レビュー : Accelero S1/S2

DirectX 9世代GPU用クーラーの実力を2007年夏のミドルレンジGPUで確認

Accelero S1
Accelero S2

Text by Jo_Kubota
2007年8月8日

 

»  GPUクーラーにはどうしても対応制限がついて回るため,旧世代のGPUに向けたモデルは新世代GPUに対応できず,過去のものになってしまうことが少なくない。だが,個人的にAccelero S2を愛用しているJo_Kubota氏が試してみたところ,2007年夏のミドルレンジGPUを搭載したグラフィックスカードに取り付けられたのだ。というわけで,それを前提に,Acceleroシリーズの冷却能力を氏が検証する。

 

Accelero S1,Accelero S2
メーカー:Arctic Cooling
問い合わせ先:ザワード(販売代理店) info@zaward.co.jp
Accelero S1実勢価格:3500円前後(2007年8月8日現在)
Accelero S2実勢価格:3000円前後(2007年8月8日現在)

 2007年も夏本番を迎え,関東地方では連日,日中30℃を超える状態が続いている。最近グラフィックスカードを新調した人にとっては,初めて迎える“冷却に厳しいシーズン”ということになるだろう。
 このとき問題となる可能性があるのは,GeForce 8シリーズやATI Radeon HD 2000シリーズを搭載したグラフィックスカードのGPUクーラーだ。とくに,カードの登場初期は,GPUメーカーのリファレンスクーラーを搭載することが多いわけだが,それらは冷却能力のみが考慮されていたり,逆に冷却能力が今一つだったりして,夏場はファン回転数が上がって耳に付くようになったり,あるいはGPU温度が看過できない水準に上がってしまったりすることがある。

 一定以上の自作スキルがあるユーザーであれば,GPUクーラーの換装を考慮することが多いだろうが,残念ながら,最新GPUの正式対応を謳ったGPUクーラーというのは,そう多くない。とくにATI Radeon HD 2000シリーズは登場からそれほど時間が経っていないため,ほとんどない状態だ。

 今回取り上げるスイスのArctic Cooling製GPUクーラーである「Accelero S1」「Accelero S2」(Accelero:アクセレロ)も,最新世代のGPUを公式にはサポートしていない。では,なぜわざわざ旧世代のものを検証するかというと,筆者は個人的にAccelero S2を利用しており,試してみるとどうやら新世代ミドルレンジGPUもサポートできそうだったからである。
 そこで今回は,DirectX 9世代のGPUをターゲットとしたファンレスGPUクーラーが,2007年夏における主要ミドルレンジGPUを,どの程度冷却できるか検証してみたい。

 

左がAccelero S1,右がAccelero S2。付属品については後述する

 

 さて,本題に入る前に一つお断りを。GPUクーラーの換装はメーカー保証外の行為で,グラフィックスカードに取り付けられていたクーラーを取り外した段階でメーカーや販売店の保証はなくなってしまう。もし作業を誤ってグラフィックスカードを損傷させても自己責任となるので,くれぐれも注意してほしい。もちろん,筆者,4Gamer編集部もいっさいの責任を負わないので,この点はご理解を。
 ただ,作業自体はそれほど難しくない。夏休みの工作気分でチャレンジしみてはいかがだろうか。

 

 

Accelero S1&S2の取り付けは簡単
真夏に純然たるファンレス運用は厳しい

 

 今回はArctic Coolingの香港支社から新品のサンプルを借用できたので,(筆者の私物ではなく)こちらを使っていく。
 まずはAccelero S1&S2の違いから見ていこう。ざっとした違いは表1のとおりだ。

 

 

 サイズとヒートパイプの数からも想像がつくと思うが,Accelero S1はミドルハイ〜ハイエンドGPU,Accelero S2はミドルレンジ以下のGPUがターゲットとなっている。当然のことながら冷却能力はAccelero S1のほうが上なので,それをミドルレンジ以下のGPUに使うと効率がよさそうだと思うかもしれないが,そのサイズゆえに取り付けられないグラフィックスカードは多く,仮に取り付けられても今度はマザーボードと干渉してしまうことが多い。

 

