― レビュー ―
ついに戦火はアメリカ本土に拡大! 今夜も祖国のために奮戦せよ!
バトルフィールド 2 アーマードフューリー
Text by 松本隆一
2006年6月15日

 

ついに登場した「アーマードフューリー」
内容はどんなだ?

 

 6月7日正午,日本でのダウンロード販売が開始されたのが「バトルフィールド2」のブースターパック,「バトルフィールド2 アーマードフューリー」だ。ヨーロッパの軍勢が参加した前ブースターパック「ユーロフォース」に続く第2弾では,いよいよ戦場が“アメリカ”へ広がった。建国以来,本土に敵の上陸を許した経験のないアメリカに,中国軍,中東連合軍(MEC)が大挙侵攻。各地で激しいドンパチを繰り広げるというエキサイティングな設定だ。近未来の世界情勢はますます混迷の度を深めているようである。いいねえ。
 追加されるデータは,3枚のマップと3種類の地上攻撃機,3種類の偵察ヘリコプター,そして民間車両2種類となっている。このへんのボリュームとしては「ユーロフォース」と変わらない雰囲気だが,前作には新軍勢の登場にともなう地上兵器や個人携行火器の拡充があったのに対し,今回新規導入されるのは航空機だけ,と筋金入りのフットソルジャーにはやや寂しい内容となっている。

 

 マップはいずれも広く,それなりに戦略的で,なによりアメリカンな感じが新鮮である。中国の山岳地方や,中近東の砂漠地帯なども悪くはないが,筆者はアメリカ生活が長いので,とくに「Operation Road Rage」に出てくるショッピングモールやトラック基地,「Operation Harvest」のアメリカ農家のたたずまい,そして「Midnight Sun」に登場する,田舎のレストランなど,「あ,あるあるー」と言う雰囲気で素晴らしい。いや,個人的感慨で恐縮です。

 

 というわけで,撮り下ろしスクリーンショットを交えつつ,新ブースターパック「アーマードフューリー」の各マップ,新兵器を手短に紹介する。例によって,シングルプレイで遊べる16人用はさておき,各マップは32人用と64人用で説明しているので,あしからず。

 

 

 

■マップ紹介

 

●Operation Harvest

 

 

 戦場となるのはペンシルベニア州ランカスター郡の農村地帯。デラウェアから上陸して北上を続けるMEC軍第2機甲師団は,ここでワシントンDCの解放を目指すアメリカ海兵隊機甲部隊を迎え撃つのだ。マップは中央に川が横切るのどかな田園地帯。低い雲がたれこめ,ときどき稲妻が空を切り裂く不穏な空模様だ。川には一本の鉄道橋と二本の道路橋がかかり,北側にMEC軍,南側にアメリカ軍が布陣している。
 どちらもConquestだが,32人用ではどちらの拠点も同数あり,メインとなる拠点は占領不可能。対して64人用では,アメリカ側が二つの占領不可能の拠点を持つだけで,残りの拠点の大部分はMECがすでに占領しているものの,占領不可能な拠点は持っていない。戦域も川の周辺でぐっと細くなっており,そのため,橋および渡河可能な浅瀬をめぐる戦いが不可避的に発生するのである。

 

 

 

●Operation Road Rage

 

 東海岸から内陸部へ侵攻中のMEC軍は,インターステート(州間高速道)11号線と32号線のジャンクション付近でアメリカ軍と正面衝突! 幅広いハイウェイが南北を貫く広いエリアにはショッピングモール,トラック基地などが点在し,最も“アメリカっぽい”雰囲気になっている。32人用と64人用でマップの変化はなく,地上兵器に加え,A-10 WARTHOG近接支援戦闘機および,スホーイSU-39地上攻撃機が,また偵察ヘリコプターのMD-530リトルバードと,EC-635が初登場する。
 パイロット達にとって,まっすぐに伸びたハイウェイは理想的な地形。戦車や装甲車など,うかつに走っていると,格好のターゲットになってしまう。MECの本拠地は橋でつながった島嶼部あるので,防御には良いが,出撃には橋を使わざるを得ず,やや不利と言えるかも知れない。

