― レビュー ―
拡張パック第1弾は人間同士の戦闘を重視した特殊部隊モノ
バトルフィールド2 スペシャル・フォース
Text by 松本隆一
2005年12月7日

 

■憧れの特殊部隊にすぐ入隊できる! 資格,経験不問

 

「バトルフィールド2」の拡張パック第1弾は,世界の有名特殊部隊の一員となる「バトルフィールド2 スペシャル・フォース」だ。冷戦構造の崩壊以来,世界各地で低烈度紛争が頻発する昨今の国際情勢を……なんてことは気にせず,重兵器に頼らない戦闘を楽しもう。写真は新登場のデザートレイダーFAV(Fast Attack Vehicle)に乗るSAS隊員。本来は砂漠用の6輪式偵察車

 年の瀬の今日この頃,振り返ってみると,FPSファンにとって2005年は「豊穣の年」となったようだ。こないだまでは,「DOOM 3」と「ハーフライフ 2」が発売された2004年こそがFPSの当たり年だ,なんて言われていたものだが,どっこい今年はそうした「何年間もお待たせいたしました」的な超大作こそないものの,堅実で面白い良作が揃っている。
 6月の「バトルフィールド2」を皮切りに,10月以降は「Serious Sam II」「F.E.A.R.」「Quake 4」「Call of Duty 2」が立て続けに登場。また,ちょっと毛色は違っているが,3月の「Brother in Arms: Road to Hill 30」と,間髪を入れず10月に発売された続編「Brother in Arms: Earned in Blood」,あるいは4月の「SWAT4」など(発売月はどれもアメリカでのもの)も大変結構なお手前で,よく見ると,なかなかやるじゃないか2005年,見直したぜこいつぅ,という雰囲気が濃厚なのである。

 

 さて,そんなFPS豊作の年の掉尾を飾る期待作が,この「バトルフィールド2 スペシャル・フォース」(以下,BF2SF)であることに,戦友諸君も異論はないであろう。あったとしてもそっと胸にしまっておくように。
 言わずもがなではあるが,本作は「バトルフィールド2」の拡張パック第1弾。BF2本体がないと起動できないので要注意だが,ご先祖筋にあたる「バトルフィールド1942」の頃から,デベロッパのDigital Illusion(DICE)とパブリッシャの Electronic Artsは,拡張パックの開発と発売に大変熱心で,バトルフィールド1942の発売翌年には,もう2本も作られていたという嬉しい過去がある。今回のBF2SFも,本編の発売からわずか4か月ほどでの登場であり,ちょっと気が早いけど,今後の展開にも期待が持てるところ。

 

ロケット発射施設,潜水艦基地,大型空母などバラエティ豊富なマップが,マルチプレイ用に8種類追加された 新たに追加された,BMP3戦闘兵車。戦車が登場しないので,上手に運用すれば敵兵にとって重大な脅威となるはず ところがBMP3の後部席から外はまったく見えず,こんな感じ。「最近どう?」とか,隣席の彼に話しかけてみたくなる

 

新登場のロシア製ハインド攻撃ヘリコプターで空母強襲。艦載の強力な対空火網と敵ヘリコプターには要注意 艦橋のファランクス近接兵器システムで防空任務中,迫ってきた敵歩兵を思わず攻撃。こりゃあ人に向けたら危ない これも新兵器。ただのピックアップトラックに機関銃を載せたものなので,防御力は皆無。ガラスなんて割れてるし

 

 

■エリート特殊部隊員となって,特殊装備を使いまくれ!

 

登場する実在の特殊部隊は,アメリカのSEALs,イギリスのSAS,ロシアのスペツナズ。対抗するのは,中東連合特殊部隊,反乱軍,そして武装勢力となっている。必要以上にイギリス訛りの英語や,ロシア語,アラビア語の怒声が飛び交い,戦場はたいへん国際的。いつか「兵士よ,よくやったー!」も聞きたいのは私だけではないはずだ

