― レビュー ―
ストーリー要素主導の,SFアドベンチャー&RTS
ブルーブラスター
Text by Guevarista
2006年6月30日

※実際の画面解像度は,800×600ドットです。

 

■意外に正統派,少年の成長物語

 

「ブルーフロウ」の世界設定とストーリーを引き継ぎつつ,アドベンチャー主体の作品となった「ブルーブラスター」

 工画堂スタジオの「ブルーブラスター」は,SF世界を舞台にした,ストーリーものアニメライクなノリのアドベンチャー&リアルタイムストラテジータイトルだ。本日(6月30日)が発売日となるが,その前に限られた時間ながらプレイできたので,その印象をお届けする。
 25世紀,人類が宇宙に進出して,すでに広く各星系に居住圏を展開している時代に起きた,地球政府と惑星連合勢力との対立。同社作品「ブルーフロウ」で描かれたとおり,それは戦争に発展し,やがて地球政府側の辛勝で終わるのだが,ブルーブラスターで描かれるのはその数年後である。対立はなおも尾を引き,惑星連合内のタカ派は密かに反政府勢力を支援していると思しく,局地的な抵抗と紛争が続いている。
 この世界における主力兵器は,巨大な二足歩行ロボット「パワーローダー」。主人公が行動を共にするのは,地球政府によって設立され,そのパワーローダーを運用する特殊部隊である。ただし,「パワードール」シリーズ以来の同社作品に馴染みの深い人には容易に想像がつくとおり,この部隊は全員が女性で構成されている。今作では,慰問と軍のPR任務を兼ねた「第190広報部隊」という設定だ。
 そこに,ちょっとした手違いで主人公の少年が配属されてしまうところからストーリーが始まる。部隊の性格上,女装と身分詐称を強いられたまま主人公の戦いが始まることは,過去のニュース記事でもお伝えしたとおりだ。

 

新型機「ブルーブラスター」の輸送中に敵武装勢力の攻撃を受け,メカニック兼補助パイロットの主人公が緊急降下を試みるはめに 手違いで女性のみの部隊に配属された主人公だが,ほかに新型機を動かせる人材がいないため,隊長からとんでもないオファーが 群像劇のアニメ的作品に欠かせない(?)関西弁キャラ。もちろん関西弁を使っているのは,左側にいる,特徴が強めのヒトである

 

キツめの言葉と,当惑する主人公の表情に注目。ただし,左の女性は実は温厚なキャラ設定であり,ここは冗談めかしたシーン バッググランドストーリーは,フェードアウトして宇宙を背景としたナレーションシーンで説明される。いかにもアニメっぽい手法だ お話とお話の区切りとして,アニメのパート区切りなどで使われるアイキャッチに相当する画面が挿入されるのも,重要な演出である

 

 

■メインストーリー重視だがマルチエンディング

 

ストーリーの要所で主人公にとっての行動選択肢が提示され,お話の展開や,それに続く戦闘パートの内容が変化する

 ゲームは,主に女性隊員達との会話による「ノベルパート」と,パワーローダー各機を操作するリアルタイムストラテジーの「戦闘パート」から成る。メインストーリーの進捗に沿って,ノベルパートの要所要所に主人公の行動選択肢が登場し,その積み重ねでエンディングが変わる。選択画面でたいへん分かりやすく表示されるとおり,選択肢とは主に「どの女性隊員と仲良くなるか」についてのものである。各隊員はパイロット,メカニック,オペレータなど,それぞれ異なる任務を持ち,各パイロットの乗機も,汎用型・白兵型・電子戦型など異なる性質を持っているため,交わされる会話の内容や細かなストーリー部分が,それに応じて変わってくるのはもちろんであるが。
 開けっぴろげで少々いい加減な隊長と,生真面目だが実は部下思いの副長に率いられた第190広報部隊には,勝ち気な少女や,頼れるお姉様タイプのベテラン士官,天然ボケの元教官とややお堅い元候補生のコンビ,頭脳労働が苦手な格闘戦要員と,さまざまな“属性”の隊員が揃っている。プレイヤーはその中でお目当てのキャラクターと話す機会を多く取っていけばよいわけだ。エンディングは,登場キャラクターに応じて12種類用意されている。

