■「イースIII」のストーリーを新たなシステムで
フェルガナに到着したアドルとドギ。このきれいなビジュアルで,おなじみのシナリオが進行していく |
そもそもイースIIIは,イースシリーズにおいて異端児ともいえるポジションの作品だった。その理由は主に,従来作品と大きく異なる画面構成にある。イースIII以前のシリーズ作品がトップビューであったのに対し,イースIIIは当時一世を風靡していた同社のRPG「ソーサリアン」とほぼ同じ,サイドビュー形式を採っていたからだ。それに付随してアクション性はほかのシリーズ作品よりも高くなっており,当時のコンシューマゲーム機のほぼ全機種に移植された作品ともなった。
そんなイースIIIが16年の時を経てどのように進化したのか。順に見ていくことにしよう。
今回の冒険の拠点「レドモントの街」。ちなみにこの女の子が今回のヒロインとなる,ドギの幼なじみ「エレナ」 | 街の中にある武器屋には鍛冶屋が併設されており,この地に点在する鉱石を使って,装備のレベルを上げることも可能となっている。画面中で「強化STR+4」とあるのが,武器の側の強化ポテンシャルを示す記述だ |
今回の舞台となるフェルガナ地方のマップ。基本的にはこの地図を下から上に進んでいく形で,ゲームは進行する | イースVI同様,今作でも一度触れたセーブポイントにワープできるアイテムが用意されている。使い時をよくよく考えたい | イースシリーズを通じて冒険の肝となっている古代遺跡とアドルの対話。今作でもアドルに古代の伝承を語りかけてくる |
今作のヒロイン「エレナ」。この画面はゲームが始まってすぐ,魔物に襲われそうになっているところ | ドギの幼なじみであり,エレナの兄でもある「チェスター」。昔とは人が変わったと街の人は言うが…… | 街に圧政を加えている張本人「マクガイア」。チェスターはなぜかこの人の部下へと成り下がっている |
■「イースVI」のシステムをベースにアクション性を向上
イースIIIと同様に,上突きや下突きの攻撃も使える。しかも下突きでは,運がよいと敵の頭に星がついて,しばらく動けなくなる |
フェルガナに到着した二人を待ち受けていたのは,街のそばだというのに現れた魔物たちと,襲われそうになっている女の子。この女の子はドギの幼なじみの「エレナ」で,現在失踪中の兄「チェスター」の帰りを待ちわびて街の外にいたことを知る。だがやがて,チェスターが,街に圧制を敷く人物の部下として働いていることが判明し……というのが,本作序盤のストーリーだ。
ゲーム画面を見ていただければ一目瞭然だが,イースIIIの単純なリファインではなく,「イースVI −ナピシュテムの匣−」と同様の,美しい3D画面へと進化しているのが,本作の大きなポイントといえよう。
イースVIと比べたときのアクション性向上部分についてまとめると,イースVIで3連撃までだった通常攻撃が6連撃になっているうえに,「ブーストモード」という,攻撃スピードを一時的に向上させるモードを使うことで,10連撃まで可能となった。
さらに「コンボボーナスシステム」という新要素が追加され,敵を連続して倒していくにつれ,経験値が通常より余分にもらえたり,一時的に攻撃力や防御力を向上させる「秘薬」を敵が落としやすくなったりといった,ボーナスが得られるようになった。
このほか,ゲームを進めていくと入手できるアイテムを使うことで可能となる「2段ジャンプ」では,普通のジャンプで届かない場所へ移動できるようになった。さらに後述する「腕輪」の力でヘリコプターのようにジャンプする「旋風ジャンプ」といったアクションも駆使しつつ,各マップを攻略していくこととなる。
このようにアクションの重みが増し,コンシューマタイトル並みの操作が必要となったため,筆者としてはゲームパッドでのプレイを強くおすすめする。もちろんキーボードやマウスでもプレイ可能だが,パッドのほうがずっと快適だ。
なお,アクションゲームが苦手という人向けに,ゲームの難易度設定としてはノーマルモードに加えて「イージーモード」も用意されている。まずはこちらで操作に慣れてみるのも手だろう。
マップ内に点在する宝箱の中に入っている「ラバール鉱」。装備のレベルを上げるのに使うのは,フェルガナ名産の(?)この鉱石だ | 左下のゲージ部分に表示される「HIT」がコンボ数。その上のゲージは攻撃力や防御力,魔法力アップの持続時間を表す | ゲーム中,各所に現れる謎の存在「デュラーン」。最初は自身で戦うが,その後は特徴的な攻撃をする敵を召喚しては去っていく |
チェスターに蹴り落とされてたどり着くのが溶岩地帯。溶岩がアーチ型に噴き上げたり,ボス対決前にはなぜか追ってきたりする。ボスは火をまとった竜で,火炎を吐くなど溶岩地帯の主らしい攻撃をしてくる |
冒険の最初に訪れる採石場の奥深くは,古代遺跡もある薄暗い空間。ここにいる大ボスは途中で形態の変わるタイプ。はじめはレーザーや本体の直撃を避ける必要があり,後半はシューティングゲームのような弾避けを強いられる |
雪が積もった景色の中を進む,エルダーム山脈のステージ。ここらへんから雑魚キャラも手強くなってくる。またここに現れる中ボスクラスの敵には作戦を練って挑まないと,一筋縄では倒せない |
■3種類の腕輪による特殊攻撃を使いこなせ
冒険の途中で入手できる腕輪。全部で3種類ある腕輪をいかに使いこなすかが,この冒険の鍵となっている |
この特殊攻撃は「リングアーツ」と呼ばれ,装着している腕輪の種類でそれぞれ効果が異なる。また,腕輪の種類と敵の相性も設定されており,剣があまり効かない敵にも,適切なリングアーツを選んで使えば,大ダメージを与えられる。
また,リングアーツは攻撃だけでなく,マップ内に仕掛けられたスイッチをオン/オフしたり,先ほど触れた空中移動を可能にしたり,ひびの入った壁を破壊したりと,マップ攻略になくてはならない存在となっている。マップ探索/謎解きといった面でのゲーム性も向上しているといえるだろう。
イースシリーズの大きな魅力の一つであるゲーム内の音楽も,よりカッコよくアレンジされ,プレイを盛り上げる。初回限定版パッケージにはイースIIIのオリジナル音楽が収録されたCDが付属するので,アレンジの違いなどを聴き比べるのもよいだろう。
おなじみのシナリオを懐かしさとともに追うもよし,単純にアクションRPGの新作として楽しむもよし。シナリオ展開とプレイ内容が密接に結びついたイースシリーズの美点を保ちつつ,これまた日本ファルコム作品らしい爽快なアクションゲームに仕上がった本作は,オールドファンのみならず広くおすすめできるゲームといえよう。
最初に手に入る「焔霊の腕輪」のリングアーツは,火の玉を使った遠距離攻撃が可能になるというもの。また,マップ内の仕掛けに火を入れるといった,攻撃以外の使い方もできる |
2番目に手に入る「風霊の腕輪」のリングアーツは,剣をぐるぐる回して攻撃するタイプ。その回転を使って,普通のジャンプでは届かない場所への長距離ジャンプが可能となっている | 今作で一番最初に出てくる「大ボス」。腕輪の力を使うことでしか倒せない敵でもある |
最後に手に入る腕輪が「地霊の腕輪」で,衝撃波を伴った無敵のタックル攻撃が行える。また,ひびの入った壁を壊すといった効果もある |