 さて,よほどのウッカリさん以外,BF2SFのテーマが「特殊部隊」であることは,とっくにご存じだろう。ちなみに特殊部隊とは,特殊な部隊のことである。少人数で敵地に潜入して偵察や破壊工作をしたり,人質を救出したりと,正規部隊とはちょっと違った特殊任務を請け負う。そのため,彼らは特殊な訓練を受け,また特殊な装備を持っている。もう,特殊尽くしといって過言ではない。
 そんなBF2SFには,アメリカ軍の「SEALs」(ネイビー・シールズ),イギリス軍の「SAS」(スペシャル・エア・サービス),ロシア軍の「スペツナズ」,そして架空の「中東連合特殊部隊」と「反乱軍」,さらには「武装勢力」の計6団体が新たに登場し,新マップにおいて新武器を使用しながら,最大64人のプレイヤーが入り乱れて特殊なドンパチを繰り広げるという寸法だ。敵も味方も,どいつもこいつも特殊部隊だから「オレはエリートだぜ」という優越感こそ少ないが,個人的にこのコンセプトにはかなりグッとくるものがある。

 

 新たに登場する兵器としては,2種類の戦闘ヘリコプター(アメリカ軍のAH-64D アパッチ・ロングボウとロシア軍のMi-24 ハインド),BMP3戦闘兵車,TOW対戦車ミサイル搭載のハンヴィーなどが目新しいが,ほかは軽装甲,あるいは無装甲のものばかりで,攻撃力よりも戦場トランスポーターとしての使用がメインになる。
 重兵器好きにはちょっと物足りないかもしれないが,その代わり個人装備には,いかにも特殊部隊らしい暗視ゴーグル,ガスマスク,そしてサブウェポンとしてグラップリングフック,ジップライン,フラッシュバン,催涙ガスが追加されている。

 

 グラップリングフックとは,ようするに紐のついたフックで,これを手近な建物の屋根に放り投げることによって,普通は行けないような高い位置に行けてしまう。また,ジップラインとはその逆で,高い位置から適当な壁面に向けてクロスボウでワイヤを打ち込み,それにぶら下がって滑り降りる。グラップリングフックは突撃兵と対戦車兵,ジップラインは狙撃兵と特殊兵が装備するが,張られたワイヤは別の兵士が使うことも可能。なお,再使用するためにはGキーで回収する必要がある。
 これらの装備により,思いもよらぬところへの移動や攻撃ができ,より戦略性が高まるという寸法だ。とはいえ,実際にプレイしてみた感じでは,ちょっとよく分からない。高い屋根から飛び降りるならパラシュートを開けばいいし(しばしばタイミングを誤って墜落死する),フックはそう高いところへは投げられない。このへんは,今後のマップ研究の進み方次第,といったところか。とはいえ,ジップラインを使って意味もなくビルからビルへと渡り歩くのは,なんだかしらないがやけに楽しい。
 なお,輸送ヘリコプターは出てくるものの,機内からのラペリング降下はまたも見送りになった模様。「特殊部隊と懸垂降下はカマボコとカマボコ板以上にピッタリしている」という信念を持つ私には悔しくてたまらないのだが,ジップラインで似たことができないかと模索中。なかなか協力してくれる戦友が見つからないので,まだ試していないんですけどね。

 

 フラッシュバンは,これを食らうと画面が真っ白になり,よろけているうちにたいてい撃たれる。また気をつけなければならないのは,自分の投げたフラッシュバンの爆発も直視すると画面が真っ白になり,よろけているうちにたいてい撃たれること。そんなやつはいないだろうと思う人もいらっしゃるかもしれないが,ちゃんとここにいる。催涙ガスも,浴びると画面が「ぐにょ」っとなって「あ,泣いてやがる」な感じになり,同時に激しく咳き込む。どちらも特殊部隊っぽくて面白いが,使いどころが難しい。敵兵が集まっているところへ背後からこっそり投げ込めば効果は高いだろうが,そういうおいしい局面には,なかなか遭遇しないものだ。

 

グレネードを放り投げようとするティム・ロビンスによく似たSAS隊員。トレードマークのブラックカモが小粋 ヒゲづらか,あるいは坊主頭が目印の反乱軍。ユニフォームがスペツナズとよく似ているので,とても助かる ボウガンを使ってワイヤを撃ち込み,それを使って低い位置に移動できる。移動中に撃たれるとカッコ悪いよ

 

武装勢力という非常に漠然とした名称の特殊部隊の兵士というか,おじさん。見かけによらず,やるときはやる スペツナズの兵士は目出し帽なんかかぶっているので,ちょっとテロリストっぽい。別にいいんですけどね 反乱軍などの対戦車兵が使うPRG 7は無誘導なので,SRAWのつもりで使うと,なかなか当たってくれない

 

 

■インドア戦が多くなったバトルフィールドの数々

 

