― プレビュー ―
優れたインタフェースを実現し,PCならではの機能を生かしたゴルフゲーム
ゴルフだいすき! 〜 I LOVE GOLF! 〜
Text by midi
2006年8月30日

※本稿は8月25日(クローズドβテスト)時点でのゲーム内容に準じています

 

キャメロットが自信を持って送り出すゴルフゲーム
その完成度を限定先行テストで確認

 

ゴルフゲームを知り尽くしたキャメロットが作っているだけに,しっかりとした作りになっている

 ELEVEN-UPが運営するオンラインゴルフゲーム「ゴルフだいすき! 〜 I LOVE GOLF! 〜」(以下,ゴルフだいすき!)の限定先行テスト(クローズドβテスト)が,2006年8月22日(火)から25日(金)までの4日間行われた。
 本作は,プレイステーション用ゴルフゲームである初代「みんなのGOLF」を手がけたキャメロットが開発しており,発表の時点から世のゴルフゲーム好きの期待を集めまくっているタイトルである。その肝心のソフトの出来はどうだったのか,4日間という短い期間だった限定先行テストに参加したので,その感想をお伝えしよう。

 

基本操作はマウスのみでOK。シンプルで分かりやすい設計だ PCゲームならではの要素が多数盛り込まれているのもゴルフだいすき!の特徴

 

 

オープンスペースでは遊べなかったが
ゴルフだいすき!の完成度は驚異的な高さ

 

ゲームにログインすると,上戸彩似の受付嬢が出迎えてくれる。元気ハツラツゥ?

 まず結論から言おう。ハッキリ言って,この作品の完成度は驚くほど高い。まだまだ開発途中の段階で実施された限定先行テストであるにもかかわらず,プレイできたゲーム自体の完成度は相当のレベルに達していた。
 もちろん,プレイ可能なコースが1種類(18ホール)のみだったり,オープンスペース(ロビーのような場所)内を移動できなかったりと,プレイバリューの面で物足りなさを感じたのは事実だ。しかし,“ゲーム部分に特化した”限定先行テストのためそれは致し方ないところ。そこを突いて物足りなかったと言うのはナンセンスだろう。むしろここは,どのようなパーツが組み合わさって驚異の完成度を導き出したのか,その点を紹介していこう。

 まずは根本的なことだが,基本システムやクラブのスイング方法などが,初代「みんなのGOLF」から「マリオゴルフ ファミリーツアー」につながる一連のキャメロット作品とほぼ同じである点が大きい。初代みんなのGOLFで採用されたシステムは,2006年8月の時点でゴルフゲームの一つの完成形,デファクトスタンダードとして広く浸透している。
 そして,今作「ゴルフだいすき!」のシステムは,ゲームキューブ用ソフト,マリオゴルフ ファミリーツアーのシステムをPC向けにチューンナップしたものを採用。つまり,遊びやすさやとっつきやすさで抜群の安定度を誇っているのだ。
 まぁ,制作がキャメロットなので,本家がバージョンアップを施したということになる。音楽にたとえるならセルフカバーのようなものだろうか。システムを知りつくした開発者が作っているだけあって,かゆいところに手が届く,そんなシステムになっている。PCのキーボード/マウスはコンシューマゲームのコントローラとは操作の勝手が変わってくるが,そのあたりはどう消化したのだろうか。

 

ショットの操作方法などは既存の作品とほぼ同じ。マニュアルいらずなのが嬉しい 今回の限定先行テストでは,キャラクターは男女それぞれ一人ずつ用意されていた コースに出るには,クラブハウス(ロビー)でルームを作るか,すでにあるルームにエントリーすればいい

 

