レビュー : Logicool ChillStream for PC

“Xbox 360パッド+冷却ファン”は,ゲームプレイに何をもたらすのか

Logicool ChillStream for PC

Text by UHAUHA
2007年8月1日

 

»  冷却ファン内蔵ゲームパッド。ともすればイロモノのように聞こえるデバイスを,PC用周辺機器メーカーの大手が投入してきたわけだが,“Xbox 360純正コントローラから振動機能を除いてファンを内蔵した”メリットは果たしてどこにあるだろうか? UHAUHA氏がじっくりと検証する。

 

Logicool ChillStream for PC
メーカー:Logitech
問い合わせ:ロジクール カスタマーリレーションセンター 電話:03-5350-6490
実勢価格:4000円前後(2007年8月1日現在)

 ゲーム機で実績のあるゲームメーカーがPCへ続々参入していることもあって,最近はゲームパッドを積極的にサポートするゲームが増えてきている。以前はマウスやキーボード,あるいはジョイスティック,ステアリングコントローラを使うのが当たり前と思われてきたジャンルのタイトルでも,最近のタイトルに限っていえば,ゲームパッドを使うほうがより快適にプレイできたりするようなケースは珍しくなくなってきた。

 ただ,ゲームパッドを長い時間使っていると,一つ問題が発生してくる。発汗だ。
 一般的なゲーム用デバイスは広義的に“設置”された状態で用いるが,ゲームパッドだけは両手で握ることになる。そのため,ゲームに熱中して手のひらが汗ばんでくると,どうしても滑りやすくなってくるのだ。筆者は衣類で拭ったりして対処しているが,低下したグリップ力を補うため無意識のうちに力がこもって,必要以上に疲れたり,手のひらの一部を痛めたりすることもある。少なくとも筆者や筆者の友人数人,担当編集には揃って経験があるので,同じような思いをしたことのある人は結構な数に上るのではなかろうか。

 そんな状況を根本的に解決するかもしれないのが,2007年7月27日にLogitechの日本法人であるロジクールから発売された「Logicool ChillStream for PC」(型番:GPA-510,以下 ChillStream)だ。ChillStreamは,本体に冷却ファンを内蔵し,そのエアフローで発汗を押さえるというゲームパッド。正直なところ,ロジクールの製品としてはかなりの“イロモノ臭”がするが,果たして本当にそうなのか。さっそく検証してみることにしよう。

 

 

Xbox 360パッドとほぼ同じデザイン
風量は手元のボタンでハードウェア制御

 

 というわけで,まずは本体を概観してみると,左手親指で操作する位置にデジタル方向キー(以下 十字キー)とアナログスティック,右手親指で操作する位置にもう一つのアナログスティックと4個のデジタルボタン(A/B/X/Y)が配されている。また,パッド上部左右にはそれぞれデジタルトリガーボタン(LB/RB)とアナログトリガー(LT/RT)を用意。中央部にはリングライト付きの「Vistaガイドボタン」と,「バックボタン」「スタートボタン」が置かれるレイアウトだ。

 

 

 ……という説明が果たして必要なのかどうか。
 すでに気づいている人も多いと思うが,ChillStreamは「Xbox 360」用のMicrosoft純正コントローラやそのPC版となる「Microsoft Xbox 360 Controller for Windows」(以下 Xbox 360パッドと総称する)と非常によく似ている。というか,本体色やボタン形状の違いこそあるものの,スティックやキー,ボタンの配置は寸分違わぬといっていいほどである。

 

Xbox 360パッド(右)と並べてみると,いかに形状がよく似ているか分かる

 

別の角度から比較。目立つ違いはデジタルトリガーボタンのサイズくらいだ

 

本体背面に設けられたメッシュカバーの中にファンがある。左右グリップ部にはスリットも

 そんな,ややもすればXbox 360パッドのクローンとして片付けられてしまいそうなChillStreamを個性的たらしめているのが,左右グリップの前面/側面/背面,計6か所に設けられたスリットだ。
 40mm角相当のファンは本体背面にあるシルバーのメッシュカバー内に設けられており,背面から吸気された空気がスリットから送出され,グリップを握る手のひらや指を冷やすという理屈である。