上段はAccelero S1,下段はAccelero S2。Accelero S1をミドルレンジ以下のGPUを搭載したグラフィックスカードに取り付けようとすると,たいていの場合はヒートパイプが問題になる

 

 そこで今回は,ミドルレンジ以上の最新グラフィックスカードを複数用意して,実際に取り付けられるかどうかを検証してみた。「GeForce 8800 GTX」でのテスト結果を受けて,「ATI Radeon HD 2900 XT」での検証は行っていないが,ミドルレンジに関しては一通りチェックできたので,もともと用意されているArctic Coolingによる対応リストとマージしたものを表2のとおりまとめてある。

 

※1 取り付けられるが,冷却能力不足になることが多いため,換装は推奨しない
※2 公式には謳われていないが,試した限りでは取り付けられた
※3 取り付けられるものとそうでないものがある

 

Accelero S2を「ATI Radeon HD 2600 Pro」搭載カードに取り付けたところ。GeForce 8600,ATI Radeon HD 2600シリーズ搭載製品の大部分には取り付けられると考えていい

 

 補足しておこう。右に示したのが「取り付けられるかどうか」のポイントだ。ネジ穴同士の距離がAccelero S1なら54mm,同S2なら44mmで,さらにPCI Expressインタフェースの先端から,最も近いネジ穴までの距離が,Accelero S1で24mm以上,同S2で23mm以上なら,最低条件をクリアしている。あとは,よほど変なところにコンデンサが配置されていたりしなければ取り付けられるはずだ。
 ちなみに,公式の対応が謳われていないGPUを搭載したカードでは,(ミドルレンジGPUではないが)Sapphire Technology製の「ATI Radeon HD 2400 Pro」搭載カード「SAPPHIRE HD 2400 Pro」が,上に示した条件を満たしておらず,取り付けられなかった。また,Low Profileグラフィックスカードも,この条件を満たせないケースが多いようだ。

 

 もう一つ注意する必要があるのはPCケースの横幅である。Accelero S1,同S2ともに取り付けるとグラフィックスカードからPCケースの横方向(=マザーボードから垂直)に突き出る形になった。ブラケットの端からだとその長さは約46mm。スリムタイプや,サイドパネルにダクトなどのギミックがあるPCケースでは物理的に閉まらないかもしれない。

 ……といったところを踏まえつつ,Accelero S1&S2の取り付け方法を以下のとおり説明したい。両製品とも,作業の流れは基本的に同じだ。

 

(1)GPUクーラーを外す

 ミドルハイクラス以上のグラフィックスカードは状況が異なる場合があるものの,ミドルクラス以下のグラフィックスカードはたいていの場合,カード背面にネジやプッシュピンで固定されている。それらを外すだけでGPUクーラーはあっけなく外れるはずだ。

 

(2)GPUダイのグリスを拭き取る

 続いてGPUのダイに塗られているグリスを拭き取って綺麗にしておく。Accelero S1,同S2とも,最初からグリスが塗布されているので,GPUチップ側に塗る必要はない。もちろん,付け替えたりする場合は,Accelero S1/S2側のグリスもいったん拭き取って,塗り直すのをオススメする。

 

(3)スペーサを貼り付ける

 Accelero S2を裏返して両面テープのシートを剥がすと,ネジ穴が3連×4の12か所用意されている。GPUクーラーを取り付けるためのネジ穴は4か所なので迷ってしまうが,最近のミドルレンジ向けGPUでは,3連ネジ穴の中央を利用することになるので,ここに付属のプラスチック製スペーサーを貼り付ける。両面テープはこのスペーサーを固定するためにあるのだ。  なお,Accelero S1のネジ穴は4か所なので,パスして(4)へ進もう。

 

(4)メモリチップにヒートシンクを貼る

 カード上のグラフィックスメモリチップに付属のメモリ用ヒートシンクを貼り付けよう。Accelero S1にはレギュレータ用とされるヒートシンクも用意されているが,カードによってはすでに取り付けられている場合も多く,また,カードデザイン的に取り付けられないものも少なくない。要するに,メモリチップ用ヒートシンク以外の取り付けは必須でない。
 なお,右の写真は左からメモリチップ用(8個付属),ATI Radeon HD 1950 Proのレギュレータ用,ATI Radeon X1950/X1900/X1800 XTのレギュレータ用とされている。ただし,筆者が個人的に所有しているAccelero S1の国内版ボックスだと,中央のヒートシンクは付属していなかった。

