レビュー : G25 Racing Wheel

3ピース構成の超高級ステアリングコントローラ

G25 Racing Wheel

Text by UHAUHA
2006年1月26日

 

 ドライビングシミュレータ(以下ドライブシム)をプレイするのに定番のステアリングコントローラ。その定番は長らく,Logitech製のプレイステーション2用周辺機器で,非公式ながらPCでも動作する「GT FORCE Pro」であり続けている。実勢価格2万円前後で,ゲーム機販売店で気軽に購入できるという利点も手伝って,多くの“PCドライバー”達が愛用中,と断じてしまっても,まず問題はないだろう。

 

G25 Racing Wheel
メーカー:Logitech(※2007年1月26日現在,日本法人のロジクールは取り扱っていない)
問い合わせ先:パソコンショップ アーク
TEL:03-5298-7020
パソコンショップ アーク店頭価格:4万6980円(税込,2007年1月26日現在)

 今回採り上げる「G25 Racing Wheel」(以下G25)は,そんなGT FORCE Proの上位版,そしてLogitechのゲーマー向けブランド「ゲーミング・グレード」(G-Series)の一つとして投入された製品である。GT FORCE Proと決定的に異なるのは,公式に「Windows XP」と「Windows Vista」がサポートされている,れっきとしたPC周辺機器であることだ(プレイステーション2も引き続きサポートされている)。
 現在のところ,Logitechの日本法人,ロジクールから国内発売のアナウンスはなされていないが,今回は,G25を輸入&販売している秋葉原のパソコンショップ アークの協力でテストする機会に恵まれたので,同店の店頭価格で4万円台半ばという高価な製品を,さっそく評価していきたいと思う。

 

 

ステアリング,シフトレバーとフットペダルの3ピース構成
GT FORCE Proとの違いをチェック

 

 まずはG25のハードウェア的な特徴をチェックしてみよう。主立ったところは以下のとおりだ。

  • ステアリングとシフトレバー,フットペダルの3ピース構成を採用する
  • シフトレバーは前後に操作するシーケンシャルシフトだけでなく,市販車と同様のH型マニュアルシフトも切り替え可能
  • フットペダルユニットにアクセルとブレーキのほか,クラッチペダルが用意されている

 要するに,競技車両で採用されている主要なシフトチェンジシステムを再現でき,さらに右/左ハンドル仕様にも対応可能。もっといえば,GT FORCE Proを含む,市販されているほとんどのステアリングコントローラよりもリアリティを追求できるのがウリというわけである。

 

 専門用語がいくつか出てきたところで,あらかじめお断りを。今回は製品の位置づけを考慮し,マニュアル車についてある程度の知識があるプレイヤーを主なターゲットとしている。いわゆる“オートマ限定”のドライバーや,そもそも四輪車の運転免許証を持っていない人も多いことは十分に理解しているが,本文中でクラッチやシフトについての説明を行うと,記事があまりにも煩雑になってしまうからだ。その点はご了承いただきたい。

 

 ……話を元に戻そう。まずステアリングホイールユニットから見ていくと,フォースフィードバック機能を実現するため,2個のモーターを内蔵するにもかかわらず,GT FORCE Pro(のシフトユニットを除いた部分)と,全体的な大きさはほとんど変わらない。
 一方,ステアリングホイールは大型化しており,GT FORCE Proが直径10インチ(約255mm)だったのに対し,G25では11インチ(約280mm)。さらに,ステアリングホイールの外装もGT FORCE Proのゴムから革(合成皮革)に変わっており,高級感を増している。

 

 スポークはステンレス板製で,左右に1個ずつ赤いボタンが用意される。下に並べた写真はいずれも左がG25,右がGT FORCE Proだが,ステアリングホイールの奥,裏側に用意された2枚のシフトパドルもステンレス板に変わって大型化されているのが見て取れる。横に並べてみると,GT FORCE Proがスポーク部分に多くのボタンを用意することもあって,むしろG25のほうが古くさく見えるかもしれない。

 

G25(左)とGT FORCE Pro(右)を並べてみた。外観からして印象はずいぶん異なる

 

