ストラテジー 4Gamer.net Review
 
キュートなバイキング達が動き回る姿を楽しもう
ノースランド 〜選ばれし北欧の勇者達〜
日本語版
Text by 星原昭典
25th Oct. 2004


戦闘よりも町づくりを楽しむリアルタイムストラテジー

バイキングの村の風景。各々欲求を持ち,ごちょごちょ動き続ける彼らの面倒を見るのがプレイヤーの仕事だ

 世にある多くのリアルタイムストラテジーは,文字通りのストラテジー,つまり戦闘をメインテーマとしたものが多い。そんな中,本作「ノースランド 〜選ばれし北欧の勇者達〜 日本語版」は,リアルタイムで動き回るユニットに指示を出して生産や戦闘を行うというRTSの枠組みを持ちつつも,戦うことをメインの目的としたゲームではなく,むしろ植民地を発展させることに力点を置くことで,ほかのタイトルとは一線を画している作品だ。

 シングルプレイキャンペーンのストーリーは,シリーズの前作である「カルチャーズ2」の物語を引き継いだものとなっている。かつて三人の仲間達と共に世界を救ったバイキングの英雄「ビャルニ」は,戦友の一人でありビザンチン帝国の王女でもある「キューラ」との愛を育てつつ,今は平穏な日々を過ごしていた。そんな折,母国に帰っていたもう一人の戦友「ハッチー」から救援の要請が届く。突如現れた蛇の姿の怪物が人々を襲い,アラビア全土に混乱が広がっているというのだ。旧友の援助を求める声に応え,ビャルニとキューラは再び冒険へと旅立った。

 キャンペーンは全部で8ステージ。これは「カルチャーズ2」よりも若干少ないが,各ステージのプレイ時間は長いので,ボリュームに不満は感じない。これに加え,キャンペーンとは関係のないシングルシナリオが九つ用意されており,こちらは一話完結型でマップごとに異なった目的が設定されている。さらにマルチプレイ用のマップも六つあるが,マッチメイキング用の仕組みがゲームに組み込まれていないうえに,そもそもそれほどマルチプレイのために作られたゲームではないと思うので,プレイする機会は少ないそうだ。その代わり,いくつかのマルチプレイマップは,AIを相手にシングルでも遊べるようになっている。

キャンペーンの舞台はヨーロッパ。北欧の神話に関連した物語が繰り広げられる。ヘルプには神や巨人の解説もある 兵士や勇者達は,敵に出会うと自動的に戦い始める。よたよたと戦う姿はどこか頼りなく,また愛らしい 冒険の先々では多くの出会いが待っている。そのたびに新たな目的が提示されるので,それらを順にこなしていくのだ


働き,遊び,生活するバイキング達

ゲーム画面は三段階のズームが可能。バイキングの選択がしやすくなるほか,なんといっても彼らの仕草を眺めやすくなるのがうれしい

 「ノースランド」は,"都市建設シミュレーション"と"RTS"のハイブリッドのような作品だ。どのマップにおいても,ゲームの目的は敵を打ち負かすことだけではない。プレイを進めるごとに"ハチミツ酒を20個生産しろ" "交易によってコインを10単位集めろ" "周囲のオオカミを駆逐しろ"といった,新たな目的が次々と提示されるので,それを達成していくことになる。そのためほとんどの場合,プレイ時間は戦闘行為よりも村の発展のために費やすことになる。

