■たった一人で,王女を探す危険な旅へ
行方不明の王女様を捜し,薄暗いダンジョンや,昼なお暗い沼地などを,(シングルプレイでは)たった一人で冒険しなければならない |
久しぶりに,昔ながらのRPGの雰囲気を持ったタイトルがリリースされた。
本作「ダンジョンロード 日本語版」のストーリーは,デヴィンモアとバローグリムという,2国の戦争から始まる。守護者である偉大な魔法使いガルドリンを失ったデヴィンモア軍は,もはやなすすべもなく,降服を決断した。しかし,どん欲なバローグリム王は,停戦の条件として,王女を嫁として差し出すことを要求。王女は,すでに好きな男がいたためキッパリと断ると,怒った父王は相手の男を逮捕して,無理矢理娘を差し出そうとした。その父の行為に怒りを覚えた王女は,逃げ出して行方不明となってしまう。王女の失踪を知ったバローグリム王は,その軍勢を,再びデヴィンモア王国に向けて送り出した……。
この,失踪した王女の行方を追い,さらには魔法使いガルドリンが倒れる原因となった「力の聖宝」を探すというのが,本作での主人公(=プレイヤー)の使命である。なんというか,RPGの王道まっしぐらなストーリーだ。
ゲームはフル3Dで,NPCやモンスターはリアルタイムで動き回っている。プレイヤーキャラクターが歩いていると,遠くからモンスターがこちらをめがけて走ってきて,戦闘に突入するということも頻繁に発生する。
欧米産のRPGでよく話題とされる「自由度」は高めだ。といっても,最初からどこへ行って何をしても良いというほどではなく,ゲームスタートから最初の街に入って,そこを出られるようになるまでは,ストーリーに沿って進むことが要求される。街を出るまでは,チュートリアル的な扱いなのだろう。
王国の危難をほったらかして逃げ出した,ある意味ワガママな王女様 | ゲーム序盤に登場する中ボスモンスター。体は大きいが,動きはのろい | こちらも序盤に登場する中ボスモンスター。こいつはそこそこ速く,手強い |
プレイヤーキャラクターには,人間やエルフ,ドワーフといった一般的なものから,爬虫類系や,なんだかよく分からないデミヒューマノイド系まで,7種族9タイプ(人間とエルフのみ性別も選べる)が揃っている |
■コンボも炸裂する,大迫力の戦闘シーン
扉を開けた途端に,アンデッドの群れが襲いかかる! 中盤以降,敵の数が増えてくるので,戦闘はどんどんハデ&ハードになっていく |
本作のゲームスタイルは,三人称視点で展開するフル3DのアクションRPGだ。
ストーリーは古き良き“本格派”といった感じだが,ゲームプレイはかなりアクション性が重視されており,頻繁に発生する敵との戦闘では,しばしば激戦となる。
また敵は,1か所に留まってこちらを攻撃するということはなく,常に動き回っているので,プレイヤーもそれに合わせて,右に左に,前に後ろにと激しく動いて戦う。さらに中盤以降,一度に遭遇する敵の数が10体以上というのもザラとなり,こうなると,もはや格闘アクションでもやっているかのような,RPGとは思えない激しい戦闘となるのだ。
盾を装備していると,マウスの右クリックで防御の姿勢がとれ,この間は(正面からの)敵の攻撃を防げる。防御に関しては,つい適当になりがちだが,飛び道具や魔法といった間接攻撃を使う敵が増えてくる中盤以降は,防御を積極的に攻撃に取り込んでいかないと,効率良く勝つことは難しいだろう。
移動キーと左クリックを組み合わせることで,さまざまなコンボ攻撃が発動する。コンボ攻撃は,大きく踏み込んで敵に斬りつけたり,剣をぐるりと振り回して周りの敵をなぎ払い,正面の敵に大上段から真っ向に振り下ろしたりなど多彩で,とくに意識せずとも適当にキーを押しているだけで発動される。
移動方法もいろいろとあり,走ったりジャンプしたりできるほか,移動キーの二度押しで側転やバック転も出せる。これにはキャラクターのスキルがある程度必要になるのだが,敵に囲まれて身動きが取れなくなってしまったときに,鮮やかな宙返りで囲みを抜け出し,攻勢に転じるという映画のようなシーンを決められるので,ぜひマスターしてほしい。
体力はジッとしていても回復するが,多くの場合は,ポーションに頼ることになるだろう。ポーションならば,戦闘中でも一瞬で体力を回復できるし,倒した敵がよく落としてくれるので,あまり購入する必要もない。ただし,ポーションを飲んでいる最中は無防備になっているので,敵の数が多いと回復した分もすぐに削られてしまい,いくら飲んでも追いつかないという状況も発生する。ポーションをたくさん持っているからといって安心はできないのだ。
敵は,すべて倒したと思っても,いつの間にか復活して,こちらめがけて襲いかかってくる。あたりの敵を一掃したと思い,ポーズせずに(シングルプレイでは,インベントリやメニューを出している間は,ポーズ状態となる)トイレなどに行くと,帰ってきたらタコ殴りになっているという状況もあり得るわけで,気の抜けない状態が続くが,戦闘自体はかなり面白い。
群がる敵を,マウスボタンを押す指が痛くなるほど斬って斬って斬りまくったあと,周囲にアイテムやお金の山ができているのを見るのは,なかなか嬉しいものだ。またコンボ攻撃がうまくヒットして,大ダメージを与えて敵を倒したりしたときは,爽快このうえない。
