― レビュー ―

レビューコンテスト佳作作品

tougeさん作 「マビノギ」

2005年10月14日

※レビューコンテストという性質上,4Gamer編集部では最低限の校正しか行っていません。ご了承ください。

「生活」ゲームの新しい形,マビノギ

 2005年4月から日本でのサービスが開始され,安定した人気を誇っている「マビノギ」。しかしながら,世間ではこのゲームについて少々誤解があるように感じている。多くのレビューが散見され,賢明なる4gamer読者はすでにご存じかと思うが,本作は異世界での"生活"にフォーカスを定めたMMORPGだ。それは運営元であるネクソンジャパンの広告の打ち方からも窺え,また大勢においては正しい。
 さて,生活系のMMORPGと聞いて,あなたはどんなゲームを想像するだろうか。恐らく多くの人が「ウルティマ オンライン」や「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」のような,生産系を重視したシステムを思い浮かべるんじゃないかと思う。
 しかしマビノギは,それらのゲームとは趣を異にしている。そういうイメージを念頭に置いてプレイしてしまうと,大きな違和感を抱いてしまうはずだ。ここにちょっとした不幸があるんじゃないかと,筆者は思ってしまう。
 このレビューはそんな誤解を解くことを目的としている。マビノギ流の"生活"とはどういうのものなのか。エリンでの1日を追いながら,三つのポイントを挙げて紹介しよう。

AM6:00 早朝 「箱庭世界とアルバイト」

羊は本作の隠れた主役。羊が動くと失敗してしまうので,止まったタイミングを狙うのがポイントだ

 ティルコネイルの朝は早い。「早起きは3文の得」とばかりに,気持ちのいい早朝はアルバイトに精を出す時間だ。まずはヒーラーの家のディリスから羊の毛を刈る仕事をもらう。静謐な朝の空気を感じながら,モフモフと羊の毛を刈り取っていくのはなかなか楽しい作業だ。一仕事終えたところで,次は聖堂ボランティアがお勧め。今日のボランティアは鶏から卵を10個集めてくるというものだった。お腹が空いたので卵を1個失敬してしまったのは,ナイショにしておいてほしい……。

 本作にはさまざまな形式のクエストが用意されているが,その中で一番気軽に行えるのがアルバイトと呼ばれるクエスト群。内容は仕事によりさまざまだが,基本的な採取や生産など,短時間で終わるものがほとんどだ。

 そんな中でも人気なのは,やはり聖堂ボランティアだろう。聖堂ボランティアの報酬,祝福ポーションは装備の磨耗を抑えてくれるのに加え,死亡時の装備ドロップを防いでくれる。冒険には欠かせないうえに,ほかのプレイヤーに売ることも容易で,序盤のおこずかいかせぎにはぴったりである。
 また羊毛刈りのアルバイトも,ぜひ経験してほしいアルバイトの一つ。報酬もさることながら,羊と戯れる牧歌的な光景には,思わず頬が緩んでしまう。

ダンバートン聖堂のNPCクリステル。人望と信仰に厚い彼女の過去には大きな秘密が……

 そんな,最初はただ仕事をくれるだけにすぎないNPC達だが,いつしか彼らに親近感が湧いてくる。それぞれのNPCには好感度が設定されおり,親密になるとより上級のアルバイトを受けられたり,普通は店に並ばないアイテムをこっそり売ってくれたりと,特典も大きい。
現時点でのマビノギのフィールドは,ほかのゲームに比べてもそう広いものではない。しかし,そのぶん濃密な人間関係が詰めこまれている。いわば物語を展開するための"舞台"としての世界なのだ。そしてNPCのセリフに見え隠れするいくつかの物語,それに気づいたらぜひともG1やG2と世代で呼ばれるメインストーリーのクエストに挑戦してほしい。個性的なNPCの素顔と,この世界の秘密の一端に,触れることができるはずだ。

PM1:00 昼下がり 「わいわい狩猟生活」

相手が光ったら何らかのスキルを使った証拠だ。三すくみを前提に,敵のアルゴリズムを見極めて的確な判断を下す。画面は相手のスマッシュをアタックで潰すシーン。倒れる熊が光ったらスマッシュの合図なので,先行のガードをといてアタックで反撃!

