― レビュー ―
“最後のAGP”を買うべきか,PCI Express x16へ移行すべきか
WinFast A7800GS TDH 256MB
Text by 宮崎真一
2006年2月16日

 

WinFast A7800 GS TDH 256MB
メーカー:Leadtek Research
問い合わせ先:アスク(販売代理店)
TEL:03-5215-5650

 NVIDIAは,AGPスロット搭載PC向けのグラフィックスチップとして「GeForce 7800 GS AGP」を発表し,すでに搭載カードはいくつか市場に登場している。スペックなどの詳細は2006年2月2日の記事で紹介しているので割愛するが,今後PCI Expressシステムが主流となっていく中で,ハイエンドクラスのAGPグラフィックスカードが果たして“買い”なのか,気になっている読者も多いのではなかろうか。
 そこで今回は,Leadtek Research製のGeForce 7800 GS AGPカード「WinFast A7800 GS TDH 256MB」(以下A7800GS)を利用して,評価を行っていきたいと思う。

 

 

■HSIを利用してAGPに対応

 

チップクーラーを取り外したところ

 前出の記事でも紹介しているように,GeForce 7800 GS AGPは,製品名にこそ「AGP」の文字が躍っているものの,実際にはPCI Express x16インタフェースのグラフィックスチップである。NVIDIA独自のPCI Express−AGP変換チップであるHSI(High-Speed Interconnect)を介すことで,AGP接続グラフィックスカードになっているのだ。実際,A7800GSの大型チップクーラーを取り外すと,GeForce 7800 GS AGPといっしょに,HSIが姿を見せる。

 

左から順に,チップクーラーのカバーを取り外したところ,カード背面,カード背面のヒートシンクを取り外したところ。HSIの発熱は無視できないため,グラフィックスチップといっしょに冷却する仕様になっている,また,A7800GSではグラフィックスメモリとして,Samsung Electronics製のGDDR3メモリ「K4J55323QG」(1.4ns品)を4枚ずつ,カードの表と裏に搭載していた

 

A7800GSが搭載しているHSI

 HSIのチップリビジョンはA4。これは筆者が確認している限り,1年以上前に発売されたAGP版GeForce 6600 GTカードが搭載していたのと同じである。

 

 A7800GSという製品そのものについてもう少し細かく見てみると,動作クロックはコア375MHz,メモリ1.2GHz相当(600MHz DDR)。「Prince of Persia: Warrior Within」と「Tom Clancy’s Splinter Cell: Chaos Theory」の英語版フルバージョンが付属するのは,ポイントが高い。

 

A7800GSの付属品一覧。コンポーネント出力ケーブルは用意されていない

 

 

■ドライバに振り回されたGeForce 7800 GS AGP

 

 2006年2月3日の記事で紹介したように,A7800GSのパッケージに付属していた公式β版ドライバであるForceWare 83.10βを利用すると,一部のゲームで大きくフレームレートが下がるという不具合が発生した。
 そこで,海外の情報サイトで公開されたリーク版βドライバを試してみると,検証した限り,ForceWare 83.40βでは,上記の問題は発生しなかった。どうやらフレームレートの低下は,ドライバのバグによって引き起こされたもののようだ。
 こういった事情のためかどうかは分からないが,「GeForce 7800 GS AGP公式対応版ForceWare」は,それまでも公開されていたForceWare 81.98を,GeForce 7800 GS AGPに対応させただけのものに留まった。バージョンも81.98のままで,大きな機能追加やバグフィックスは,少なくとも表立っては行われていない。

 

Battlefield 2のリプレイでは,何回かに1回,このような,なんだか分からない画面が表示されることがあった

 ただし,この新ForceWare 81.98でも,一部のタイトルにおいて――明確な形で再現性を確認することはできなかったが――画面表示が時折おかしくなることがあった。A7800GSだけであれば,ひょっとすると個体不良の可能性もあったのだが,もう一枚用意した,別のGeForce 7800 GS AGPカードでもまったく同じ症状が発生したので,個体不良とは考えにくい。
 もちろん,後述するテスト環境との組み合わせが問題を引き起こしている可能性はあるので,ForceWareが100%悪いとはいい切れない。しかし,GeForce 7800 GS AGPとForceWare 81.98に,全幅の信頼がおけないのも,また確かである。早急なドライバアップデートを期待したいところだ。

