レビュー : Angel Love Online

生産系プレイにも独自の工夫がなされたライト系MMORPG

Angel Love Online

Text by 麻生ちはや
2007年1月24日

 

必要なときに学べる「エンジェル学園」

 

 キューエンタテインメントが運営する「Angel Love Online」は,天界と人間界「エデン大陸」を舞台に,見習い天使となって冒険を繰り広げるMMORPGだ。基本プレイ無料/アイテム課金制で,2006年12月21日より正式サービスが開始されている。
 本タイトルでプレイヤーキャラクターは全員,天界にある「エンジェル学園」の生徒,すなわちまだ半人前の天使となる。はるか昔,人間の少女に横恋慕して過ちを犯した天使「ルシファー」は天界を追放され,地獄に封じ込められた。自分を天界から追放した神とエデンの人間に,復讐を誓うルシファーからエデンを守るため,プレイヤーキャラクターは学園を出て冒険に出かける……。
 人間に恋してしまうなど,キリスト教を含むユダヤ/ヘブライ系の「天使」とはだいぶ違う気がする文脈が少々微笑ましい。むしろライト系MMORPGにふさわしい,ほのぼのした設定といえようか。
 2Dグラフィックスで描かれるキャラクターとアバターアイテム,親しみやすい世界観やインタフェース,そして可愛いペットに乗り物。本作にはライトゲーマー向けMMORPGではお馴染みの要素が,ほぼ一通り揃っている。また,マウスクリックによる移動/攻撃指示,ファンクションキーを使ったスキルの発動,アイコン化された各種操作など,操作周りも非常にオーソドックスな作りだ。そうした必要十分なコンセプトに,生産/生活要素をより楽しめる工夫を加えたのが,本作の大きな魅力である。

 先述のとおり,プレイヤーは全員「エンジェル学園」の生徒として,まずは天界を舞台にプレイを開始する。キャラクター作成では性別のほか,髪型/髪の色肌の色/身長を選んで組み合わせる。またそのほかに,生まれた日や星座,血液型なども任意に設定できるのだが,これがプレイに何らかの影響を与えるかどうかは不明だ。
 キャラクター作成が終わると,いよいよ「見習い」としてエンジェル学園に入学する。ここは通常のMMORPGで言うところのチュートリアル兼初心者マップに当たるわけだが,何かと覚えるべきことが多く,チュートリアルでもしばしば覚えきれないという,MMORPGにありがちな欠点を見事にカバーしてくれている。
 ほかの多くのMMORPGでは,戦闘やアイテム売買の方法,スキルなどを一度に流し込もうとするチュートリアルが多いため,実際にアクションを起こす場面が来たときには,すっかり忘れていることもままあった。それに対して本作のエンジェル学園では,まず卒業を目標として掲げているのだが,そこまでに必要な「単位」の取得という形で,実際のプレイに合わせてコマ切れにチュートリアルを受けられる。細かなことだが重要な点である。
 エンジェル学園の卒業には最低5単位が必要で,単位は「戦闘講師」「魔法講師」「採集講師」の3人がくれるクエストをこなすことで取得できる。戦闘と魔法講師の2人からは,初級から上級まで三つのクエストが受けられ,倒すモンスターの強さと,クリア時にもらえる単位がそれぞれ異なる。
 講師が違えば複数のクエストを同時に受けられるので,5単位くらいはすぐに取得できるはずだ。一方で採集講師は伐採/採掘/採集/釣魚といった生産系全般のクエストをくれるのだが,どれも1単位しか得られないうえに,自分が持っていないスキルのクエストは受けられない。
 生産職を選んでいても,戦闘クエストの中級ぐらいまでなら簡単にクリアできるので,単位の取得については問題ないだろう。ちなみに15単位を取得すると,優等生として特別なクエストへの挑戦権が得られる。