 

左右残る2か所ずつのスリットはこんな感じで設けられている。親指の付け根,手のひら,4本指の先に風が当たる感じ

 

ChillStreamボタン。緑色LEDを内蔵し,消灯(OFF),点滅(LOW),点灯(HIGH)と切り替わるので,インジケータとしても利用できる

 ファンの制御は左アナログスティックの近くに置かれた「ChillStreamボタン」による3段変速で,電源投入時はLOWで動作,押すごとにHIGH→OFF→LOWといった感じで切り替わる。約90秒間入力がないと自動的に「スリープモード」へ移行してファンが停止し,何か入力操作を行うと再びファンの回転が始まる仕掛けも用意されている。

 Logitechはこの冷却機構を特別に「ChillStream Technology」と名付けているが,記憶力のいい読者なら,2005年にNYKO Technologiesが同じような仕組みの「AIR FLO Technology」という技術を発表し,実際に採用製品を市場投入していたのを憶えているかもしれない。実のところ,ChillStream TechnologyはこのAIR FLO Technologyと大本は同じ。ロジクールによれば,現在はLogitechが関係する権利のすべてを持っているという。

 

 「で,どうなの?」という肝心のポイントだが,まず,LOWだとやんわり,HIGHだとはっきりと,風が吹き出しているのが分かる。テストしているのが夏場ということもあり,涼しい風が手に当たるのは素直に気持ちがいい。
 送風機能をLOWに設定して2時間ほどゲームをプレイしてみたが,一般的なゲームパッドを使っていると気になる汗ばみは,最後まで感じなかった。発汗の多い少ないに関しては明確な基準がないうえ,気温や湿度にも影響されるため,すべての人にとって快適とまでは言えないが,少なくとも,ゲームパッド使用時の発汗に悩まされているなら,試す価値は確実にあるといえるレベルだ。
 LOWでもベタつくようならHIGHに切り替えればいいし,冬場にはOFFにしたりと,このあたりはお好みでといったところだろう。ただし,HIGH設定時はファン回転数が上がって,高周波ノイズが耳につき出す。ゲームのBGMや効果音でマスクできればいいが,場合によっては耳障りに感じるかもしれない。

 

 さて,冷却能力の検証を行っているうちに気づいたのが,グリップ周りの完成度の高さである。
 ChillStreamのグリップは,複雑な凹凸からなる独特の形状をしているのだが,グリップに手を添えると,指が凹凸の“溝”に填り込むかのように,収まるべきところへ収まる。また,プラスチック製パッドの場合はどうしても汗ばんでくると滑りやすくなるのだが,ChillStream Technologyによる冷却と,グリップ部から本体背面にかけて全面的に採用されているラバーコートのため,まったくといいほど滑らない。

 

 

XInput汎用ドライバで動作するChillStream
WindowsはXbox 360コントローラとして認識

 

付属CD-ROMのメニューウインドウ。「必ずインストールしてください」とあるが,DirectX Runtimeを適切に導入していれば必要ない

 Logitechのゲーマー向けデバイスというと,統合型ドライバ「Logitech Gaming Software」が思い出されるが,ChillStreamに付属するドライバは「Microsoft Common Controller Drivers V1.01」。ロジクールに確認したところ,これはXInput関係のドライバとのことで,案の定というか何というか,最新のDirectX Runtimeを適用してあるPCでは,CD-ROMからドライバをセットアップすることなく認識され,動作するようになる。DirectX Runtimeさえ適切に導入されていれば,ドライバCD-ROMを利用する必要はないだろう。

 