十字キーを挟むように設けられた2か所のLEDは,電源オン時と,シーケンシャルシフトに切り替えたときにそれぞれ点灯する

 続いてシフトユニット。こちらはシフトレバーに,マニュアルシフト/シーケンシャルシフトの切り替え機構,そしてGT FORCE Proではスポーク部に配置されていたボタンがほとんどこちらに移動してきているため,意外と大きい。
 シフトユニットの奥側は斜めに跳ね上げられたデザインで,実車のセンターコンソールのようなイメージ。ここに,ひし形状に並べられたボタン×4,8方向入力に対応するデジタル十字キー,横一列に並べられたボタン×4が用意されている。

 

GT FORCE Proのシーケンシャルシフト(左)と並べてみた

 シフトユニット中央にある円形スイッチは,マニュアル/シーケンシャルシフトの切り替えスイッチだ。シフトレバーをニュートラル状態にして,シフトレバーを真下へ押下するようにしながら左右に回すことで切り替えられる。

 

 マニュアルシフト選択時はH型パターンの6入力が用意され,さらに(両シフトを切り替えるときと同じように)押し込みながら6速へ入れることにより,実車でいうリバースギアを再現。H型パターンを再現しているためか,GT FORCE Proのシフトレバーよりも長さがある。
 メカニカルな部分には合成皮革製のカバーが取り付けられているため,見た目は市販車のシフトレバーそのものだ。シフトノブはGT FORCE Proと同様の球状だが,ここも革張りとなっているあたり,ぬかりはない。

 

 なお,いうまでもないことだが,シーケンシャルシフト選択時は前後への2入力となる。

 

マニュアルシフト選択時におけるシフトレバーの可動域を示してみた

 

 3ピースめとなるペダルユニットだが,クラッチが追加されたため,GT FORCE Proとのサイズの違いは一目瞭然だ。ペダルの並びについて説明する必要はないと思うが,念のために書いておくと,向かって右からアクセル,ブレーキ,クラッチとなる。ブレーキペダルはクラッチペダル側に若干オフセットされていた。

 

ペダルユニット。GT FORCE Proのペダルユニット(右の写真右側)と並べてみると分かるが,底面積はかなり大きくなっている

 

 各ペダルはステンレス板製フレームとなっており,スプリングを内蔵したシリンダー――赤いプラスティック樹脂製部分――によって支えられている。ペダルを踏んだ際にスプリングが縮まることで,ペダルテンションを再現するというわけだ。
 どうしても強い力がかかるペダルユニットということもあり,フットレストもステンレス板製。そこかしこに金属という仕様なので,ペダルユニットの重さは約3kgもある。これは,GT FORCE Proのペダルユニットのちょうど倍の重さである。

 

ペダルユニットの底面には,滑り止めとなるゴム足のほか,カーペット上で使用するときに“引っかかり”となるカーペットグリップ機構が用意される。このグリップは任意で使ったり使わなかったりできるが,まあ,このあたりはGT FORCE Proと同じ

 

 

3ピース構成になったことで
取り付け&取り外しに少々難あり

 

 ステアリングデバイスを購入するときには,機能を語る以前に,「果たして自分の環境に取り付けられるのか」という問題が出てくる。

 

本体最前部(写真右端)から見て,クランプの位置は約50mm手前にある

 最大のポイントとなる取り付け方法だが,ステアリングユニット,シフトユニットとも,クランプ(≒2か所で挟み込む固定具)を採用する。ステアリングユニットの場合,クランプはGT FORCE Proと同じく本体の両端の2か所に設けられており,これを机などに引っかけて,締め付ける仕様になっている。
 対応可能な(机側の)厚さは最大で約50mm。一般的なテーブルやPCデスクなら問題ないと思われるが,引き出しのある学習机や,エプロン状の補強板が取り付けられたテーブルへの取り付けを考えているなら,あらかじめ確認しておいたほうがいい。

 

