新作紹介 : Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific 日本語マニュアル付英語版

より遊びやすくなった,米軍潜水艦シムシリーズの最新作

Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific
日本語マニュアル付英語版

Text by 川崎政一郎
2007年5月16日

 

太平洋戦争における米軍潜水艦シム

 

「Silent Hunter」シリーズ第4作は米軍潜水艦がモチーフ。シリーズ従来作品と比べ,グラフィックスは格段に強化されている

 「Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific 日本語マニュアル付英語版」は,太平洋戦争における米軍潜水艦のシミュレーションゲームだ。前作,前々作はドイツ海軍のUボートが主役だったが,今作ではアメリカ海軍の潜水艦を操り,史実ミッションや仮想ミッション,キャンペーンなどを戦っていく。当然ながら敵となるのは日本海軍で,沈めなければならないとはいえ,戦艦「大和」をはじめとする有名艦艇と戦えるのが,一つの魅力でもある。

 

 

 

水上だけでなく水中も移動できるが,潜行時間は短い

 

 当たり前の話だが,潜水艦は水上艦艇の動きに加え,水中での移動手段を持つ兵器である。二次元的な移動方向と速度のほかに潜航深度というファクターを持ち,これで敵の目をかいくぐったり,攻撃を避けて離脱したりする。本作における移動指示は,速度/方向/潜航深度をそれぞれメーターで直接指定するのがメインだ。ただし,前作同様乗組員を介しての指示や,ホットキーにも対応している。潜りっぱなしでゲームを進められるほどバッテリー容量がないことは,第二次世界大戦モチーフに詳しい人ならお馴染みのことであろう。

 

【1】潜水艦独自の航法

後進が可能な点と,針路指定をコンパスで行う点が,初めての人には慣れを要するかも。最初はマップ画面と見比べてながら練習しよう

 本作における潜水艦の移動は,主に画面右下にある三つのメーターで指示する。“速度”(前進/後進),“針路”(向き),そして“深度”(深さ)を調整することで,潜水艦は全方向に進めるのだ。もっとも,潜航/浮上はバラストタンクの注排水で行うため,任意に速度をコントロールできるわけではない。「潜航」と「急速潜航」,「浮上」と「緊急浮上」がある程度だ。

 

【2】甲板砲も重要な攻撃手段

潜水艦の浮上にはリスクが生じる。しかし甲板砲による攻撃は,魚雷に比べてずっと経済的だ。反撃をうける心配がないならお勧め

 Uボートと異なり,米軍潜水艦をモチーフとする本作では,甲板砲も大いに活躍する。地上施設を攻撃するときはもちろんのこと,非武装の商船を狙う場合,搭載弾数に余裕のある甲板砲はなかなか重宝する。また,リアリティの点をさておくなら,対空火器もかなり頼りになる。敵機に出会ったらあえて潜航せず,撃墜を狙うのも手である。甲板砲,対空火器ともに,乗組員に任せるのみならずプレイヤーが操作することも可能だ。

 

【3】魚雷による攻撃

敵艦の速度と角度,敵艦までの距離は右上の「攻撃データツール」から入力して,TDCに転送する。簡易モードの場合,画面にあるとおり敵艦の位置に「▼」マークが出て,必要なデータは自動的に入力される

 潜水艦の表看板といえば魚雷攻撃である。商船のみならず,駆逐艦や軽巡洋艦ならほぼ1発,戦艦クラスの大型艦でも片舷に数発叩き込めばだいたい沈められる。
 エキスパートルールでは,潜望鏡や双眼鏡で捉えた敵艦までの距離や角度,敵の移動速度などを計測/推測し,魚雷発射指揮装置(TDC)に送るという本格的な照準操作が可能だ。それに対して簡易モードでは,敵を視界に捉えて指示するだけで,ほかの乗組員が必要な判断をしてくれる。こちらであれば,いままで潜水艦シムをプレイしたことのない人でも不安はないだろう。

 

【4】レーダーやソナーによる探知

ソナーやレーダーをたよりに接近し,魚雷の射程範囲内まで来たら潜望鏡深度まで浮上。接近しすぎると猛烈な反撃を受けるので要注意

 第二次世界大戦における海戦で,レーダーやソナー(水中聴音機)が活躍したのはご存知のとおりだ。当時において,潜航中の潜水艦で敵の情報をつかむのに使えるのは,潜望鏡とパッシブソナーのみであった。攻撃をかけるにも,敵の攻撃をかわすにも,ソナーからの情報に頼ることになる。とはいえソナーで分かるのは,音源の方向と種別(商船か戦闘艦か),大まかな距離と,接近しているか離れつつあるかだけである。
 レーダーが目標探索に大活躍するのも,本作の大きな特徴だ。これは,ヨーロッパ戦線よりも商船護衛技術(と物量)のレベルが低かった,太平洋戦線の現実を反映したものだ。

