分かりやすい「ケモカワイイ」のキャッチコピー
待望の日本独自仕様の大半は未実装
ついに正式サービスが始まった「ホーリービースト」。「ケモカワイイ」というキャッチコピーの通り,プレイヤーキャラクターだけでなくモンスターまでもが可愛らしいデザイン |
11月15日,とうとう正式サービスがスタートした「ホーリービースト」は,ガマニアデジタルエンターテインメントが運営するMMORPGだ。本作は台湾EASYFUN Entertainmentが開発し,すでに台湾も正式サービスが行われている。日本でサービスを開始するに当たっては,単純なローカライズにとどまらず,インタフェースの変更やプレイヤーキャラクターのエディット,クエストの追加,変更など大幅に仕様を変更することが計画されているようだ。この変更された仕様は,台湾へも「ホーリービースト2.0」として逆輸出されるという。
課金形態は「基本料金無料/アイテム課金」で,11月15日に「アイテムモール」に有料アイテムが実装された。有料アイテムの内容は,獲得経験値を1.5倍にするもの,デスペナルティを抑えるものなど。またWWF(世界自然保護基金)支援用アイテムとして,パンダ装備が販売された。これはいわゆるパンダの着ぐるみで,売り上げは全額WWFに寄付されるという。
正式サービス開始時の時点では,まだアナウンスされている仕様変更の多くが未実装で,その中身は確認できない。12月の大型アップデートで,PK戦,新ダンジョン4種,新クエスト78種が追加されるようだ。
さてホーリービーストは,「ケモカワイイ」というキャッチコピーが示すとおり,可愛らしい「獣キャラクター」が特徴のMMORPGである。低年齢層や女性プレイヤーにも,非常にとっつきやすいグラフィックスで,これが本作の最大のウリとなっている。
舞台となるのは,獣の種族が暮らす世界ビースティア。プレイヤーは,古代の生体兵器でありビースティアの存在を脅かす「蟲」と戦うというストーリーだ。
プレイヤーキャラクターとして用意されているのは,一般的に知られる「木」「火」「土」「金」「水」の五行に「風」を加えた,6種類の属性に分かれた「獣」の種族で,それぞれ男女が選べる。五行といっても種族間に「相生」や「相克」といった関係が反映されているわけではなく,単にモチーフとして使われているだけのようだ。また,いずれの種族も外観および専用スキルに違いはあるが,今のところ能力自体に差異はなく,レベル5に達したときに転職できる職業が違うだけである。
したがって,キャラクターメイキングは「自分がどの職業をやりたいのか」に重点が置かれることになり,種族や性別はおおよそ各自の好みでよいだろう。
プレイ開始時(レベル1)はどのキャラクターも獣形態であり,人型に変身できるようになるクエストに挑戦できるのはレベル3からである(非常に簡単)。獣形態では移動速度が上昇する半面,アイテムの着脱/交換ができなくなり,また使用可能スキルも人型に比べて圧倒的に少なくなってしまう。状況に応じて獣/人と姿を切り替えるのがいいだろう。変身自体はいつでも何度でも可能だ。
[職業の特徴]
●戦士
ほぼすべての装備を使用できる。重装備ができるので前衛の主役
●盗賊
接近戦と暗殺術に長けた前衛職だが,軽装備までしか使用できない
●狩人
遠隔攻撃を得意とする。軽装備までしか使用できない
●幻術師
バフ/デバフ系の魔法使い。装備できる防具はローブ系のみ
●仙法師
攻撃系の魔法使い。装備できる防具はローブ系のみ
●治療師
いわゆるヒーラー。装備できる防具はローブ系のみ
[種族の特徴]
●鳥族 火の属性を持つ。狩人,幻術師,治療師に転職できる。人型のときの大きな羽根が美しく,特徴的だ |
●猿族 木の属性を持つ。戦士,盗賊,仙法師に転職できる。人間と大差ないせいか,あまり人気がない? |
●竜族 水の属性を持つ。戦士,仙法師,治療師に転職できる。獣形態のときのウネウネニョロニョロした動きは必見 |
●犬族 土の属性を持つ。戦士,狩人,幻術師に転職できる。犬好きはこれしかない。ハスキー風の獣形態が精悍だ |
●牛族 風の属性を持つ。戦士,狩人,治療師に転職できる。獣形態のアンバランスな体型と白黒ブチ模様がキュート |
●虎族 金の属性を持つ。戦士,盗賊,仙法師に転職できる。人型はいわゆる狙った感じの猫耳キャラである |
あまりにもオーソドックスなプレイ感
流行りの親切さやテンポの良さが足りない気も
獣型だけではなく人型キャラクターのモデリングも可愛い。現在のところ本作の最大の魅力は,このグラフィックスと言い切ってしまってもいいだろう。ちなみにこれは悪魔っ娘ではなく,鳥族の別カラーバージョンだ |
操作については,ごく一般的な「クリックゲー」であり,攻撃やスキルの使用,チャットなどとくに難しいところはなく,実にオーソドックスだ。また,チュートリアルを兼ねたクエストで一通り各種操作の説明がされるので,よく読めば初心者も悩むことは少ないはず。
とはいえ,最近のMMORPGに増えているような懇切丁寧でテンポのいいチュートリアルというわけではなく,各項目の解説の発生条件が一部曖昧だったりと,あまり親切とはいえない。実際,筆者がプレイしたときはスキルの習得と使用についてのチュートリアルがなかなか発生せず,レベル8になってからようやく発生した次第。スキルの習得/使用はレベル5から可能なので,ずいぶん遅くなってから発生している。
