パーティプレイが命のMMORPG「Dungeons & Dragons Online」(以下,DDO)で,呪文の使えない劣等生パラディンが,どのようにみじめに生きていくかを綴った週刊連載記事「ダンジョン道中しょんぼり記」。
前回の冒険で得た経験により,私のパラディンは晴れてレベル2になった。ここで別のクラスを獲得する「マルチクラス」の選択肢も浮上するが,私に迷いはない。固い信念のもとパラディンのトレーナーを訪問し,パラディンとしてのレベルアップを頼んだ。トレーナーの「パラディン呪文を唱えるのにはWisdomが足りないが,よろしいかな?」という,ご丁寧な忠告に少々しょんぼりしたが,そこは自分で選んだ道である。
パラディンはレベル2に達すると,次の二つの特殊能力を得る。これからが本領発揮だ。
・Divine Grace(信仰の恩寵)
3種類すべてのセービングスローに,“Charisma修正値”に等しい値が上乗せされる
・Lay on hands(癒しの手)
(10+パラディンレベル)דCharisma修正値”分のHPを回復させる。アンデッドに対して使用すればダメージを与える
この時点で私の「Charisma」は17なので,“Charisma修正値”は3。つまり「Divine Grace」によってすべてのセービングスローは3アップし,また「Lay on hands」によって36のHPを回復させる能力を得たわけだ。私の今のHPは44なので,瀕死の状態であっても一瞬でほぼ全快できるのは素晴らしい。ただし1回の休憩ごとに1回しか使えないため,使いどころをよく考えなければならない。
今回は,Harborエリアから次のエリアであるMarketplaceにアクセス可能にするための橋渡しとなるクエスト,通称「Waterworks」に挑戦する。
・ヒーラーなし
ヒーラー,つまりクレリックもバードもいない。普通の感覚ではヒーラーなしでWaterworksに行くのは無謀だが,あえてチャレンジすることに。代用となる回復手段は,ポーションと私の「Lay on hands」である。だが何よりも,ダメージを受けないようにしながら進んでいく必要がある
・ローグのスニークアタック
今回の冒険で一番多く敵を倒していたのはFさんだった。ローグの特殊能力「スニークアタック」は,それくらい強力だ。ただし,スニークアタックは正面から敵の攻撃を受け止めるタンクとの連携が大事。その意味では今回の二人のタンク役,私とBさんもそれなりにがんばったということだろうか
・エルフのソーサラー
ソーサラーはSimple Weapon(単純武器)しか扱えないため,本来ロングボウは使えない。だがGさんはエルフという種族ボーナスで,ロングボウ,ショートボウ,ロングソード,レイピアを扱えるのである。エルフで魔法使いというのは,それぞれの長所を生かしやすくて,いい組み合わせなのだ。
○クエスト「Waterworks」
クエストは,Marketplaceへと繋がる門を守っている衛兵に話しかけるところから始まる。衛兵によると,港の長官であるZinの許可がないと門は通せないという
「Waterworks」は,ほどほどの難度と多めの経験値,そして魅力的な固定報酬で人気のクエストだ。ゲーム内では「WW」と略されることが多く,グループメンバー募集のボードでは常にWWに関するものを見かける。
ちなみに「Waterworks」というのは俗称(というかエリア名)で,正式なクエスト名称ではない。実際には「The Harbormaster's Seal」と「The Lost Seekers」という二つのクエストから成り立っている。この二つのクエストが発生するタイミングはほぼ同時だが,「The Harbormaster's Seal」は一度しか発生しない。一方の「The Lost Seekers」は何度でも挑戦可能だ。
このクエストは,Waterworksにある四つのダンジョン(便宜上,パート1 〜 パート4とする)を順に攻略していくという形式になっている。「The Harbormaster's Seal」はパート2までクリアすれば達成できるのだが,普通は最後に固定報酬が待っている「The Lost Seekers」の達成を目指して,パート4まで続けるものだ。
港の長官Zinに会いに行くと,「Waterworksの中にいるGuard Temberから,Writ of Commendation(推薦状)を受け取ってくれば,それに私の印を押して門を通れるようにしてあげよう」と言われる。これが「The Harbormaster's Seal」クエストだ。
Waterworksのダンジョン入り口に立っているGuard Aglerに話を聞くと,Guard Temberがどのあたりにいるかについて,さらに詳しい情報が得られる。ここで受けるクエスト「Gone Missing」は,単にGuard Temberに会うためのつなぎの役割をするクエストだ。Guard Temberに会って話を聞くと,彼の従兄弟2人が行方不明で,連れ戻してくれれば推薦状を与えようという話になる。それが「The Lost Seekers」クエストだ。
従兄弟2人のうち,Arlosを救出するミッションがパート1とパート2だ。Arlosの救出に成功すればGuard Temberは推薦状を書いてくれる。この推薦状をZinのところへ持っていけば,Marketplaceへの通行許可が得られる。
一方,もう1人の従兄弟であるVennは,さらに別の場所に囚われているらしい。それを探しに行くのがパート3とパート4だ。ここで目にすることになる秘密の言葉「Seal of Shan to kor」は,Marketplaceでプレイヤーをさらなる冒険へと駆り立てることになる。
さて,私達のパーティはヒーラーなしで,この大規模クエストに挑むのだ。そこでメンバーそれぞれ回復ポーションを大量に買い込んでからダンジョンに潜ろうという話になったのだが,ポーションを六つ買ったら,私はもうほぼ無一文になってしまった。とほほ。
私達パーティの今回の作戦は,二人のタンク(私とBさん)が盾となって敵の攻撃を受け止める一方,二人のローグ(FさんとHさん)がスニークアタックを駆使して敵を倒していくというもの。いざ冒険が始まってみると,重視してポイントを振っておいた「Intimidate」(威圧。敵の注意を引き付ける)技能が,なかなか役に立ったような気がする。
そこにAさんとGさんの魔法使いによる効果的な後方支援が加わって,思いのほか冒険は順調に進んだ。いいタイミングで「Rest Shrine」を使えたのも良かったと思われる。約2時間にわたる冒険の末,私達は無事,地上に戻ってきたのだ。
ヒーラーなしで,Waterworksを通してクリアできたことに喜ぶパーティ。今回良かった点はなんだったのか,さまざまな意見が出た。スニークアタックの強さ,Enfeeble効果付きロングボウの凄さ,サソリの貢献などなど。
だが,なんといっても一番の勝因は,私のパラディンの「善のオーラ」だと心の奥底で確信していた。善のオーラが,皆の命を最後まで守り通したのだ。もっとも,皆の注目はGさんのEnfeeble効果付きロングボウにすっかり集中しており,善のオーラの貢献については誰一人言及しなかった。いつか誰かが言い出してくれるのではとドキドキしながら期待していた私の顔は,次第にしょんぼりしていったのであった。