― レビュー ―

レビューコンテスト佳作作品

Togaさん作 「信長の野望・革新」

2005年10月14日

※レビューコンテストという性質上,4Gamer編集部では最低限の校正しか行っていません。ご了承ください。

ニッポンを変える

 「信長の野望」シリーズは,コーエーの手がける人気歴史ストラテジーゲームである。プレイヤーは戦国時代の一大名となり,天下統一を目指す。その第12作,「信長の野望・革新」(以下「革新」)が2005年6月22日に発売された。
 信長の野望シリーズは代々テーマが決められているのだが,今回のテーマはずばり題名が示すように「技術革新」である。長篠の戦いで織田信長が鉄砲隊を率いて武田勝頼率いる騎馬軍団を破ったように(異説あり),そしてまた毛利水軍に大敗した織田信長が鉄甲船を建造し次の合戦では逆に圧勝したように,戦国時代の合戦と技術は切っても切れないものである。その技術が発達すると共にその大名家が強くなっていくさまが「革新」では見事に表現されている。
 では実際に「革新」がどのようなゲームなのか,従来の信長の野望シリーズと変わった点を重点的に見ていくことにしよう。

1枚の3Dマップで描かれた戦国絵巻

上空より富士山と駿河湾を臨む。「革新」では日本全国を美しい3Dマップで表現している

 「革新」では,信長の野望シリーズで初めて日本全国を3Dのマップ1枚で再現している。季節ごとに色取りの変わる美しいマップを眺めるだけでも飽きないものだが,このマップ1枚で内政も合戦も行われるというのだから驚きだ。
 日本のあちこちを見回すと,内政に努める武将がいたり,敵地に進軍する部隊がいたり,といった姿を見ることができる。また合戦もすべて同じマップの上で行われるので,敵国を攻めているとその隙に第3国に自分の居城を乗っ取られたり,領地を広げていくと包囲網を張られて同時に攻められたり,ということも起こり得る。すべてが1枚のマップの上で行われることで,戦国時代の臨場感が強く感じられるようになった。
 ゲームは戦略と進行の二つのフェーズから成る。戦略フェーズで家臣に命令を出し進行フェーズで時間を進める。それぞれの命令は,達成するのに必要な日数が決まっており,命令を終えるとまた居城に戻って来るので再び命令を出す,といった感じだ。戦略フェーズではゲーム内の時間は止まっているので,何かあった場合には戦略フェーズに切り替えてじっくり考えることができる。

富国強兵に励め!

施設を建設するときの画面。一度の命令で三つの施設まで建設可能だ

 では実際にゲームの内容に触れていこう。
 まずは内政面から。自国の領地内に「施設」を建設することによって,金銭や兵糧の収入を得ることができる。施設を建設すると実際にマップ上にオブジェクトが出現し,視覚的にも自国が発展していく。自国が豊かになっていく姿を見るのは,箱庭を育てているようで非常に楽しい。
 施設の建設は町並を建設することから始まる。町並「農村」を建てれば周囲に「水田」や「畑」が建設できるようになり,これらから兵糧収入を得られる。そして町並「商人町」を建てれば周囲に「市」や「商館」が建設可能になり,これらから金銭収入を得られる,といった具合だ。このほかにも施設には「募兵」をして兵力を増やせるようになる「兵舎」や,技術を開発するのに必要な「○○学舎」(○○の部分には,「鉄砲」や「騎馬」など技術の種類が入る)といったものもある。
 領地内に建設できる町並の数は決まっており,技術を開発したいからといって学舎ばかり建てていたのでは,水田や市を建設できなくなり,収入がなくなってしまう。ここが楽しくも悩ましいところで,バランスよく施設を建設しておきたいところだ。
 施設は誰が建設しても性能に差はないのだが,担当する武将の「政治」の能力によって,建設に必要な日数が決まる。また最大3人で同時に一つの施設の建設に派遣できるので,政治の高い武将を3人選んでおくのがいいだろう。そして兵力に不安があるときには「募兵」コマンドを積極的に行って兵力を集めておきたい。
 また「牧場」や「鍛冶場」といった施設を建設しておけば,「調達」コマンドで軍馬や鉄砲を入手できる。施設を建設する一方,軍備を増強して合戦に備えよう。

いざ出陣!

