レビュー : バイオハザード4(PC版)

異形のものが徘徊する地から脱出せよ

バイオハザード4(PC版)

Text by midi
2007年6月8日

 

»  ゲームキューブやプレイステーション2でヒットした,“サバイバルホラー”の最新作,「バイオハザード4」のPC版が登場した。基本コンセプトは旧シリーズのものを踏襲しているが,FPSライクな視点,アクションボタンといった新要素を取り入れ,進化を遂げた本作。怖いゲームは大の苦手というmidi氏が,勇気を振り絞ってプレイしたレビューをお届けする。

 

従来シリーズ3作の特徴を統合して昇華させた意欲作

 

過去のシリーズ作同様,“大人の娯楽”が楽しめる本作。コンシューマゲーム版ではCEROレーティングがDだったので,17歳未満の人はご注意を

 6月7日,カプコンの「バイオハザード4」(PC版)が発売された。本作は,2005年にゲームキューブやプレイステーション2で発売された同名タイトルをPCに移植したもので,内容はプレイステーション2版をベースにしている。

 バイオハザードシリーズといえば,コンシューマゲーム機では説明不要なほど有名だが,初代「バイオハザード」がプレイステーションで発売された当初,ホラーを題材にしたアクションアドベンチャーとして話題になり,大ヒットを飛ばした。また,限られた弾数,数少ない回復アイテム,セーブ回数制限など,かなり骨のある難度だったことを覚えている。
 そのシリーズの最新作である「バイオハザード4」では,「バイオハザード2」の主人公の一人だったレオンが再度登場。失踪した大統領の娘アシュリーを救出するため,ヨーロッパのとある村を訪れる……というところから,ゲームはスタートする。レオンを排除すべく敵が次々と登場するほか,ステージ各所に謎解き要素が用意されているなど,“バイオらしさ”シリーズ従来作からしっかりと継承されているといえるだろう。

 もう一つ,本作で大きなウェイトを占めるのが,救出したアシュリーを連れて歩くというファクターだ。自分一人だけでなく二人とも生き残る必要があることはもちろん,アシュリーと二人組で行動するのを利用した仕掛けも満載で,さらに後半の章ではレオンに代わってアシュリーを操作するポイントも用意されている。
 このあたりもプレイのアクセントとして楽しい部分だ。なお,アシュリーを「受け止める」ときのアクションは必見。……まさかバイオハザードシリーズで“萌え”を感じることになるとは,思わなかった。

 ちなみにバイオハザードシリーズならではの恐怖の演出についてだが,初代「バイオハザード」が閉鎖空間でのお化け屋敷的な恐怖,「バイオハザード2」が集団の敵に襲われる恐怖,「バイオハザード3」が追跡者に追われる恐怖という感じだった。今作は従来シリーズ3作の特徴をうまく統合した形になっている。
 ただ,カプコンらしいというか,本作のゲーム難度はなかなかに高い。アクションゲームが苦手な人がNORMALモードでプレイしたら,途中で投げ出してしまうかもしれない。この点については,EASYやAMATEURなる低難度モードも用意されている。ゲーム難度以外は基本的に同じなので,アクションゲームが苦手な人でも十分に本作のストーリーを楽しめる。……ホラーが苦手な人にとっては,どのモードでも怖いのは同じだが。

 基本システムについては,最も大きく,根本的な変更点から述べていこう。従来のバイオハザードシリーズといえば,画面ごとにカメラアングルが固定されており,映画を観ているような演出が採用されていた。画面の中でキャラクターが向いている方向に対し,前進/後退/右回転/左回転させるというものである。
 それに対してバイオハザード4では,常にプレイヤーキャラクターの背後からの視点となる“ビハインドカメラ”視点が採用された。キャラクター操作は,前進/後退/右回転/左回転と同じではあるが,カメラアングルが固定ではなくなったことで,見た目の印象はがらりと変わっている。なお,キーボード操作の場合は方向キー,ゲームパッド操作の場合は右アナログスティックで,カメラの向きのみ変えることも可能だ。
 操作面では,レオンの旋回の遅さがネックだが,じつは右スティックの視点移動→武器構えで一瞬での方向転換が可能。左スティック下+ダッシュボタンの後ろ振り向きと併せて使いこなせば,より機敏な動作ができるだろう。

 

従来のシリーズとはがらりと印象が異なり,レオンの後方からカメラが追いかける形になる“ビハインドカメラ”視点を採用 「バイオハザード2」では新人警官だったレオンが再登場。カッコよさもかなりアップ

