ここに紹介する「Rainbow Six Vegas」は,これまでのリアル指向の強いゲーム性から,カジュアルな方向へ舵を切ったシリーズ最新作。特殊部隊の息詰まる戦いをFPSビギナーでも体験できる魅力的な一本になっている |
4月27日にイーフロンティアから発売された「Tom Clancy's Rainbow Six Vegas 日本語マニュアル付英語版」(以下,Vegas)は,1998年にリリースされた「Rainbow Six」以来,約10年にわたって続いてきたシリーズの最新作だ。リアル系のタクティカルシューターとして人気のRainbow Sixシリーズだったが,第3作の「Raven Shield」からそのゲーム性をよりカジュアルな方向へ切り替えつつある。
Vegasは,Unreal Engine 3によるハイレベルなグラフィックスとシンプルな操作性を持ち,前作までのマニアックさから転身を図った,まさに“新生Rainbow Six”と呼べる一本だ。
よりシンプルになったゲームシステム
チームRainbowは,世界各国から選りすぐられた隊員によって構成されるエリート特殊部隊で,その目的はカウンターテロ。高性能爆弾によるテロを企む女テロリスト,イレーナ・モラレスを追って,メキシコの国境の町ローガンから,“Sin City”ラスベガス,そしてフーバー・ダムへと激しい戦いを進めていくのだ。
ファンにはおなじみのドミンゴ・チャベスやジョン・クラークは本作には登場せず,主人公を務めるのはシリーズ初登場のローガン・ケラー。通常,二人の部下を率いて作戦に臨むが,ときには一人で戦うこともある。シングルプレイのストーリーモードは彼の目を通して進んでいくのだ。また,シングルプレイには,一人でテロリストを全滅させるテロリストハントモードも用意されている。
詳しいレビューは「こちら」に掲載したので,ぜひ併せて読んでほしい。
リアルな銃器/アイテム
一つのマップが終わると,次のマップで携行する火器類を選べる。いろいろ使って,それぞれの銃の特徴を覚えよう |
例によって,登場する個人携行火器はすべて実物をモデルにしたもので,威力や精度,集弾率などはリアル。発射音やマズルフラッシュもいい感じだ。一つのミッションが終了すると武器選択ができ,それぞれの武器にはスコープやレーザーサイトといったオプションが用意されている。サイレンサーは取り外しができ,状況に応じて使い分けられる。
また,落ちている敵の武器を拾って使用することも可能だ。
遊びやすいユーザインタフェース
部下への命令やマップの表示など,できることはいろいろあるが,ほとんど数種類のキーとマウスだけで操作可能。コンシューマ機ゆずりの操作性の良さだ |
Vegasでは,シリーズの最も特徴的な部分だったプランニングフェイズやブリーフィング,あるいはメンバー選択画面などがばっさりオミットされている。プレイヤーは突然戦場に放り込まれ,襲いかかってくる敵を相手に銃撃戦を繰り広げるのだ。必要な情報はそのつどサポートスタッフのジョアンナ(ジョー)・トレスから連絡が入り,ローガンはもっぱら戦闘に終始するのだ。
ドアの向こうをのぞき見るスニークカムの使用やサイレンサーの装着,あるいは部下にさまざまな命令を下すなどプレイヤーのできることは多いが,すべてマウスとごくわずかのキーで行える。ユーザーインタフェースは練り込まれており,必ずしも簡単な部類ではないにせよ,FPSビギナーでもすぐに慣れるはずだ。
多彩なアクション
ファストロープ,ラペリング,そしてオブジェクトの背後に隠れるなど,さまざまなアクションを使って作戦を進めていく。ラペリングによる突入は特殊部隊らしくて非常にカッコよく,戦いを生き抜くためには,適切な遮蔽物を見つけて前進することが重要になる。ファストロープを使って敵の背後に回るなど,アイデア溢れる攻撃も面白いだろう。
敵味方とも,AIの出来も悪くなく(ときどき,妙な行動を取るが),部下の一人がハシゴを下っている間,もう一人がカバーに回るなど,戦術教本通りのキビキビした行動がマニア心をくすぐるだろう。
リアルなグラフィックス
Unreal Engine 3を使用したことでグラフィックスのレベルは格段に向上した。ゲームの主な舞台となるラスベガスでは,鮮やかなネオンや広告が夜空を彩り,カジノではスロットマシンのライトが明滅する。メキシコの田舎町のうらぶれた感じや,鉱山内部の雰囲気もすばらしい。ヘリコプターで移動するとき,眼下を流れるメキシコの街やラスベガスの作り込みも圧巻だ。そのため,要求されるPCスペックは高めになっている。
特殊部隊のシビアな戦闘を体験しよう
これまで“リアル系特殊部隊FPS”の最右翼に位置していたRainbow Sixシリーズだったが,このVegasでゲーム性の大きな転換を図り,それに成功している。基本的に一本道だが,場所によってマップはかなり広く,またそれぞれの局面を打開する方法は一つに限られないなど,自由度が低くなったという印象はない。ヘッドショット一発で撃ち倒され,部下を殺されてもゲームオーバーになるなど,相変わらず難度も高い。
Ubisoft Entertainmentのもう一つのトム・クランシーシリーズ人気作,Ghost Reconも2006年発売の「Tom Clancy's Ghost Recon Advanced Warfighter」でよりカジュアルな方向に舵を切り,同じく高い評価を得ている。古くからのファンには賛否両論あるところだろうが,特殊部隊もの,近接戦闘ものが好きならぜひプレイしてもらいたいタイトルだ。
スクリーンショット