筆者がPCゲーム用に使っているテーブルへ取り付けてみた。このような,1枚板タイプのテーブルなら取り付けに支障はない。なお,写真でL字クランプの上に黒いブロックのようなものが見えるが,これは標準添付の高さ調整用アタッチメント

 

 シフトユニットは,2か所のL字クランプと,本体中央部を支えるクランプの3点留めとなる。ステアリングユニットで用意される高さ調整用アタッチメントは,シフトユニット用には付属しないため,L字型クランプは10〜50mm厚,中央クランプは18〜55mm厚の板に対応することになる。
 固定ポイントが3点あるため,机の端や,円形のテーブルなどでも2点留めが可能なのは,日本の住宅事情――というか,この場合は「あまり大きな机は置けない」という机事情か?――を考えるとメリットだ。

 

中央クランプの最小締め付け幅がやや広めのため,場合によっては,隙間を埋めるスペーサーをユーザー側で用意する必要も出てくる。写真のように,念のため滑り止め材などを敷くと確実に固定できるだろう

 なお,これはいうまでもないかもしれないが,シフトユニットは単体のため,利き手に関係なく,ステアリングユニットの左右へ自由に配置できるようになっている。
 GT FORCE Proでは右手側に固定されていたため,国産車など,左手でシフトレバーを操作する仕様に慣れている人は不便さを感じる場合があった。このあたりは意外と見逃せないポイントといえるかもしれない。

 

 最後にペダルユニットだが,これは足下に置くだけなので固定の必要はない。問題となるのは設置スペースだけと思われる。

 

ステアリングユニットの底面先端部をアップにしてみた。各種コネクタが隠れて見栄えがするといえば聞こえはいいが,着脱はかなり面倒

 以上,取り付け方にはなかなか気の利いた配慮を感じられるG25だが,ケーブルの配線となると,少々文句を言いたくなる。
 というのも,G25ではシフトユニットやペダルユニットから伸びるケーブルを接続する先のインタフェースが,ステアリングユニットの先端側面ではなく,底面に用意されているからだ。

 

 そのため,ケーブルの着脱には,必ずステアリングユニットを天地逆にする必要がある。シフト&ペダルユニットのケーブルに,PCとつなぐUSBケーブル,電源ケーブルをすべて底面の溝に通して,やっとステアリングユニットを固定できるというのは,かなりの手間だ。
 ステアリングコントローラを置きっぱなしにする人はまれだと思う。多くの場合,ゲームを終えたら片付けることになるが,このとき,かなりの面倒くささを感じた。ステアリング部背面にコネクタがあるだけで,ずいぶん印象は違ったのではなかろうか。

 

 

ドライバ周りが完全に英語なのは人を選ぶが
機能そのものは充実

 

 Logitech(ロジクール)製ゲームデバイス用のドライバは,「Logitech Gaming Software」に統合されており,G25でもこれを利用する。G25が日本で発売されていないこともあって,日本語版ドライバは用意されていないため,今回は英語版ドライバをインストールすることにしている。  具体的には,Logitechの米国サイトにあったテスト時点での最新版,バージョン5.00.182を用いることにした。
 

 

 さて,フォースフィードバックのテストや各種設定は,Windowsのコントロールパネルに用意された「ゲームコントローラ」から行う。
 G25のプロパティを開くと,最初に出てくるのが右のウインドウだ。これは動作状況を確認するためのもので,G25の各種操作を行うと,設定した内容に基づいて,各種状況に応じたフォースフィードバックエフェクトが再現され,ステアリングの反動などのテストを行える。では,設定はどこで行うかというと,赤い枠で囲んだ[Settings]ボタンを押して表示させる「Settings」ウインドウで,である。

 

 Settingsでは,大別して4項目の設定が可能だ。詳細とヒントを以下まとめてみたので,参考にしてほしい。

 

Settingsの詳細

 

●Pedals reported as…
 アクセルとブレーキの両ペダルを同軸で扱うか,独立した別軸で扱うかの設定だ。「Combined」にチェックすると同軸で認識されるが,最近のドライブシムで同軸のみのサポートしか行われないタイトルはほとんどないので,チェックを外したおいて基本的には問題ない。