 

 多くのキャラクターゲームと同様に,ノベルモードの会話は表情付きの立ち絵とテキスト表示エリアで構成され,イベントは一枚絵で描かれる。自動で会話を進める機能やスキップ機能,見逃した/聞き逃したセリフを確認できるLog機能を備えていて,Logの文字列をクリックするとキャラクターの声が再生されるという,なかなか凝った作りだ。
 そうしたわけでプレイヤーは,笑いあり,涙あり,いい雰囲気あり(?)の会話に突入するわけだが,一般的なキャラクターゲームと比べると,このゲームにおける会話やエピソードはメインストーリー優先の内容となっている。「小咄」「小芝居」色はやや控えめで,主人公がいきなり女装するといった設定から想像されるほどには,スラップスティック要素が強くない。自動再生モードで会話を連続的に視聴した場合のテイストは,ラブコメというよりストーリーものアニメといった感じ。戦闘パートを含む“プレイアブル”作品としては,萌えたり燃えたり忙しいくらいがちょうどいいのかもしれない。

 

緊急降下時から主人公に同行,主人公に実戦での振る舞い方を教える隊員,フラン。本来彼女が新型機の正規パイロットだったが 主人公が乗る新型機をかばい,戦死したフラン。その親友アッシュレイは,フランを失った悲しみを主人公を責めることで埋めようとする……。少年少女の成長物語としては,彼女の死を乗り越えていくという,いわば消極的な“親殺しのフォークロア”に分類できるだろう,うん

 

アドベンチャー的選択肢には,どのキャラと絡むか顔絵が表示されるという親切設計。壁のポスターにも注目 女性のみの部隊ということで,更衣室やら入浴やらは主人公にとって避けて通れない(?)サービスシーンである。もちろん,メインストーリーに沿ったシリアスなイベントシーンも,きちんと織り込まれているので,ご安心を

 

メインストーリー周りで,さりげなく(あまりそうでもないが)ブルーフロウとのつながりを示す,隊員のセリフ。姉妹だったのか バックログの参照機能は,キャラクターゲームでは比較的ポピュラーなもの。ただし,セリフがボイスで聞けるのは凝っている 戦闘パートなどでキャラグラフィックスをクリックすると,隊員紹介画面に入る。ここでキャラをクリックすると,いろいろしゃべる

 

 

■戦闘は比較的シンプル,必殺技の活用がカギ

 

多数の敵を向こうに回した,本作のRTS戦闘パート。戦術性よりも迫力や演出面に力が注がれている印象だ

 戦闘パートは,いわばストーリーの合間合間でこなすべき課題として挟み込まれる。大枠のルールはブルーフロウのものを引き継いでおり,最大で10機前後のパワーローダーを操って敵の戦車やパワーローダーを倒し,施設の調査や占拠を行う。味方の損害を回復させる工作機や,ECMで敵ミサイルの命中精度を低下させる電子戦機などを,状況に合わせてうまく使うのもプレイ要素のうちだ。
 随時ポーズ可能なRTSスタイルであり,攻撃は基本自動。最も注意を払うべきは,敵と接触する距離とタイミング,そしてその際にどの機体を前に立てるかといった部分であり,パワードールシリーズのような,各機の射撃を個別にコントロールしていくスタイルとは異なる。そして各パイロットは,戦況によって顔グラフィックスの表情が変わり,実によくしゃべる。「隊長ぱーんち」「あいたたたた……」といった具合だ。
 今作ではパイロットと機体,機体と武装の関係が固定されており,任務に合わせた部隊全体のマネジメントは,出撃機体を選ぶことに集約されている。隠密型や戦闘兼工作型など,ブルーフロウと比べて登場機体のバリエーションは広がっているが,通常の戦闘でプレイヤーが考えるべき要素は,アドベンチャー重視の内容に合わせて,いっそうシンプルに整理されたといえよう。
 その代わり,というわけではないが,キャラクター性を重視する本作で新たに導入されたのが,機体ごとの“必殺技”だ。一定時間ほぼ無敵状態になったり,敵の移動を阻害したり,特殊な攻撃ユニットを射出したりと,内容は機体によってさまざま。そして発動時には,パイロットの描写を含むカットインムービーが再生される。このあたりは,ヒーローものアニメを強く意識したギミックといえよう。