 エンジェル学園でみっちり学ぶべきは,技法(スキル)についてだろう。職業を選択した際に与えられる初期スキルは,当然ながらその職業と直結した内容だ。例えば,弓を使う「射撃士」ならば「射撃」「鷹眼」「軽装」,生産職の「工芸師」なら「工芸」「採集」「伐採」など,それぞれ六つの技法が与えられる。
 キャラクターレベルが20以下のうちは,この技法は,NPC「技法変更天使」に話しかけるだけで,好きなように入れ替えられる。急いで卒業する前に,戦闘系キャラクターで始めたとしても,伐採や釣魚を体験してみるとよいだろう。もちろん,卒業して地上に降りたあとでもスキルの入れ替えは可能だが,序盤のうちにさまざまな組み合わせを試しておけば,自分にとって一番使いやすい技法のセットを組み立てられる。
 ただ,技法の枠が六つしかないだけに,自由度はそれほど高くない。選んだ六つ以外はすべて「オフスキル」となってしまうのだ。例えば序盤のプレイで調理をレベル10まで上げておいても,ほかのスキルと交換してオフスキルにしてしまった時点で,調理はいっさいできなくなる。
 いろいろ試したところでは,交換してすぐプレイに役立てられるのはせいぜい一つか二つまでで,それ以上組み合わせを変えると戦闘も生産も中途半端になり,何もできないキャラクターになってしまう……。そう見るのが正しいようだ。
 もちろん,そもそも自分一人ではすべてをまかなえないことが,他プレイヤーとのコミュニケーションやコミュニティの必要性につながっていくのだし,スキルの入れ替えや,新キャラを作っての試行錯誤を計算に入れたうえで,コンテンツ寿命が考えられているのだとは思う。
 だがそれもこれも,毎回のプレイを存分に楽しめることが大前提。多彩なスキル設定をプレイの魅力に直結させるには,もう少し1キャラクター当たりの所持スキルバリエーションを広げたほうが,よいようにも思えたのだが,どうだろうか。

 

3パターンの身長や36種ある髪の色などにより,3万通り以上の組み合わせから自キャラを作成できる。アバター要素は,ライト系MMORPGでは定番だが大事なポイントだ プレイに必要なことは入学前のチュートリアルで一通り学べるが,全体はシンプルで無駄に長くない。必要な時期が来たら教えてくれる形の「単位」システムが嬉しい 学園入学前に,14種の職業から一つを選ぶ。職業ごとに異なる初期スキルをセットで覚えるが,これはあとで入れ替えが可能なため,あまり悩まず好きなものを選ぼう

 

マップ上には,自分の現在地と全NPCの位置に加えて,モンスターや採掘/伐採/釣魚可能な場所が記されている。タブを切り替えればワールドマップも確認できる 学園内の池で釣り。採集/釣魚/伐採などは,一度始めればその場の資源が尽きるまで続けてくれる。とくに道具も必要ないので,メンテナンスの必要がない点は楽だ 技法交換天使に話しかけ,取り替えたいスキルを選べば,その場で交換してくれる。戦闘技法で単位を稼いでおいて,あとから生産系に切り替えるのも,一つの手だ

 

 

生産職にも優しい,「技法」とキャラの成長システム

 

「レシピ商人」から各種アイテムを作るためのレシピを購入。学園で買えるレシピはほとんどが,成功率100%だ

 キャラクターの成長システム全体について,あらためて説明しておこう。Angel Love Onlineでは,ベースレベルと技法のレベルの育成は分かれている。このうちベースレベルは,モンスターを倒したり,クエストを遂行したりすることで,経験値を得て上昇していく。一方技法も,レベルアップ時に手に入るポイントを割り振るといった形ではなく,実際に使うことで伸びていく。
 技法同士は一部連動しているため,例えば射撃士の場合,モンスターを攻撃するたびに「狙撃」「集気」「軽装」の経験値が得られる。実際,戦闘系の技法は適正レベルのモンスターを相手にしていれば,とくに意識しなくてもどんどん成長していく。
 だが,このシステムの下で生産系のプレイを進めようと思うと,容易に想像がつくとおり,戦闘系ほどハイペースで技法を使っていくのは難しい。そうした生産職への配慮となっているのが,「機装」と「機動」技法である。
 Angel Love Onlineの世界には「機甲」と呼ばれる搭乗型ロボットが存在する(騎乗生物とは別)。機甲に乗っていると最大所持重量+15,移動速度+50%のメリットがあるので,マップのあちこちで素材アイテムの採集活動をする生産キャラクターは,たいていこれに乗っている。
 ここで「機装」「機動」の二つの技法を上げていくと,機甲装備時に攻撃+1,HP+3,防御+3といったボーナスが付く。しかもこの二つの技法は,伐採や釣魚といった技法とも連動しているので,採集活動をすればするほど攻撃力や防御力が上昇するわけだ。
 せっかく高度な加工品が作れるレベルに達しても,素材アイテムがあるマップにはアクティブモンスターがいるため,常に誰かに守ってもらわなければ活動できないというのは,既存のMMORPGでよくある悩みの一つだ。そこで機甲を使えば,逃げ足が速くなり,防御力も上がるので,とりあえず一撃で戦闘不能になることはない。格下のモンスターなら倒すことも可能だ。
 MMORPGにはしばしば,自キャラを強化したり乗り込んだりするタイプのロボットが登場するわけだが,それらはほぼ例外なく,テレビアニメのような“戦闘ロボ”だった。Angel Love Onlineにおける機甲の使い方は,その可愛らしい外見とともに,なかなかオリジナリティの高い試みと評価できよう。

