― レビュー ―
2005年の本命FPSがついにデビュー
コール オブ デューティー 2 日本語版
Text by 松本隆一
2006年3月24日
※日本語版についての記述は,記事の一番下にあります。

 

■怒声渦巻く阿鼻叫喚の戦場へ,またまたようこそ

 

第二次世界大戦を題材にしたFPSのデ・ファクト・スタンダードといえる「Call of Duty」に,続編「Call of Duty 2」が登場した。今回もまた,ソ連軍,アメリカ軍,イギリス軍の一兵卒となって,銃弾が飛び炎が渦巻く地獄の戦場を戦い抜くのだ

 1944年6月6日,連合軍の大陸反攻作戦“オーバーロード”が開始された。約300万人の兵員がドーバー海峡を渡り,北フランスのノルマンディ海岸に殺到したのだ。猛烈な艦砲射撃と空襲ののち,無数の上陸用舟艇が海岸に接近していく。だが,激しい砲火のもとドイツ軍はしぶとく生き延び,近づく連合軍部隊に照準を合わせ続けていた。
 浜辺に立った兵士達は,たちまち銃弾の嵐に翻弄される。アメリカ第5軍団の上陸目標地点は「オマハ」と名づけられた海岸だったが,事故により水陸両用戦車のほとんどを失ったうえ,誤った場所に上陸したため,守備に当たるドイツ軍の精鋭,第352歩兵師団の前に生身を晒してしまったのだ。

 

 上陸開始後わずか10分で,第一波上陸部隊の約70%が死ぬか重傷を負う地獄の様相。そんな中,アメリカ軍第2レンジャー大隊は,「オマハ」と「ユタ」海岸の間にわずかに突き出した「オック岬」へ向かう。ここに配置された重砲を破壊することが,彼らの任務だ。兵士らは高さ約100メートルの切り立った崖を,射出式ロープと梯子を使って駆け上り,ドイツ軍を撃退しながら重砲要塞に近づかなくてはならない……。

 

 お待ちかね, 「コール オブ デューティー 2 日本語マニュアル付英語版」(Call of Duty 2,以下CoD2)の登場だ。クリーンヒットした前作「Call of Duty」は,第二次世界大戦をテーマにしたFPSとして不動のエースの地位を獲得し,世界的に熱狂的なファンを生み出した。かくいう私もその一人で,再びアドレナリンが過剰供給される悪夢の戦場に立てるとは,ご同慶の至りでございます。

 

 新作,CoD2の制作において,デベロッパであるInfinity Wardが狙ったのが「自由度の高さ」と「グラフィックスの向上」であることは,たぶん間違いないだろう。ご存じのように,前作の大きな特徴は,スクリプトを多用した映画的演出にあった。あらかじめ決まったストーリーに従って設定されたルートを辿ることで,次々にドラマチックな出来事が発生し,まるで戦争映画の主人公になったような気分を味わえるというわけだ。
 その点については,個人的には何も不満はなかったが(むしろ命令されるのが好き),やはり「もっと自由に戦いたい」というプレイヤーも多くいたようだ。なにしろ,少しでも道を踏み外したり“想定の範囲外”のことをすると,すぐ強引にゲームオーバーになっちゃいましたからね。
 とはいえ,自由度の高さとドラマチックな演出とは,なかなか両立の難しい課題ではある。そのへんどうなっているのか,まずは期待と不安を高めてもらいたい。

 

 とかなんとか気を持たせておいて,ここでキャンペーンについて紹介しよう。CoD2も「アメリカ」「イギリス」「ソ連」の3キャンペーンがあり,各国の一兵卒となって第二次世界大戦を戦い抜く,という前作と同様のスタイルだ。なお,ゲームは1941年から始まる。

 

 “絶対になりたくない職業ナンバーワン”として,よく挙げられるのが「第二次世界大戦中のソ連軍の新兵」だ。CoD2では,プレイヤーはまずソ連第13親衛ライフル師団の新兵ヴァシーリ・イヴァノビッチ・コスロフ二等兵として,モスクワ近郊の訓練施設で手榴弾の代わりにジャガイモを投げて練習したあと,スターリングラードに侵攻してきたドイツ軍を相手に戦うことになる。雪と氷と血と炎の戦場だ。女性兵士も出てくるので,とくに何かあるわけではないけど,いいですね。

 

 ヴァシーリのミッションを二つクリアして1942年になると,イギリス陸軍ジョン・ディビス軍曹のミッションがアンロックされる。こんなふうに,時系列に沿ってキャンペーンが進んでいき,この段階でイギリス軍のミッションに行ってもいいし,そのままスターリングラードでソ連の残りのミッションを戦ってもいいわけだ。

 

