Northland

Text by 奥谷海人

 「Northland」は,古参のゲーマーには懐かしい「Cultures」の正統な後継ソフトだ。細かいアニメーションに彩られた箱庭系の建設シミュレーションに,アドベンチャーゲームの要素を加えたようなゲーム性は健在で,すでにドイツでは大きな成功を収めている。
 村人達を適切な職業に振り分け,ロキの策略から地上やミッドガルドを守ることはできるだろうか。


ビャーミらCulturesシリーズのヒーローは,ロキの陰謀を阻止できるか!?

 「Cultures」シリーズといえば,2000年に設立されたばかりのドイツの新鋭Fanatic Software社の看板ソフトで,東欧らしい細かくて日本のアニメにも通じる味を持ったアニメーションで大きな人気を博している。同社は,最近ではマルチプレイヤーモードを実装した「Zanzarah − The Hidden Portal」というRPGをリリースしており,知名度も上がりつつある。
 Culturesは,1作めはTHQ社から,そして2作めの「Cultures 2 − The Gates of Asgard」(以下,Cultures 2)がJoWood Productions社からリリースされるなどの紆余曲折を経て,その3作めが,Northlandとタイトル名を変えてGMX Media社からヨーロッパ向けに発売される予定だ
 このGMX Mediaは,今年(2003年)になって本格的な活動を始めたばかりで,今年のクリスマス商戦には「One Must Fall Battlegrounds」や「Massive Assault」などアクション系作品を中心にして割り込みを図っているイギリスの新参企業。今回紹介する「Northland」を含めて佳作タイトルが多く,新しいだけに勢いが感じられる。

 Northlandの物語は,ラグナロク神話をテーマにしたCultures 2のエンディングから始まる
 ミッドガルドのサーペントに勝利して世界を"ラグナロク"(世界の滅亡)から救った4人のヒーローは,世界が平和の到来に歓喜する中,自分達の道を歩み始める。サラセン人のハッチー(Hatschi)やフランク人のシギュール(Sigurd)は母国へと帰り,ノルマンの英雄レイフ・エリクソンの息子という設定のビャーミ(Bjarmi)は,シリヤ(Crya)との友情が恋へと変わり,彼女の父が皇帝であるビザンチン帝国へと向かう。
 ところが,ハッチーからの突然の救援要請によって,ビャーミの幸せの日々も崩れ去る。ハッチーの村にサーペントの大群が襲いかかり,住民達は破壊と殺戮の恐怖に怯えているというのだ。ビャーミらが駆けつけると,この混乱にはアース神族ロキが絡んでいることが分かる。ロキは,目に余る横暴でミッドガルドを蹴り出された腹いせに,地上をサーペントを操って荒らし回り,自分を嫌うオーディーン神に仕返しを企てていたのだ。
 ロキは,ノース神話ではアース神族の中でもはみ出し者として扱われている,どこか人間臭い雰囲気を持った神で,Northlandではオーディーンを閉じ込めることに成功する。ヒーロー達がそこに行きロキの策略をストップするには,まずはサーペントの進軍と戦い,特殊なアミュレットを作り出す必要がある……。


村人をさまざまな職業に振り分けていく,箱庭系人材管理ゲーム復活

 Northlandは,Culturesのゲームスタイルを踏襲しており,ビャーミと仲間達を使ってミッションを進めていくというアドベンチャーゲームとRTSのハイブリッドとなっている。町を大きくし,住民達が結婚して子供を増やし,より充実した生活ができるように改善していくことに多くの時間を費やすので,戦略性よりも町作りを楽しむ箱庭ゲームとしての面白さがクローズアップされている
 バイキング達は,欧米のゲームで描かれているような勇敢でいかつい風貌ではなく,ドイツのアニメを思わせる可愛い容姿にディフォルメされている。だからといって子供向けのゲームではなく,ヨーロッパらしい細かいチューニングや資源管理を行うゲームプレイになっているのだ。

 一人一人のキャラクターは,「Black & White」のように自分の生活パターンを持っており,プレイヤーに新しい指示を与えられない限りはチョコマカと町中を往来している。それぞれが「The Sims」のように疲労度,食欲,孤独感,宗教といったパラメータも持っていて,プレイヤーが関与しなければ自動的に欲求を満たすように行動する。ただ,彼らに資源の採取などの指示を出すには,そういう個人のための時間を考慮して計画しなければならないのだ。
 興味深いのは,個々のキャラクターが効率的に働けるような環境を設定できることだ。キャラクターに家を作ってあげると睡眠を十分にとって疲労が回復しやすくなるし,若い男性に嫁を見つけてやると,空腹が早く満たされるような栄養価の高い食事にありつけるばかりでなく,寂しさも緩和されることになる。施設や資源だけでなく,人材もケアしなければならないのが,このゲームの大きな特徴といえるだろう
 生産に従事できるキャラクターは男性のみとなっており,女性キャラクターは上記のような家事や連れ合いとして存在することで効率を高める役柄で,このあたりは最近のユニセックスなRTSとは異にする。