 Angel Love Onlineにはこのほかにも,生産職への配慮が感じられるシステムがある。細かい例を挙げるなら,アイテム生産時の指定方法や表示方法がそうだ。加工品を作る調理/裁縫/工芸などで,あらかじめ作りたいレシピと数量を複数指定できるうえ,すべての作業を終えるまでにかかる時間まで,教えてくれるのである。
 また,採集や釣魚を行っているとランダムに入手できる「注文書」は,そこに書かれたとおりの種類と数のアイテムを揃えてNPCに話しかければ,報酬と経験値がもらえるというものだ。そして,そこで“注文”される品は,まだ技法レベルが低いキャラでも比較的簡単に作れるアイテムとなっている。
 生産職はえてして,効果が高く人気のあるアイテムを作れるようになるまで,えんえんと適正レベルのアイテムを作り続け,しかもあまり使い途がない場合は捨てたり,安い価格でNPCに売ったりするハメになるものである。注文書によって,低レベルな加工品でも報酬につながることは,プレイヤーのモチベーションを維持するために大切な工夫なのだ。

 

風香林の街の調理場では,一番最初にもらえる「練習バレル」や「レッドアームバレル」,イヌ型機甲の「Pochi」やネコ型「Tama」に乗ったプレイヤーキャラを見かける 機甲に搭乗した状態でも戦えるが,通常使っている武器とスキルは使えない。機甲のための強化パーツ「コア」を使えば,攻撃力/防御力/最大HPをアップさせられる 複数のアイテム作成や二次加工を行いたいときは,レシピを選んで「追加」ボタンを押すだけ。加工の順序とかかる時間が表示されるので,ちょっと席を外せるのが便利

 

これがキャラクター作成時の,誕生日と星座,血液型の入力画面。ゲーム内で意味を持つかどうかは不明だ ベースレベルの成長に必要な経験値とは別に,技法ごとに経験値が積み上げられ,使うほどに伸びていく 生産系プレイの場合,採集や釣魚で手に入る「注文書」はありがたい。技法を練習しながら,お金が稼げる

 

 

作業感を軽減する,クエスト主体のプレイ

 