 お腹も膨れて日も高くなったら,仲間と狩りに出かけよう。敵を視認しやすい昼間は戦闘に向いた時間帯。NPCからモンスター狩りの「パーティクエスト」スクロールを買って出かけるのがマビノギ流である。狩場はフィールドでもダンジョンでも構わないが,登場するモンスターに合ったクエストを用意しよう。もちろんお弁当も忘れずに!

 しばしばMMORPGを揶揄して使われる"クリックゲー"という言葉は,おそらく敵をマウスでクリックしさえすれば,その敵を倒すまでひたすら攻撃し続けるインタフェースの単調さを評したものだろうが,本作の戦闘はこのクリックゲーから最も遠い,ユニークなものに仕上がっている。
マビノギの戦闘を一言で表すと"じゃんけん"である。最も基本的な戦闘スキル,アタック/ガード/スマッシュは三すくみの関係を持っている。アタックはガードに防がれ,ガードはスマッシュに破られ,スマッシュはアタックに潰される。もちろん敵であるモンスターもこれらのスキルを使ってくるので,ここで読み合いが発生する

 これが分かると一見のんびりしたマビノギの戦闘は,ぐっと緊張感をはらんだものになってくる。ここで詳しくは説明しないが,これにさらにカウンターや魔法,弓による遠距離攻撃が加わって,戦術にぐっと広がりが出てくるのだ。
これらの基本的なスキルはゲーム開始直後から始まる一連のチュートリアルで一通り習得することになるので,ほとんどのキャラクターには揃っているはず。「いや私は戦闘はやらないで生産一筋!」という諸兄諸姉も,これらのスキルを持っておいて損はないので,必ず取得するようにしよう。

 さてこのじゃんけんシステムには,二つの特徴がある。一つは基本さえ取得しておけば,戦力になるということだ。もちろんキャラクターの性能は重要だが,ことアクション性が高いだけに,基本のスキルさえ揃っていれば(読みあいにさえ勝てば)なんとかなってしまうのだ。先ほど生産メインのキャラクターでも戦闘の基本スキルは取っておくべきと書いたが,その理由がこれである。

もう一つは1 vs. 多の戦いが極めて厳しいこと。じゃんけんで二人を"同時に相手にする"ことを考えてみるといい。ここでは単に3人でじゃんけんするということではなく,2人それぞれの手に対して,引き分け以上の手で返さなければならないという意味だ。つまるところ,味方の頭数が重要ということになる。パーティの人数より敵の数が多いと,少々困ったことになってしまう。

 この二つの特徴から,マビノギにおけるパーティプレイの位置付けが窺える。つまり「誰でもOK! うぇるかむ!」なのだ。少なくともキャラクターの性能を細かく気にする必要はない。戦闘に自信がないなら,参加したパーティで教えを請うのもいいだろう。本作における強さはプレイヤーの腕と知識にかかっているからこそ,みな親切に教えてくれるはずだ。
 レベリングに必死になる必要性が薄いのに加え,読み合い自体が楽しく,中毒性を持つ戦闘システム。気軽にパーティに参加して,"狩り"という言葉の文字通りの意味,生活の1シーンとしての狩猟を楽しもう。

ダンジョンでの戦いとなると,基本だけでは少々辛くなってくる。カウンターや弓,魔法を駆使して戦おう。中には魔法や特殊能力を持ったモンスターも…… 二人以上でパーティを組んでないと開始できないパーティクエストのスクロールは,各町のNPCが販売している。パーティのメンバーは多ければ多いほど効率的だ

PM8:00 夜 「世界を彩る音と光」

キャンプファイヤーを囲んでのひととき。光と音が雰囲気を盛り上げる。こうしたのんびりとした時間が本作の大きな魅力だ。キャンプファイヤーはウーンズをゆっくり回復させ,HPの回復速度を向上させる効果がある。キャンプシェアリングで食べ物を配れたりと,メリットはいろいろある

