氷霧さん作 「ぐるみん」
2005年10月14日
※レビューコンテストという性質上,4Gamer編集部では最低限の校正しか行っていません。ご了承ください。
"イース"シリーズや"英雄伝説"シリーズといった,硬派なゲームを輩出してきた日本ファルコムから,今までのアクションとは一味も二味も違うアクションRPG「ぐるみん」が登場した(発売は2004年12月)。
キャラクターがすべてローポリゴンで描かれているほか,オバケ達の"戦争"をテーマにした舞台設定,ゲームの成果によって現実世界にお持ち帰りすることができる"おまけ"の存在など,今までのアクションRPGの常識を覆すアイデアがふんだんに盛り込まれている。
ゲームの内容は,ある日突然オバケホームを襲った悪いオバケ"ファントム"を倒して,オバケホームの仲間が使っていた"家具"を取り戻しながら物語を進めるというものである。具体的には,それぞれのステージをクリアすると家具が一つ手に入り,それを持ち主に返すことで"闇の霧"が晴れ,次のステージに進めるようになる。
2006年の冬には,日韓共同制作で「ぐるみん」のオンライン化が予定されている。日本のゲームが国境を越えて韓国,そして全世界へ旅立つということは,「ぐるみん」ファンはもとより,ゲームファン全体にとって大変嬉しいことである。
本作品のオンライン版を楽しむ前の"予習"という意味でも,実際のプレイを通してゲームの面白さや世界観をぜひ感じ取っていただきたいと思う。「ぐるみん」の世界は,まだまだ動き出したばかりだ。
全体を通してほのぼのとした感じの作品ながらも,主人公パリンと,彼女が持つ武器「伝説のドリル」を操るアクションパートに抜かりはなく,数多くのアクションRPGを輩出している日本ファルコムの手腕が発揮されているといってよい。
主なゲームシステムは,力を溜めて固い物を壊すチャージ攻撃や,BGMのリズムに合わせて大ダメージを与えるクリティカル攻撃,ジャンプした先の敵に速攻で攻撃を仕掛けるターゲットアタック,ターゲットアタックを応用した連続アタックなど。どれもフル3Dの特性を生かした作りとなっており,従来とは一味違うアクションを楽しむことができる。
中でも特筆すべき点は,各種のレベルアップシステムだ。ぐるみんの世界には,キャラクターの"レベル"という概念はなく,主人公のパリンはドリルパワーを鍛えたり,ドリルを改造して必殺技を覚えたり,火や氷といった各種のパーツを手に入れたりすることによって成長する。
上記三つは,どれも能力が格段に上がるというわけではないが,必殺技を取得すれば複数の敵をまとめて攻撃できるので攻撃の幅が広がるし,パーツを手に入れれば今まで行けなかった場所に行けるようになる。
また,コンボや技といった格闘ゲームさながらの要素も兼ね備えており,ただのアクションゲームとしてではなく,さまざまなゲーム要素を取り込んだ構成でプレイヤーを楽しませてくれる。
そのほかにも,「ドリル」という少し変わった武器の特徴を生かしたミニゲームが存在するなど,システム全体を通してのボリュームはかなりのものであり,非常にやりがいのある設計といえる。
物語の舞台となるのは,人間が暮らす世界「ティース」と,普通の人間は入ることのできないオバケ達の集落「オバケホーム」だ。主人公のパリンは子供がいないティースの街に絶望しかけていたが,ひょんなことからオバケホームの一員となり,個性豊かなオバケ達と仲良くなるのだった。
そんなある日,突然やってきた「ファントム」と名乗るオバケ達が悪事を働き,オバケホームは破壊され,一部のオバケは連れ去られてしまった。パリンは仲間のオバケを助け,元の平和なオバケホームを復興させるため,伝説のドリルを片手に広大な世界へ旅立つのであった。
基本的なゲームの流れを簡単に説明すると,
【フィールドにあるステージをクリアする】
【オバケホームの仲間,もしくは仲間が持っていた家具を手に入れる】
【家具を持ち主のオバケに返してあげる】
【ボス戦】
という流れになる。
もちろん,必ずしも上記の流れようにいくわけではなく,途中で仲間のオバケに相談したり,ティースの街へ戻って情報収集をしたり,ドリルを強化したりする必要がある。ときには街の人の悩みを解決してあげることによって,思わぬ報酬がもらえることもあるので,"人の動き"には細心の注意を払って行動したほうがいいだろう。