 本作では,マウスのみでメニュー操作からショットに至るまですべての操作が行えるという点が特徴となっている(チャット時はさすがにキーボードを使用するが)。これはゴルフゲームでは珍しいことではないだろうか。
 既存のゴルフゲームでは,ボールを打ち出す方向,ボールインパクトのタイミングなど非常に細かな調整が求められる。カーソルキーなどでショットの方向を細かく調整して,つぎはSpaceバーを押してショット……という風にいくつものキーを使用しなくてはいけない場面が多々あるが,本作ではそれと同様の操作がマウスだけでササッと正確にできてしまう。
 ショットの基本操作においては,スイング開始,パワー決定,インパクトタイミングの計3回ボタンを押すというのは,もはやゴルフゲームでは常識に近い。当然本作でも同様のシステムが採り入れられているのだが,それだけではなくインパクトでボタンを押すことを省略(ボタンを押すのはパワー決定までの2回だけ)した初心者向けの操作方法も用意されている。
 マウスではプレイしにくいのでは……と最初は思ったのだが,なんのなんの。この快適さには本当に驚いた。慣れるまで多少の時間が必要かもしれないが,一度マウス操作に慣れてしまうと,キーボードを使っての操作には戻れないほどに快適だった。本作品をプレイするならば,マウスでのプレイを強くオススメしたい。
 また,最大パワーがあらかじめ設定できるというのも特徴だろう。飛距離が約150ヤードの5番アイアンで,130ヤードのアプローチがしたい場合,従来のゴルフゲームではゲージの八分目あたりを狙って打っていたはずだ。本作ではあらかじめバーの長さ(つまりは最大パワー)を変更できるので,目分量による調整は必要ない。しかも「このパワーで打ったら130ヤードくらい飛びますよ」的なガイドまで表示される親切さ。この新機能をうまく使いこなせば,アプローチなどに威力を発揮するだろう。

 本作には,こういったちょっとしたユーザーフレンドリな配慮が随所に施されている。一つ一つを取ってみると細かいことではあるが,それらが作品全体の完成度を高めているのは確かである。

 

現在ではゴルフゲームの定番となった派手なエフェクトは,本作でも採り入れられている 強風が吹いている場合は,このように風がクルクルと回るエフェクトがあって分かりやすい ショット後にボールが落下する地点をあらかじめ矢印で示してくれる

 

ゲームの設定や画面設定をかなり細かくカスタマイズ可能。好みの環境で遊ぼう ほぼすべての操作がマウスで行える。思った以上に快適な操作で,キーボードより楽かも 操作方法が分からないときも,メニューで“操作方法”を開けば即解決。親切です

 

 

アイデア賞もののマルチウィンドウ
一度開いたらシングルウィンドウには戻れない?

 

マルチウィンドウを“5”に設定すると,このようにメイン以外に四つのサブウィンドウが開く

 次は,ゴルフだいすき!の特徴でもある,マルチウィンドウによるプレイについて書いていこう。ゴルフゲームに限らず,一般的なゲームでは,ウィンドウ一つだけを使い,そこにすべてのインフォメーションやアクションが表示されるのが普通だ。フルスクリーンモードかウィンドウモードを選べる程度だろう。
 しかしゴルフだいすき!では,最大五つのウィンドウを同時に開き,さまざまなアングルからコースやショットを見られるようになっているのである。ウィンドウが五つ開いているとどうなるのか,ピンとこないかもしれないが,画面写真も使って説明していこう。

 既存のゴルフゲームでは,コースを上空の視点から見たり,コース上でグリーンを確認したりするときは,視点切り替えの操作を行うというのが一般的である。しかし本作では,別々のウィンドウで複数の視点を常に見られるようにすることで,その手間を省いている。
 基本ウィンドウはプレイヤーキャラクターの背後からの三人称視点だが,ボールの落下予想点,グリーン上(カップ付近),上空からのコース図などを別ウィンドウで表示できる。視点切り替えのためにボタンを押さなくとも,ひと目でコース全体を視覚的に把握できるのだ。
 PCのオペレーション的に考えれば,複数のウィンドウを開くのはごく当たり前のことだったりするのだが,これをゲームで実現するというのは凄いアイデアだと思う。いちいち視点切り替えの操作をしなくても,打ったボールがどこに落下するのか,そして次のショットのことまでが瞬時に判断できるのだから。
 このマルチウィンドウがあるおかげで,遊びやすさが格段にアップするのは確実。そのあと,ウィンドウ一つでも遊んでみたが,やはり複数ウィンドウで遊んでいるときに比べると,快適さが数段落ちてしまう。本作品をプレイするのであれば,マルチウィンドウで遊ぶべきだろう。
 開くウィンドウの数は1〜5枚で自由に設定が可能だが,ウィンドウを複数開くと処理落ちが気になるところ。ちなみに,筆者が使用しているノートPCでは,三つ開いた状態でも快適にプレイできた。ただ,五つ同時に出すと若干の処理落ちが発生し,ショットなどに影響が出てしまった。もちろん,グラフィックスカードを差したデスクトップPCであれば,よほど古いPCでない限り,五つのウィンドウを開いていても処理落ちは起きないだろう。
 ウィンドウは多数開いていたほうが情報が多く便利だが,それが原因で発生する処理落ちでミスショットを連発しては意味がないので,このあたりは実際に遊んでみて,ベストと思えるウィンドウ枚数を選ぶようにするといいだろう。

