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人間とヴァンパイアが対立するMMORPG「ダークエデン」開発者インタビュー

Text by 麻生ちはや 

 「ダークエデン」は,「ヴァンパイア」と「スレイヤー」の2種族に分かれて勢力を争うMMORPGである。韓国では2002年から正式サービスが開始されており,日本では現在ゲームポータルサイトの「ネットマーブル」上で,ネットマーブル会員なら誰でも参加できる「フリークローズドβテスト」が行われているが(2005年11月21日現在),これは事実上のオープンβテストと解釈してもよさそうだ。
 本作は,かつての強大な力を取り戻したいヴァンパイアと,それを防ぐべく戦うスレイヤー,この2種族の対立を描いたPvP要素が強いMMORPGだ。

SOFTON Entertainment
Kim, Gun-Woo氏

人間であるスレイヤーは,ヴァンパイアに「吸血」されて6時間以内に治療を受けないと,ヴァンパイアになってしまう。また,逆にヴァンパイアがスレイヤーになる方法もあり,つまり一つのキャラクターでヴァンパイアとスレイヤーの両方を楽しめる。ヴァンパイアはレベル制,スレイヤーはスキル制と育成方法が異なるなど,本作には従来のMMOにはあまり見られない個性的な部分も多い。

 このたび,開発元であるSOFTON Entertainment社CTOのKim, Gun-Woo氏が来日したので,ダークエデンの開発コンセプトや注目ポイント,今後のサービス展開スケジュールなどを伺った。

対立する人間とヴァンパイア,どちらでもプレイ可能

4Gamer(以下,4G)
 まずは「ダークエデン」開発のきっかけと,コンセプトについて教えてください。

Kim, Gun-Woo氏
 私ももともとはプレイヤーの立場でした。しかし当時のMMORPGは単純な内容のものが多く,もっと複雑でヘビーゲーマーでも楽しめるタイトルが欲しいと思っていたんですね。「モンスターとひたすら戦うだけでは,すぐに飽きてしまうだろう。PvP要素を持つゲームをプレイしたい」と感じたのが,開発のきっかけになっています。

4G
 「複雑なMMORPG」というのがコンセプトだったわけですか。

Kim, Gun-Woo氏
 はい。複雑な設定を求めて作ったダークエデンですが,2000年に韓国でクローズドβサービスを開始したときには,職業選択や武器の種類が豊富すぎて,どれを選んだらよいのか分かりにくいし,難しすぎるという声も上がりました。また成長過程やスキルが異なる2種族の存在など,プレイヤーの皆さんに理解してもらうまでには苦労しました。

4G
 それでは,実際のゲーム内容について聞いていきます。2種族間の争いがテーマなわけですよね。

Kim, Gun-Woo氏
 ダークエデンには,ヴァンパイアとスレイヤー(人間)という,プレイアブルな2種族がいて,ヴァンパイアには「吸血」という特別なスキルを持たせています。こういうユニークなスキルを持ったキャラクターを作りたいというコンセプトも,開発スタート時にありました。

4G
 2種族について,どちらかが主役という設定はありますか?

Kim, Gun-Woo氏
 主役というか,シナリオそのものが「ヴァンパイアが元の力を取り戻すためにスレイヤーの世界に近づいてきた……スレイヤーは自分達を守るために立ち上がる」というものなので,どっちかが主役ということはないですね。両方がメインキャラだと思ってください。

4G
 なるほど。実はクローズドβ開始と同時にプレイしたのですが,新規キャラクター作成時にスレイヤーしか選択できませんでしたね。最初は誰もがスレイヤーからスタートするものなのですか?

Kim, Gun-Woo氏
 実はこの2種族に関しては,ゲーム内で数のバランス調整を行っています。というのも,ヴァンパイアは基本能力値がスレイヤーよりも高くて強力ですから,どうしてもヴァンパイアで始めたいと思うプレイヤーが多くなりがちです。序盤からPvPもできるので,いきなりヴァンパイアからは始められないように制限をかけているんです。

4G
 あれはクローズドβテストだけの制限で,正式サービス以降はプレイヤーが好きな種族を選べるようになるのでしょうか?