敵の数が増えてくると,1回の戦闘が数分にわたって続くこともざらだ。とくに,大勢の取り巻きを従えているボス戦では長期戦は必至となり,戦闘終了後には思わず安堵のため息をもらしながら,クリックし続けていた右手人差し指をマッサージすることとなるだろう |
■クセのあるゲームプレイは,ハマれば病みつきかも
道を走っていたら,いきなりドラゴン(ファイヤードレイク)に襲われてびっくり。返り討ちにしてやろうかと思ったが,まったく歯が立たず逃げ出すハメに |
アクション要素がかなりのウェイトを占めているが,キャラクターの育成などは,きっちり“RPG”している。
とくに面白いのが,キャラクターの属性(パラメータ)とスキルを上げるのに,同じポイント(成長値)を使うこと。敵を倒して得た成長値の使い道には,かなり頭を悩ませることになるはずだ。属性をたっぷり上げるとスキルが上げられず,逆にスキルばかりを上げていると属性が低くなってしまう。果たして属性とスキルと,どちらを優先して上げていくべきなのか……。この答えは,ぜひプレイしながら自分で見つけ出してほしい。
属性は,筋力を表す「ストレングス」や,学習能力を表す「インテリジェンス」など,6種類。インテリジェンスは,高いほどスキル習得に必要な成長値が少なくなるので,どのクラスでも早めに上げたいところだ。また「オナー」というあまり聞き慣れない属性もある。これは英雄度,もしくは勇気を表すパラメータで,上級クラスの中には,このオナーがある程度高くないと転職できないものもある。
スキルは,「ウェポン」「ディフェンス」「全般」「マジック」「シーフ」「ディアボリック」の6系統43種類(Version 1.4現在)。全般には,前述の側転/バク転や水泳など運動能力全般に影響する「アスレチック」や,秘密のボタンなどを見つけ出す技術「スカウト」などがある。ディアボリックというのは,上級クラスのみが習得できる特殊なスキル系統で,ここには素手で敵を瞬殺する「ニンジュツ」というスキルもある。
さらに,クラスは33種,魔法は4タイプ(単に種類が違うだけでなく,使い方まで違う)109種類あり,とても一度のプレイでは,その全貌をつかめないだろう。
本作はマルチプレイにも対応しており,LANもしくはインターネット(ダイレクトIP,GameSpy)経由で,最大8人での協力プレイを楽しめる。新規のキャラクターはもちろん,シングルプレイで遊んでいるキャラクターの持ち込みも可能だ。
ただし,GameSpy経由で遊んでいる人はまだ少ないようで,日本時間の土曜日の夜という時間帯でも,ゲームロビーには10名に満たないプレイヤーがいるだけだった。なお,2005年12月21日現在,バージョンの違いなどの理由で英語版のユーザーとのマルチプレイはできないとのこと。今後ここがクリアされれば,人が少ないという状況も解消されるかもしれない。
気になった点もいくつか挙げておこう。アクションがかなりのウェイトを占めている割には,キー入力に対する反応が微妙に遅かったり,歩いていて,ちょっとした出っ張りに引っかかったりと,操作性の面ではあまり良い点をあげられない。とくに狭い足場の上を渡るときや,柱の上をジャンプで飛び移っていくといったシーンでは,この操作性の悪さが顔を出し,かなりのストレスを感じた。加えて,左右への平行移動と,後ろに下がるときの速度がやけにノロいのも,ストレスを増幅させる原因だろう。
また,先に述べたように戦闘はかなり激しいものになるのだが,その割にゲーム全体にスピード感が感じられないのも気になるところ。言葉では伝えにくいのだが,ゲームがもっさりしているというか,まったりしているというか,何かこう,時間がのんびり流れているような不思議な印象を受けた。
もし本作で,FPSのようにキレのあるスピーディなアクションが行えれば,もの凄く面白くなったのにと思うと残念でならない。もっとも,このあたりはプレイしているうちに慣れてきて,それほど気にならなくなってくるのだが,ゲーム序盤にはかなり鼻についてしまい,そのためにゲーム自体が面白くないと感じてしまう人がいたら残念だ。
ゲーム中盤以降,キャラクターが育ってきたあたりからグッと面白くなってくるので,そこまでこらえてゲームを続けられるかどうかで,本作の評価ははっきりと分かれるだろう。実は筆者も,ゲーム序盤はあまり面白いと思えず,投げ出したくなったりもしたからだ。
正直なところ,「誰にでも安心して勧められる」とは言いがたいタイトルだ。かなりプレイヤーを選ぶゲームではあるが,「誰が何と言おうと,俺にとっては,これが最高のゲームなんだ!」という,D.W.Bradleyという制作者個人の信念を感じられる,最近では珍しくプレイヤーに媚びていないゲームといえるだろう。
後期のウィザードリィシリーズや「Wizards&Warriors」といった,過去のBradley作品が好きな人なら,きっと気に入るのではないだろうか。
お金を払ったものの,抽象的な話ばかり。一応ヒントのようだが…… | 宝箱を開けたら,中から武器が出てきた! 誰もが心躍る一瞬だろう | 日本の鎧や兜のような防具も登場する。ワキザシなんていう武器もある |
昆虫系のモンスターも多数登場する。毒を持っていたりして厄介だ | 最初の街に入って以降,次々とクエストが発生する。どれから片付けるか…… | 敵を倒した後には,アイテムやお金がてんこ盛りで残される。拾うのが楽しい |