 

シリーズ通して踏襲されている,映画さながらのド派手な演出。当然のことながら,本作でも随所に盛り込まれている

 

この子が大統領の娘アシュリー。ショートカットがお似合いの,快活な女の子だ レオンとアシュリー,二人で協力して突破する仕掛けもいくつか用意されている プレイヤーがアシュリーを操作して探索する場面も出現する。か弱い女の子なので,敵に襲われたら超危険

 

 

視点の変更で初代バイオハザードのドキドキ感が蘇る

 

視点を変えた瞬間に,襲いかかる敵が画面内に現れてビックリ! なんてことはザラにある。視界に入るものだけでなく,周りの音にも気を配る必要がある

 本作の視点変更で筆者が最初に感じたのが,「視界が狭く,プレイヤーキャラクターの後方を視認できない」ということだ。
 プレイヤーキャラクターの旋回速度は遅いので,左右方向,後方,上下方向を確認するときに,自ずとカメラの向きを変えたり,プレイヤーキャラクターを振り向かせたりという動作を頻繁に行うことになる。
 通常であれば,プレイヤーがストレスを感じてしまう部分であり,マイナス評価となるのだが,本作に限ってはそれが恐怖の演出につながり,全体としてはプラスに働いている。
 肝試しに行ったり,お化け屋敷に入ったりしたときの感覚を思い出してほしい。恐がりな人であれば,どこから何が現れるか分からないとき,横を向いたり振り返ったりするだろう。バイオハザード4では,その感覚を見事に再現しており,恐怖はより鮮烈なものになったといえる。余談だが,筆者は怖いものが大の苦手で,「振り返ると斧を振り上げた敵がいた!」というような状況に遭遇して何度も絶叫し,そのたびに本作のレビュー原稿を依頼してきた編集者を真剣に恨んだものである。

 従来のシリーズ作品では,物陰に隠れていたゾンビや敵クリーチャーに突然襲われる,といったサプライズはあったが,基本的にはプレイヤーキャラクターの周辺を広く視認できた。プレイするうちに,なんとなく敵クリーチャーがいそうな場所を予想できるようになり,ドキドキ感が薄れたという経験が筆者にはある。その経験則が通用しないバイオハザード4では,初代バイオハザードをプレイしたときのような,ドキドキ感を再び味わえるといってもいいだろう。
 プレイを始めてしばらくは操作に若干の違和感を感じたが,数時間もプレイしていると「ああ,この視点で従来シリーズをもう1回遊んでみたいな」と思えるほどにまで,しっくり来るようになった。ゲームの根幹部分に関わる路線変更ともいえるが,この決断は成功したといえるだろう。

 PC版ということで,本作はもちろんキーボードでの操作に対応しているが,キー設定が独特なので,プレイには若干慣れが必要だ。キーボード操作の場合,カメラの向きは方向キーで変えることになる。ライフル使用時の細かな照準合わせや,敵の頭を狙い撃つ場面などでは,かなり細かいカーソル操作が要求される。できれば,FPSのようにマウスでカメラの向きを変えられるようにしてほしかったところだ。ゲームパッドを持っているのであれば,素直にそちらでプレイすることをお勧めしたい。

 本作では,バイオハザードシリーズでお馴染みの,ゾンビとの戦闘から始まる……と思いきや,様子は異常だが,ぱっと見は普通の人間と変わらない村人が,最初の相手となる。武器を持って襲いかかってくるわ,プレイヤーキャラクターを見つけたら声を上げて仲間を呼ぶわ,果てはダイナマイトに火を着けて投げつけてくるわと,ゲーム序盤から緊張感あふれる戦闘シーンが続くことになる。
 また,従来シリーズでは(作品によっては手動設定を選択できたりはしたが)自動だった銃の照準が,手動に変更されている。これにより戦闘の難度は多少高くなっているのだが,戦闘の面白さは格段に増している。
 具体的には,銃で頭を狙い撃ちすると一撃で倒せることがあったり,腕を撃つと手に持っている武器を落としたり(プレイヤーキャラクターはそれを拾えないが),投げつけられた武器を銃ではじき飛ばせたりと,銃による攻撃一つをとっても,そこで広がった表現は非常に多彩である。
 敵にまとわりつかれたときも,ただ振り払う動作をするだけではなく,回し蹴りや裏拳など,攻撃につながるアクションが加えられており,アクション見たさにわざと敵にまとわりつかれてみたくなってしまうこともある。このあたりは,実際にプレイしたときに確認してほしいところだ。
 なお,さすがにNORMALだと敵も強く,戦うより逃げたほうがいい場面もあるが,EASY/AMATEURなら敵のHPも少なく,また武器に装填できる弾の数も多いため,サクサクと敵を倒せる。アクションゲームとしての爽快感を楽しみたいなら,EASY以下の難易度を選ぶといいだろう。なお,状況に合わせて各種武器を使い分けられれば戦闘はさらに楽しくなる。武器切り替えのショートカットが用意されておらず,いちいちメニューを開かなくてはならないのは面倒だが,武器はこまめに変更するといいだろう。