5単位以上を揃えて,再び「担任」に話しかけると,いよいよエンジェル学園卒業。自分が属したい国を選んで下界へ降りることとなる。ちなみに選んだのは「風香林」国だ

 エンジェル学園での話がいささか長くなってしまったが,単位が揃って卒業を迎えると,いよいよ人間の住むエデンを守るために,プレイヤーは下界へ降りることになる。エデンは「聖光城」「風香林」「永夜宮」「鉄機塞」という四つの国に分かれており,それぞれ各国のバックストーリーと連動したクエストなどが用意されている。
 過去の記事でも解説してきたとおり,それぞれの国には固有の設定があるのだが,選んだ職業との組み合わせによる有利不利はいっさいない。クエストは所属国のものしか受けられない,販売している騎乗生物が異なるといった違いはあるものの,国と国との間はレベル20前後からごく普通に行き来できる。いまのところ,どの国に属するかはイメージで選んでしまっても問題ないようだ。 下界に降りるといよいよ“一人前”の証なのか,戦闘不能に追い込まれたときには経験値減少のデスペナルティが発生する。その点には気をつけたい。
 エデンの各国ではクエストの数が一気に増え,同じNPCでも話しかけるタイミングやキャラクターのレベルにより,異なる内容を依頼してくることがある。冒頭で述べたとおり複数のクエストを同時に進行可能なので,同じマップ内でクエストをこなすうちに,キャラクターレベルはもちろん技法レベルも自然に上がっていく。
 弱いモンスターをただ黙々と倒し続けなければならないといった“作業感”が少ないのは好印象だ。クエストのなかには物語としてつながっているものもあって,謎解きを進行させる楽しみもある。一人ではとても倒せない敵なども出てくるが,マップ内に座り込んで,のんびりチャットを楽しんでいるプレイヤーキャラの姿も多いので,思いきって話しかけてみるのがよいだろう。
 繰り返し操作が多いライト系MMORPGでは,遺憾なことに昨今チートツールを使った不正行為が目立つわけだが,Angel Love Onlineには,同じエリアで同じ行動が長時間続くと,画像で表示された「解放パスワード」の入力を求めるというシステムが用意され,BOTツールを使った不正を阻止する形になっている。
 国同士,ギルド同士,個人単位のPvPシステムは,現在のところ実装されておらず,導入予定もまだアナウンスされていない。中国と韓国ではすでに導入済みの「戦争」システムでは,獲得したエリアで採集可能な資源が2倍になる,特殊なアイテムやテレポート機能の利用が可能になるなど,多くの特典が得られるようだ。国内ではまだ詳しい内容が公開されていない状況なので,続報を待ちたい。

 冒頭でも述べたとおり,本作はペットや見た目の可愛い乗り物,身に着けた装備品が外見に反映されるアバター要素など,女性やMMORPG初心者といった,ライト層向けの色彩が強い。だが通りいっぺんに留まっていないのが,特筆すべき点であろう。使っているうちに自然と上昇するスキル,メニュー化されたアイテム生産/加工など,自動化できるところはしてしまい,何の修行かと思わせるような無駄な苦痛をプレイヤーに強いないよう,細かな配慮がなされているのだ。
 プレイの深みや自由度の高さをどこまでも求める人には少し物足りないかもしれないが,スキル制を生かしたキャラクター育成などは,なかなか良いバランスに仕上がっていると思う。
 ちなみに3月2日には,限定3000本の「スターターキット」も発売される予定だ。気軽に楽しめるMMORPGを始めてみようと思っている人,あるいは,ブーストアイテムを購入しないと,とてもやってられないようなMMORPGに疲れた人には,ぜひともプレイしてみてほしい。

 

クマの「ホップ」は,毎回いろんなお願いごとをしてくる。たいていは同マップ内にいるモンスターを一定数倒したり,アイテムを取り返してほしいといった内容だ 「軽装」技法のレベルも上がり,ようやく違う衣装を装備できるようになった……。背中にはアイテムイベントリが増える「小さい竹カゴ」をしょっていたりする レベル上げを兼ねてひたすら「グリーンモンキー」を倒していると,突如「解放パスワード」表示が。悪しき意思と遠回しに書かれているが,要はBOTのことである

 

エンジェル学園での戦闘。グラフィックス要素に,モチーフに合った統一感があるのも,この作品の良さだ 風香林の雑貨屋で,食料を買う。NPCの外見もこのとおり,可愛らしくほのぼのとしたものである 緑豊かな国,風香林のマップを表示したところ。NPCの所在地も,このように逐一示される親切設計だ

 

タイトル Angel Love Online
開発元 UserJoy Technology 発売元 キューエンタテインメント
発売日 2006/12/21 価格 基本プレイ無料(アイテム課金)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP/Vista,CPU:Pentium III/800MHz,メインメモリ:256MB,HDD:650MBの空き,グラフィックスカード:DirectX 8.0対応,800×600ドット

(C)2006-2007 UserJoy Technology Co., Ltd.
(C)2006-2007 Q Entertainment Inc.

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