 

 

主なゲームモードは4種類

 

●クイックミッション

 局地戦をテーマにしたゲームモードで,1〜2時間でプレイできる。“珊瑚海海戦の日本軍艦艇を撃沈”や“呉軍港に停泊中の大和を撃沈”などといった,太平洋戦争下におけるさまざまなミッションが,10種類用意されている。

 

●ウォーパトロール

 基地から出航して目的地へ赴き,任務を遂行するゲームモード。哨戒1回分がテーマとなっており,具体的な任務とシチュエーションはその都度生成される。プレイ時間は,クイックミッションとダイナミックキャンペーンの中間程度だ。

 

●キャリアモード(ダイナミックキャンペーン)

 一艦長の戦歴を作っていくキャンペーンモードで,年月の経過にしたがって生成されるミッションをこなし続けるゲームモード。具体的なミッションとしては,敵艦の撃沈,敵施設の写真偵察,味方部隊への物資輸送,友軍基地への寄航など,さまざまなものがある。そしてミッションの戦果に応じて,次のミッションが自動的に生成されていく。
 ミッション終了後にプレイヤーは“名声値”を獲得し,それを用いて潜水艦をアップグレードしたり,新たな乗組員を採用したりできる。さらに,乗組員は経験を重ねることで作業効率が上がっていくなど,継続的なプレイを前提とした内容となっている。

 

●マルチプレイ

 マルチプレイでは,最大8名による協力/対戦プレイが楽しめる。本作のマルチプレイで特徴的なのは,日本軍の護衛艦でもプレイできることだ。当然ながら潜水艦側とは操作内容が異なるため,例えば“深度”のダイヤルは,「護衛艦の配置設定」(前方/後方/左側/右側)に置き換わっている。第二次世界大戦時点で,潜水艦同士が戦うことなどまずあり得ない。その前提を崩すことなく,本作のプレイヤー同士で敵味方に分かれたプレイを可能とするために加えられた工夫なのである。

 

本作では操作方法や挙動の再現度を“リアリズム”という値で示している。空気残量や外部カメラの有無などを含め,難度を調整できるのだ どのゲームモードでも敵対国が日本というのが,魅力でもあり複雑な気分でもあり。本作では日本とは逆の視点による太平洋戦争を追体験できる キャリアモードのプレイは長期間におよぶ。個々の戦闘における戦術のみならず,人材や技術面でのマネージメント能力も重要

 

 

潜水艦の制約条件を項目別に設定でき,入門者でもプレイ可能

 

 密閉された潜水艦は,外部から遮断された世界である。燃料のみならず,潜航中は電力や酸素すら有限だ。これらの条件は当然ながら,潜水艦をゲームとして再現するときにもプレイの制約要因として取り入れられる。
 また魚雷発射の作業一つをとっても,リアリティがゲームの魅力を左右するシミュレーションゲームではどうしても,細かなプロセスを再現する必要が生じる。人によってはそうした要素を煩雑に感じてしまうかもしれない。そこで本作のゲームオプションでは,細かな再現項目にそれぞれオン/オフが用意され,100%を最高難度とする“リアリズム”設定が段階的に調整可能となっている。
 潜水艦シムの特徴である制約条件の多さを,楽しめる人はそのまま楽しめばよいし,状況やプレイへの習熟度にしたがって,適宜調整してもよい。太平洋戦線における米軍潜水艦の戦いは,そうした意味でガチガチの制約条件のままでプレイしなくても,相応のリアリティが感じられるジャンルである。乗組員管理の進化や操作メニューの整理も含め,前作に比べてぐっと初心者に優しくなったのが,本作の優れたところである。

 

 

 

タイトル Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific 日本語マニュアル付英語版
開発元 Ubisoft Entertainment 発売元 イーフロンティア
発売日 2007/04/27 価格 6090円(税込)
 
動作環境 OS:Windows XP/Vista,CPU:Pentium 4/2GHz以上[Pentium 4/3GHz以上推奨],メインメモリ:1GB以上[2GB以上推奨],HDD空き容量:6GB以上,グラフィックスカード:DirectX 9およびPixcel Shader 2.0 対応製品,グラフィックスメモリ:128MB以上

(C)2007 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Silent Hunter, Silent Hunter 4: Wolves of the Pacific, Ubisoft, Ubi.com, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/preview/silenthunter4/silenthunter4.shtml


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