特殊部隊のシンボルマークといっていい暗視ゴーグル。対戦車ミサイルのサイト越しなどでも使用可能だ

 マップは全部で8レベルが新調された(シングルプレイでは6種類使用可能)。今回は夜のマップも登場し,当然ながら暗視ゴーグルが大活躍。ただし夜間のマップといえど,「ゴーグルなしでは何も見えない」という場所は少なく,使用には慣れが必要。光源を破壊して闇を作り出すことは残念ながらできない。まあ,物陰から獲物を狙う狙撃手には役立つアイテムかも知れない。

 

 広さはマップによってまちまちだが,戦闘機類はまったく登場せず,車両類がほとんど登場しないマップ(サイズによる)もあり,「歩いているうちに戦闘が終わってしまう」ほど広大なマップはない。
 その代わりといってはなんだが建物が多く,その内部も細かく作りこまれている印象。マップ構造が込み入っているだけに侵攻ルートも複雑で,前作以上に組織的な戦い方をしないと,各個撃破の憂き目を見ることになるだろう。コマンダーの砲撃も建物内では効果がなく,状況が錯綜するので,補給物資の投下タイミングも難しい。
 建物内では重車両も使えないため,個人携行兵器による至近距離の息詰まる撃ち合いが頻出。(反射神経がちょっとアレなため)出会い頭の戦闘ではたいてい撃ち負ける筆者としては,緊張の連続だ。とほほ。

 

 BF2本編では,すべてアメリカ軍vs.中国軍,あるいはアメリカ軍vs.中東連合の組み合わせだったが,BF2SFでは“SAS対スペツナズ”などといった状況もあり,2007年の国際情勢はかなり混沌としているらしい。空母内部での戦い,ミサイル基地,夜の空港などなど,ロケーションの変化も大きく,グラフィックスも相変わらず高レベル。全体的に,いずれのマップも,純粋な歩兵による戦闘が楽しめるように設計されている雰囲気だ。

 

 BF2本編は「ウォーマシンによるハイテク戦闘」がメインで,高い殺傷力を持つ戦闘機や戦闘ヘリコプター,戦車などを巧みに使いこなさなければならず,歩兵の戦闘はどちらかというと“従”の立場だった。今回,人対人の戦闘を描いたBF2SFをプレイしてみて「これだよ,これ!」と膝頭をぶっ叩く人も多いのではなかろうか。地上兵器しか登場しないマップ「Strike at Karkand」が,パブリックサーバーで一番人気というのも,そのへんの事情を物語っているのかもしれない。
 いずれにしろ,ゲームシステム的には大きな変更がなく,新たな兵科なども登場しないため,拡張パックとしてはいたってオーソドックスな作りのBF2SF。フットソルジャーの戦いが好きで,撃ち合いに自信があり,従来のマップなら小石の位置から雑草の本数まで知り尽くした,というBF2プレイヤーなら必携。そうでない人も,ぜひお試しいただきたくあります。

 

やたらと広く,内部は迷路のような空母内の戦闘では,チームメイトと連携して戦わなければならない 催涙ガスを浴びると,このようにスクリーンが歪み,またフラッシュバンを食らうと,目の前が真っ白になる 戦場は放棄されたシリアの飛行場の滑走路,暗視ゴーグル越しに見える航空機など,まさに雰囲気は最高だ

 

“拠点の奪い合い”であるゲームシステムに変更はない。特殊部隊ならではの勝利条件が欲しかった気も SASなどはLAV25戦闘兵車を使う。ただ,BMP3と激しく撃ち合うというシチュエーションはない模様 伏せるか腰を落とし,アイアンサイトを使って射撃するのが歩兵の基本。とはいえ慌てていると,なかなかね

 

 

タイトル バトルフィールド 2 スペシャル・フォース
開発元 Digital Illusions CE 発売元 エレクトロニック・アーツ
発売日 2005/11/24 価格 オープンプライス
 
動作環境 OS:Windows XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.70GHz以上[Pentium 4/2.40GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:DirectX 9.0c以上に対応,グラフィックスメモリ:128MB以上[256MB以上推奨],HDD空き容量:3GB以上,ネットワーク対戦は最大64名に対応,乗り物の操縦操作のみアナログジョイスティックに対応

(C)2005 Digital Illusions CE AB. All rights reserved. Battlefield 2 is a trademark of Digital Illusions CE AB. Electronic Arts, EA, EA GAMES and the EA GAMES logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All other trademarks are the property of their respective owners. EA GAMES is an Electronic Arts brand.

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