― 不定期連載 ―
Text by 川崎 政一郎
 

「ギルド ウォーズ」は,かつてBlizzard Entertainmentに属していたスタッフが起業した「Arena.Net」のデビュー作となるオンラインRPGである。海外版の販売実績は,2005年4月の発売から半年間で100万本を記録したヒット作品だ。また本誌でも,週刊連載などで早くから紹介してきたのをご存じの読者もいることだろう。そのギルド ウォーズの日本語ローカライズ版が,2006年1月20日に満を持して発売されることとなった。本誌では,これから日本語版の発売に向け,計3回に分けて本作の魅力を余すところなくお伝えしていきたい。オンラインRPGに少しでも関心のある人は,騙されたと思って最後まで目を通してみてほしい。本作がいかに注目すべき作品か,きっとお分かりいただけるはずだ。

 

本作を制作したArena.Netは,かつてBlizzardで「Diablo2」などに携わったメンバーを中心に結成された。その輝かしい経歴にまったく恥じないだけの出来映えだ
斬新ではあるがよく練り込まれたシステムの数々は,過去のアクションRPGをやりこんだプレイヤーから高い評価を受けている

 ギルド ウォーズのゲームジャンルは,3DタイプのアクションRPGに該当する。このジャンルには数え切れないほどたくさんの作品があるが,その多くが似たり寄ったりだと感じている読者もいるだろう。しかし,ギルド ウォーズにはほかのタイトルにはない革新的なアイデアが,これでもかというくらいにぎっしりと詰め込まれているのだ。
 
 本作の何がすごいのかというと,ありとあらゆるシステムを戦闘のために整え,それ以外の煩わしさを感じさせる要素は,ばっさりと切り捨てたという基本コンセプトである。例えば,移動に関して。キャラクターが一度でも訪れたことのある街や村へは,いつでも瞬時に移動できる。そのため狩場への移動やクエストで何十分もかけて走るようなことはなく,直ちに戦闘を始められるのだ。
 
 冒険中は,非戦闘時の体力回復が非常に速く,まとまった休息時間を設ける必要はない。しかも,アクションRPGであるにもかかわらずポーションといった回復薬はなく,消耗品の類もほとんど登場しない。従来のアクションRPGではありがちだった,えんえんと攻撃を続けながら回復用ポーションをがぶ飲みするというような単調なプレイスタイルではないのだ。そして消耗品が少ないということは,冒険前の準備作業が不要で,いつでも手軽に遊べることも意味する。
 
 すべての拠点エリアに用意されたAIの傭兵システムも大きな特徴だ。本作の冒険では,最大で8名のパーティを編成できるが,傭兵を活用すればメンバー集めに悩むことはない。しかもAIがそれなりに賢いので,自分以外は全員傭兵というパーティ編成でも,ほぼ問題なくプレイできるのだ。その結果,キャラクターがどの場所にいようとも,ゲーム開始後1分足らずで,目的とする場所での戦闘を始められる。
 そしてこれらの冒険は,部外者のプレイヤーは立ち入ることのできない,俗にいうプライベートエリアで行われる。よって,他人に獲物を横取りされたり,プレイヤーキルといった望ましくない干渉は一切受けない。それでいて拠点エリアに限っては,たくさんの人々が行き交うMMOのような形式となっているのだ。このMOとMMOのよいところだけを抜き出したシステムは,実に快適で,次世代RPGの筆頭と噂される「Hellgate:London」なども同様の方式を取っている。
 以上の要素一つ一つが,「テンポのよい戦闘」という目的に向けて整えられているのが分かっていただけると思う。本作ではゲーム中の大半の時間が,アクション性の高い戦闘で占められている。そして,戦闘以外のシステムが簡略化されていながらも,ゲームのキモとなる戦闘面の面白さはまったく損なわれず,むしろそこに集中できる作りになっている。
 
一度でも到達した拠点エリアへは,いつでもマップ画面からワンクリックで移動可能。戦闘以外を捨て去った潔い作りである 本作の3Dグラフィックスは,個人的に陰影の付け方が絶品と思う。しかも単純に美しいだけではなく,低スペックなマシンでもサクサク動くのである これらの独創的なシステムが組み合わさることで,本作のプレイは非常にテンポがよく,余計なストレスを感じさせない作りになっているのだ
 
 
ギルド ウォーズはいくつもの新しい要素を,絶妙なバランスで整えたアクションRPG。ゲームをしていれば,隅々まで考えられたシステムに思わず唸ってしまうこと請け合いである
 ギルド ウォーズには戦闘に特化した設計のほかに,もう一つ,革新的なアイデアがある。それは,RPGモードとPvPモードの存在だ。本作のRPGモードとは,「ミッション」と呼ばれるメインストーリーを軸に冒険を行うプレイスタイル。そしてもう一方のPvPモードは,4〜8名によって構成されるチーム同士が,さまざまなルールの下で対人戦を繰り広げるプレイスタイルとなる。
 本作がすごいのはここからだ。まず,PvPモードを行う際は,ゲーム中の最高レベルであるレベル20のキャラクターを,いきなり最初から作成できる。また,全部で約480前後あるスキルや,武具やマジック効果の類もある程度は選べる。つまり,ひたすら時間の掛かるレベル上げ作業を行わずとも,ある程度実戦的なキャラクターをカスタマイズ作成し,すぐに対人戦に投入できるわけだ。
 
