ロングセラーシリーズの最新作は
最新の国際空港が舞台
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| 舞台となる中部国際空港・セントレアには,アジアを中心とした世界各国の航空機が登場する | |
国産PCゲームのロングセラーシリーズというと,始まりがMS-DOS時代にまで遡れるようなものが多い。逆に言えば,Windows時代になってからシリーズとして定着したタイトルが少ないわけで,これはちょっと寂しい話かもしれない。そんななか,Windows時代にデビューし,20本近いシリーズ作品を誇るのが,テクノブレインの「ぼくは航空管制官」および「ぼくは航空管制官2」のシリーズだ。「2」の最新作「セントレア・中部国際空港」を紹介しよう。
「ぼくは航空管制官2」は,名前のとおり空港の管制業務をテーマにした,シミュレーション風アクションパズルだ。舞台となるのは国内各地の空港で,原則的に作品1本で1空港が取り上げられる。本作で登場するのは,タイトルがそのまま示すとおり,国内で最新の国際空港であるセントレア=中部国際空港,というわけだ。
プレイの概要は,当サイトで以前取り上げた「新千歳Snowscape」の記事を参照してほしい。プレイの手順や操作方法はほぼシリーズ共通だ。となるとシリーズ各作品は,マップ違いの単純なバリエーションのように思われがちなわけだが,実際には作品ごとにかなり違ったプレイ感覚が楽しめる。
これはまず,舞台となる空港の現実の特徴が,ゲーム性や雰囲気の差となって現れるからだ。もう一つ,そうした現実の特徴を生かして,空港ごとに独自性のある,ゲーム的なイベントを盛り込んだシナリオが作られている点も見逃せない。
以前取り上げた「新千歳」の場合,前者は例えば「自衛隊・民間共用」という要素,後者は「冬季の除雪作業」が発生するシナリオとして,それぞれ実現されていた。では,本作「セントレア」の特徴とは何だろうか? ゲームプレイそのものに関わる部分から見ていこう。
このシリーズでは当然ながら,空港のレイアウトがプレイに大きな影響を与える。例えば成田空港は用地買収事情もあって,地上誘導経路が長く,手順もほかの空港に比べて複雑だ。本シリーズの「成田」では,それが特徴となっている。ではセントレアは,と見ると,人工島に作られた最新の空港であるため,レイアウトは非常に合理的かつコンパクトで,滑走路も1本しかない。ある意味では面白みには欠ける空港といえる。だがそうであるがゆえに,運用も冷静かつ合理的に行われる必要がある。そう,どんなに忙しくても,沈着冷静に合理性を保って,である。
高密度のトラフィックをどう冷静に捌くか
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| 空港サイズに比較して発着機の数が非常に多い。賑やかな雰囲気を「楽しめる」までには,けっこうプレイしがいがあるはずだ |
「ぼく管2」シリーズの楽しさというのは,仕事が猛烈に詰まった「修羅場」を切り抜ける快感にある。致命的なミスを犯すと一発ゲームオーバー,ときには30分近くなるそれまでのプレイがパーという,ルールとしてはシビアなものだ。そのなかで,「こんなのこなせるのか」と思った状況を,見事切り抜けてみせる満足感がプレイのモチベーションである。こうした点で言えば,「セントレア」はシリーズ歴代作品のなかでも,かなり「楽しめる」作品だ。
プレイヤーには,細かい指示をしっかり行うことが要求される。例えば地上や進入時の経路指示を行うときには,「プッシュバック方向の選択」や「進入経路の選択」が手順に入ってくる。これは,紹介済みの「新千歳」や,同じ国際空港を扱った「成田完全版」にはなかったものだ。また,待機スポットから乗降スポットへの移動も,移動先スポットとして指示する形になった。これには,誤って駐機済みスポットを指示してしまう危険がつきまとう。