 

 さらに言うなら,この新ForceWare 81.98が公開されたのは日本時間2月8日(正確には7日深夜)。国内では発表と同時に製品の販売が行われたため,有名無実になったものの,NVIDIAは当初,搭載グラフィックスカードの発売日を2006年2月6日と予告していた。時差を考え,最大限譲歩したとしても,“発売日”から1日以上も,公式の対応ドライバが用意されなかったのである。
 また,並行輸入品として流通したMSI製GeForce 7800 GS AGPカードにWindows XP用ドライバが付属していなかった(64bit版Windows XP用はあった)など,全体的に混乱があったのも事実。GeForce 7800 GS AGPの発売を待っていたユーザーは,完全に振り回された格好になったわけで,NVIDIAには今後,このようなことが起こらないよう,ぜひ留意してもらいたいと思う。

 

 

■いつもと若干異なるテスト環境に注意

 

 以上,現状をまとめてみたが,とにもかくにも,新ForceWare 81.98が,GeForce 7800 GS AGPを公式にサポートしているのは間違いない。そこで今回は,このドライバを利用して,GeForce 7800 GS AGPのパフォーマンス的な位置づけを確認してみることにしよう。

 

 テストはAGP世代とPCI Express x16世代にまたがるため,今回は本誌定番のものではなく,ASUSTeK Computer製のVIA K8M800搭載マザーボード「A8V-MX」と,VIA K8M890搭載製品「A8V-VM」を用意した。秋葉原のPCパーツショップである高速電脳の協力で両製品を利用することにしたのは,プラットフォームの違いによる影響を最小限にし,可能な限り純粋にグラフィックスカード間の違いを見るためである。

 

左はA8V-MX,右はA8V-VM。いずれもmicroATXマザーボードであることや,サウスブリッジがVT8251であることなど,外部グラフィックスバス以外の仕様がよく似ている。
問い合わせ先:高速電脳
TEL:03-5297-3210

 

 テストに当たっては,両マザーボードとも,オンボードグラフィックス機能を完全に無効化した。また,K8M800とK8M890では,世代の違いからHyper-Transportバスの速度が順に800MHz,1GHzと異なっており,これを揃えることもできたが,現実的な話として,せっかく1GHz動作するものを800MHzに落として動作させる人などいない。よって,今回はこの点のみ違いを許容し,いずれも標準設定のままにしている。

 

 また,比較対照用として,AGP世代からGeForce 6800 GTとGeForce 6600 GT,PCI Express x16世代からGeForce 7800 GTとGeForce 6800 Ultra,GeForce 6800 GS搭載グラフィックスカードを用意した。以後とくに断りのない限り,製品名ではなく,グラフィックスチップ名で表記するので,この点は注意してほしい。なお,カードとしてAGP版とPCI Express x16版の両方が市場に存在しているグラフィックスチップについては,チップ名の後ろに括弧書きで「AGP」「PCI Express x16」(グラフ内ではPCIe)と表記する。この表記は,HSIの使用/非使用とは直接関係しない。
 このほか,テスト環境はのとおりだ。ForceWareから垂直同期のみオフに設定した状態を「標準設定」,同じく強制的に8倍(8x)のアンチエイリアシングと16倍(16x)の異方性フィルタリングを適用した状態を「8x AA&16x AF」と呼ぶ。

 

 

 

■AGP世代では抜群のパフォーマンス

 

 というわけで,順にベンチマークスコアを見ていくことにしよう。まずは,読者の中でもユーザー数が少なくないと思われる,AGP接続のグラフィックスカードと比較してみる。

 

 これまでも繰り返しお伝えしているように,現時点ではスコアから何かを語れるだけのデータを取得し終えていないため,「3DMark06 Build 1.0.2」(以下3DMark06)のスコアは,グラフ1にまとめるだけに留める。そこで,グラフ2の「3DMark05 Build 1.2.0」(以下3DMark05)から見ていくが,3DMark05の総合スコアでは,GeForce 7800 GSの良好な性能が光る。GeForce 6800 GT(AGP)に対して1割以上,GeForce 6600 GT(AGP)に対しては,6割以上高速だ。
 なお,GeForce 6600 GT(AGP)は高解像度でアンチエイリアシングおよび異方性フィルタリングを適用するとエラーが生じたので,スコアは「N/A」となっている。また,個別には論じないが,Feature Testの結果については別途まとめてあるので,興味のある人はグラフ2a〜2cを参照してほしい。

