第二次世界大戦全体を扱ったストラテジーゲーム「ハーツ オブ アイアンII」の拡張パック,「Hearts of Iron II: Doomsday」(以下,Doomsday)。4月4日の英語版発売に先立って,プレイアブルデモが公開された。さすがに海外でも注目度が高いようで,ダウンロードサイトは公開当日から混雑が続いている。
Doomsdayは,ハーツ オブ アイアンIIのプレイ期限を従来の1947年末から1953年にまで延長すると同時に,スパイのルールやシナリオエディタなどを追加,さらに各所の操作性を向上させるものとなっている。
今回公開されたプレイアブルデモでは,グランドキャンペーンもプレイ可能な代わり,プレイ時間が3時間限定となっている。また,マニュアルに相当するプレイ手順の説明はいっさいなく,チュートリアルはハーツ オブ アイアンIIのものと同一で,あまり十分とはいえない。つまりこれは,すでにハーツ オブ アイアンIIをプレイしたことのある人が,あれこれ触ってみるためのデモであり,このデモでハーツ オブ アイアンIIの概要を一から把握することは,まずできないものと思ってほしい。
そうしたわけなので,以下では具体的な操作方法でなく,もっぱら「何がどう変わった」のか,見どころを整理していく。
■ユニット生産や沿岸砲撃の手順など,操作性が改善
派手な新機軸も多いDoomsdayだが,前作ハーツ オブ アイアンIIにあった,さまざまな操作上の不満点に対し,改善が試みられている。
その筆頭は,生産管理の自動化である。従来は,例えば軍隊の生産にIC20.00が必要といった場合,いちいちマウスでIC20.00よりちょっとだけ高い値にスライダーを合わせる必要があった。割り当てるICが不足すれば,さまざまなペナルティが生じるし,かといってICを余計に割り当ててもあまりメリットがないのだ。スライダーの左右にある「+/−」ボタンをクリックすれば,0.01単位で調整が可能だったが,そもそもこれ自体,とても合理的な操作とはいえない。
それに対してDoomsdayでは,ICの配分を自動で行わせられるようになった。「生産最優先」「装備向上最優先」といった意味のチェックボックスがあり,これを選択することでICが最適値で配分される。IC200を超えるような大国ではもちろんのこと,逆にICが10〜20程度で0.01の無駄が惜しい小国でも便利な機能だ。
また自動で貿易を提案したり,貿易の提案を受諾したりするボタンも加わった。大国の場合,貿易提案はすべてOKでも構わない場合が多いため,プレイを円滑にする効果は高い。
海軍の機動も簡略化された。戦艦で沿岸を砲撃をしたい場合,従来は該当する海域まで艦を移動させ,そこから砲撃するプロヴィンスを選ぶという手続きになっていた。ところが,プロヴィンスによっては特定海域からしか砲撃できない場合があり,それが事前に分かりづらいことがストレスの原因ともなっていた。
Doomsdayで沿岸砲撃を行う場合,艦艇ユニットをクリックし,攻撃先として陸上プロヴィンスを選択するだけでいい。あとは自動で適切な海域に移動して,砲撃を開始してくれるので,クリック回数も無駄足もぐっと減る。
軍隊の生産とアップグレードにもメスが入っている。師団と随伴旅団は従来,別々に生産し,手動で組み合わせていかねばならなかったが,Doomsdayでは最初から随伴旅団付きで生産が可能だ。実際,1945年開始のシナリオでアメリカを選択すると,随伴旅団付きの自動車化歩兵師団が生産可能だった。
また,アップグレードに関しては,指定したユニットをアップグレード対象から外すという選択肢も追加された。部隊数で明らかに勝っているとき,長い時間のかかる航空機のアップグレードは避けたいとか,守備隊が旧式化したものの,対パルチザン用には十分な場合など,実用性は意外に高そうだ。各将軍の軍歴が保存され,部隊も含めて経験やスキルが参照しやすくなった点も,地味ながら重要な改善点といえよう。