Kim, Gun-Woo氏
 基本的にはオープンβでも正式サービス後でも,初期キャラクターはスレイヤーしか選べません。スレイヤーにはスレイヤーの良さがありますから,まずはスレイヤーでゲームを始めてもらって,その良さを分かってもらえればと思います。ただし,その後スレイヤーが多くなりすぎれば,バランス調整のために新規キャラでもヴァンパイアを選べるように変更が入ります。そういう意味では,かなり流動的ですね。

4G
 ちなみに韓国ではどちらの人気が高いですか?

Kim, Gun-Woo氏
 数としてはスレイヤーのほうが多いですね。スレイヤーはスキルの種類が多いため,役割分担を決めてのパーティプレイが楽しめます。対してヴァンパイアは能力が高いため,ソロプレイがほとんどのようです。

4G
 二つの種族の育成についてですが,ヴァンパイアはレベル制でスレイヤーはスキル制と,まったく違う育て方を導入していますね。なぜこのようなシステムにされたのでしょう。

Kim, Gun-Woo氏
 これは,一つのゲーム内で二つのゲームをプレイしているかのような体験をしてほしくて取り入れました。異なる種族なのだから,成長方法が違っても不思議ではないと思いますし。レベル制とスキル制,自分に合った育て方の種族を選ぶのも良いでしょう。

4G
 スキル制とレベル制で,実際の遊び方に変化は出るのでしょうか?

Kim, Gun-Woo氏
 スキル制は,スキルを使えば使うほど習熟度が上がるので,ある意味どこでも育成可能です。これに対し,レベル制はモンスターを相手にしなければ成長できません。序盤はヴァンパイアのほうが圧倒的にレベルを上げやすいんですが,後半の高レベルになればなるほど,ヴァンパイアは経験値を稼ぐのがつらくなってきます。

4G
 「やっぱりヴァンパイアになってみたい」と,ある程度育てたスレイヤーをヴァンパイアに変えた場合,それまでの経験値や覚えたスキルは,リセットされてしまいますか?

Kim, Gun-Woo氏
 いいえ。経験値,能力値,スキルは種族が変わると使えませんが,失うことはありません。一度ヴァンパイアになってからスレイヤーに戻っても,かつて覚えたスキルは一から覚え直すわけではなく,修練したところから再スタートという形になります。もちろん,ヴァンパイアになっている時期に覚えた能力/スキルも同様ですね。武器や防具は強制的に外されますが,インベントリに空きがあれば自動的に収まりますし,有料のアイテム保管箱もあります。

4G
 「ヴァンパイア」には何か特別なデメリットがありますか? 昼間は弱くなるとか,行動に制限がかかるとか。

Kim, Gun-Woo氏
 ヴァンパイアは昼に弱くなるのではなく,夜になるとさらに能力が上がって強くなるんですよ。制限もとくにないので,だからこそ魅力的であるといえるでしょう。なお,ヴァンパイアの特徴としてコウモリやウルフに変身できるというものがありますが,コウモリになると移動速度が速くなる半面,すべての装備が外れてしまい戦闘はできません。ウルフの場合は移動が少し速くなり,戦闘も可能です。

4G
 ヴァンパイアになると,何だかいいことずくめに聞こえますね。ところでスレイヤー側には,「バイク」という乗り物がありますね。あれはどういったものですか?

Kim, Gun-Woo氏
 バイクは,先ほどのヴァンパイアのコウモリと同じような扱いで,移動速度が速くなりますが,戦闘はできなくなります。ただ例外として,バイク使用中に戦える「スキル」を覚えられます。今はカラーを変えられるだけで,これといってカスタマイズはないんですけど,ファッションアイテムとしては重要みたいですよ。

人間vs.ヴァンパイアの大規模戦闘と12の城

4G
 ヴァンパイア対スレイヤーという設定を生かして,いわゆるRvRのような大規模戦闘は用意されていますか?