 兵力が十分になったら,いよいよ合戦だ。合戦方式はRTSに似たセミオートと呼べるだろう。部隊を出陣させ目標を設定すると,部隊はそこへ向かって移動し始める。そして敵部隊,もしくは城や港などの「拠点」に接近すると,自動的に攻撃を開始する。
 敵を攻撃するたびに「闘志ゲージ」が溜まっていき,一定値まで溜めると「鼓舞」や「三段撃」といった「戦法」を発動可能だ。戦法は一定の確率で連鎖し,連鎖すると敵に大損害を与えられる。
 今回部隊には3人までの武将が所属できるようになった。合戦では「統率」「武勇」「知略」の三つの能力が関係するが,部隊としての数値は所属する武将の中で最も高いものが選ばれる。そのため,武勇は高くても知略が低すぎて今まで使いづらかった前田利益(慶次)や上泉信綱といった武将も,松永久秀や藤堂高虎といった知略に秀でた武将と組ませることで使いやすくなった。また部隊には所属している武将の数だけ戦法をセットできるので,連鎖させるためにも部隊には3人の武将を所属させておきたい。
 拠点の兵力か士気を0にすれば,拠点を占拠し支配下における。このようにして自国の領地を拡大し,天下統一への道を一歩ずつ進んでいくのである。

迫力ある合戦シーン。今作では敵味方合わせて数十万の部隊が激突することも 出陣時の画面。部隊を出陣させるときには連鎖確率の高い戦法をセットしよう 戦法の中には武将固有のものも。上杉謙信の使ってくる「車懸り」は非常に強力

技術を革新せよ!

 そして肝心なのが技術のシステムだ。いかに技術を開発していくかがこの「革新」でのポイントとなる。技術の強さが合戦での部隊の強さに直結するのだ。
 身をもって技術の重要性を感じた私の体験談を紹介しよう。私が最初にプレイしたときに選んだ大名は1555年開始のシナリオの島津家。最初に隣国の肝付家の支配する城に攻め込んだときのことだ。部隊の総大将は島津義弘。史実では朝鮮出兵の際に一万の軍勢を率い二十万の明軍を破った戦国時代きっての猛将である。この「革新」でも統率,武勇,知略すべてに高い能力が設定されている。一方,対するはそれほど有名ではない(失礼)肝付家。私は正直,武将の能力差によって,同数の兵力でも楽勝だと思っていた。事実,今までの信長の野望シリーズでは部隊の強さは率いる武将の能力がすべてだった。
 ところが結果は大苦戦。鉄砲隊で攻めたのだが,攻撃の間隔が長くなかなか闘志ゲージが溜まらない。そして闘志ゲージが溜まらないと戦法が発動できない。逆に肝付家から出陣してきた足軽隊は攻撃間隔が短く,どんどん戦法を使ってくる。予想以上の反撃を食らい部隊は壊滅してしまった。島津義弘は命からがら怪我をして帰ってきた。その後,半年もの間大幅に能力が下がったままであった……。
 この合戦以降,私は技術の開発に力を入れるようになる。技術「散弾」を開発して鉄砲隊の攻撃力と防御力を上げ,技術「連式銃」を開発して鉄砲隊の攻撃速度を上げる。そして私の操る島津家が九州を統一する頃にはほぼすべての鉄砲技術を開発していた。こうなると,技術開発の遅れている小国相手だと向こうが倍以上の兵力でも余裕で勝てるようになる。高い防御力で相手の攻撃に耐え,攻撃間隔の短い鉄砲で強力な戦法を連発。まさに無敵の島津鉄砲隊となった。