 

(5)ネジを締める

 GPUと接触させる側を上にした状態でグラフィックスカードをかぶせるように置き,ネジ留めすれば作業完了だが,その前に製品ボックス付属のプラスチック製スペーサーをカードに取り付けておこう。
 なおネジ留めは,対角線上を徐々に締めていくといい。いきなりギチギチに締めるのではなく,最後に軽くきゅっと締めれば十分だ。強く締めすぎるとコア欠けの恐れもあるので要注意である。

 

スペーサーをうまく使ってネジ穴の位置を合わせて,ネジ留めする。これで完成だ

 

 

真下から風を当てる方法で冷却
クーラー換装の効果はかなり高い

 

 取り付けたところで,テストに入っていきたい。
 今回のテストに当たっては,ファンレスGPUクーラーを利用するということで,静音をコンセプトにしたものを用意した。基本的なテスト環境は表3のとおりで,CPUクーラーは「MINE COOLER Rev.B」を利用,横幅が広く冷却能力が高めのミドルタワーATXケース「GT-210」を利用する。

 

 

今回は筆者私物のATXミドルタワーケースを用いる

 GT-210にはケースファンは前面に80mm角,背面に120mm角が取り付けられている。回転数はそれぞれ2500rpm,1200rpmだが,これらを稼働させた状態でも,室温30℃という厳しい環境において,Accelero S1/S2のファンレス動作ではGPU温度が危険な領域に達したため,今回は完全ファンレスでの検証を行わない。むしろ安全かつできる限り静かに運用することを重視し,Accelero S1/S2用のArctic Cooling“純正ファン”である「Turbo Module」を取り付けた状態で検証することとした。
 ただ,今回のテストに当たってArctic Coolingから借用できたTurbo Moduleは国内未発売。そこで今回は,拡張スロット部に80mm角もしくは90mm角のファンを固定できる長尾製作所製のファンステイ「KD-NPCISTY」に回転数2000rpmの80mm角ファン「RDL8025S」(公称騒音レベル20.68dBA)を取り付け,Turbo Moduleと同じようなエアフローを実現した状態でもテストを行うことにした。
 なおテストに当たっては,ファンの性能をできる限り正確に把握するため,ケースファンは停止させている。

 

上段と下段左がTurbo Module。価格は11.9ドルとされており,発売されれば1000円台の価格になるだろう。取り付けは簡単で,フィンの間にアタッチメントを挟み込むようなイメージ。給電は3ピンコネクタ経由で行うが,4ピン仕様への変換も可能だ。下段右がKD-NPCISTY(に別途入手した80mm角ファンを取り付けたところ)。秋葉原のPCパーツショップである高速電脳から1344円(税込,2007年8月8日現在)でステイ単体を購入できる

 

 温度測定対象はGeForce,ATI Radeonとも3モデル。時間の都合で「GeForce 8600 GTS」「ATI Radeon X1950 Pro」のテストは行っていないが,前者についてはASUSTeK Computer製の「EN8600GTS/HTDP/256M」で検証し,問題なく取り付けられることは確認済みだ(後者はそもそもAccelero S1が標準対応)。
 テストに当たっては,Windows XPが起動してから10分間放置した直後を「アイドル時」,「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」体験版をウインドウモードで起動し,タイトル画面が表示された状態で3分間放置してから,「PERFORMANCE TEST」を実行して最もGPU温度が高かった時点を「高負荷時」とする。温度データの取得には,GeForceは「nTune」,ATI Radeonは「ATI Catalyst Control Center」を利用した。

 

 さて,いよいよ本題。グラフィックスカード別に結果を見ていこう。

 

●EN8600GT SILENT/HTDP/256M

EN8600GT SILENT/HTDP/256M
ファンレスのGeForce 8600 GTカード
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:1万9000円前後(2007年8月8日現在)