●Rotation
 ステアリング最大回転角の設定項目だ。G25はGT FORCE Proと同じく,最小40度,最大900度の回転角に対応しており,「Degrees of Rotation」スライダーを動かすことにより,標準である200度以外にも好みの角度を設定できる。
 回転角とは,ロック・トゥ・ロック,つまり左右にいっぱいに回転できる回転角のことで,200度であれば左右に100度ずつ回すことが可能。設定した切り角以上になるとフォースフィードバックが最大で働くため,「これ以上は回らない(=回しても意味がない)」というポイントが分かるようになっている。

●Force Feedback
 フォースフィードバック対応ゲームにおいて,同機能を利用するかどうかと,利用する場合の詳細設定を行う項目だ。「Enable Force Feedback」にチェックを入れると,フォースフィードバックが有効になる。
 詳細設定は3項目用意されており,「Overall Effects Strength」はステアリング反動の総合的な強さを設定する。「Spring Effects Strength」と「Damper Effects Strength」は,それぞれ英文のチップヘルプを読む限り,前者が「ステアリングホイールを回転させたときに元に戻ろうとする反力(センタリング機能とは異なる)」,後者が「泥や水の上を走行したときの,タイヤを取られるような一定方向への反力」に関する設定項目のようだ。
 「のようだ」としたのは,設定を変えてもあまり違いが感じられず,よく分からなかったためである。この点はご容赦いただきたい。なお,各スライダーは0〜150%の間で調整可能となっており,標準では100%だ。

●Centering Spring
 フォースフィードバック非対応のゲームタイトルをプレイするときに,センタリング機能(=ステアリングが中央に戻ろうとする機能)を使うかどうかの設定。
 非対応のドライブシムでは,ステアリングホイールを回転させて手を離したとき,“切ったまま”の状態になるが,Centering Springで「Enable Centering Spring in Force Feedback Games」をチェックしておくと,センタリング機能が再現されるというわけだ。ここもスライダーは0〜150%の範囲を動かせる。

 

Logicool Profiler。常駐させ,ゲームごとにプロファイルを登録しておくと,自動で切り替えて読み出してくれる。使いようによっては便利かも

 以上,ここまでがフォースフィードバックに関連した設定だが,このほか豊富なボタン類に対するアサインを行うためのツール「Logicool Profiler」も,ドライバと一緒にインストールされる。
 ドライブシムをプレイする場合,基本的にはゲーム側でアサインを行うことになるが,タイトルによっては,一部のボタンに対してアサインしたくてもできない場合がある。そういった事態に遭遇した場合は,Logicool Profilerを使えば解決できる。一種の保険として覚えておくといいのではなかろうか。

 

 ちなみにLogicool Profilerでは,任意のキーを[Shift]キーとして割り当てられるようになっており,[Shift]キーとの組み合わせによって,2種類の機能を1個のボタンに割り当て可能だ。例えば,単独で押した場合はヘッドライト点灯,[Shift]と組み合わせた場合にはワイパー稼働といった具合。
 そもそも,G25にはシフトパドルを入れると12個ものボタンが用意されるので,果たして[Shift]キーを設定してまでコマンドを増やす必要があるのかという気はするが……。

 

 

実車そのままのクラッチ&
6速マニュアルシフトの楽しさが味わえる

 

 全体をひととおり見たところで,ここからは実際のゲームプレイにおける使用感をお伝えしていきたい。

 

 今回は,クラッチおよび6速マニュアルシフトに対応したタイトルとして「GTR 2 - FIA GT Racing Game」(以下GTR2),「RACE - The Official WTCC Game」(以下RACE),クラッチに対応した「Richard Burns Rally」(以下RBR)を用意した。

 

GTR2では,多くのクルマがシーケンシャルシフトだが,あえてシフトパドルやオートクラッチ オフ+6速マニュアルシフトで楽しむのもアリ。オートクラッチはゲーム中に[F9]キーでオン,オフ可能だ