 このように,技術は「革新」において非常に重要である。今回の「革新」では,戦法以外の攻撃や防御といった部隊の能力は大名家の所有技術によってのみ決まり,武将の強さには依存しない。いくら武将の戦法が強力であろうとも,保有技術が少なければ宝の持ち腐れなのである。「革新」で用意されている技術は全部で8系統80種類以上。合戦に関するものだけでなく,春と秋に水田からの兵糧収入が得られる「二期作」といった内政の技術もある。
 ではどうやって技術を開発するかだが,技術の開発には対応する学舎が一定数と,その技術の「適正」能力が一定ランク以上の武将が3人必要だ。例えば,騎馬の技術「馬上槍」を開発するには騎馬学舎が12と騎馬適正がBランク以上の武将が3人必要だ。また水軍の技術「鉄甲船」を開発するには,40もの水軍学舎とSランクの武将が3人必要となる。水軍適正がSランクの武将の数は大変少なく,鉄甲船の開発は至難の業であろう。さらに技術の開発には半年以上期間を必要とし,一度に一つの技術しか開発できない。技術を数多く保有するのは困難なことなのだ。
 そこで重要となるのが,同盟国の存在である。「革新」では敵国から技術を奪うことはできないが,同盟国から教えてもらうことならばできる。自国と異なる技術を持つ国を選んで,技術提携を目的に同盟を結ぶのもよいかもしれない。

登場する技術は80種以上。多くの技術を開発して強力な国を作るのだ CPUも次々と技術を開発してくる。中には大名家固有のものも 援軍だけでなく技術のためにも同盟国は非常に重要。技術提携を図ろう

ネットで広がる新たな楽しみ「NETJOY」

 最後に,選べるゲームモードについても説明しておこう。用意されているシナリオは1555年から1582年まで全部で5本。戦国初期の英雄である北条早雲や,遅れてきた英雄の伊達政宗などが一堂に会する仮想シナリオ「群雄集結」といったものもある。難易度やイベントの発生の有無,寿命のありなしなども細かに設定可能だ。また,斎藤龍興と竹中重治(半兵衛)の掛け合いが面白いチュートリアルや短時間で楽しめる地方モードも搭載されている。
 さらに「革新」は,「NETJOY」と呼ばれるネットサービスに対応している。ユーザー登録をすればアップデートパッチや追加シナリオをダウンロードできるほかに,各プレイヤーが送信した統計データを見ることができる。また,NETJOYだけの特典として,一定期間内に決められた目的を達成する「チャレンジモード」が用意されている。目的は,指定された拠点を支配下に置くことであったり茶器を一定数集めることであったりと,さまざま。また一味違った「革新」の世界を楽しむことができるだろう。

今作のチュートリアルは一見の価値あり。コミカルな展開が面白い チャレンジモード「上洛への道」の冒頭のワンシーン。期間が決まっているので難度は高めだ

 以上,簡単ではあるが,一通り「革新」のゲーム内容についてお伝えした。個人的には歴代の信長の野望シリーズの中でも非常に完成度が高く,従来のファンはもちろん,シミュレーション/ストラテジーゲームの初心者にも勧められるデキだと思っている。
 実際,私は久しぶりに信長の野望シリーズをプレイしてみたのだが,完成度の高さに驚かされた。箱庭型の内政とRTS風の合戦,そしてそこに一本筋の通った技術の概念。戦国時代に興味がある人でもない人でも,ぜひ試していただきたい。

 

タイトル 信長の野望・革新
開発元 コーエー 発売元 コーエー
発売日 2005/06/22 価格 1万1340円(税込),プレミアムBOXは1万3440円(税込)
 
動作環境 Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/1GHz以上(Pentium4/1.7GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上推奨),HDD空き容量 3GB以上,VRAM 32MB以上,DirectX 9.0c以降,常時接続環境必須(1Mbps以上推奨)

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