 

 

 

●Midnight Sun

 

 

 アラスカの数少ない不凍港,バルディースに上陸した中国軍は重要な石油パイプラインの占拠を目指し,アメリカ軍の守備隊はそれを阻止するため,必死の抵抗を試みる,という設定。日の沈まない夏のアラスカはマップ全体に薄暗く,こういうときこそ,拡張パック「バトルフィールド2 スペシャルフォース」で登場した暗視ゴーグルの出番かと思ったが,残念,それはない。大きな川を挟んで左右に敵味方が対峙するという,ちょっと本編の「FuShe Pass」を思わせる造りだが,あれほど高低差は激しくない。攻撃機と偵察ヘリコプターが登場するものの,画面が暗くて遠距離の敵の目視が難しいだけに,敵の発見,すばやい拠点占領など,偵察ヘリは使いようによって重宝するアイテムになる。32人用と64人用マップは,拠点の数が異なるだけで,基本的に同一だ。

 

 

 

■追加された航空兵器類 戦場の空はますます過酷に!

 

 冒頭にも書いたように,「アーマードフューリー」で拡張されたのはもっぱら航空兵器である。固定翼機が3種類登場するが,いずれも地上攻撃が主体で,手練のパイロットが操縦桿を握った場合,その猛威はすさまじいという印象だ。これら地上攻撃機は空対空ミサイルを持たないので,空中戦には脆い。こういうときこそ制空戦闘機を出してほしいと思うのだが,このあたりのバランスには,ちょっと不満を覚える人も多いだろう。もっとも,新マップが登場してまだ1週間前後。この先,マップの研究が進めばそういう状況も打破されるかもしれない。
 偵察ヘリコプターは,前進につれて周囲の敵を味方に自動的に知らせるというUAV(無人偵察機)のような機能を持っている。ただし,搭乗できるのはパイロットを含め3名で,小隊システムとの兼ね合いが悩ましい。小隊長が偵察機に乗り,敵を見つけ次第隊員が降下,敵の殲滅を図る。で,やられたら機上にリスポーン,という図式も美しいような気がするが,人数的にそれはできないのだ。3名からなる偵察小隊を編成し,コマンダーの命令によって危険区域上空を飛行する,という使い方がいいだろう。そうなれば,UAVが複数あるようなもので,隊員の得られる情報も飛躍的に向上するはずだ。
 まあ,これらもまたマップ研究の進捗状況で,どうなるか分からず,楽しみである。

 

 

■新兵器カタログ

 

●地上攻撃機

 

・A-10 WARTHOG
登場マップ:Operation Road Rage,Midnight Sun

正式名称はフェアチャイルド A-10 THUNDERBOLT II。ウォートホグ(イボイノシシ)とは,主武装である30mm機関砲の音が,まるでイボイノシシが鼻を鳴らしているように聞こえることから付いたあだ名である。その名の通り,4200発の30mm機関砲は威力抜群で,装甲車両をも葬れる。加えて4発の対地爆弾を装備するが,対空ミサイルは持っていない。もっとも,マップに登場する敵機も対空ミサイルを装備していないため,空中戦は機関砲を撃つしかないのだ。

 

・Su-39
登場マップ:Operation Road Rage

A-10のような近接支援機の必要性を感じたソ連が,スホーイ設計局に命じて作らせたのがSu-25「フロッグフット」地上攻撃機であり,同機の副座型を発展させて全天候型対戦車攻撃機としたのがSu-39だ。コクピット後部にレーダー,センサ類などを搭載して地上攻撃力を高めている。A-10と同様に30mm機関砲と4発の対地爆弾を装備し,地上攻撃に猛威を振るうだろう。A-10に比べて小柄な機体は反応がよく,樹木や街灯などの障害物をかわして地上攻撃をかけるにはもってこいだ。

 