 ディビス軍曹は,あんまり強そうじゃないニックネーム“砂漠のネズミ”で知られるイギリス第7機甲師団の一員として,“砂漠の狐”ことロンメル将軍麾下のドイツ・アフリカ軍団を相手に,エジプト,リビア,そして1944年にはノルマンディの激戦地,カーンまで転戦する。イギリス軍にはもう一人,同じく第7機甲師団に属するデビット・ウォルシュ隊長が登場し,彼は戦車部隊を担当する。

 

 「クルセーダー」快速戦車による砂漠の機動会戦は,間違いなくCoD2の白眉の一つだ。前作にも戦車戦闘は登場したものの,今回はスピード感といい,マップの広さといい,迫力満点の機甲戦が堪能できる。筆者のような「キャタピラ熱愛派」には堪えられないものがあり,このパートの人気が高いのも納得だ。ただ,惜しむらくは,相対するドイツ軍の戦車がどっからどう見ても「2号戦車」で,20ミリ機関砲搭載のはずなのに,大砲で攻撃してくるところかな。後半のノルマンディ戦以降には,ちゃんとツィメリットコーティングを施したタイガーI型が出てくるので,よく分かんないけど安心してほしい。

 

 砂漠の戦いもいいが,私が最も好きなのが,冒頭に紹介したアメリカ陸軍第2レンジャー大隊のビル・テイラー伍長のパートだ。上陸用舟艇の中の緊張した雰囲気から,銃弾の飛び交う海岸に一気に突入。燃え上がる舟艇からよろめき出る,火だるまの兵士。撃ち倒される衛生兵。アリのように崖を這い上がっていくレンジャーの中には,足を滑らせてまっ逆さまに落下する兵士もいる。抜群の演出で「戦争映画の登場人物になったような気分」にさせてくれるのがCoDシリーズの真骨頂なら,まさにこのシーンにそのエッセンスが凝縮されているように思う。「こんなことが本当にあったんだなぁ……」と思うと,得も言われぬ感覚に襲われる。

 

 ミッション数は全部で10だが,各ミッション内容は細かく分かれており,場所もどんどん移動していくので,長さ的には十分。基本的にオートセーブのみで,私の得意技「クイックセーブでチマチマ移動」ができないのは辛いが,セーブポイントは細かく,「こんなところまで戻されるか」という状況はそれほどない。が,たまにはある。

 

ソ連編は市街戦。スターリングラードで,部屋を一つ一つ奪い合うような激戦に耐えていなければならない ソ連編の主人公ヴァシーリは,映画「スターリングラード」の主人公と同じ名前ゆえか,狙撃任務が多い ゲーム全編を通じて,一人で戦う局面はない。頼れる戦友が常にかたわらにいるのだ。ときどき頼りにならないが

 

手強い敵,戦車も登場する。肉薄して爆弾を仕掛けるのだ! って,それしかないのかソ連。大砲ぐらいほしい 敵狙撃手の位置を確認するためヘルメットを突き出す戦友。緊張の一瞬。こうした映画的演出が次々に出てくる 怒号飛び交う戦場は大変にやかましいが,敵軍のいるところはドイツ語の叫び声が聞こえてくるので分かりやすい

 

 

■自由度の高い新戦闘システム お好きな方からどうぞ

 

戦車戦があったり装甲車に乗って機関砲を撃ちまくったりと,イギリス軍パートは大変バラエティに富んでいる

 というわけで戦闘だ。自由度の高さを追求したというマップは,なるほど広く,目的地に向かうルートは無数に考えられるケースも多い。そのため,戦闘スタイルは前作というか一般的なFPSとは,若干風合いの異なるものとなっている。つまり,戦場が広く進行経路が多く考えられる以上,すべてのポイントに敵兵をスクリプトで配置しておくとゲームが重くなりすぎる。その代わりに,CoD2では自キャラの周辺に敵兵が自動的に次々と登場してくるというシステムを採用しているが,そのため,いくら倒しても敵がリスポーンしてくる,という状況がしばしば発生する。
 こういった場合,目標となるポイントに到達するか,あるいは与えられた命令(燃料をすべて破壊,とか無線機を破壊とか)を達成することでゲームを進行させられる。前作までのように,前進するにつれて登場する敵を倒し,周辺をクリアにしてから次へ進むのとは異なり,必ずしも敵兵をすべて排除する必要はないのだ。迂回し,弾雨をくぐり,駆け抜ける,といった戦略が取れるようになったわけで,慣れないうちはちょっと戸惑うかも知れないが,なんというか,まるでマルチプレイをしているような雰囲気もあり,戦場はさらに本物らしくなった(行ったことはないが)。

 

