■映画「マッドマックス」風の世界で三つの勢力が激突するアクションRPG
Auto Assaultは,銃器を積んだ車を使って敵と戦うスピーディなアクションがウリ。エルフやオークが登場するハイファンタジー系MMORPGとは,さまざまな意味で一線を画している |
「Lineage」シリーズの圧倒的な人気に支えられつつ,アメリカで元気の良い活動を続けるNCsoft。最近では,アクションヒーローや悪役たちが主人公という異色作「City of Heroes」および「City of Villains」や,アメリカで初めて月額無料制を成功させた「Guild Wars」などをリリースしており,MMORPGというジャンルの中で幅広いラインナップを揃え,不動の地位を築こうとしている。
さて,この目利きの良いNCsoftが新たにプロデュースした(E3 2005にも出展されていた)のが,未来世界で自動車を武器に戦う「Auto Assault」である。ゲームの基本はRPGでありながらも,ペースの速いアクション性を大胆に加味した作品であり,Sony Online Entertainmentの「Planetside」に見られる攻撃的なゲームプレイと,Electronic Artsの「Motor City Online」にあった車両のカスタマイズ性が,うまく調和している。映画「マッドマックス」のような世界観によって,ファンタジー系MMORPGでは突出した存在といえる「World of WarCraft」との差別化に成功しており,新鮮さを際だたせている。
Auto Assaultの世界では,ヒューマン(Human),ミュータント(Mutant),バイオメク(Biomek)という三つのファクションに分かれた抗争が展開されている。隕石落下の影響で登場した,緑色の肌を持った人類,「The Change」とも呼ばれて僻地へと隔離されたミュータント達だが,自ら信仰を生み出すことで結束し,3世代もすると超人的な能力を備えるに至っていた。そんなミュータントに危機感を抱いたヒューマンは,生体工学による超人類バイオメクを製造してミュータントに対抗したものの,バイオメクがあまりにも強力な力を持ったために,地上は混沌とした無秩序な世界になってしまう。
そこで,一部の人類は世界に核爆弾を投下して,ミュータントとバイオメクの滅亡を図り,有能な遺伝子を持つと認められた者は数百年間にわたって地下に退避。しかし,久々に地上への扉を開けたときに待っていたのは,滅亡せずに残っていたミュータントとバイオメク,そして核の影響でモンスター化した生物だった・・・・・・。これが,プレイが始まるまでの経緯である。
各勢力の街の出入り口では,車は自動的にガレージに入れられる。つまり街中では,プレイヤーキャラクターを操っての行動となるわけだ | Auto Assaultで描かれる世界は,数百年後の地球。瓦礫となった文明の残骸の中から新たな文明が芽生える | 広大なマップは,砂漠や湿地帯などバリエーションに富んでいる。ところどころに敵勢力のNPCがキャンプを張っている |
プレイヤーが操縦する車は,バイクや装甲車,バギー,タンクなど多種多様。キャラクターの職業や改造によってさまざまなマシンに変化する | 黄緑色に発光する地域は,ミュータントが生まれる原因となった,隕石による汚染地域。ミュータント以外の勢力にとっては,ダメージゾーンとなる | 車載用の武器も多彩で,前部,中部,後部に分けて装着できる。命中率の高い武器でないと,対人戦で命中させるのは難しい |
■キャラクター/車両の成長要素に加え,ハウジングシステムも搭載
Auto Assaultは現在βテスト中で,週末にもなればラグが感じられるほど多くの人で賑わう。そのマッチョな世界感は,ネカマ率100%の可能性さえありそうだ |
Auto Assaultは,プレイヤーが改造した戦闘車両を乗り回すアクションゲームに,RPG要素をプラスしたゲームといっていい。一般的なMMORPGでは考えられないようなスピーディなアクションで,車に取り付けた銃器をぶっ放しながら疾走し,ほかのファクションに属するプレイヤー/NPC達を倒していくのだ。弾丸が尽きることはなく,死んでもペナルティがまったくないので,とにかくストレスなくアクションが楽しめるようになっている。
車の運転に関してはシミュレーション性が少なく,レースゲームのプレイ経験がなくても,比較的簡単に楽しめるはずだ。ミッションの遂行で得た収入やフィールドで得たスクラップアイテムを利用して,より強力な戦闘車両を完成させれば,操縦技術不足も十分カバーできる。