従来のアクションRPGといえば,カッコイイ主人公と,いかにも強そうにデザインされた武器の存在がお決まりだった。しかし,「ぐるみん」では前述のとおり,キャラクターはすべてローポリゴンで描かれているほか,背景や小物にいたるまですべてソフトタッチでデザインされており,アクションの豪快さとは正反対な"癒し"の効果を持ち合わせている。
キャラクターの容姿は"萌え"とまではいかないまでも,"癒し"として見る者の心を和ませてくれる。これは味方キャラだけに限ったことではなく,町の人や敵,ボスまでもが可愛く愛嬌のある仕上げになっている。アクションRPGである以上,戦闘時などのスクリーンエフェクトを派手にすることは必須条件だ。
しかし,「ぐるみん」はそれに加えて,イチゴショートケーキが大好きな12歳の女の子が,実際の戦闘では派手なドリル技を繰り出すというコントラストを強調しており,今までにない独自性を醸し出している。
本編のシナリオをある程度進めると,ミニゲームができるようになる。ミニゲームの種類は豊富に用意されており,サッカーやもぐら叩き,岩壊しといった,ドリルアクションというゲームの性質を存分に生かしたものが多く,本編のイメージを崩さずにミニゲームに熱中できる。中には物語が進むにつれてレベルが上がるものもあり,手強くなった新たな敵を相手に勝負することもできる。
ミニゲームとは少し違うが,各種の謎解きもある。これは,ステージへ入る前にドクロの案山子から「クイズ」や「なぞなぞ」を出題され,ドクロの要求どおりに答えを出さないと進ませてくれないというものである。最初は誰でも解ける簡単な問題が多いが,ステージが進むにつれて難解な出題が大部分を占めるようになり,戦闘で疲れた頭を良い意味で刺激してくれる。
解けない問題に遭遇しても,何回かドクロに話しかけることによってヒントを出してくれたり,どうしても分からなければ,ドクロにお金を渡して"買収"したりすることも可能なので,謎解きが苦手な人でも安心してプレイできる。
そのほか,一定の条件を満たすことでPCの壁紙が手に入る。この壁紙は「ぐるみん」のゲーム内でのみ入手可能で,日本ファルコムの公式サイト上では一切公開されていない貴重なものだ。
それだけに見つけ出すのは困難だが,壁紙を手に入れたときの喜びは何物にも代え難く,そして思わず人に自慢したくなるようなものばかりなので,探し出して壁紙コレクションを埋めるのも楽しみの一つとなるだろう。
自由度が高いことが印象的な本作品には,主人公パリンの"着せ替え"ができる,クリア後の特典として新たな難度に挑戦できるといった機能もある。装備品にも「ネコミミ」や「吸血キット」といったユニークな名称のアイテムが多数存在し,プレイヤーの楽しみを増幅させてくれる。
"着せ替え"も壁紙と同じく,発見しづらいイベントをクリアすることが条件となるが,手に入れた衣装がクリア後も所持していられる点は嬉しい。衣装もさまざまな種類があり,制服や体操着,チャイナ服といった,もはやアクションRPGとは思えないほどのサービスぶりだ。
高難度までクリアすることによって,ファルコムが"お得意"とする「ボスラッシュモード」がプレイできるだけでなく,パリンとは別のキャラクターも操作可能になるので,「ぐるみん」ファンにはぜひプレイしていただきたい。
システムをフルに生かして,全ステージをパーフェクトにするもよし。童心に帰って純粋にシナリオを楽しむもよし。鮮やかな3D世界と一風変わったキャラクター達との調和を楽しむもよし……プレイヤー一人一人の楽しみ方でプレイできる。クリア後には衣装を替えて心機一転,難度を高くしてオバケ世界に挑むとよいだろう。思わぬところに新たな発見があるかもしれない。
年齢や性別は一切関係なく,誰でも気軽に楽しめるアクションRPGというのは,そう多くはない。だが,「ぐるみん」はあえて大胆な発想をもって独自の世界観を追求することによって,より多くの世代をターゲットにしている。ほのぼのとした憎めないキャラクターしかり,オバケの世界というユニークな設定しかり。
そのような,今までになかった数々の"特殊効果"を用いてゲームプレイを楽しませてくれる点も「ぐるみん」の面白さの一つであり,同時に面白さの隠し味にもなっていることはいうまでもない。
たまには都会の喧騒を忘れて,子供の頃に思い描いた幻想世界で愉快なオバケ達と,一緒のときを過ごしてみてはいかがだろうか。