 そのほか,イベントシーンの最中でも,強制的にアクションを要求されることがある。これは,要求されたボタン操作ができなければ,大ダメージを受けたりゲームオーバーになったりするというシビアなもの。イベントシーンで,いつボタン操作を求められるかもしれないと思うと,気を抜けない。これは評価の分かれるところかもしれないが,基本的には見るだけだったイベントシーンを,「参加するもの」にした点で,それなりの意義があると思う。
 そのほか,窓から飛び出す,垣根を乗り越える,高所から飛び降りるといった,ゲームの演出として追加されたアクションも非常に楽しい。ちょっとしたことではあるが,臨場感を増すのに一役買っている。

 

今回はゾンビではなく人間(に見える)敵が多い。仲間を呼んだり武器を投げてきたりと,ゲーム序盤から戦闘中のスリルは倍増 敵が近づくと,敵がより大きく映る演出がなされる。このあたりの切り替えはスムース

 

探索の道中や,敵との戦闘中に,画面上にこのような指示が出たら,そのとおりに操作を行うこと。入力受付時間は短いので気が抜けない

 

ムービーの途中や中ボスを倒した直後などにボタンを押すシーンがあることも。気を抜いていると即ゲームオーバーということもあり得るので,画面から目が離せない

 

 

お金の概念が加わり武器やアイテムの管理方法も変化

 

このフードを被った怪しい男が武器屋の男。フィールド中の数か所に店を出している

 過去のバイオハザードシリーズでは,武器(銃器)は,フィールドに置かれているものを入手していた。だが,バイオハザード4ではお金の概念が加わり,ゲーム中に幾度となく登場する武器屋で武器を購入するスタイルに変更されている。なお武器屋では,武器だけでなく体力回復スプレーも購入可能だが,弾薬は売っていない。弾薬はお金と同様,フィールドで拾うか,敵を倒すことで出現するもので補給するしかない。
 武器屋では,所持している武器の購入と合わせて,改造(強化)も行える。一発あたりの威力を上げるだけでなく,装弾数を増やしたり,リロード速度を上げたりできる。武器を改造すれば,そのぶんゲームを楽に進められるので,積極的に行おう。威力を上げるのはもちろんだが,装弾数を優先的にアップしておきたい。というのも,後述するアタッシュケースのスペース確保に役立つからだ。

 ゲーム中には,貴金属類のお宝アイテムも登場するが,これらはボーナスアイテム的意味合いが強い。見つけづらいところに隠されていて,武器屋に売ると,高額で買い取ってくれる。武器の購入/改造をペースアップできるので,なるべく多く見つけ出そう。入手したものはすぐさま売り払ったほうが得と思うかもしれないが,そこはそれ,バイオハザードシリーズらしい仕掛けがある。
 もともとは一つのアイテムだったと思われるパーツを集めて,組み合わせることで完成させていくものもある。完成品に近づくほど,武器屋での買い取り価格は跳ね上がっていくので,フィールドを隅々まで探し回って,お宝パーツを収集したいところだ。
 ちなみに本作での体力回復は,シリーズでお馴染みのハーブを利用する。緑/赤/黄の3種類があり,調合することで回復量が増えたり,HPの最大値が増えたりする。本作では毒を受けるという概念がないので,青ハーブがないのが,個人的にはちょっと残念だったりするのだが。

 バイオハザードシリーズでは,アイテムを持ち運びできる数が制限されており,それ以外のアイテムは,アイテムボックスに収納しておき,必要なときに取りに行くのが普通だった。しかし,バイオハザード4ではアイテムボックスの概念はなくなり,代わりにアタッシュケースにすべてのアイテムを入れて持ち運ぶ,という設定になっている。なお,収納するアイテムは,武器/弾薬/回復アイテムが該当する。
 アタッシュケースには容量制限があるのだが,単純に「何個まで」ではなく,7×10マスというように,面積で管理する形になる。えてして強力な武器ほど占有面積が大きいので,どのアイテムを持ち歩くか,頭を悩ませることになる。アイテムボックスまで取りに戻るという行為は必要なくなったが,どのアイテムを持って,どのアイテムをあきらめるのか,そのあたりの取捨選択で常に頭を悩ませることになる。