プレイヤーキャラクターに関しては,レベルが上がるごとにパラメータ/スキルレベルを向上させられる。キャラクターには四つのパラメータが備わっており,Combat(戦闘時のパワー),Tech(武器のヒットポイントなどの効率性),Theory(能力の幅や敵の攻撃への耐性),そしてPerception(クリティカルヒットポイントや防御の確率)にポイントを振り分けられる。また,クラフティング(アイテム作成)の得意分野を育てるDisciplinesや,ファクションによって特性の異なるスキルがツリー形式で用意されており,経験値を稼ぐことでこれらにもポイントが割り振れる仕組みだ。
町やキャンプでは,車両から降りて徒歩で散策することとなるが,現在のところは初期設定のキャラクターの容姿/服装は変更できないようだ。しかし車両に関しては,エンジン,アーマー,イグニッション,タイヤといった基本パーツのほか,さまざまな武器が装着できるようになっている。アクセサリーやペイントで個性を出すことも可能だ。
さらに,複数の車両を購入/運用できるし,基地内に自分のアパートを保有することもできる(アパートには家具も配置できる)。これらの仕様は,一般的なMMORPGに親しんできたゲーマー達にとっても,十分なアピールポイントと映るだろう。
街には,パーツごとに分かれたショップや,プレイヤーたちのアパート地区,コマンドセンターなどがあり,多くのプレイヤーが走り回っている | スピードは遅いが,激突するだけでもかなり破壊力を発揮する牽引車両に,火炎のようなエネルギーを放射しているところ | とくにヒューマンが占領している地域では,高速道路や高層ビルの残骸が目立ち,過去に近代的な大都市が存在していたことを物語る |
ハイレベルな狩り場になると,戦闘車両の何倍も大きなモンスターが待ち受けている。1人で倒すのは難しそうだ | ヒューマンの車両は,ネオンサインのようなデザインが施せるようになっていて格好良い | トレイラー型車両。先端には物々しいスパイクが装着されている。Havokエンジンの恩恵か,炎の中で吹き飛ぶNPCが見える |
■Havokエンジンの物理効果でPvP戦も迫力満載
Auto Assaultを開発するNetDevilの社長Scott Brown(スコット・ブラウン)氏。2001年に「Jampgate」というSF系MMORPGを開発しており,その経験が本作にも生かされているのだろう |
Auto Assaultでは,どこまでも続くかのような荒廃した地球(北アメリカの数百年後)を車で爆走できる。ところどころでキャンプしている敵NPCやモンスターを銃撃したりひき殺したりしていき,キャラクターの経験を積んでいくのだ。しかし,より多くの経験値や報酬を得るためには,ミッションを受けるほうが効率的だ。ミッションを受けると,画面上に目的地を示す矢印が表示されるので,英語が分からなくても表示に従って進んでいくだけで,簡単にクリアできる。
キャラクターレベルが低い間は,部品回収や敵キャンプ破壊といったミッションが多いのだが,とにかく銃をぶっ放しているだけでもかなり楽しめる。それには,MMORPGでは初めてともいえる,Havok物理エンジンの採用も影響しているのだろう。
ゲーム中に存在する,倒壊したビル群,ガードレール,道路標識といったオブジェクトのほとんどは破壊できるし,傾斜を利用したジャンプも可能だ。ハイレベルな場所ではモンスターも巨大化し,ロボットのようなハイテク系兵器も多数登場する。
男臭さが充満したAuto Assaultだが,やはり各ファクションによるPvP(プレイヤーvs.プレイヤー)の大規模な戦闘が面白い。PvPは,各勢力の国境付近に設けられた砦の攻防戦となり,「キャプチャー・ザ・フラッグ」のように,砦付近の建物を占拠していくルールで遊べる。中央の建物にあるプラットフォームが,相手チームに一定時間占拠されると,砦を失うことになるのだ。
一つのマップで何人のプレイヤーが対戦できるかの詳細は不明だが,1 vs.1から32 vs.32程度の対戦規模になっているようだ。制限時間は1回の攻防戦につき2時間までとなっており,防御側は要所に障害物/砲台を設置することも可能。それらの建物からは一定数のNPCがリスポーンするので,自分のギルドやファクションのメンバーが不在のときでも,ある程度の守りを固められる。「味方となるプレイヤー数」が重要となる対戦系オンラインゲームだが,NPCによるサポートは,劣勢勢力ほどありがたい仕様といえるだろう。
Auto Assaultは,4月のリリースに向けてβテスト最終段階に差し掛かっている。現在,アメリカではWorld of WarCraftが一人勝ちという状態だ。本作の独自性が,アメリカでどの程度通用するのか,非常に楽しみである。
ファクション同士のPvP戦が,Auto Assaultの大きな魅力。死んでもペナルティがないので,とにかくアクションに専念できる | まだβテストのサーバー内で確認したわけではないが,Jampgateを開発していたNetDevilらしく,ヘリのような飛行型の車両も登場? | これはミュータントの特殊能力か,それともモンスターだろうか。謎は,本作がリリースされたときに判明するだろう |