スキル封印解除は主にRPGモードで行われる。RPGモードは世界中を股に掛けるクエストを軸に進む。こういったムービーシーンがゲーム本編にシームレスに挿入される
 ただし,すべてのスキルやアイテムなどを,最初からカスタマイズで選択できるわけではない。例えばPvP用キャラクターの作成時に最初から選択できるスキル数は100にも満たない。では,どうするのかというと,別途RPGモードを進めることで,新たなスキルなどの「封印解除」を行う。すると,それ以降はPvPモードのキャラクター作成時にも,解除済み項目をカスタマイズで選べるようになるのだ。
 この「解除」はかなり独特なシステムだが,例えば「マジック・ザ・ギャザリング」などのカードゲームをイメージしてもらうと分かりやすいかもしれない。初期段階をたとえるならば「スターターキット」だけが手元にある状態で,とりあえず基本的な対人戦だけは行える。そしてスキルの解除とは,「ブースターパック」を追加購入するようなもので,それによってカード,すなわち戦術の幅が広がるというわけだ。
 どの項目を解除したかという情報が,キャラクターではなくアカウント単位で管理されているというのがポイントである。つまり,二人目,三人目として別のキャラクターをPvPモードで作成する場合には,RPGモードで作ったキャラクターの成果によって選択できる要素が増えていくのだ(PvPモードのみでもスキルの封印解除は可能だが)。
 
一度の冒険に持ち出せるスキルはたったの8個しかない。状況に対応したコンセプトを考えねばならないものの,その戦術が見事に決まった瞬間は格別である
 また,先ほどスキルの合計が約480種と書いたが,実際にはこれも相当な密度がある。なぜかというと,これらには,例えば"ヒール1,ヒール2,ヒール3"などといった,数値の大小だけの違いは含まれていないのだ。回復系のスキル一つを取っても,それぞれ方向性の微妙に異なるものがなんと15種類以上もあるのだ。しかもスキル効果の大小を決めるシステムも,それとはまた別に用意されている。
 そして,きわめつけなのが,ここまで幅広いカスタマイズの可能性が用意されていながらも,冒険時に持ち出せるスキル数は,たったの8個に限られているということだ。そのため,あるときはRPGモードでモンスターを手際よく倒すために,またあるときはPvPモードで仲間との連携を図るために,持っていくスキル構成を悩みに悩み抜くことになる。本作でのスキルなどのバランスは,いうならば上質の対戦格闘ゲームにおけるそれと同じで,極端に有効な組み合わせは存在しない。十人十色どころか,仮に100人のプレイヤーをピックアップしても,まったく同じ組み合わせのスキル構成というのはほとんどないだろう。本作のバランスは,それほどまでの高水準でまとまり,そして個性的なプレイが可能となっている。
 
 

 
キャラクター作成時に決めるジョブはメイン用のみ。RPGモードは,サブ用のジョブを決めるあたりまでが基本システムを理解するためのチュートリアルのようになっている
 それでは次に,実際のゲームがどのような流れで進んでいくのかを,RPGモードを用いて紹介していこう。まずキャラクターメイキングだが,本作では6種類ある「ジョブ」の中から,最初にメイン用のものを選ぶ。そしてゲームの序盤で,サブ用のジョブを追加する流れだ。メインおよびサブジョブの組み合わせは30通りになる。最初に各ジョブの特性をざっと説明しておこう。
 
●ウォーリア 
 剣,斧,ハンマーといった近接武器の扱いに秀でたジョブ。同じ近接武器といえども,例えば,剣はダメージ強化スキルが多く,斧は状態異常を引き起こす,ハンマーはノックダウンさせるといった違いがある。これはほかのジョブにもいえることだが,専攻したスキル構成によって最前線で敵を食い止めるタンク役や,間断なくダメージを与え続けるアタッカー役などといった,さまざまな立ち回りが可能だ。
 
●レンジャー 
 弓を用いた遠隔攻撃を得意とするジョブ。安全な位置から一方的にダメージを与え続けることが可能で,しかも本作では矢弾を消耗しないため扱いやすい。いろいろなタイプの矢を発射するのはもちろんのこと,ペットを使役してともに戦ったり,トラップを設置して敵を引き込むこともできる。敵にとって想定外のパターンから攻めていけるのがレンジャーの醍醐味だ。
 