 3タイトルをプレイしてまず感じたのは,合成皮革の張られたステアリングホイールの握り心地,グリップ感,操作性のよさだ。2個の内蔵モーターによる強烈な反動(=振動)が発生しても,しっかりとホールドし続けられる。ゲームをプレイしていると,どうしても手のひらに汗がにじんでくるが,このときもゴム張りにありがちな“イヤなベトベト感”はほとんどない。

 

 気になるであろうシフトレバーの使い勝手だが,6速マニュアルの場合は,スコン,スコンと心地よいシフトチェンジが可能で,シフトフィールはまずまず。頻発することになる,2速から3速,あるいは4速から5速へのシフトアップ/ダウン操作は,初めのうちこそ「2速から3速に入れようと思ったら5速に入ってしまった」という事態に出くわしたが,これは比較的すぐ慣れて,シフトミスも減っていく。クラッチ操作ともども,気持ちよいシフトチェンジを楽しめた。
 リバースギアは,ニュートラル状態からシフトレバーを押した状態で,6速の位置にシフトレバーを入れるわけだが,それほど強く押し込む必要はない印象だ。

 

RACEでは,マニュアル/シーケンシャルシフトのどちらでも激しいシフトチェンジを楽しめた

 一方,シーケンシャルシフトとして使うときは,「グニャ」といった,不思議な感触が少し気になった。
 実のところ,シフトレバーはマニュアル/シーケンシャルシフトを問わず,アナログ2軸(x軸,y軸)の動きを捉えて検出する仕様になっている。換言すれば,内部のゲート(というか溝)に沿ってアナログジョイスティックを動かすようなイメージだ。そのため,GT FORCE Proでシフトレバーを上下に動かしたときにある,マイクロスイッチを押すようなカチッとした感触は,G25では得られないのである。機能的にはなんら問題ないのだが,一般的なシーケンシャルシフト構造に慣れていると,違和感があるかもしれない。

 

RBRでは,車速が出ているとクラッチを踏んでもシフトダウンできず,クラッチ+シーケンシャルシフト仕様で乗りこなすのは難しかった。ラリーカーではオートクラッチを使うほうがお勧め

 ペダルユニットは,踏んだときの感触が素晴らしい。とくにブレーキペダルの踏んだ感触は秀逸だ。
 前述したとおり,ペダルテンションはスプリングを押しつぶすことで再現しているわけだが,それぞれのペダルでスプリングレートが異なっており,アクセル,クラッチ,ブレーキの順で重くなる。アクセルペダルは軽く全開まで踏み込めるのに対して,ブレーキペダルは踏み込むにしたがって重くなり,全開まで踏み込むのに相当な力がいるという具合に,油圧式のようなペダルテンションがうまく再現されているのだ。おかげでブレーキング時に細かい強弱をつけやすく,ブレーキがロックするかしないかの微妙なところも掴みやすい。
 使いこなすのに多少のコツはいるものの,つま先でブレーキを踏み,かかとでアクセルを煽って,回転数を上げてシフトダウンするヒール・アンド・トーが使えるのも嬉しいところである。

 

 ステアリングコントローラに付属するペダルユニットには,しっかり固定していないと,ペダル操作時に動いてしまうものが少なくない。しかし,G25のペダルユニットは重さが影響している部分もあると思うが,滑り止め材を使わず,フローリングの床に置いただけでも,動いてしまうようなことはなかった。安定性は高いといえる。

 

 クラッチについても触れておきたい。
 今回プレイしたGTR2,RACE,RBRはいずれもアナログクラッチをサポートしているが,どれもゲーム側に,クラッチの手動/自動制御を選択可能な設定項目が用意されている。そのため,クラッチペダルを利用してプレイヤー側でクラッチを制御するためには,自動制御(オートクラッチ)を無効にしておく必要があるのだ。

 

 なお,オートクラッチを無効化して,クラッチペダルを使う場合,停車時やスピンした際にクラッチを切る必要がある。当たり前といえば当たり前だが,どのゲームもこのあたりはしっかり作られており,ギアが入った状態で停車するとエンジンストールしてしまうのだ。
 GTR2やRACEでは,コースアウトしてグラベルから脱出する際に,完全にクラッチをつないでしまうとエンストするので,半クラッチを用い,トラクションのかかるところを探りながらクラッチ操作をして脱出する必要がある。このあたりは,クラッチペダルを装備するG25ならではの面白さといえよう。

