― レビュー ―

自由度の高い成長システム

 

 これまでの連載では,「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」(以下,SWG)が"スター・ウォーズのゲーム"であることから興味を持ったMMORPGの入門者に向けて,ゲーム内要素の紹介を行ってきた。連載後半では視点を変えて,MMORPGの経験者が気になる部分を中心に,この作品を解説していきたい。

 

スター・ウォーズらしさ

 

 「スターウォーズの世界を舞台としたMMORPG」と聞いたとき,カジュアルなゲーマーならば「あの世界で遊べるなんてスゴイ!」と思うことだろう。しかし,熟練ゲーマーが初めて耳にしたときに抱く印象は,もっとネガティブなものだと想像される。

 

・いわゆる原作もののゲームはヤバい

・スター・ウォーズでMMORPGにできる要素は薄いはずだ

・結局はプレイヤー全員がジェダイにでもなるのか?

 

 ……思えば我々ゲーマーは,これまで原作もののゲームにさんざん泣かされてきた。そのため,原作付きのゲームにこのような印象を持たされてしまうのも至極自然なことのように思われる。実際に筆者も,ある程度の事前調査は行っていたものの,前述のようなネガティブ意識を持ってSWGをプレイし始めた。やってみたところMMORPGとして非常に興味深いゲームであることが分かり,好奇心を刺激されのめり込んだ。

 

 深く知っていくたびに,この作品が"手っ取り早く儲けるために,テキトウに組み上げたようなゲームではない"ことが分かってくる。"スター・ウォーズ世界での生活とはどんなものか"を想像し,雰囲気や設定をできるだけ損なわないように注意しつつ,うまくMMORPGとして仕上げているのだ。とくに強調したいのは,これまでに見たことのない,実験的ともいえる新アイデアがふんだんに盛り込まれていることだ。「エバークエスト」(EQ)の成功の味を知っているSOEのやることだから,手堅くSW風味のEQを作るのだろうと甘く考えていたが,そうではなかった。
 ゲームの作り手達は,"SWの手堅く無難な"MMORPGを作ることを期待されていたはずだ。しかし彼らはそれではつまらないと,これまでに見たことのないゲームを作り上げた。そんな新しいものを見せられたとき,おそらくゲーマーは感動する。この気持ちを味わいたいがために,コアゲーマーは本物の最先端のゲームをプレイし続ける。

 

 本物の最先端を求めるコアプレイヤーにとって,SWGはそんなドキドキできるエッセンスを持ったタイトルだったのである。

 

 

キャラクターの成長の仕方

 

 MMORPGは,総合的な力量を表す"キャラクターレベル"を上げていく「レベルベース」の成長システムを持ったものと,細分化された"技能"それぞれを上げていく「スキルベース」の成長システムを持ったものの2種類に大別されるという見方がある。とはいえ筆者には,スキルベースのインプルーブメントシステムを持った著名なMMORPGは,「ウルティマオンライン」(UO)ぐらいしか思い浮かばない。SWGと同様に,フル3Dグラフィックスで作られているEQ,「ダーク・エイジ・オブ・キャメロット」(DAoC),「ファイナルファンタジーXI」(FFXI)などは,レベルベースの作品だ。
 ほとんどの人は,何となくSWGも同様にレベルベースだと想像することと思うが,それは誤りだ。SWGはどちらかというとUOに近い,スキルベースの成長システムを持ったタイトルである。

 

 プレイヤーキャラクターは戦闘や演奏などをすることで,その技能専用の経験値を獲得し,この経験値とスキルポイントを消費することでスキルを伸ばしていく。すべてのPCは250のスキルポイントを持っており,この範囲内であれば好きなスキルを自由に伸ばしていくことが可能だ。スキルは放棄することもできる。そのときは,放棄した分のスキルポイントが還ってくるので(経験値は還ってこない),スキルを変えることで,そのキャラクターをまったくスキル構成の異なったキャラクターに育て直すことも可能だ。

 職業の種類としては,基本的には6種類の初級職「スターティング・プロフェッション」と,25以上の上級職「アドバンスト・プロフェッション」が存在する。アドバンスト・プロフェッションになるには,指定されたいくつかのスターティング・プロフェッションスキルを獲得する必要がある。スターティング・プロフェッションは以下の6種類。

 

・アーティザン(職人系)
・ブローラー(格闘系)
・エンターティナー(芸人系)
・マークスマン(射撃系)
・メディック(医療系)
・スカウト(探索系)

 