Kim, Gun-Woo氏
 もちろんあります。まず前提として,他種族を殺すと「名声値」がモンスター相手よりも多く得られるんです。この名声値が上がると「階級」が上がり,階級に伴う「階級スキル」が使用できるようになるため,上級スキルを使いたければPKは必須になりますね。逆に同じ種族をPKすると,ペナルティとして「成功値」というものが下がります。

4G
 PK自体が本作の基本テーマとしてあるわけですね。

Kim, Gun-Woo氏
 はい。大規模戦闘として,攻城戦が用意されています。ダークエデンの世界には,いくつかの城が存在しており,城には2冊の「血の聖書」というものが置かれています。城をどちらかの種族が攻め落とすと,その聖書が持つ力の影響が種族全体に及び,能力値が上がるようになります。片方の種族が城を数多く押さえていれば,当然能力値は相手側より大きくリードできるわけです。
 ちなみにこの聖書はダークエデンの世界観と深く関わっていて,"12冊の聖書を集めると,どこかにあるといわれている13冊めの聖書が現れ,13冊すべてを揃えれば「ヴァンパイアの母」が蘇り,さらに「エデンの扉」が開かれる"というバックストーリーになっています。

4G
 一つの城に2冊の聖書ということは,城は全部で六つなんですね。

Kim, Gun-Woo氏
 城の数は,ヴァンパイアとスレイヤーの数や勢力によってバランス調整をしていますので,六つとは限りません。プレイヤー数が増えれば城も増えますし,場合によっては減ることもありえます。韓国では今のところスレイヤー側が優勢ですね。

4G
 13冊めの聖書とエデンの扉は既に実装済みなんでしょうか?

Kim, Gun-Woo氏
 残念ながら13冊めは現在は未実装でして,どちらかの種族が12冊すべてを手に入れたとしても13冊めは登場しません……。これは物語の最終段階に影響する要素でもあるため,導入は今後,タイミングを見計らってということになります。

日本では今後どのように展開していくか

4G
 今後のサービス予定,アップデート情報,課金システムなどを教えてください。

Kim, Gun-Woo氏
 すべてはプレイヤーさんの反応次第なのですが……。順調にテストが進んだとして,オープンβはクローズドβ終了から2週間以内を,正式サービスは1か月以内を予定しています。今はまだプレイヤー数を増やし,認知度を上げることを優先させています。
 課金については,基本無料のアイテム課金を考えています。韓国では月額料金に加えて,経験値がほかのマップより多く得られる有料ゾーンなども用意していますが,日本ではアイテム課金となりそうですね。

4G
 MMORPGとしては後発組になりますが,うちのタイトルはヨソとはここが違う! と,自信を持ってオススメできるポイントはどこでしょう?

Kim, Gun-Woo氏
 はい,「テクニカル」「コンテンツ」「サービス」の三つの面で,ほかより強いといえる部分があります。まず「テクニカル」ですが,ダークエデンはグラフィックスの負荷も少なく,快適な環境でのプレイをお約束できます。次に「コンテンツ」でいえば,数あるMMORPGの中でもRvRシステムを比較的早く導入していますし,ゲーム内で受けられるクエストはソロプレイだけでなく,パーティプレイ推奨のものも数多く用意しました。また,スキルとアイテムの数はかなり豊富ですから,プレイヤーそれぞれで組み合わせる楽しみがあるでしょう。最後に「サービス」ですが,韓国では正式サービスを開始してからのこの5年間,ファンの要望に合わせて常に仕様を変えてきています。これからもダークエデンを長く楽しめるように,ファンの声を汲み上げ,常にアフターサービスを行っていく方針でいきます。

4G
 日本でサービスを行うにあたって,日本独自の仕様,特別キャンペーンなどの導入は検討していますか?