 もちろん,従来通りスクリプトで敵兵が登場する場合も多いし,決まった進行ルートを取らなくてはならないマップもあるが,上記のようなシステムを取り入れることで演出の幅を広げつつ,自由度もかなり高まったという印象を受ける。私に褒められても嬉しくないだろうが,「やるなあ」という感じだ。戦況も,四方から攻め込んでくる敵に対して拠点を防御していたかと思えば,反転して突撃し,その後また退却しながら防衛線まで下がる,といった具合に千変万化し,例によって息つく暇もない忙しさだ。

 

 しかし,戦闘の難度は前作以上かも知れない。なにしろコースが決まってないのだから,どこからドイツ兵がやってくるか分からない。いつの間にか背後に回られて十字砲火の餌食,などということもしょっちゅう起きるし,敵味方ともAIは相変わらず優秀だ。
 今回とくに手強いのは,グレネードだ。遮蔽物の背後にいると,必ずといっていいほど投擲してくるのだが,こちらはMG42で射すくめられて逃げ場もない,なんて場合も多く,爆死頻発。まさに戦場の必殺パターンだが,まさか敵AIが完璧に使いこなしてくるとは,とほほ。
 また,「この状況で突破は,絶対無理でしょ!」と,モニターの前で腕を組む局面も多いのだが,ふとスモークグレネードを使ってみたらあっさり突破成功とか,ぐるっと回ってみたら手薄だった,などということもあり,工夫次第でなんとかなるところが面白さの秘密だろう。いろんな戦略が取れるため,やり込み度は高めだ。

 

ドイツ兵と切り結びながらエキゾチックな町並みを駆け抜ける。ディテール豊かな88ミリ砲にご注目いただきたい 前作までのプレイヤーにはおなじみのプライス軍曹が,またまた登場。ドイツの装甲車を乗っ取って敵中突破を図る 機関砲は撃ち続けていると過熱して使用不能になるので面倒だ。パンツァーファウストを食らわないよう気をつけろ

 

戦車を盾に砂漠を進軍し,敵の拠点に迫る。スモークグレネードは便利だが,こちらの視界も狭まってしまうのが難 無駄口を叩きながらの行軍。戦車が角を回ったとたん,ドイツ軍の待ち伏せ攻撃。緩急自在の演出が本作の身上 敵の対空砲をぶん捕って,次々に襲ってくるスツーカを撃墜。CoDシリーズでは,おなじみのシチュエーションだ

 

 

■緻密なグラフィックスと,分かりやすいマルチプレイ

 

もう,これなくしてはアメリカ軍とはいえないくらいおなじみの「オマハビーチ」。とはいえ,今回はわずかに離れたオック岬が舞台だ。上陸用舟艇から阿鼻叫喚の浜辺へ。必死に崖を登っても,待っているのは地獄の戦場

 グラフィックスに関しては,筆者のような生半可な専門家の目から見ても,かなり進歩しているのが分かる。全体的に,爆煙や水柱,マズルフラッシュや炎など,迫力は確実に増している。最近流行りの「光と影」部分は,そこそこといったところ。
 オブジェクトは細かく描き込まれ,雪の降りしきるスターリングラードの廃墟,荒涼とした北アフリカの砂漠,小奇麗な北フランスの小村など,かなりいい感じだが,せっかく細かく作り込まれているのに,敵弾を避けて走り回る状況が多く,ゆっくり観察していられないのがもったいない。

 

 さて,シングルプレイを終わらせたら,お次はマルチプレイであろう。公称最大32人(もっと多いサーバーもあって不思議)まで参加できるマルチプレイには,前作CoDのマップをリメイクしたもの3枚を含め,専用マップ13枚が用意されている。ゲームタイプとしては,おなじみの「デスマッチ」「チームデスマッチ」「キャプチャー・ザ・フラッグ」のほかに,爆弾を仕掛ける側と,それを阻止する側に分かれて戦う「サーチ・アンド・デストロイ」,2か所の陣地を奪い合う「ヘッドクォーター」が用意されている。またチーム戦が多く,ボイスチャットに対応している。
 最初に武器を選択できるだけで兵科などはなく,プレイした限りでは「緻密な戦略を立てて組織的に戦う」というよりは「当たるを幸い撃ちまくる」という,爽快感優先の作りになっているようで,ビギナーはもちろん,空いた時間にちょっと,というプレイヤーにももってこいだ。
 とはいえ,例によって発売後1か月も経っていないというのに,ハチャメチャに強い人々も多く,最初はシングルプレイのドイツ兵の気分をイヤというほど味わうことになるだろう。なお,殺されてリスポーンするまでの時間,自分のやられざまをリプレイしてくれる面白機能「キルカム」は今回もあり,間違いなく鑑賞回数が人より多めの筆者としては大変悔しい。

 