 ネジ穴的にはAccelero S1を取り付けられるのだが,取り付けるとAccelero S1がマザーボードと干渉してしまう。Accelero S2は問題なく取り付けられた。
 この製品は標準でファンレス仕様となっているが,今回のテスト環境ではゲームを起動した直後からGPU温度は80℃を超え,最高では85℃を記録した。熱暴走には至らなかったが,ファンレスGPUクーラーの場合,適切なケース内空調を行わないと危険であることを改めて確認できた次第だ。
 ただ,EN8600GT SILENT/HTDP/256Mのクーラーはなかなか優秀で,80mm角ファンで冷却すると66℃の安全圏まで下がる。カード標準のクーラーとしては十分に合格点だろう。Accelero S2に交換すると,80mm角ファン,Turbo Moduleとも54℃と,一気に10℃以上下がった(グラフ1)。

 

 

●GeForce 7600 GTリファレンスカード

GeForce 7600 GTリファレンスカード

 リファレンスカードだけに,GPUクーラーもNVIDIAリファレンス。小型で,動作音はかなり大きい。
 Accelero S2対応製品なので,当然Accelero S2は取り付け可能。Accelero S1も取り付けること自体はできるが,GeForce 8600 GTと同様,取り付けるとクーラーがマザーボードと干渉してしまった。

 リファレンスクーラーは騒音がキツいうえに冷却能力も低いが,Accelero S2を取り付けるとGPU温度はアイドル時で10℃以上,高負荷時には30℃弱下がる(グラフ2)。Turbo Moduleの公称騒音レベルは明らかになっていないが,動作音は“静か”と断言できるレベルで,交換後の「静かになった感」も際立った印象だ。

 

 

●Inno3D Geforce 7900 GS

Inno3D Geforce 7900 GS
リファレンスデザインを採用した7900 GS
メーカー:InnoVISION Multimedia
問い合わせ先:興隆商事(販売代理店) info@kohryu.com
実勢価格:2万円前後(2007年8月8日現在)

 GPUクーラーはリファレンスと同じ,小型のタイプ。冷却能力以外はあまり考慮されておらず,動作音はかなり大きい。温度的には安全圏だが……。

 GeForce 7900シリーズはAccelero S1の対応製品で,Inno3D Geforce 7900 GSももちろん同製品を取り付けられる。スコアは優秀の一言だ(グラフ3)。
 GPU温度は高負荷時でも50℃強で,換装前と比べて25℃以上下がっている。動作音も確実かつ大幅に下がっており,満足度は高い。

 

 

●EAH2600XT D4/HTDI/256M

EAH2600XT D4/HTDI/256M
リファレンスデザインのGDDR4モデル
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:2万5000円前後(2007年8月8日現在)

 2007年8月上旬時点で,GDDR4グラフィックスメモリを搭載したATI Radeon HD 2600 XTカードにリファレンスデザイン以外のものは存在しない。EAH2600XT D4/HTDI/256Mもリファレンスデザインのカードで,1スロット仕様のGPUクーラーを搭載する。
 このクーラーは負荷に応じてファン回転数を自動制御するタイプで,冷却能力はあと一歩ほしいところだが,動作音はそれほどうるさくない。ただ,連続して負荷がかかると徐々にファンの回転数が上がっていき,夏場に長時間ゲームをプレイしているとファンの音が耳に付くケースもあるだろう。

 カードサイズからしてAccelero S1を取り付けることになるかと思ったのだが,実際に干渉なく取り付けられたのはAccelero S2だった。換装によってGPU温度は大きく下がり((グラフ4),動作音もかなり静かになるのを確認できている。

 

 

●EAH2600XT/HTDP/256M

EAH2600XT/HTDP/256M
2スロット仕様クーラーは静音ファン搭載
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:1万8000円前後(2007年8月8日現在)

 2スロット仕様の静音ファンを搭載しており,標準状態でもアイドル時,高負荷時ともGPU温度は低い水準を維持している。ただ,それでもAccelero S2へ換装することで,高負荷時の温度が5℃下がった(グラフ5)。