 キャラクターメイキング時には,この中から一つを選択する。この選択は,一般的なMMORPGの最初のクラス選択とはまったく性質が違い,「まぁ,とりあえず一つ取っといてよ」ぐらいなもので,キャラクターの将来を決定するようなものではまったくない。やろうとすれば,ゲーム開始直後に初期スキルを放棄して,新しいものを習うことだってできる。SWGはクラスやスキルに縛られることのない,非常に自由度の高いゲームなのだ。

 

 プロフェッションとは,特定の方向性を持ったスキルの集まりのようなものだ。例えばブローラーというプロフェッションは,片手持ち武器のスキル,両手持ち武器のスキル,素手による戦闘のスキル,棒状武器のスキルという四つのスキルから成り立っている。ブローラーになれば,これらのスキルを鍛えていけるようになる(画像1参照)。各スキルブランチの上部に表示されているのが,そのスキルを4段めまで獲得するとなれる可能性が生まれるアドバンスト・プロフェッションだ。
 片手持ち武器のスキルを伸ばせばフェンサーに,棒状武器のスキルを伸ばせばパイクマンになれるという感じだ。アドバンスト・プロフェッションの中には,複数のスキルブランチを伸ばしたり,特定のスターティング・プロフェッションのマスターにならないと就けないものもある。例えばバウンティハンターになりたければ,スカウトのエクスプロレーションブランチを伸ばし切るほか,マークスマンのマスターになることが求められる(画像2参照)。

 

 

 スターティング・プロフェッションの中で,SWGならではのものがエンターティナーだ。彼らはダンスや演奏をすることで,戦いによって溜まっていく慢性的な疲労値や,薬では治せないダメージを治療できる。さらにアドバンスト・プロフェッションのミュージシャンやダンサーになれば,ほかのキャラクターの特定能力値を増加させることも可能になる。戦闘の最中にリアルタイムで治療したり能力値増強を施したりするわけではないので,"戦いの真横でダンサーが踊っている"みたいな不自然な状況にはならない。そんな場面はスタ・ーウォーズにはあり得ない。このあたりはスター・ウォーズらしさが守られているのだ。

 

 スキル獲得のために使用可能なスキルポイントの上限は250で,一つのアドバンスト・プロフェッションをマスターにするために必要なポイントは,92から169しかかからない。なのでうまく組み合わせれば,二つのプロフェッションを同時にマスターすることも可能だ。射撃系のプロフェッションを一つ伸ばしておけば,グループでのハンティングで足手まといになることはまずないので,それに生産系やエンターティナー系のプロフェッションを組み合わせるのがとりあえずはオススメだ。
 また,何もスキルは必ずしもマスターレベルまで上昇させる必要はない。基本的な回復を自前で行うためにメディックのスキルを部分的にとったり,生物資源の採取に必要なスカウトのノービススキルを保持していたりするプレイヤーは多い。

 

 中には「生産用には生産専用キャラクター,戦闘用には戦闘専用キャラクターを個別に作りたい」と考える人もいるかもしれない。SWGでは一つのサーバーに1アカウント1キャラクターしか作れないので,同じサーバーに二人のキャラクターを持ちたい場合は,アカウントを二つ確保する必要がある。通常は1アカウントでのプレイになると思われるので,やはり戦闘系と何かを組み合わせるのが良さそうだ。

 

 とはいえ,プレイの中でスキルをやりくりしていくうちに,どうしてももっとキャラクターが欲しいと思うことはある。戦闘用スキルを複数極めた戦闘専門のキャラクターを作りたくなったり,それをサポートするミュージシャンとダンサーを同時にマスターしたキャラが欲しくなったり,商売の規模を拡大したくてマーチャントスキルを伸ばしたキャラクターを別に用意したくなったり……。SWGの魅力にとりつかれ,2アカウント,3アカウント,もしくはそれ以上のアカウントを入手してしまったプレイヤーは,英語版においては決して少数でなかったことは付記しておこう。

 


■■星原昭典(ライター)■■
星の世界に帰ってきた星原氏は,SWGのアカウントを二つ所有している。一つはヒューマンで,できるだけ自分の顔に近づけられるようにメイキングしてあるらしい。もう一つは太ったアフリカ系女性のマスターミュージシャン・ダンサーで,PvP用に所有している。星原氏は非常にシャイなのでPAには入っておらず,自前でPvP用bufferが必要なのだそうだ。


→「スター・ウォーズ ギャラクシーズ完全日本語版」紹介記事は,「こちら」


※スター・ウォーズ ギャラクシーズ完全日本語版βテストの模様は,エレクトロニック・アーツ株式会社の承認を得て掲載しています

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