 以下,「ノースランド」の特徴を一般的なRTSと比較しつつ説明していこう。
 一般的なRTSには施設を建築したりリソースを収集したりといった生産活動用の「町の人」的ユニットと,それよりもはるかに数が多い戦闘用ユニットが登場する場合が多い。しかし「ノースランド」に登場するユニットは,基本的にはバイキングだた1種類のみだ。戦闘も生産も,このバイキングを兵士や農夫などの職業に就けることで行う。バイキングの男性はどんな職業にでも就けるが,高い技術を必要とする職に就くには,その下位職業に一定期間従事した経験を必要とする。転職は何度でも可能だ。
 バイキング達は非常に可愛らしいグラフィックスで描かれ,一人一人異なった名前を持っている。彼らは一度指示すれば,あとは脇目もふらずに労働に従事するようなユニットではなく,おなかが減ったり,眠くなったりした場合は,仕事を一時ストップして家にご飯を食べに帰ったり,木陰で昼寝を始めたりする。このあたりの欲求を充足させてやるのもプレイヤーの仕事だ。快適な住まいや,美味しい食料を用意してあげれば,バイキング達はより効率良く働けるようになる。食事の用意や家屋の整備をしてくれる奥さんを持たせてあげれば,彼らはさらに幸せな状態で働けるようになるだろう。
 結婚させる行為には,これ以外にも重要な意味がある。バイキングの数を増やすには,夫婦に指示を出して子供を作ってもらう以外にないからだ。うまくいくとかわいい赤ちゃんが産まれ,赤ちゃんは一定時間で子供になり,最後には成人のバイキングとなる。
 このように本作のバイキング達は,たんなるコマではなく,ゲームの主役たる愛すべき人物としてデザインされている。そのため単に"ユニット"と総称してしまうのはいささか気が引けるくらいだ。古くは「リトルコンピューターピープル」,近作では「シムピープル」などに登場する,自発的に動くキャラクター達を愛でる感覚で彼らの行動を観察するのが,本作をプレイするの大きな楽しみの一つだ。

 続いて生産関連に目を移そう。戦闘をすることに主眼を据えたRTSは,近年,テクノロジーツリーを工夫したり,生産者ユニットが賢く立ち回るようにしたりして,なるべくプレイヤーにかかる生産関連の負担を減らす方向で進化してきているように思える。そもそも生産の要素がなく戦うことだけに集中できるRTSも少なくない。
 「ノースランド」は,この風潮と真っ向から対立するような性質を持っており,町と人のマネージメントがものすごく大変だ。例えば採取した資源はそのままでは利用できず,しかるべき場所に蓄えたり,必要な現場まで運んだりしなければならない。そのためには運搬ルートを考え,さらに商人や運搬人の職に就いたバイキングをしかるべき場所に配置しなければならない。より上位の建物を造るには二次加工品が必要で,それを作るにはそれなりの職人と建物が必要で……という具合に,細かな作業をプレイヤーが考え,行わなければならなくなっている。中にはこれを非常につらく感じるプレイヤーもいるだろう。ただ見方を変えれば,これは難度の高いマネージメント作業をプレイヤーが管理できるということでもある。人を選びはするものの,こういった手間のかかるマネージメントは逆に楽しいもの。ヨーロッパの作品には,このようなディテールへの強いこだわりを持った作品が多いといわれるが,なるほど本作もドイツの生まれだ。
 このように,"進化"とか"歴史"とか"戦争"とかではなく,とにかく"バイキングの生活"に狙いを定めているところが「ノースランド」の最大の特徴だ。ほかのRTSは勢力全体を手早くマネージメントできることを良しとしているため,プレイ中には建物に対して指示を出したり,文明全体に進化を指示したりする。対して「ノースランド」では,すべての操作が主役であるバイキングへの指示となっている。あくまでもバイキング達の個性やその働き,村の中での役割とつながりにこだわっているところが,本作を本作たらしめている部分だといえるだろう。

インゲームで参照できるテクノロジーツリー。小麦作りからパン焼き,ハチミツ酒生産に至るブランチは伸ばすのが大変だ マップ上には雨や雪がちらつくこともある。これらは雰囲気を出すための演出で,ゲーム内容に影響を与えることはない バイキングの赤ん坊や子供は本当にキュート。そのうちヒゲモジャのおっさんに育ってしまうのが惜しいくらいだ



