白い

 

序盤は星系単位で艦艇の建造をしていたが,後半では宙域単位で艦艇を建造することになる 「帝国の世紀」になると,マップはズームアウトして見やすくなる。最初からこれだと楽なのだが 中央のリングが脅威マーカー。「帝国の世紀」では,大規模だがシンプルな総力戦が楽しめる

 

 

■シンプルで遊びやすい戦闘システム

 

探索を進め,遭遇した敵と戦う。戦闘には,リングに接した最大6艦隊が参加できる

 本作のユニット生産には,資金という概念がない。艦艇は,建造指示を出して規定の年月が経過すれば完成する。つまり,まとまった資金を投入して急激な軍拡に出ることは不可能だ。明確な目的を持ち,先を見据えた建造計画が必要になる。
 また,「探索の世紀」では星系ごとに建造命令を出していたが,「国王の世紀」になるとまとめて建造指示を出せるようになるなど,スケールの変化に応じてルールも変更される。
 艦艇の設計も可能で,電測型,輸送型,中型,大型,超大型という5種類の艦殻と,ミサイル,ビーム砲,実体砲弾,電測兵器,増加装甲,突入ポッド,推進装置という7カテゴリの装備を組み合わせ,好みに応じて艦艇名を登録できる。また兵器の開発も可能なことを考えると,本作の艦艇設計はかなり楽しめるものといえる。防御を重視した戦艦を設計して艦隊の盾にしたり,単射程/高火力の兵器をばかりを搭載した戦艦で敵に切り込んで戦ったりと,いろいろ趣味に走れるのは嬉しいところだ。

 戦闘には艦隊戦と惑星戦があるが,惑星戦は突入ポッドを装備した艦隊を惑星上に送り込めば,時間と共に占領できるというもの。あまり楽しむ要素はないので,メインになるのは艦隊戦だ。
 敵対する艦隊同士が一定以下の距離に接近すると,ユニットの位置に“Warning”というリングが表示され,ゲームにポーズがかかる。そこで移動指示を出せば逃げられるし(速度差があると逃げられないこともある),さらに近くの艦隊をリングに突入させれば,最大6艦隊までの兵力を投入できる。
 ポーズを解除すると,数秒後に戦闘画面に切り替わる。そこでフォーメーションを決めれば,あとはターン制のバトルが始まるという仕組みだ。
 戦闘では,「全攻」「突入」「防衛」「収拾」という基本戦術に,上級の司令官がいれば使える「火力」「鉄人」「運用」「支援」「軽艦」「重艦」「追撃」「撤収」を加えた中から,艦隊ごとに採用する戦術を選んで,さらに戦闘(継続)か撤退を選択したあとに,実際の攻撃と損害判定が行われる。互いに一度ずつ攻撃をすると,再び戦術の選択と戦闘/撤退の選択に戻る。壊滅もしくは撤退の結果として,敵艦がいなくなれば勝ちだ。

 ここまでの説明から分かるとおり,戦闘は非常にシンプルで遊びやすく,テンポもよい。さらなる要望を述べるなら,例えば戦闘中にフォーメーションが変更できれば,傷ついた艦を後方に下げて守りながら戦うなど,SF映画/小説などに見られる艦隊運用が楽しめたことだろう。また,敵艦隊のどこに火力を集中するか? などが選べてもよかったように思われる。
 それから細部のツメで気になった点が二つ。遠くの星系が襲われて艦隊の派遣が間に合わないとき,艦隊を解散して艦艇をストックに戻し,襲われている星系で再編成の手続きをとると,結果として一瞬で艦隊が移動したこととなり,防衛戦が行えてしまう。これは宇宙港を持つ星系でのみ可能な技だが,何らかの禁止措置を講じないと,艦隊の移動力設定が意味を失ってしまう気がする。
 もう一つは,大兵力で星系占領を試みる場合の話。CPUが採る妨害手段として,1,2隻しか配属されていない艦隊が小出しに投入され,およそ結果の分かりきった殲滅戦闘が20回近く繰り返される場合がある。意図的な遅滞戦術であるから,ゲーム上まったく無意味とはいえないが,兵力差が圧倒的なら効率的な蹂躙方法があってしかるべきだし,実際プレイしていて少々ストレスを感じてしまった。このあたりは改善してほしいところだ。

 プレイの全体を通した雑感になるが,以前の取材で山本氏がAIへのこだわりを強調していた本作ではあるものの,思っていたほど強力ではないというのが,偽らざる感想だ。というのも,CPUの艦艇設計がいま一つのようで,こちらがカスタマイズした艦艇とは,よい勝負にならなかったのである。
 筆者は大型艦や超大型艦が作れるようになってからというもの,「電磁波シールドII」と「ソリッドガンII」を大量に積んだ艦艇しか作っていない。これだけで同数ではまず負けることがなく,艦艇の数さえ揃えば,2ターンで敵を全滅することもしばしば。もう少し手ごたえのある戦闘ができたら,より楽しいプレイになったと思う。もっとも,ストラテジーゲームに求める難度は,プレイヤーによってかなり差があるもの。その意味でインペリアルフォース2は,広いターゲットを狙った作りになっているということだ。
 またゲームの進行は全般に快適だが,速度調整機能があれば,さらによかったと思う。マップの自動生成がウリで,繰り返し遊ぶことが前提のタイトルだけに,操作に慣れた二度目以降のプレイでは,よりスピーディに進めたいし,ポーズがかかるイベントの種類を限定できてもよかった気がする。

 細かい注文を並べてしまったが,ゲームのクオリティに問題はない。現時点で名作と呼ぶにはやや躊躇するものの,佳作と呼ぶには十分な出来だ。いろいろ課題は多いかもしれないが,そうした部分を改良した次回作を,ぜひともプレイしてみたい。

 

艦隊戦に入る前にフォーメーションを設定する。搭載した兵装や防御力に合わせて,艦の配置を考えよう 戦闘では艦隊ごとに戦術を決め,攻撃か撤退かを選ぶ。火力の集中ができれば,さらに面白かったかも 武器の開発は,カテゴリごとに技術ポイントを配分して,開発したい武器を決めるだけと,ごくシンプルだ

 

艦艇の設計はなかなか楽しい。試行錯誤を繰り返し,自分の戦術に合った個性豊かな艦艇を開発したい プレイが終わると,その結果が表示される。いずれかの勢力により,銀河帝国が樹立されてエンディングだ エンディングの最後にあるメッセージ。「3」の存在を暗示しているのか,リプレイ性を強調しているのか

 

タイトル インペリアルフォース2 cosmic interceptor
開発元 イレギュラーズアンドパートナーズ 発売元 システムソフト・アルファー
発売日 2005/12/16 価格 1万290円(税込)
 
動作環境 CPU:PentiumIII1GHz以上のCPU搭載機種(2GHz以上を推奨)
メモリ:128MB以上(256MB以上を推奨)
ハードディスク:1GB以上のハードディスク空き容量
周辺機器:CD-ROMドライブ
DirectX9.0以上に対応したサウンドカード
表示環境 1024×768ドット、16ビットHigh Color以上のカラー表示が可能な環境
DirextX DirectX9.0が動作可能な環境

(C) 2005 SystemSoft Alpha Corporation
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http://www.4gamer.net/review/imperialforce2/imperialforce2.shtml