 

 続いて,実ゲームタイトルのベンチマークテストに移ろう。まず「Quake 4」では「The Longest Day」というマップで7名によるデスマッチを行ったリプレイを利用し,Timedemoから平均フレームレートを計測した。その結果がグラフ3だ。
 3DMark05と同じく,Quake 4においても,GeForce 7800 GS AGPの数値は頭一つ抜きん出ている。とくに標準設定の1024×768ドットにおいて,唯一100fpsを超えているあたりからは,性能の高さがうかがい知れよう。

 

 

 「Battlefiled 2」では,「Dragon Valley」で実際に行われたコンクエスト(16人×16人対戦)のリプレイをスタートから120秒間再生し,「Fraps 2.60」を用いて平均フレームレートを計測した。結果はグラフ4に示すが,Quake 4と全体的には似た傾向だ。ただし,Quake 4のスコアほどは,GeForce 7800 GS AGPとGeForce 6800 GT(AGP)との間に差はない。

 

 

 次に,最近本誌で「軽い」と言い続けている「TrackMania Sunrise」(グラフ5)。本タイトルでは,1周53秒程度の「Paradise Island」というマップのリプレイを3回連続で実行し,その平均フレームレートを,Battlefield 2と同じくFraps 2.60で測定している。
 スコアの傾向は,グラフ2〜4と同じといっていいだろう。高解像度になっても,GeForce 7800 GS AGPのGeForce 6800 GT(AGP)に対するアドバンテージは,ほぼ10〜15fpsという,明確な形で保たれている。

 

 

 

■上位モデルとの差は埋めがたい

 

 IntelもAMDもプラットフォームをPCI Express世代へほぼ完全に移行したため,今後,グラフィックスカードのバスインタフェースとして,AGPが廃れていくのは間違いない。実際問題,GeForce 7800 GS AGPの購入を検討している人の大多数は「買うべきか,PCI Expressシステムへ移行すべきか」を悩んでいるのではなかろうか。
 そういった意味で,以下,PCI Express x16グラフィックスカードと比較し,GeForce 7800 GS AGPが,AGPシステムの“延命”を図るに値するグラフィックスチップなのかを,検討していくことにしよう。以下,GeForce 7800 GS AGPのスコアはグラフ1〜5から流用しつつ,比較してみる。

 

 3DMark06のスコア(グラフ7)は前述した理由により参考まで。グラフ8で3DMark05のスコアを見てみると,同じGeForce 7800シリーズであっても,GSとGTの間には,大きな差が付いているのが分かる。
 さて,GeForce 6800 Ultra(PCI Express x16)は,8x AA&16x AFを適用すると,高解像度になるに従って,非常に大きくスコアを落とした。個体不良の可能性もあるので,同じカードをもう1枚用意したが,結果は変わらなかったので,これはこういうスコアと見るべきだろう。原因は断定できないが,GeForce 6800 Ultra(PCI Express x16)は,グラフィックスチップ上にHSIを搭載しており,これが何らかの影響を及ぼしているのかもしれない。
 なお,グラフ2と同じく,ここでもFeature Testの結果を別途まとめてある。興味のある人は参照してみてほしい。

 

 

 AGPのテストと同じ順番で見ていくので,次はQuake 4。テスト結果はグラフ8にまとめたが,描画負荷が高くなると,GeForce 7800 GS AGPはGeForce 7800 GTに置いて行かれるようになる。

 

 

 「高負荷時に差が大きく開く」傾向は,Battlefield 2でも同じ(グラフ9)。標準設定の1024×768ドットではわずか1.9fpsの差が,1600×1200ドットでは14fpsまで広がってしまっており,完全に実力差というか,GeForce 7800 GTの16基に対して,GeForce 7800 GS AGPは半分の8基しかないという,ROPユニットの数の差が出ているといえるだろう。本稿は解説記事ではないので,詳細は省くが,一般に,似た仕様のグラフィックスチップで比較すると,ROPユニット数の多いほうが,高解像度のパフォーマンスは有利となる。
 一方,GeForce 6800 Ultra(PCI Express x16)やGeForce 6800 GSとの比較では,とくに高負荷時に十分といっていい差を付けており,GeForce 7800シリーズの面目を躍如しているのも分かる。