 さて,そんな狩りに疲れ,日も暮れてきたら,団欒のひとときが待っている。キャンプファイヤーだ。火を起こすには薪が5本必要になる。昼間のうち,一休みのついでに薪を作っておくといいだろう。伐採用斧は必ずかばんに忍ばせておくこと。キャンプは体力の回復を促し,また夜になると視界が悪くなることもあって,何も言わずともキャンプの周りには人が集まってくるはずだ。
 舞台が整えば,ここからが腕の見せどころ。「料理」スキルでとっておきの手料理を披露するもよし,「作曲」で作った音楽を「演奏」で奏でるもよし。夕闇に瞬く火の光と,夜空を彩る音楽がキャラクターの回復とともに,プレイヤーのスタミナまで回復してくれること請け合いである。実は筆者はこの時間が一番のお気に入りなのだ。

完成度が99.9%になるまでは(1)の工程を繰り返す。仕上げはミニゲーム。きれいに穴に糸をくぐらせていく。一度スタートしたらカーソルは見えなくなってしまうので,慣れが必要だ。裁縫のスキルが高くなると一度に上がる完成度が増え,仕上げのゲームも少し簡単になる

 マビノギには,裁縫,鍛冶,料理,調合,釣り,工作,そして演奏と,多種多様な生活スキルが揃っている。生産に必要な道具は街に揃っているので,夜は街に戻ってじっくり生産に取り組もう。ダンバートンはプレイヤーが最初に辿りつく大きな町で,プレイヤーの開く露店で夜も賑わっている。のんびり夜釣りというのも捨てがたいが,ここはやっぱり生産の花形,裁縫にチャレンジしてみたい。

 衣服を作るには,裁縫キットと目的の型紙を装備してスキルを使用する。材料をスロットに登録し,成功率の表示を確認してスタート。めでたく成功すれば完成率が少し上昇する。何度か繰り返して完成度が99.9%までいけば,あとは仕上げの作業を残すのみ。
 仕上げはちょっとしたミニゲームになっている。マビノギの生産では,どのスキルにもこうしたミニゲームが挿入され,アクション性を高める工夫がなされている。最終的な出来はここで決まるので慎重に。最初は少し難しいかもしれないが,慣れてしまえばどうってことはなく,ちょちょいっと仕上げれば晴れて完成だ。
 ただ問題は,裁縫に限らず生産自体はあまりお金にならないことだろう。現状ではこれらの生産スキルが趣味の域を超えるのは難しいかもしれない。少し残念なことではあるが,手に職をつけるってのは大変なことなんですよ,うん。
 論点を付け加えるなら,本作では全体的に防具の効果が低く設定されているのも特徴の一つ。戦闘はどうせテクニックでカバーできるなら,いっそおしゃれを楽しみたいと考えるプレイヤーは少なくない。お気に入りのコーディネートを考案するのもオツな楽しみ方ではないだろうか。

ファッショナブルな装備品の数々。女性用に比べ,なぜか男性用の装備は種類が少ないのがちょっと残念 店売りのアイテムは日によってランダムに色合いが変わる。好みの色を求めてお店に張り付いているプレイヤーも多いとか

のんびりしとした時間を過ごす,マビノギ流の生活術

自由に作曲が可能なシステムは本作の目玉。リアルで音楽の素養があるなら,是非とも自作の曲で吟遊詩人プレイをお勧めしたい。

 このように,マビノギでは生産はもちろん,戦闘もまた"生活"の一部である。戦闘一辺倒や生産一筋なキャラクターも作成可能ではあるが,それでは本作の一部分しか楽しめない。生産と戦闘を両立させるとどっちつかずになってしまうのでは? なんて考えは不要,欲張って両方こなしちゃうのがマビノギ流だ。
 マビノギにまだまだ魅力的なシステムがいくつもある。あらゆる部分に独自のアイデアが盛り込まれ,既存のシステムをそのまま採用したものは驚くほど少ない。それゆえ紹介しきれない部分もまた多いのが残念だ。
 もちろん,そのすべてがうまく機能しているとはいえないが,新しい試みを続けるDevCATの開発姿勢には好感が持てる。このレビューを読んで興味を持たれた方は,ぜひともエリンの地に降り立ってほしい。そして先入観を持たずに,「マビノギ流」を楽しんでいただけたら幸いである。

 

タイトル マビノギ
開発元 Nexon devCAT studio 発売元 ネクソンジャパン
発売日 2005/04/26 価格 基本プレイ料金無料(アイテム課金)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP,CPU:Pentium III/500MHz以上[Pentium 4/1.0GHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上[512MB以上推奨],HDD空き容量:1GB以上

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