 RPG的なレベルシステムもNorthlandに継承されている。これらのキャラクター達は木こりや猟師,農夫,漁夫,スカウトなどさまざまな職業を与えられ,その仕事をこなすことでレベルアップしていく。レベルアップすることで,例えば"粉曳き"が"パン職人"となり,さらには"ケーキ屋",そして"ビール醸造"へと成長していく。
 "炭坑夫"も,石や鉄を頑張って集めていれば,やがては"石工"へと成長し,城壁や塔などの施設の建築を担うようにもなる。 キャラクターによっては,"石工"ではなく"大理石の専門家"になったり"タイル職人"になることもでき,それぞれのレベルのキャラクター達が町の運営に影響していくのである。
 前作までは,この人材管理が非常に手間のかかる作業だったが,欲望が自動的に満たされるようになったことでストレスが少なくなっているのは確か。コントロールは通常のRTSのような形式だが,それに加えて右クリックで個々のキャラクターに合わせたメニューを引き出すようになっている。職業関連だけでなく,子作りを指示(プレイヤーが男児か女子を選択できる)できるのが,Culturesシリーズらしい部分だ


建設シムにアドベンチャーゲームの要素を加味した秀作

 シングルプレイヤーミッションは,前作と同じような森林地帯や雪原などのマップはもちろん,砂に覆われたアラビア地域でも登場するなど,全部で8ミッションが用意されている。前作同様スカウトしていない部分はFog of Warに覆われて見えないようになっており,当初はベースとなるバイキング船と最低限の施設が用意されているのみ。キャラクターが増えるごとに職業が多くなり,それに伴って新しい施設や防御用の建物なども建設できるようになるのは前述した通りだ。
 村が拡大していくと,当初に入手可能だった木材,石材,粘度,麦,肉,マッシュルームから,施設の拡張などによる発見や技術レベルの向上によって新しい物質を生み出せる。鉄,レンガ,酒など,より洗練された文明作りには欠かせないものを発達させていくのだ。Northlandでは,このように多岐に渡る職業を管理し,テクノロジツリーとにらめっこしながら,適当な人材を振り分けていくことが重要なのである

 戦闘システムもどこかRPG的なノリを持っており,個々の男性キャラクターに武器や防具,そしてポーションやアミュレットなどのアイテムを装備させて,攻め寄る敵と戦わせることができる。もちろん一般の職業のように訓練によって精兵化させることも可能だ。
 ミッションにはマップに合わせたさまざまなオブジェクトが用意されていて,拡張するに従って敵との争いが避けられなくなるし,近郊の村との交易ルートの護衛や人質の救出などもある。このようなマップに散りばめられたクエストは,NorthlandをRPGやアドベンチャーのようなエピック物のストーリーに仕立てあげているのである。
 このアドベンチャーゲームのエッセンスはNorthlandではとくに強調されているようで,マジックアイテムが入ったチェスト(宝箱)があったり,話しかけて来るNPCから新しいクエストがもらえたりもする。さらにはダンジョンなどもあるので,通常のRTSとはずいぶんと異なる雰囲気になっている。

 グラフィックスはCultures 2のエンジンを向上されたもので,地形には3Dを,キャラクターや施設のアートは2Dを用いることで,細かいアニメーションが失われていない。突然雨や雪が降り出すといったような気象効果のほか,幽霊キャラクターなども見物だ。気象効果は,農耕や環境にはほとんど影響がなく,カラフルなグラフィックスに花を添える程度のものであるので安心だ。
 シングルプレイヤーモードでは,八つのメインミッションに加えて,キャンペーンとは関係ない個別シナリオが八つ用意されている。Culturesシリーズにはマルチプレイヤーモードもあり,NorthlandでもLANやインターネットで最大6人でのチーム対戦が行えるようになっている。ミッションも6種類も用意されているので,ボリューム感も抜群だ。

 Northlandは,テクノロジツリーの進化が村人の職業選択やその後の発展に良い形で連結しており,Culturesシリーズをプレイしたことのない人には新鮮に感じられるかもしれない。
 良い意味でCulturesシリーズのゲームプレイやシステムを受け継いでおり,通常のRTSや建設シムにあきかけたプレイヤーにはオススメの1作といえる。日本での発売予定は今のところないが,すでにヨーロッパでは発売されており,アメリカでも1月中旬にリリースされる見込みになっている。低価格に設定されているので,英語版でNorthlandを試してみるのもいいだろう。

*ゲーム画面はすべて開発中のものです。また,本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

Northland Copyright c 2003 GMX Media, Funatics Software