 

 

 ベンチマークスコアの最後はTrackMania Sunriseだが,ここでもQuake 4やBattlefieldと同じ傾向(グラフ10)。「基本的にGeForce 6800シリーズより高速だが,GeForce 7800 GTにはまったく歯が立たない」という,まったく妥当な位置に置かれているのが分かる。

 

 

 

■低消費電力なGeForce 7800 GS AGP

 

 最後に,今回採り上げた全製品について,横並びで消費電力とグラフィックスチップの温度を見てみることにしよう。ここでは,OS起動後30分間放置した状態を「アイドル時」とし,3DMark05を30分間リピート実行した状態を「高負荷時」とする。
 まず,システム全体の消費電力をグラフ11にまとめた。PCI Expressでは,安定した電力供給を行うため,電源系統に+12Vを利用することで,消費電力がAGPの最大25Wから最大60Wになっている。このため,AGP世代のほうがPCI Express x16世代よりも消費電力が低くなるのは,当然といえば当然。とはいえ,同じGeForce 7800であるGeForce 7800 GTよりも,GeForce 7800 GS AGPがアイドル時に20Wも低い点は注目に値する。高負荷時にはAGP製品で唯一160Wを超えてしまうが,それでもPCI Express x16製品よりは低く,これはメリットと判断していいだろう。

 

 

 消費電力が低いと,発熱量が低いことも期待できる。そこで,ForceWareからグラフィックスチップの温度を計測してみた結果がグラフ12だ。GeForce 6600 GT(AGP)ではデータを取得できなかったうえ,GeForce 6800 GT(AGP)とGeForce 6800 Ultra(PCI Express x16)は2スロット仕様のチップクーラーを採用するといった仕様の違いもあるため,データとしては参考程度になるが,それでも,GeForce 7800 GS AGPのチップクーラーが,HSIともども,効率的に冷却できているのは分かると思う。
 ちなみにファンの音は,GeForce 6800 GSのチップクーラーと同程度に感じた。それほどうるさい印象はない。

 

 

 

■コストとの折り合いが鍵

 

 2006年(の,おそらく後半)にはIntel,AMDとも,新しいデスクトップ向けCPUの発表が控えている。それだけに,PCI Express x16システムへの移行は先送りして,もう少しAGPで踏ん張りたいという人は少なくないだろう。実際,最新の3Dゲームを快適にプレイするには,GeForce 6600 GTはもはや力不足ということを考えると,GeForce 6600 GTやそれ以下,GeForce FXなどを搭載するグラフィックスチップを搭載したAGPカードから,カードだけ買い換えるに当たって,GeForce 7800 GS AGPという選択肢には,十分な意味がある。

 

 ただ,GeForce 7800 GS AGP搭載カードの実勢価格が4万〜4万5000円前後で,A7800GSもこの範囲で販売されているという現実もある。PCI Express x16ならほぼ同じ価格で,明らかにより高速なGeForce 7800 GT搭載製品を購入できるわけで,割高感は否めないところだ。
 ならば,上位モデルが出て,値が崩れるのを待てばいいかというと,さすがにもうこれ以上,AGPの上位モデルが登場することは考えにくい。もちろん,カードメーカーが独自に対応することはあるだろうが,その場合はカードデザインから行わなければならないため,やはりコスト面の問題はついて回ることになるはずだ。

 

 しかも,AGPシステムだと,CPUやそのほかのデバイスについても,アップグレードの限界が生じる可能性が否定できない。どうしても,全体的なパフォーマンスはPCI Expressシステムと比べると低くなりがちで,そういった制限のあるPCにおいて,グラフィックス機能だけ高速化することが,どれだけゲームの体感速度に寄与するかという疑問も残る。

 

 その意味でGeForce 7800 GS AGP,そしてLeadtek ResearchのA7800GSは,あと1年以上AGPシステムと付き合う覚悟を決めた人向けの製品ということになりそうだ。カード単体は確かに割高だが,システムを丸々移行するより安く済むのは確かなので,この点にメリットを感じるのであれば,購入する価値があるといえるだろう。

 

タイトル GeForce 7800
開発元 NVIDIA 発売元 NVIDIA
発売日 2005/06/21 価格 製品による
 
動作環境 N/A

Copyright (c) 2006 NVIDIA Corporation


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