とくにチュートリアルを受けなくとも,該当するNPCを自分で見つけさえすればスキルは習得できたので支障はなかったのだが,まったくの初心者がプレイすることを考えると,こうした点はぜひ改善していただきたいものである。
戦闘も極めてオーソドックス。と,いってしまえばそのとおりなのだが,複数のキャラクターを同時に操作するシステムや,アクション要素を取り入れたスピーディな展開のシステムをウリにしたタイトルが見受けられる昨今,本作の戦闘はシンプルすぎて少々物足りない。レベリングに必要な狩りも単調になってしまいがちで,しかも成長スピードは緩慢なため,昨今のサクサクとレベルが上がるタイトルと比較すると,ノンビリした感がぬぐえない。
また本作のウリの一つとなっている獣と人型の形態変化も,残念ながら今のところ大きな効果がない。唯一,獣形態の「凶暴」スキルが攻撃力と移動速度を大幅にアップさせるため,ボス級や格上のモンスターを倒す場合に役立つくらいである。しかし,このスキルは一定時間強制的に獣形態に変化させられてしまうので,使う場所とタイミングを選ぶのが難点だ。
結局のところ,戦闘時には人型で多様なスキルを駆使し,移動時は足の速い獣形態で,という単純な使い分けになってしまいがちなのが残念。このシステムを活かすためには,獣か人型かでなければ入れないフィールド,達成できないクエストなどが今後必要になるだろう。
「凶暴」スキルは一定時間,攻撃力や移動速度などが上昇するので使い勝手がいい | 宝箱を開けるときに一定の確率で登場する巨大モンスター。1024×768ドットの画面サイズでは収まりきらない大きさに圧倒されるが,ボスとは比較にならないくらい弱い |
ダンジョン内のモンスターは,フィールド上の同じレベルのモンスターより数段手ごわい。ダンジョンを攻略するにはパーティプレイが必須だろう | 専用スロットの付いた装備には,各種の能力値をアップする水晶を合成して強化できる |
可愛いだけじゃダメ?
今後のアップデートでどこまで変わるかに期待
メインストーリーのクエストは,宿敵である蟲の退治と関連が深い。しかしレベリングのための狩りに追われて,存在価値や重要性が薄れているのは否めない |
そのほか改善してしてほしい点としては,メインストーリーの展開が挙げられる。「ビースティアを破滅に追いやらんとする蟲との戦い」という,メインストーリーに関連したクエストが節目ごとに発生しているのだが,プレイしていてどうにも印象が薄いのだ。
これはレベリングのために狩るモンスターの大半が,蟲とは無関係の存在であること,そしてレベリングのスピードと蟲関係のクエストが発生する頻度のバランスが合わず,ストーリー運びのテンポが悪いことに起因している。
例えばレベル17の時点で,次のレベルに上げるのに必要な経験値を100とする。レベル17で受けられる蟲関係のクエストは三つで,達成して得られる経験値の合計はわずか6。残りの94はそのほかのクエストや通常の狩りで稼ぐしかなく,蟲の存在がプレイヤーの頭にない状態が,絶対的に長くなっているのだ。
アナウンスによれば,12月のアップデートでクエストが多数導入される。この段階で,蟲の存在を意識させるクエストが大幅に増加することに期待したい。また,せっかくプレイヤーキャラクターとして6種族も選択できるのだから,それを活かした種族独自のクエストなどがあってもいいのではないだろうか。またレベルアップ時など,条件を満たした場合に新しいクエストの存在を教えてくれる機能などもあれば便利だろう。
とまあ,見事に「〜〜してほしい」ばかりの内容になってしまったが,これは多くのテストプレイヤーがすでに要望として提出している内容と,大きく変わらないのではないだろうか。結論を言ってしまえば,正式サービス開始時点までにおける本作は,一世代前によくあった平均的なMMORPGである。
ここ1年以内に登場し,かつ一定以上の評価を得たタイトルは,レベリングが速い,豊富なクエストが次から次へと発生する,複数キャラによる戦闘システムを搭載しているなど,プレイ感を大きく左右する何かしらの特徴を持っている。それらに対して,今のところ「キャラが可愛い」という特徴だけで勝負している本作の現状は,少々厳しいと言わざるを得ない(可愛いと感じるかどうかは人によるし)。
課金アイテムやPvP,PKなどといった日本独自の仕様が,「ケモカワイイ」をさらに強調させるような,あるいはまた別の魅力を生み出すようなものであるよう,今後の発展を見守りたい。
宿敵の蟲は各フィールドに点在している。しかしクエスト以外ではスルーしてしまう人も多そうだ | ボスモンスターはプレイヤーキャラクターに比べて,圧倒的に大きい。討伐はパーティ推奨だが,十分な装備とアイテムを揃えたうえに,スキルをうまく使えばソロでも攻略可能 |
レベルが上がると,獣形態も進化して外観も精悍になる。強力なスキルも習得可能になるが,可愛らしい幼獣(?)のほうが人気が出そう | 11月15日に実装された有料アイテム。これをもって,正式サービスに移行したことになる。WWFへの寄付用アイテムもここで買う | ハロウィン記念アイテムとして配布された「完熟南瓜帽子」。正式サービス以降にも,こうした期間限定イベントおよびアイテムに期待したい |