Xbox 360 Accessoriesソフトウェアが導入されていると,ご覧のとおり,リングライトが機能する

 このとき注目したいのは,デバイスマネージャからはXbox 360パッド,ゲームコントローラのプロパティでは「XUSB Gamepad」として認識されるようになる点だ。ロジクールいわく「これは仕様」で,とくに問題はないそうだが,WindowsからXbox 360パッドとして認識される点は興味深い。
 ちなみに,すでにXbox 360パッドが導入されているシステムで,(Xbox 360パッド用ドライバである)「Xbox 360 Accessoriesソフトウェア」が導入されていると,“(接続した順番)台めのXbox 360パッド”としてChillStreamは認識され,リングライトも正しく点灯する。

 

左はデバイスマネージャ,右はゲームコントローラのプロパティ。いずれにせよChillStreamの名では認識されない。なお,後者で行えるのは動作確認のみで設定不可。アナログ系の動作は,X軸,Y軸が左アナログスティック,X回転,Y回転が右アナログスティック,Z軸がアナログトリガー(LT/RT)で共用となる

 

 

秀逸なデジタル十字キー
アナログスティックはややクセが

 

雷電III

 以上を踏まえつつ,ゲームコントローラとしての素性を明らかにしてみよう。今回は,ゲームパッドの利用が想定されたタイトルということで,精密な操作が要求される縦スクロールシューティングゲーム(以下 縦シュー)「雷電III」「式神の城III」,ドライブゲーム「Colin McRae: DIRT」,3Dアクションシューティングゲーム「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下 ロスト プラネット)の4タイトルを試している。

 

●雷電III&式神の城III
 正確なデジタル十字キーの操作が必要となり,入力遅延がないことも必須となる縦シューだが,まず雷電IIIではデジタル十字キーを利用できないという問題に突き当たった。アナログスティックでも反応遅延なくプレイできたが,正確な操作が要求される縦シューでデジタル十字キーを利用できないというのは問題だ。ただし(詳しくは触れないが)有志の開発しているXbox 360用非公式ドライバを導入しても問題は解決しなかったので,これは雷電III側の仕様かもしれない。

 

Logitechのプレス向けサイトから入手できる,Floating D-padの概念図

 一方,デジタル十字キーを問題なく利用できた式神の城IIIだと,反応遅延はもちろんまったくなし。細かい動きもしっかり追従してくれて快適にプレイできた。
 とくに評価したいのが,十字キーの操作感覚だ。一般的なゲームパッドの十字キーだと,その下にラバーシートが置かれ,「ラバーシートの下にある接点を押しつぶす」ことで導通=入力する仕様になっている。これに対してChillStreamでは,十字キーの四端にボタンが内蔵され,浮いたような状態で置かれている十字キーの押下によってボタンを直接押す「Floating D-pad」(フローティングDパッド)という構造を採用している。押しつぶさずとも入力できるので,ボタンを押下する分のストロークは確保されたまま,軽い力で操作できるようになるというわけだ。実際,押しつけるというよりは軽く倒すようなイメージで操作することになるので,左手の親指が痛くなるようなことは確かになくなった。

 

 また,十字キーからボタンを直接押す構造のため,上下左右への動きなら「ゴツ」,斜め方向なら二つのスイッチが押されるので「ゴツゴツ」と,確かな感触が指に伝わってくる。4方向8方向の違いが触感で分かるので,「右に移動しようと思ったのに右下へ移動していて“死んだ”」といったようなミスは少なくなるだろう。
 Xbox 360パッドの十字キーも悪くないと思っていた筆者だが,十字キーをメインに考えるならこちらのほうがいい感じだ。ただ,ボタンを押すような感覚で十字キーを操作するという感覚は,これまでにないもの。違和感を覚える人もいると思う。この点は試してみるほかなさそうだ。

 

 

●Colin McRae: DIRT

Colin McRae: DIRT

 アナログスティックとアナログトリガーがあるゲームパッドでドライブゲームをプレイする場合,前者をステアリングに後者をアクセル/ブレーキに割り当てるのが定番だろう。
 Colin McRae: DIRTはラリー競技をフィーチャーしていることもあり,ドリフトなどで挙動を乱したときの微妙なカウンターなどをアナログスティックで行えるかどうかが重要なポイントだが,ChillStreamは「悪くない」レベル。アナログトリガーはストロークが短く,微妙なアクセル/ブレーキ操作を行えるようになるまでは時間がかかるかもしれないが,Colin McRae: DIRTのようなアーケードライクなドライブゲームなら十分対応できるキャパシティは持っている。