●モンク 
 仲間を癒し,そして守るためのサポート用スキルがぎっしりと詰まったジョブ。本作のモンクは,単純にヘルスを回復するだけでなく,状態異常から回復させたり,被ダメージを予測して未然に防いだりと,全ジョブ中もっとも忙しいジョブだ。しかも,サポート役であるにもかかわらず,攻撃関連に特化するようなプレイスタイルも選べる。
 
●メスマー 
 メスマーとはMesmerism,つまり敵に催眠術を仕掛けたり弱体させることを得意とするジョブ。敵のスキル使用を阻害したり,速度を遅くしたりといった,間接的な方法で戦闘を有利な展開に持っていくのだ。モンクが防御的なサポートであるのに対し,メスマーはいわば攻撃的なサポートに秀でたジョブといえよう。直接大ダメージを与えるのは苦手だが,キャスタータイプの敵に対しては最高のアンチジョブである。
 
●ネクロマンサー 
 死霊術師の名のとおり,数々のダークサイドな技に精通したジョブ。敵味方関係なく死体からゾンビを召還したり,敵には呪いを掛けたりといった,我々の期待どおりの活躍をしてくれる。ただしネクロマンサー用スキルの多くは,使用時に自らのヘルスを犠牲とするため,ほかのジョブと比べて全体的にアクが強い印象だ。
 
●エレメンタリスト 
 自然界にある四大元素の力を引き出し,主として攻撃用途で活用できるジョブ。エレメンタリストのスキルは火,水,土,風の四系統に大別でき,それぞれ異なった性質が反映されているのが面白い。それらの中でも範囲系の攻撃分野に関してはほかのジョブを圧倒しており,消費MPは多いものの強烈なダメージを続々と叩き出していくのだ。

頭上に緑色の「!」マークの付いたNPCは,クエストなどで何らかの関連がある。見かけたらとりあえず話しかけてみよう
 RPGモードの最初の舞台となるのは「城塞都市アスカロン」。キャラクター作成後しばらくの間は,ここを拠点にしながら周囲のエリアを探索して,クエストをこなすという展開となる。
 本作では,クエストを遂行しやすくするためのシステムも用意されている。クエストを依頼するNPCの頭上に緑色の「!」マークが点灯していたり,目的の場所/NPCがいる位置/方向をミニマップ上で星印/矢印で示してくれていることなどが例として挙げられるが,これらの機能のおかげで,クエストNPCを探し回ったりすることがまったくない。また,クエストログもきわめて親切な設計になっているので,「いま何をすればよいのか」で悩むことなど,まさに皆無だ。また,そのエリア内のルートを記録する(エリアを変えるとリセットされる)機能もあり,非常に快適にプレイできるのも特筆すべき点といえよう。
 
遂行中のクエストは,次の目標を明確に指定されており,いつでも確認できるので,次に何を行うべきか迷うことはない
 クエストは,ミッションに直接関係ないエリアへ誘導するという意味もあるようで,クエストをクリアしていくだけでティリア全土を訪れられるようになっている。このクエストの報酬には,スキルが習得できるものもあるので,少しずつクリアしながら進むのがよい。スキル獲得のペースはそれなり速く,プレイ開始から数時間で,8個あるスロットに入りきらなくなってしまう。よって,このあたりからスキル構成を選ぶ必要が生じ,キャラクターの個性が芽生えてくるというわけだ。
 普通にプレイしていくと,サブジョブの習得までに少なくとも2〜3時間は掛かるが,この間はチュートリアルのようなものだ。このあたりでは強力なモンスターも出現せず,本作のユニークなシステムの数々を,すんなりと理解させてくれるようになっている。そしてサブジョブ取得後に,RPGモードの軸となるミッションへと続く。
 次回は,序盤から激動の展開を見せるミッション本編や,本作のキャラクター育成システムなどを紹介していこう。
 
場合によってはクエスト時の報酬としてスキルを習得できることも。このタイプのクエストは優先して行うのがよいだろう 各クエストの進行状況は一覧ウィンドウで確認できる。しかも画面右上のミニマップは,目的地が星印で示されるという親切設計だ 移動したルートは,ミニマップ上に記録されて随時確認できる。クエストの目的地やNPCを探しやすい
 
チュートリアルでの大きな目的はサブジョブを取得すること。どの組み合わせでも,バランスはそれなりに成り立っているのでご心配なく サブジョブの取得後は,いよいよRPGモードのメインストーリーであるミッションが開始できる。次回の記事でたっぷりと紹介していくのでお楽しみに ギルドバトルなどでは,全世界のプレイヤーが参加する可能性がある。英語が話せれば,さらに世界が広がるだろう(画面は英語版)

タイトル ギルド ウォーズ
開発元 ArenaNet 発売元 エヌ・シー・ジャパン
発売日 2006/01/27 価格 オープンプライス(パッケージ版) / 月額課金料金980円
 
動作環境 Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(PentiumIII/1.0GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上推奨),HDD空き容量 500MB以上,VRAM 32MB以上(64MB以上推奨)

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