 

常に五つの視点で状況を把握できるため,視点変更が面倒だという人にはピッタリかも 当然のことながら,ボールの行方も五つのカメラで追いかけてくれる。大迫力です ボールがどこにどう転がったのか,五つカメラがあればいろんなアングルから把握できる

 

このマルチウィンドウ,グリーン上ではとくに便利。ラインなどが読みやすいのだ テレビのゴルフ中継でもこんなマルチアングルは見たことない。PCゲームならではの機能といえる バーディを取って喜ぶ姿もマルチウィンドウで表示。そない喜ばんでもよかろうに

 

こちらはサブウィンドウ(トップビュー)の画面。場面によって表示内容が変わっていく

 

 

もう一つの目玉のオープンスペースは
未実装だったのでまた今度

 

 ここまでは「ゴルフだいすき!」の完成度の高さについて語ったので,そのほかの部分についても触れていこう……といきたいところだが,残念ながら本稿ではゴルフだいすき!の部分についてしか語れない。というのも,前述のとおり今回実施された限定先行テストでは,ゴルフ以外の部分はすべてオミットされていたからだ。

 以前掲載した発表会の記事では,プレイヤーの分身であるキャラを操作し,オープンスペース(街のようなもの)やクラブハウス(ロビー)を自由に移動でき,いろいろと遊べる要素があるというGプラネット構想が目玉の一つだったのだが,限定先行テストではそういった要素がすべて未実装だった。
 プレイヤー同士のコミュニティうんぬんに関する機能については,チャット機能ぐらいでほぼゼロの状態。ロビー,オープンスペースが実装されれば空間に広がりができ,さらに盛り上がりそうな気はするが……。このあたりは今後のテストで実装されるのを待ち,そこで触れたうえで再度レポートしたい。

 未実装といえば,ほかのコースの完成度も気になるところ。今回遊べたコースのアイランドリゾートは,レイアウト自体が初心者向けのものだったため,ゴルフゲーム好きにとっては難度が低すぎたようにも思える。ゴルフゲームの難度調整はコースレイアウトにかかっているため,今後どれだけバラエティに富んだコースが用意されているかも一つのポイントになりそうだ。個人的には,キャメロットが作っているんだから,そのあたりは問題ないと思っているが……さてさてどうなるのか。新たなコースの登場を期待して,待ちたいと思う。

 

画面下に表示されている細いワクがチャット文字入力枠。テストでも問題なく機能していた 挨拶や決めゼリフなどは,あらかじめマクロに登録されていた。もちろん編集機能も付いているので変更も可能だ 今回のテストで遊べたアイランドリゾートは初心者向けコース。筆者のベストスコアはトータル54

 

 

「さすがキャメロット」のひと言,これぞ老舗の底力か

 

 さて,レビューの締めとして本作品を総括してみると,「さすがキャメロット!」のひと言につきる。この安定度,完成度は昨日今日に設立されたソフトハウスが出せるものではない。さすが老舗というところだ。筆者は,キャメロット代表の高橋兄弟には初代みんなのGOLF発売に前後して何度かインタビューしたことがあるが,彼らのゴルフに対する愛情,こだわりは,その当時からすさまじいものがあった。
 当時は「なんでこの人達はこんなにゴルフが好きなの?」と驚いたが,今作を見る限り,数年の年月を経てその好きさ加減,こだわり加減にさらに拍車がかかっているような気がする。興味を持った人は,キャメロットの高橋兄弟のインタビュー記事前後編を読んでもらえれば,そのこだわりが伝わってくるのではないだろうか(関連記事1関連記事2)。

 なお,ゴルフだいすき!は,秋頃にオープンテスト(オープンβテスト)を行い,2006年内には正式サービスが開始となる予定。4Gamerでは動きがあり次第レポートを掲載する予定なので,ゴルフゲームが好きな人は期待して続報を待っていてほしい。

 

タイトル ゴルフだいすき!〜I LOVE GOLF!〜
開発元 キャメロット 発売元 ELEVEN-UP
発売日 2007年内 価格 N/A
 
動作環境 N/A

(C)ELEVEN-UP Inc.
(C)CAMELOT CO.,LTD

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/golf_daisuki_cbt/golf_daisuki_cbt.shtml