・FANTAN Q-5
登場マップ:Midnight Sun

ゲーム中に出てくる“FANTAN”は,ノーズ部に対空レーダーを装備した攻撃機と誤解したNATOが与えたコードネーム。実際の対空能力は低く,中国の名称「強撃5型」が示すように,地上攻撃を主体とした侵攻攻撃機だ。本ブースターパックに登場する3機の地上攻撃機のうち,一番古い部類に属する(原型となったのはMig-19)が,ゲームの都合上,敵であるA-10と互角に戦える機動力を持つ。ただし,装備されている20mm機関砲はやや威力に劣り,対空ミサイルも持たないため,やはり地上攻撃をメインにすべきだ。

 

●偵察ヘリコプター

 

・MD-530
登場マップ:Operation Harvest,Operation Road Rage,Midnight Sun

“リトルバード”の愛称で知られるOH-6Aは,ベトナム戦争で最初に使用されて以来,エンジンの換装,装備の変更などで数々のバリエーションが生まれ,現在でも使用され続けている汎用小型ヘリコプターだ。ゲームに登場するMD-530はその偵察バージョンで,7.62mm機関銃を装備する。パイロット以外に二人の兵士を乗せられるが,ほかの輸送ヘリコプターのような搭乗員の固定武装はない。偵察ヘリコプターのポイントは周辺の敵の存在を味方のミニマップ上に表示できることにある。この機能を使いこなしてこそ勝機が見えてくるだろう。

 

・EC-635
登場マップ:Operation Road Rage,Operation Harvest

ヨーロッパ共同体のユーロコプターによって開発された汎用小型ヘリコプター。全体の70%がフランスのエアロスパシアルで,残りがドイツのダイムラー・エアロスペースによって製作されている。2基のエンジンを搭載していながら,600キロを超える航続距離を誇り,偵察,輸送,サーチ・アンド・レスキュー(SAR),訓練など広範に使用されている。ゲームではパイロット以外二人の兵士を乗せるところや敵の存在を味方のミニマップに表示できるなど,ほかの新登場偵察ヘリコプターと同様の機能を持つ。

 

・WZ-11
登場マップ:Midnight Sun

フランス,エアロスパシアルのAS 350B Squirrel(リス)をモデルに……,というかまあ,いろいろとアレして中国で開発されたのがZ-11で,その武装強化型がWZ-11である。初登場は2002年,珠海で開催された航空ショーで,その際,コクピット上には照準に使われる何らかの電子機器,左右にはHJ-8対戦車ミサイル,あるいは無誘導のロケットが4基搭載された姿を見せた。もっとも,ゲームではほかの偵察ヘリコプター同様,機関銃を搭載するだけだ。偵察能力も同じように持つので,よく分からないけど安心してほしい。

 

 

拡大を続けるバトルフィールド
次のブースターパックは?

 

 以上のような新要素を持つこの「アーマードフューリー」。ブースターパック第2弾としては,まずまずの出来,といったところではないだろうか。今のところ,第3弾以降についての公式なアナウンスはなく,個人的な見解ではあるが,パブリッシャのElectronic Arts,デベロッパのDigital Illusion(D.I.C.E.)ともに世間の評価待ち,といった風情だ。プレイヤーの中には,こうしてチマチマとデータを増やすより,しばらく待ってもいいからドーンと拡張パックにしてほしい,という意見もあるようだし,反対に,このまま続けていってほしいという人もいるようだ。「ハーフライフ2」をはじめ,アメリカはどうやらエピソディック/ダウンロード販売という販売形態に価値を見出そうとしている様子。
 まあ,ブースターパック2本であれこれ言うのは気が早いかも知れないが,本年末には次回作,「バトルフィールド2142」の発売も控えている。ファンなら本作の今後の展開には注目していく必要があるだろう。もちろん,戦争の合間に,だけどね。

 

 

タイトル バトルフィールド 2 アーマードフューリー
開発元 Digital Illusions CE 発売元 エレクトロニック・アーツ
発売日 2006/06/07 価格 1280円(税込)
 
動作環境 N/A

(C)2005 Digital Illusions CE AB. All rights reserved. Battlefield 2 is a trademark of Digital Illusions CE AB. Electronic Arts, EA, EA GAMES and the EA GAMES logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All other trademarks are the property of their respective owners. EA GAMES(TM) is an Electronic Arts(TM) brand.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/bf2af_i/bf2af_i.shtml