 

 また,オートクラッチをオンにした場合でも,クラッチペダルの機能は生かされており,クラッチペダルを踏めばクラッチが切れる。そのため例えば,「スタート時にクラッチを踏んだ状態で1速に入れてアクセルを開けておき,スタートと同時にクラッチをつないで加速」といった使い方もできて便利だ。

 

一般的と思われる配置でセッティングしてみると,シフトユニット部にあるボタンの押しにくさが気になった。なお,床の上,ペダルユニットの近くにあるのはG25付属のACアダプタ

 以上,ここまで使い勝手について高く評価してきたが,気になる部分もやはりある。最も残念に感じたのはボタン配置だ。
 ステアリングホイールのスポークに用意されたボタンが2個だけというのは,手元で多くの操作をしたいときに大きなマイナスポイント。シフトユニットに移動した多くのボタン類が使いやすいければ問題ないのだが,ボタンを押そうとするたびにステアリングホイールから手を離してシフトユニットに手を伸ばさねばならない。しかも,ステアリングユニットと同じ高さにシフトユニットを取り付けた場合は,シフトレバーが邪魔になってボタンが押しづらかった。
 コクピットをモチーフにしたドライビングシートなどを用意して,実車に近い配置でシフトユニットを配置できればこの問題は解決すると思われるが,1台の机などでプレイする人のことも考えて,シフトレバーの手前側にもボタンを何個か配置してくれれば,使いにくさは軽減されたのではないだろうか。

 

 

素晴らしい製品であることに疑いの余地はないが
間違いなく人を選ぶ

 

 現在,国内で流通しているステアリングコントローラと比較したときに,性能面,機能面において,G25は間違いなく最上位クラスの製品といえる。

 

製品ボックス

 ただし,誰にでも勧められるデバイスではないのも確かだ。まず,主にプレイしているドライブシムが6速マニュアルシフトに対応しているかどうかは,重要なポイントになる。
 現実に目を向けると,競技車両はセミオートマチック化が進み,クラッチやマニュアルシフトは排除されてきている。理由は明確で,即座にミスなくシフトチェンジが可能なシーケンシャルシフトに比べ,一連の操作をドライバーが行うH型マニュアルシフトでは,シフトチェンジによるタイムラグやミスが自ずと発生するからだ。こういった事情のため,最近のゲームでは,シーケンシャルシフトのステアリングコントローラで十分遊べるタイトルがほとんどになっている。わざわざクラッチやマニュアルシフトを選んで,ゲームを難しくしなくてもいいのである。

 

 さらにいえば,2007年1月26日時点におけるパソコンショップ アークの店頭価格が4万6980円で,極めて高価という現実もある。この価格は,GT FORCE Proなら2台購入してもおつりが来るほど。熱狂的なドライブシム好きであっても躊躇してしまうに違いない。

 

 誤解を恐れずに断言すれば,バトル,あるいはタイムを削る方向でゲームを楽しむのなら,高価なG25をわざわざ入手する必要はない。G25はあくまで,車を操作する楽しさや,市販車の挙動に近いリアリティを求める人向けのデバイスだ。GT FORCE Proクラスのステアリングコントローラを持っている人が,ワンランク上のフィーリングを味わいたいと思ったときに,初めて選択肢として浮上する製品である。
 逆に,マニュアルシフトベースの市販車を愛用している(あるいは,愛用していた)人が,その操作感をドライブシムに持ち込みたいというのであれば,G25には購入するだけの価値がある。マニュアルシフトのクルマを愛用する人間の一人として,ここは強調しておきたいと思う。

 

タイトル ステアリングコントローラ
開発元 各社 発売元 各社
発売日 - 価格 製品による
 
動作環境 N/A


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http://www.4gamer.net/review/g25_racing_wheel/g25_racing_wheel.shtml