Kim, Gun-Woo氏
 キャンペーンに関しては,CJインターネットジャパンと現在話し合っている最中です。和風のマップ,モンスター,アイテムを随時入れていきたいですね。期間限定のイベントアイテムで,日本らしいアイテムを出すという方法もありますし。ヴァンパイアが出てくる時点でヨーロッパ風の雰囲気ではありますが,実はすでにカタナを使うモンスターなどがいますし,アイテムとして「ハヤブサ」「アマテラス」といった武器が存在しています。

4G
 SOFTONとして保持するタイトルは現在ダークエデンのみですが,ほかのタイトルの開発予定はありますか。

Kim, Gun-Woo氏
 実は「ダークエデン2」がありまして……。

4G
 可能な範囲で,ぜひダークエデン2について教えてください。

Kim, Gun-Woo氏
 まだまだ開発は序盤ですが,グラフィックスはフル3Dとなり,基本テーマがゴシックホラーというのは変わりません。ダークエデンの良い部分を生かして,さらに改善/発展したバージョンにしていきたいです。イメージ的には……プレイステーションのタイトルである「バイオハザード」と「真・三國無双」を足して割ったようなものを目指してます。

4G
 バイオハザードと真・三國無双……!?

Kim, Gun-Woo氏
 つまりホラー要素はバイオハザードを目指し,アクション性の部分は真・三國無双をお手本として,ということです。あくまでMMORPGですけどね。

4G
 面白そうですねえ,いつごろお目にかかれますかね?

Kim, Gun-Woo氏
 ダークエデンが日本で成功したらすぐですよ(笑)。と言いたいところですが,まだ公表できるものは何もないのです。

4G
 ちなみに,ダークエデンが最もライバル視しているタイトルはなんですか?

Kim, Gun-Woo氏
 「ラグナロクオンライン」です! あ,ライバルといってもラグナロクオンラインの路線を狙うという意味ではなくて,あれぐらいのビッグタイトルになりたいという願望ですよ。

4G
 最後に,βテスト参加者と,これからダークエデンをプレイしたいと思っている人に,メッセージをお願いいたします。

Kim, Gun-Woo氏
 ダークエデンは設定が複雑で,少しハードルが高いゲームかもしれませんが,サービス面にとくに力を入れて日本のプレイヤーのためにがんばります。皆様,どうか愛情を持ってダークエデンを見守り,そして私達を信じて,ぜひともプレイしてみてください。

4G
 ありがとうございました。

 どちらかといえば可愛らしさ,萌え要素が受けやすい日本市場において,ゴシックホラーMMORPGというジャンルが,果たしてどこまで受け入れられるのだろうか。だが,一つのゲームでスキル制とレベル制の両方が楽しめたり,1キャラクターで異なる種族間を行き来できるといったシステムは,とても意欲的でユニークと評価できる。長くプレイするとどうしても飽きを感じやすいMMORPGにとって,キャラクターを一から育て直さなくても違う遊び方ができるというのは,魅力的なシステムではないだろうか。
 ユーザーサポートの手厚さを強調するなど,ファンと一緒にゲームを作り上げていきたいという意気込みは非常に熱いものが感じられた。昨今はMMORPGの新タイトルが百花繚乱という感じで,一つ一つ試すだけでも大変な数だが,変わり種を求めている人はダークエデンにチャレンジしてみてはどうだろうか。

 

タイトル ダークエデン
開発元 SOFTON.,Ltd 発売元 CJインターネットジャパン
発売日 2006/02/16 価格 基本プレイ料金無料(アイテム課金)
 
動作環境 対応OS:Windows Me/2000/XP,Pentium III 600MHz以上,メモリ256MB以上,3D対応のグラフィックスメモリ16MB以上のグラフィックス環境,HDD空き容量:800MB

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