また(これは「関空」からだが),管制対象になる航空機の便数も,発着便各5から各7へと増えている。時には着側が7枠全部,発側が5枠くらい埋まるという状況になり「滑走路1本でこれだけこなすの!?」と思うくらい,忙しい思いをすることになる。
さらに,一部は従来作とも共通するが,事故/トラブル系のイベント/シナリオも用意されている。落下物による誘導路閉鎖や,濃霧による空港全体の閉鎖のあと,たまった発着便を消化していくシナリオなど,バリエーションに富んだ状況に遭遇する。
そうしたなか,プレイヤーは努めて冷静に業務を消化していくのだ。本作では,その醍醐味がたっぷりと,本当にたーっぷりと味わえる。ステージ1-3に限りなく再チャレンジを繰り返した筆者が保証しよう。シナリオ完遂後には,今度はノーストレスでのクリアという目標がある(「ストレス」は,致命的でない指示遅れに対して課せられるペナルティ)。6本のシナリオは,決して少なくはないのだ。
華やかな国際便と
輸送機を含む多彩な機体が登場
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| 専用の港を持つ中部国際空港にとって,輸送機は陰の主役といえる存在。本作でもテーマの一つとして取り上げられている |
さて話を変えて,空港ごとのもう一つの特徴である,雰囲気について。本作は,登場する機体や航空会社が多彩である点も大きな特徴になっている。新鋭の国際空港だけあって,数多くの外国航空会社の機体が登場し,全体に華やかだ。国内に関しても,本作でしか見られない,全日空機のボーイング737-700型・1番機「Gold Jet」が姿を見せてくれる(この機は実際に,セントレア−台北便に就航している機体だ)。土地柄,トヨタ自動車のチャーター機であるビジネスジェットが出てきたり,JAL系列のJ-Airに所属する小型ジェット機がタッチ・アンド・ゴー訓練をしたりと,イベントのバリエーションも豊富だ。
また,本作では貨物便が重要なテーマとして取り上げられている。本作では,荷物を搭載した貨物便は「Heavy」という特徴つきで扱われる。これらはたいてい,同時に(従来はプロペラ機にだけついていた)「Slow」という特徴がつき,移動速度が異なる。進入経路をうまく指示しないと,先行した貨物便が後から来る旅客便に追いつかれてニアミス発生ということにもなる。
さらに,「特殊な貨物機」も2種登場する。一つはターン制ストラテジーなどでおなじみの超大型輸送機,「アントノフ(An)124」。この機は発進時,滑走路内でアイドリングを行う必要があり,発着スケジュールをうまく読む必要がある。もう一つは,ジャンボ機の特殊輸送型である「B-747LCF」(Large Cargo Freighter)。新鋭機B-787のパーツを輸送する機体で,非常に特徴的な外見を持っている。これら機体の多彩さでは,シリーズ随一といっても差し支えないだろう。民間空港だけあって自衛隊機はほとんど登場しないが,“ミリタリー成分”を望んでやまないファンのためか,E-767早期警戒機が管制域内に顔を出してくれる。
システムもシリーズ開始当時(第1作「東京ビッグウィングA」は2001年登場)からは微妙に改良されており,本作では「微細」テクスチャモードをサポート,対応データも収録されている。充実した3D描画環境を持つPCならば,ハイクオリティな画面でのプレイが楽しめるわけだ。もちろん,3D描画の負荷を減らすモードも従来どおり利用できるため,3D描画性能が低いノートPCなどでも楽しめる。これも本作が幅広い人気を勝ち得ている一つの理由だろう。
総じて言えば,航空ファンならお勧めという結論は,前作と変わらない。ただ,このシリーズをまだプレイしたことのない人のなかには,どういうゲームかいま一つ掴めない,という人もいるだろう。その場合は,ぜひ体験版をプレイしてみてほしい。また,難度の点で不安を覚えるなら,本作に先立って,「東京ビッグウイングC(コンプリート)」や「成田・完全版」など大空港の統合版から挑戦するとよいだろう。






