細かい部分ながら,プレイに大きな影響を与える変更点としては,情報画面から敵対陣営のデータが見られなくなったことが挙げられる。例えばドイツをプレイしている場合,以前なら「ソビエトの歩兵は残り120個師団,民兵が30個師団に戦車が12個師団か。冬は近いが強引に攻めきって大丈夫そうだ」といった判断ができたが,今回はそうはいかない。プレイにあるべき緊張感とリアリティを添える変更といえよう。
■諜報関連コマンドの追加と第三次世界大戦の仮想シナリオ
Doomsdayでは,完全に新しい要素も多数追加されている。まず最初に挙げられるのが,諜報関係のコマンド。従来の「生産」タブや「外交」タブと同じ階層に,「Intelligence」(諜報)のタブが設けられ,その下位に多数のコマンドが設定された。
「ブループリント(新技術の設計図)を盗む」「大臣の暗殺」「スパイを送る」「対象国でのネガティブキャンペーン」「クーデターの画策」「工業分野でのサボタージュ」「核関連分野でのサボタージュ」「パルチザンに資金援助」「国際世論の操作」「技術分野でのサボタージュ」「スパイの活動一時停止」「対諜報作戦」などなど,従来はランダムイベント任せだった諜報,プロパガンダ関係のアクションを能動的に起こせるのは,非常に興味深い。諜報活動は,大国が戦争を始める前段での選択肢を増やすだけでなく,同陣営の中小国が大国を援護する手段としても利用できそうだ。
技術開発関係も一部整理がなされるとともに、1947年以降のテクノロジが追加された。合成石油技術から分岐するプラスチック技術がIC+5%の効果を持っていたり,ドイツ式以外の陸軍ドクトリンに1946年以降の部分が追加されていたりと,従来の定石を覆し得る変化も散見される。将軍のスキルにも修正が加えられているようで,従来よりも「歴戦の勇士」を育てる意味は大きくなっているようだ。
ともあれ,一番興味深い追加要素は,1945年開始の仮想戦Doomsdayキャンペーンであろうか。第二次世界大戦が枢軸の敗北で終わった直後から始まるこの第3次世界大戦シナリオでは,膨大な数の共産軍と,高いクオリティを誇る連合軍が戦う構図になっている。
当然ながら朝鮮半島では米ソによる直接対決が起こるし,ドイツでも連合と共産のホットウォーが展開される。さらにアメリカではプレイヤーが設定しなくても,シナリオ開始時にはすでにモスクワに対する核攻撃がプロットされており,第3次世界大戦の幕開けと時をほぼ同じくして核が投下されることになる。
アメリカ占領下の日本は,Doomsdayキャンペーンにおいて初期選択国に入っていないが,アメリカで始め,日本を独立させてデータをセーブ,そのデータで日本を選択してプレイを再開すれば追体験できる。キャンペーン開始時点では全土が焦土でIC0(!)だが,時間とともに少しずつICが自動復活していく様子は,まさに焼け跡からの復興である。
そしてまた,こういった本戦とはほぼ無関係に,中国で国共内戦が起こっていたりするのも面白いところだ。地域紛争を楽しむのも,Doomsdayの大きな魅力になるだろう。
ファンの間で懸案となっていたゲームの「重さ」の問題だが,Doomsdayシナリオをプレイしてみたところでは「意外と軽い」印象。ハーツ オブ アイアンIIの終盤戦と比較して明らかに軽快に動いていたので,ギミックが増えた割に快適度は下がらなかったと見るべきかもしれない。Doomsday環境で1936年から戦争するとしても,悲壮な覚悟は必要なさそうだ。もっとも,若干動作が重いといわれる日本語版と,英語版のプレイアブルデモを比べているので,即座に「軽い」とは断定できないが。
デモ版ゆえか,実情に合わないデータも散見されるし,BGMに変更がないのは少々残念なところだが,購入前にDoomsdayの新要素を確認してみるには有用だろう。ハーツ オブ アイアンIIを一通り復習して,3時間という制限時間を有効に使い,可能な限り多くの要素を確認してみてほしい。
■キー操作
■動作環境
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