本気で取り組めばかなり手ごわい作品

さまざまな表情を見せるバイキング達がごちゃっと集まっているミニスケープにグッとくる人には,本作のプレイはとても楽しいものになるだろう

 と,ここまでのところは「カルチャーズ2」でも見られた要素である。前作のファンであれば,どこがどう変わったのかが気になるところだと思う。幸い筆者も「カルチャーズ2」をプレイした経験を持っているので,そのあたりを詳しく述べたいと思っていたのだが,どうもほぼ変化がない。
 キャンペーンのシナリオは全く新しく,ビャルニたちの新しい仲間である「勇者」ユニットが増えている。あとは攻撃兵器である「カタパルト」が使えるようになっている。ゲーム難度の選択も可能になった。だがすぐに分かるのは,そのような枝葉末節の変化のみだった。ゲームエンジンはブラッシュアップされていると思うのだが,アピアランスに変化はない。職業や生産施設の追加もない。テクノロジツリーの概観も変わらず,たぶんアイテムも追加されていない。これはちょっと続編と銘打つには厳しいな,というのが正直な感想だ。それよりもパッチや追加シナリオに近いと感じるのは筆者だけではないだろう。
 ゲームの外の部分では,海外でのパブリッシャが変わった関係か,日本国内での発売元がサン電子からキッズステーションになっている。その流れで翻訳も変わり,職業の日本語訳やミッションログ内でのビャルニのしゃべり方のテイストが変わっているが,全体的な雰囲気はそのままなので,その点は安心してほしい。

 そんなわけで,最新のタイトルに比べると見劣りする部分はあるが,本シリーズならではの良さはそのまま残っている。最も目を引くのは本当に可愛いらしいキャラクター達の姿や仕草だろう。そして彼らを存分に働かせたり眺めたりできるように,ミッションの内容にそれほど性急な対応を求められるものが少ないのもポイントだ。
 画面から取り出して掌に乗せたいほど愛らしいキャラクターが魅力の「ノースランド」だが,ゲーム自体は意外にも手ごわい。戦闘が少ない代わりに生産系統が複雑で,村の運営には非常に高い管理能力が求められるからだ。そして生産効率を上げる秘訣は,バイキング達を健やかな状態に保つこと。だがちょこまかと動くバイキング達を見ていると,そんな要求からでなくとも彼らに"良い家に住まわせてあげたいな"とか"栄養価の高い食事を摂らせてあげたいな"などと思えてくる。"敵を打ち負かしたい"という動機ではなく,"彼らを幸せにしてあげたい"というモチベーションで挑める本作には,ほかのRTSでは味わえない新鮮な楽しさがあるといえる。

ときには勇者と兵士達のみで,危険な場所に踏み込むこともある。限りある兵力を使って道を切り開いていくのだ フィールド上に置いてある宝箱からは,武器やポーションといったアイテムのほか,ときおり兵士が出てくることもある おしゃべりに興じる女性達。バイキング達は気晴らしの欲求も持っており,それがたまるとこうしておしゃべりを始める
個々のバイキングへの指示は,このようなボタンを使って行う。数が多いが,本当によく使うものは限られている インタフェースはもう少し使いやすくても良いと思うのだが……。目立った改良は加えられなかったようだ バイキング達の世話に夢中になりすぎて,ミッション内容を忘れてしまうこともある。そんなときは,ログで確認しよう

このページを印刷する

▲上に戻る

■メーカー名:メディアクエスト
■問い合せ先:ユーザーサポート TEL 0570-040-401(祝祭日を除く月〜金 10時〜17時30分)
■発売日:2004年10月28日
■価格:7980円(税込)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上,メモリ 128MB以上,HDD空き容量 1.15GB以上,VRAM32MB以上のハードウェアT&Lに対応したビデオカード,DirectX 9.0c以降
体験版(英語版)
プレビュー記事
4Gamer内記事一覧

Northland Copyright (C) 2003 GMX Media, Funatics Software

http://www.4gamer.net/