 

武器屋では武器はもちろん回復用アイテムも販売している。また,ゲームを進めると購入できる武器の種類が増えたり,武器の改造で強化できる上限がアップしたりする ゲームを進めると武器屋に新しいアタッシュケース(容量が大きいもの)が並ぶ。売りに出されたら即買いの方向で

 

いろいろな銃器を使いこなすことが,このゲームで生き延びるための近道

 

ちょっと怪しいアイテムを手に入れたら,それに何か組み合わせられないかどうか,いろいろと試してみるといい

 

 

おまけ要素というには充実しすぎのクリア特典

 

ゲーム本編をクリアすると,隠し要素のサイドストーリーがプレイできるようになったりする

 バイオハザードシリーズといえば,ゲーム本編クリア後に登場する隠し要素が充実していることでもお馴染みだが,本作でもそれは受け継がれている。
 ゲーム本編中に幾度となく登場するエイダをプレイヤーキャラクターに,本編の物語の裏側を探る“THE ANOTHER ORDER”,本編とはまったく異なるストーリーをエイダで体験できる“ADA THE SPY”,制限時間内にどれだけのガナードを倒せるかを競う“THE MERCENARIES”,ゲーム中に流れたムービーを自由に閲覧できる“MOVIE BROWSER”などが用意されている。正直なところ,これらの特典だけでもゲームとして成立するのではないかというほどの充実ぶりだ。
 中でも注目は,“THE ANOTHER ORDER”だ。バイオハザード4を含め,いままでの主人公キャラクターにはなかった,フックショットを使ったアクションは必見。さらに物語に隠された真実を暴けるため,ゲーム本編をクリアしたあとに,ぜひ楽しんでほしい。さらにこれらクリアー後のお楽しみをやり込むと,さらなる隠し要素が出てくるとかこないとか。
 ちなみに,本編プレイ中には射撃のミニゲームが用意されており,こちらも高得点を出すと特典が。頑張ってハイスコアを目指してほしい。

 非常によくまとまっているというのが,バイオハザード4を評価するときにまず言いたいことだ。NORMAL/EASY/AMATEURという3種類の難度設定があり,自分のレベルに合った難度でストレスなくプレイできるのもいい。
 また,PC版の最高解像度は4:3の画面で最大1600×1200ドット(UXGA),ワイド画面で最大1920×1200ドット(WUXGA)となり,PCならではの高解像度でプレイするだけでも,その怖さが倍増する。ゲームキューブ版/プレイステーション2版をプレイした人でも,PC版をプレイする価値は十分にあるのではないだろうか。ただ,ムービーがコンシューマゲーム機の解像度と同レベルなため,ゲーム中よりも画像が粗く見えてしまうのは残念。シリーズ次回作では,このあたりの改善にも期待したいところだ。

 

隠し要素の中でも最も大きな目玉が,こちらの“THE ANOTHER ORDER”。エイダが主人公で,彼女の持ち武器(?)であるフックショットも登場。出番が少ないのが残念だが……

 

孤島へ忍び込み,あるものを奪うというミッションがエイダに課せられる“ADA THE SPY”。難度はかなり高め 本編ゲーム中でも,ある場所で射的ゲームが楽しめる

 

■■midi(ライター)■■
業界歴十数年のベテランゲームライター。コンシューマゲーム全般に明るく,4Gamerでは,コンシューマゲーム機から派生したタイトルに関する記事を多く執筆する。レビューから取材記事,週刊連載記事まで手広くこなし,代表的な記事は,「ときめきメモリアルONLINE あの素晴らしい(?)日々をもう一度」「女神転生IMAGINE 悪魔が来たりてコンゴトモヨロシク」など。
タイトル バイオハザード4
開発元 カプコン 発売元 カプコン
発売日 2007/06/07 価格 6090円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c),CPU:Pentium 4/1.40GHz[Pentium 4/2.40GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce 6600以上推奨,グラフィックスメモリ:128MB以上[256MB以上推奨],HDD空き容量:7GB以上

(C)CAPCOM CO., LTD. 2005, 2006 ALL RIGHTS RESERVED.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/biohazard4/biohazard4.shtml