 

 とはいえ,必殺技は決して,ビジュアル的な見せ場を作るための道具立てに留まっているわけではない。難易度設定にもよるが,本作戦闘パートにおける敵機の登場数は,なかなかのもの。細かな戦闘指揮が執りづらく,火力勝負≒機数勝負になりがちなRTS的戦闘において,寡兵よく衆を打ち破るには,必殺技を含め各機の特殊能力を生かして当たるほかない。敵の大軍が待ち受ける戦区では,しかるべきタイミングで味方機を修理し,わざわざインタフェース画面上にボタンとして用意されたポーズ機能を併用しつつ,そうした特殊攻撃を切れ目なく発動していくのが定石となるだろう。

 

 RTSとして見ると,メイン画面の表示範囲がいささか狭いため,敵との間合いや味方の配置がやや調整しづらく,また,自分で選べる事柄が少ないせいで,工夫を積み重ねて勝つというストラテジー的な楽しみの余地は薄めである。半面,ストラテジーの持つ意地悪さというか,多くのことに注意を払ってうまく利用しないと勝てないという懸念がないので,仲間と協力して,並み居る敵を次々と撃破しては進み,終盤には力を尽くして強力な敵手と渡り合うという,ヒーローの立場には立ちやすいことになるだろう。
 全分岐ルートで30ステージ以上ある戦闘,そして1万5000ワード,プリントアウトすると脚本が電話帳のように厚かったという噂のノベルパートのボリュームを,自分のペースで長く楽しむのが,本作にふさわしいプレイといえそうだ。
 シビアなストラテジー要素でなく,また,スラップスティックコメディよりは比較的ゆったり構えたSFストーリーアニメの雰囲気が好きな人にお勧めしたい,キャラクターアドベンチャーゲームである。

 

主人公の乗機である,ブルーブラスター。攻防共に旧来機とは別次元であり,全軍でまだ3機しかテスト配備されていないという設定 ECM(電波妨害)やECCM(敵の電波妨害の排除),損傷機の修理が可能で,戦闘もそこそここなす,副長の乗機アプレイザ ホバリングによる高速移動が可能な,センチュリオンHMT。軽快なぶんだけ防御には強くないので,突出しないよう気をつけたい

 

戦闘開始前には,作戦の目的と方針を説明するブリーフィングが設けられている。重要施設の位置などは,事前に確認しておこう 通常の遭遇戦闘では,個々のユニットに細かく指示を出す必要はない。ただし,敵との距離や,各機体の配置には気を遣いたい 雪のステージでは,ユニットの移動能力差が大きく出る。ホバー機や白兵戦機だけ突出したりしないよう,調整したいところだ

 

各機が持つ必殺技「FtF」を発動したときの,カットインムービー。対象パワーローダーのアップや派手なアクション,キメポーズ(?)などが動画で示される。それにしても,パイロットが裸なのは,やはりこれもアニメ的お約束に従った表現なのだろうか ミッション終了後には,各隊員の戦果が示される。覚悟を決めて必殺技を使いまくったブルーブラスターは,八面六臂の活躍だ

 

タイトル ブルーブラスター
開発元 工画堂スタジオ いるかさんちーむ 発売元 工画堂スタジオ
発売日 2006/06/30 価格 8800円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 98SE/Me/2000/XP(+DirectX 7以上),CPU:Pentium III/800MHz以上[1GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上,グラフィックスメモリ:8MB以上,HDD空き容量:3GB,DVD-ROMドライブ相当の光学ドライブ

(C)2006 KOGADO STUDIO,INC.

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http://www.4gamer.net/review/blueblaster_pre/blueblaster_pre.shtml