 ただ,一つ付け加えておくと,左右のアナログトリガーは同軸なので,アクセルとブレーキの同時踏みができない。そのため,シミュレーション要素が強くなってくると厳しいだろう。もっとも,ドライブシムをゲームパッドでプレイする人がどれだけいるかは議論の余地があるだろうが。

 

 

●ロスト プラネット エクストリーム コンディション

ロスト プラネット エクストリーム コンディション

 もともとXbox 360用タイトルで,PC版でもXbox 360パッドの利用が推奨されているロスト プラネット。さすがにXbox 360パッドとして認識されていることもあり,ChillStreamはまったく問題なくすべての操作を行える。
 しかし,2点ほど気になったことがある。一つは振動機能がないこと。これは仕様上やむを得ないが,フォースフィードバックが有効なタイトルでは,やはり少し寂しい。

 もう一つは,左右のアナログスティックに関する,Xbox 360パッドとの違いだ。Xbox 360パッドだと,スティックを倒したとき,倒し始めてから倒しきるまでアナログスティックに一定のテンション(反力)がかかっている。しかし,ChillStreamでは,倒し始めこそ強いテンションがかかるものの,それ以後は軽くなっているのだ。

 

 つまり,同じ力をかけてスティックを倒したとき,スティックによって入力される内容は,ワンテンポ遅れることになる。ロスト プラネットだと右アナログスティックが照準に割り当てられているのだが,照準がワンテンポ遅れるので,慣れるまでは苦労した。キャラクターの移動に割り当てられている左アナログスティックでは違和感がなかったので,ゲームによってはまったく気にならないかもしれないが,テンションは一定にしてほしかったところである。

 なお,最後になるが,ChillStreamの特徴として挙げられている,転送速度12MbpsのUSB 1.1 Full Speedモードで入力遅延の少なさについて。正直な話,ほかのゲームパッドと比べてChillStreamがずば抜けてリニアに反応するといった印象は感じられなかった。

 

 

若干の割高感は否めないが
完成度はかなり高い

 

製品ボックス

 というわけで,ChillStreamはイロモノどころか,かなり完成度の高いゲームパッドである。使いやすさで定評のあるXbox 360パッドとほぼ同じデザイン――あまりにも似すぎているのはちょっとどうかと思わなくもないが――で違和感なく操作可能で,ホールド感は純正以上。そして手のひらの発汗を抑える送風機能まで付いてくる。長時間使い倒すことに関しては,至れり尽くせりのゲームパッドだ。

 フォースフィードバック機能がないことと,アナログスティックの操作性に若干クセがあることを考えると,実勢価格4000円前後(2007年8月1日現在)という金額には若干の割高感が否めない。しかし,手のひらの発汗に悩まされていた人や,少しでも精度の高いデジタル十字キーが欲しい人であれば,購入検討の余地は大いにある。
 手に汗握る熱いゲームを,“手に汗握らず”快適にプレイするのも悪くないだろう。ひょっとすると今後,ゲームパッドのトレンドはクール&ドライになるかもしれない。

 

■■UHAUHA(ライター)■■
4Gamer最古参のライターの一人で,「4Gamerのシューマッハ」「4Gamerのローブ」の異名を取る,筋金入りのドライブシムマニア。ドライブシムマニアが高じて,入力デバイスマニアというパッシブスキルも取得しており,ドライブシムを中心としたゲームレビューだけでなく,ゲーム用入力デバイスのレビューも精力的にこなしている。
タイトル ゲームパッド/アーケードスティック
開発元 各社 発売元 各社
発売日 - 価格 製品による
 
動作環境 N/A


【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/chillstream/chillstream.shtml