そんな「A3」も,2004年4月20日の第1次リミテッドサービス開始から4か月めを迎える。その間,第2次,第3次と募集を重ねる度に,徐々に"プレイヤー制限"は緩和。現在では,最終的な人数制限はあるものの,ガンホーIDさえもっていれば自由にダウンロードして限定サービスを楽しむことができる。 しかも,元々こちらから出向く予定だったものを,小島氏自ら編集部へ訪れてくれるという。氏も,やはり一連のサービス方法については自らゆっくり語りたい部分があったのだろう。これまでの経緯から現状,また将来の展望までを存分に語ってくれた。もちろん,ドサクサに紛れてA3のシステムに関する新情報も仕入れてきたので,ぜひじっくり読んでみてほしい。 ※1……ガンホー・オンライン・エンターテイメントの会員IDであるガンホーIDの登録情報だけを見て認証するため。お久しぶりです(筆者は第一回のインタビューからご無沙汰)。もうこちらの質問内容は想像がつくかと思いますので,早速,直球勝負でいきますね。 これまで段階的にサービス方式が変わってきました,それはどのような理由からですか? 1次,2次,3次と,順を追って説明していただけると助かります。 小島氏: そうですね。では順番にいきましょうか。 端的に言って,A3は最初に非常にストイックな道を選びました。R-18指定でしかもクレジットカードがないと遊べないように,プレイヤーに対して一種のハードルを用意したわけです。これは以前もお話したように,オープンβテストで雑多なプレイヤーを誘うような既存のMMORPGとの差別化を図るため,そしてプレイヤーの質をコントロールするためです。 4G: 確かに,それが一つのウリになってましたよね。オープンβテストを広告手段として利用する習慣にアンチテーゼを唱えるようなものでしたし,逆にそういった制限が話題を呼んだ部分もあると思います。 小島氏: で,最初は,私共の狙いはバッチリはまったんですよ。厳密な数字は言えませんが,リミテッドサービスキット(※2)はだいぶはけましたし。当時の見込みの80%はいったかな? とにかくそれぐらいですかね。 4G: えっと,成功した"狙い"っていうのは数字だけですか? 小島氏: いえいえ,もちろんゲームの雰囲気に関してもです。こういうと語弊があるかもしれませんが,最初は"非常にいい"お客さんが来てくれたんですよ。"いい"というのは"大人な"と言い換えてもいいです。 そんなプレイヤー達が作り上げたのは,弊社が運営中のMMORPG「ラグナロクオンライン」の対極に位置するような,非常に静かな空間でした。売り買いも"大人の社交界"っていう感じで割りとおとなしい。 4G: しかし,それがある意味"狙い"だったんじゃないんですか? "子供が走り回っている公園とかではない,大人の社交場を望む"と,以前おっしゃってましたよね。 もちろんそうです。 ただリミテッドサービスという限定された人数でスタートして,みんなのキャラクターが徐々にレベルアップしていったときに,フィールドが"新人がこないビニールハウス"みたいな感じになっちゃったんですよね。もちろん離れていく人もいました。 さらに当然新しい人もまったく入ってこないわけで,経済も硬直していきました。ハイレベルプレイヤーが,いらなくなったアイテムを初心者に――,なんてことも徐々に少なくなりますからね。 つまり,"狙いは当たったけど予想と少し違った"という感じでしょうか。 4G: なるほど,たしかにそうならざるを得ないでしょうね。で,人を増やそうと。 小島氏: ええ。とりあえずクレジットカードというハードルははずしたいと思いましたね。これが第2次リミテッドサービスへと移行した理由です。 ※2……2004年4月20日から始まったA3のクローズドβテストに参加するための参加権,およびCD。さまざまな特典が同梱されたキットで,※7にあるワンダーフェスティバル2004[夏]で,倉庫で見つかった在庫分が無料配布される予定。 第2次リミテッドサービスは,ご存知の通り,ネットカフェで対面認証を行い,18歳以上であると確認した上でA3のトライアルチケットをお渡しするという方式を採りました。"A3がプレイできる!"っていう触れ込みもありますし,ネットカフェさんも協力的で,自らプロモーションを行ってくれる店舗もありましたね。最終的に800店舗強ぐらいに協力してもらいました。 4G: その時のプレイヤーの反応は? 小島氏: いやぁみんな右往左往してましたよ(笑)。ウチにもジャンジャン問い合わせがありましたし。この期間中,A3をプレイしたい人は「あっちのネットカフェでできるらしい」とか「ん? もう渋谷は全滅か!?」とか,あっちこっち探し周ってくれましたね。ウチとしても「申し訳ないですが,探してください」っていうのもありましたし。"演出"とまでは言いませんが,この方法でもやっぱりA3らしさは出てたかな? と思ってます。 4G: この時点でどれぐらいのユーザーがA3の世界に? 小島氏: やっぱり厳密な数字は言えないんですけど(※3),1.5から1.7倍ぐらい?(広報さんの目を見つつ)でしょうか。 4G: それで,1次テストの問題点は解消されましたか? もちろん人は増えたわけですし,ビニールハウスのような――なんて状態は脱したと思います。ただ,2点ほど新たな問題に直面したんです。 一つは,――これはもうA3が"そもそも"抱えているクリティカルな問題なのであとで説明しましょうか。 もう一つは,騎士団トーナメント(※4)を何度か繰り返すうちに,一定のプレイヤーには"立場"というものができ,プレイヤー間に"差"が出てきたということです。 もちろん,トール(※5)やネトラン(※5),エルタキン(※5)といった,国家における騎士団のヒエラルキーというものは明確に存在しています。それはそれでいいんですが,プレイヤーの集団を"国家"として見た場合,末端を担う役割の"民衆"に当たる人がいなくなってしまうような状況になったんです。軍隊でいえば,"みんな将校"みたいな感じでしょうか。軍人が少ないなぁっていう。 4G: そうなると,必然的に上に立つものの価値,つまり称号を持つ騎士団の価値も下がっていっちゃう感じですね。プレイヤーのモチベーションと共に。 小島氏: そうなんです。しかも,1次サービスで入ったプレイヤー,いわゆる"1次組"の人は大変な苦労をしてレベルを上げ,またアイテムを集めて今のキャラクターを育たのに対して,"2次組み"の人はある程度ラクにキャラクターが成長させられる。あ,これは1次組の人が親切だってのもあるんですけどね(笑)。1/4ぐらいの労力で育てられるんじゃないかな。 それで,みんなレベルが高くて上を目指す状態ができてしまったわけです。 で,もう少し間口を広げて大衆化しなければ――という思考になったんです。 4G: それで"あの"第3次限定ダウンロードサービス"が始まったわけですか。 ※3……厳しく情報規制をしているのもA3の一つのウリであった。以前のインタビューで,小島氏は「できるだけ数字は出さない」と語っている。 ※4……プレイヤーキャラクターが最大13名で構成できるチーム,クランの名称。普通のMMORPGでいえばギルドみたいなものと考えるといい。 ※5……騎士団の称号。内容は,それぞれ以下のとおり。 ・エルタキン:トーナメントを勝ち抜いて商店の所有権をもっている騎士団 ・ネトラン :エルタキンの上位に属し,国家の頂点に立つ騎士団 ・トール :ネトランの騎士団長。国家で最も高い位のプレイヤーキャラクター
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