 というわけで,まあ,あれですよ,ごく単純にまとめると「面白い」の一言だ。高めの難度と戦略性。前作同様のドラマチックな展開と,高まった自由度。爽快感のある撃ち合いなどなど,前作のプレイ感覚を濃厚に引き継ぎながら,新しいフィーチャーを過不足なく取り入れた,誰でも楽しめる娯楽大作に仕上がっている。この年末,何を買おうか迷っている人にとってはファーストチョイスの一本といえるだろう。

 

ヒル400に突撃するアメリカ軍。銃を撃っていないときにはマップしか表示されず,画面は非常にすっきりしている アメリカ軍パートの最後は,1945年5月のライン渡河だ。終戦までほんの数日だというのに,運がありませんね 迫力満点のタイガーも出現。転輪とキューポラからして初期型だな,などと言ってはいけない。オタクだと思われるぞ

 

マガジンを交換しているときに限って敵が出てくるような。瓦礫となった古い町並みと5月の空が美しい 息つく暇もない戦闘が終わり,集合地点に戻ってみると,大佐が待っていた。狂乱の大戦ももうすぐ終わる デスマッチモードでは30秒以上生き延びることが少ない私だが,チームデスマッチなら,まあ,なんとかなるかも

 

 

■待望の日本語版ついに発売(※2006年3月24日 追記分)

 

オック岬に突入するアメリカ軍第2レンジャー大隊の勇士達。英語版では話半分で上官の命令を聞いていたが,これからは違う!

 2006年3月24日,ラッセルから待望の「コール オブ デューティー 2 日本語版」が発売された。これでもう,場所も何のためかもよく分からないまま,ドイツ兵が撃ってくるので撃ち返していたらクリアしてしまった。という,うっかり者の二等兵も安心だ。
 日本語版は,音声は英語のまま,命令書,セリフのキャプション,ヘルプなどのテキストが完全日本語されている。表示される味方の名前は英語のままだが,個人的には「ジョージ」とか書かれるより,こっちのほうが好き。ただし,挿入される実写ムービーシーンのナレーションがときどき字幕なし(主にミリタリーチャンネル)なのは,やや残念だ。
 マルチプレイの互換性にも問題はなく,普通に海外サーバーに乱入して普通に撃ち倒されて,しょんぼりできる。もちろん,サーバーメッセージやチャットなど,もともと英語で書かれたメッセージは英語のままだが,せっかくだから日本サーバーの充実に期待したいところ。
 海の向こうでは,マルチプレイ用新マップ2枚を含む,大規模パッチのリリースが発表される今日この頃。なんとこのパッチはインターナショナル版で,日本語版にも対応済みらしい。マルチのサーバー状況を見ても,まだまだ本作の人気は高いようで,新たに始めるには,まさにナイスタイミングといえるだろう。

 

 ともかく,これで阿鼻叫喚怒声怒号渦巻く戦場の味わいはそのままに,自分の名前も目的もはっきり分かり,没入感はさらに増大するはず。やたらとやかましい戦場で,「え? 今なんつった?」などと不安な気持ちにならないだけでも嬉しい話だ。

 

日本語ならミッション選択なども簡単に行えるし,ムービーの内容も分かりやすく,たいへん助かる。それにしても,コスロフ二等兵は字がへたくそである。……というか,ちょっとかわいらしい字だ。女子高生か何かだろうか

 

こちらがマルチプレイの画面。サーバー設定,武器選択,そしてヘルプ画面などがちゃんと日本語。これからの我が国におけるCoD2サーバーの盛り上がりに,とても期待したい。そして,ぜひ仲間に入れてほしい

 

 

※以下は英語版のスクリーンショットです。

 

タイトル コール オブ デューティー 2 日本語版
開発元 Infinity Ward 発売元 ラッセル
発売日 2006/03/24 価格 オープンプライス
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.40GHzまたはAthron XP 1700+以上,メインメモリ:256MB以上(512MB以上推奨),グラフィックスチップ:GeForce2 UltraまたはRadeon 9000以上,グラフィックスメモリ:64MB以上,オンボードグラフィックスおよびノートPCは動作保証外

2005 Activision Publishing, Inc. Activision and Call of Duty are registered trademarks of Activision Publishing, Inc. All rights reserved. Developed by Infinity Ward. This product contains software code from Id Software, Inc. (C) 1999-2005 Id Software, Inc. The ratings icon is a registered trademark of the Entertainment Software Association. (C) 2005, Discovery Communications, Inc. Military Channel, logo and Go Behind the Lines are trademarks of Discovery Communications, Inc., used under license. All rights reserved. www.discovery.com. All other trademarks and tradenames are the properties of their respective owners. 32995.209.US Marketed and distributed in japan by Russell

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