 ファンの動作音は,側板を開けているとEAH2600XT/HTDP/256M標準のもののほうが幾分大きく感じられるが,閉じた状態では区別がつかない。いってしまえば,全体的に劇的な効果があるわけではないので,「メーカー保証もあり,2スロット占有で済む」EAH2600XT/HTDP/256Mのクーラーを,「メーカー保証が切れるうえに3スロット仕様」のAccelero S2に交換するメリットはあまりないかも。

 

 

●PowerColor X1650 XT 256MB DDR3

PowerColor X1650 XT 256MB DDR3
2スロット仕様の強力クーラーを搭載
メーカー:Tul
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
実勢価格:1万8000円前後(2007年8月8日現在)

 比較的冷却能力の高い2スロット仕様のGPUクーラーを搭載しており,標準状態でもGPU温度は問題ないレベルに留まっている。

 Radeon X1650 XTはAccelero S2対応GPUなので,こちらでテストしているが,冷却能力的には高負荷時に約10℃低下と,効果は相応にある(グラフ6)。しかし,ここで強調しておきたいのは,標準状態だと少々気になったファンの動作音がAccelero S2+ファンで一気に下がった点だ。感覚的には半分くらいになった印象を受ける。

 

 

 

ファンを追加すると割高だが効果は十二分
夏場を静かに乗り切りたい人にオススメ

 

Arctic Coolingはグリス「MX-2」も市場投入しており,店頭で購入可能だ(2007年8月8日現在の実勢価格は1300円前後)。何度か着脱する予定があるなら,あらかじめ用意しておくといいかもしれない

 Accelero S1&S2は,最新世代のミドルレンジ向けGPUを前にしても,十分以上の冷却能力を持っている。しかも,少なくとも今回試した6枚では,ファンレスモデルと静音ファン搭載モデルを除く製品のすべてでPCの動作音は換装前より静かになっており,「効果」という意味では文句の付けようがない。また,今回の結果は室温30℃,ケース内エアフローもほとんどないという厳しい環境でのスコアなので,冷房の効いた室内や,涼しい季節なら,適切なケース内エアフローによってAccelero S1/S2自体をファンレスで動作させることは十分に可能だろう。今回のGPU温度データを参考にして,ファンレス動作にチャレンジするのもアリだ。

 

Turbo Moduleを取り付けた状態。KD-NPCISTYを取り付けた状態でも同じく,“3スロットめ”を占有してしまう。またクーラーのサイズからして,サイドパネルに並行する場所(この写真で手前側)にファンを置くのはちょっと苦しい

 ただ,課題がないわけではない。今回試したGeForce 8600 GT(および前述のとおりGeForce 8600 GTS),ATI Radeon HD 2600 XTカードには問題なく取りつけられたが,あくまでArctic Coolingの保証外。ほとんどのカードは似通ったデザインを採用しているはずだが,Low Profileモデルにはおそらく取りつけられないなど,不確定要素が少なくない。また,PCケースのサイズや拡張スロットの空き状況などといった,PCケース周りにあるハードルの高さもつきまとう。

 もう一つは価格だ。実勢価格はAccelero S1が3500円前後,Accelero S2が3000円前後で,それ自体は目くじらを立てるほどでもないが,それに別途ファンを取りつけようとすると,なんだかんだで1000〜2500円程度かかる。少なくとも真夏を乗り切るには,単体価格だけでは済まない可能性が高く,若干の割高感は否めない。

 ただ,それらを差し引いても,室温30℃という猛暑のなかでGPU温度を60℃以内に留めてくれる高い冷却能力は魅力であり,性能とのトレードオフと考えれば,納得できるレベルなのも確か。この夏を乗りきるGPUクーラーとして,検討に値する製品といえる。

 

■■Jo_Kubota(ライター)■■
PCに関連した守備範囲の広さに定評のあるテクニカルライター。それを生かして――というより,長い付き合いの担当編集からそこに目を付けられて――4Gamerでは,グラフィックスカードやCPU,サウンドカードなどといったハードウェアから,OSなどソフトウェアの検証に至るまで,八面六臂の活躍を見せる。DOS時代からThrustmasterのステアリングコントローラを握り続けている,無類のレースゲーム好きという顔もアリ。
タイトル GPU/CPUクーラー
開発元 各社 発売元 各社
発売日 - 価格 製品による
 
動作環境 N/A


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