■サッカークラブ運営ゲームのジャンルに新星が誕生!?
Sports Interactiveが開発した最新作。2Dピッチはそのまま受け継がれ,ゴールを決めた選手に集まるおきまりのパフォーマンスもなんとなく表現されている |
では,なぜ名前が,"フットボールマネージャー"になっているのか。実のところ"Championship Manager"は「こちら」でお伝えしたとおり,パブリッシャであるEidos Interactives(以下,Eidos)がその商標を保有していて,Beautiful Game Studiosが開発を担当した最新作「Championship Manager 5」(デモ紹介は「こちら」)が発売されたばかり。今後,CMシリーズはEidosから発売されるため,FMは別物のいわゆる"新タイトル"だ。
とはいっても,選手データとソースコードはSports Interactiveが持っている。つまり,事実上の後継作品は,FMのほうになるのだ。莫大なデータ量や,2Dピッチによる試合経過の表示など,ゲームシステムに大きな変更はなく,キャッチフレーズのとおり海外サッカーマニアにはたまらない内容だ。
ただし,チーム名と選手が架空ながら登場するJリーグが,日本語版のCMシリーズでプレイ可能だったのに対して,FMではプレイできない。また,Jリーグから海外クラブへレンタル移籍中であるセレッソ大阪の大久保選手などは登場しない。ほかにもドイツ代表GKオリバー・カーンが仮名だったり,ドイツ代表イレブンが全員架空だったりといった部分は,世界中の選手が登場するのがウリの本作にとって,諸事情があることは容易に予測できるのだが,非常に残念なところだ。
また,インタフェースはCMと比べると,パッと見洗練された印象を受けるが,どこに何があるのかを直感的に把握できず,はっきりいって慣れるまでは戸惑う。できればチュートリアルの類で,一通りの操作方法が覚えられれば……と考えていたのだが,セガの公式サイト(「こちら」 )に,後日チュートリアルを公開すると告知されていた。
ちなみに公式サイトでは,発売日の3月17日から最新パッチ(Ver5.0.5)がダウンロードできる。セガによると,海外版のものを日本語版にローカライズして公開していくという。
メジャーなゲームジャンルとは少々言いづらいこともあり,今回はこのFMを,概容やプレイ手順も含めて紹介していこう。
Jリーグはプレイできない。中田が過去に所属していたチームは,ベルマーレ平塚(湘南)ではなく,相模原トッポリーノに。ちなみにトッポリーノはイタリア語で"はつかねずみ"の意。架空Jリーグを見てみると,チーム名はバジェーナ,ジェラーレ,シュトルツ,ラファーレと,まるで「サカつく」で登場するチームのようだ |
ゲーム内で最も有名なドイツ人GKといえば,オリバー・カーンではなく,"Jens Mustermann"なのだ | Ver5.0.5パッチをあてると,細かなバグの修正以外に,最近の移籍データが反映される。フランスリーグのマルセイユには,あのトルシエ監督と,1月29日に移籍したばかりの中田浩二が所属している |
■マシンスペックに合ったゲーム設定が必要
2003年欧州年間最優秀選手に選ばれたネドベド。このようなスター選手をクラブに呼ぶには,さまざまな努力が必要である |
選手の発掘には,主に「選手検索」を使用する。ここにはプレイヤーが活動する地域の有名選手,何万何千人が一覧で表示される。そして,ポジションや年齢のほか,34もあるステータスの最低値/最高値/範囲でフィルタリングして絞り込むといった作業が必要で,マメな作業が嫌いな人はちょっと苦痛かもしれない。
お目当ての選手が見つかったら,獲得のために所属クラブと交渉を行うのだが,これが一筋縄ではいかない。クラブにとって重要な選手だったり,はたまたライバルクラブに所属していたりすると,高額な移籍金を提示しても,すんなりと移籍には応じてくれないのだ。また,クラブが移籍を許可したとしても,選手が同意してくれないと意味がない。選手はお金だけでなく,クラブの格や成績なども考慮するなど,ちょっとした人間くささが,単なるシミュレーションゲームで終わらせない楽しさを生んでいる。
登場する選手はゲーム開始時に設定するのだが,"○○万人登場させる"といった単純なものではない。詳しく説明すると,プレイしたいリーグとディビジョン,ゲームに登録されている選手をどこまでロードするか決める"データベースサイズ"(小・普通・大・最大)の選択次第で,登場する選手が変化する。
もちろん,登場人物が多いに越したことはないのだが,そのぶん開始時と進行中のロード時間が長くなる。反対にサイズが小さいと,弱小国の才能ある選手が登場しなくなったりする(こういう選手のほうが,安い移籍金で獲得しやすい)。要は,マシンスペックとのバランスがポイントになるのだ。ちなみにリーグ選択とデータベースのサイズは,後から変更できないので慎重に決めたい。
では,設定次第で人数と進行速度はどれだけ変わるのだろうか? ゲーム開始時のリーグ選択を,"イングランド,プレミアディビジョン"のみとし,ゲームが開始するまでの時間と,選手検索で選手がどれだけ見つかるかを測ってみた。ちなみに,同じ条件でゲームを開始しても検索結果に数十名のずれが生じた。
▼データベースサイズ小 | ▼データベースサイズ最大 |
選手検索:約4000人 時間:約5分 |
選手検索:約1万3500人 時間:約20分 |
※スペック CPU:Athlon XP/2600+,メモリ:512MB,HDD:Maxtor DiamondMax Plus 9(型番:6Y120L0,80GB) |
あくまでも簡単な測定ではあるが,上記のような結果となった。サイズが最大の場合,1か国1ディビジョンだけでもかなり時間がかかるのだから,「全リーグ・データベース最大」なんて選んだ日には,待てど暮らせどゲームは進まない。
とはいっても海外サッカーに興味があるならば,イタリア・イングランド・スペイン・ドイツに加え,有望な若手がゴロゴロいるオランダ・フランスあたりのリーグ,上位2ディビジョンは押さえたいところ。筆者のマシンではこの設定(6か国12ディビジョン)で,データベースサイズを"普通"にして始めた場合,開始までにかかった時間は約20分。ゲーム進行中に表示される画面も,約30%がデータ処理中といった感じで,ゲームのテンポはかなり悪い。データ処理中はWebを閲覧するなりお茶を飲むなりして,処理が終わったらゲームに戻るといった,"ながらプレイ"でゆっくり楽しむべきだろう。
「選手検索」にはスターから無名まで,世界各国の選手がズラリと表示される。この一覧をフィルタリングしてお目当ての選手を探し出す。有名選手のステータス画面を「へぇ」とうなずきながら見たり,今まで知らなかった有望な若手を発見したりと,これだけでも意外に楽しめる |
クラブが移籍を許可しても,選手が納得しない限り移籍は成立しない。スターを呼ぶためにはクラブの格を上げる必要もある | 新規ゲーム開始時にプレイするリーグ/ディビジョンを選択する。選択数とデータベースサイズ次第では,この画面から数十分は動かない | そのほか,ゲーム内の言語や扱う通貨などを設定する。賃金の項目では,サッカー界でおなじみの週給のほか,月給や年俸が選択可能 |
■サッカーの偶然性をうまく取り入れたシステム
思う存分,オリジナルのフォーメーションが作れるのも本作のウリ。時間をかけて作ったフォーメーションがまったく機能しない場合もしばしば…… |
そして,ようやく試合に漕ぎつけられるワケだが,シミュレータの出来次第では膨大なデータも,下ごしらえの時間も無駄になってしまう。肝心のシミュレータの出来はどうだろうか?
試合は,2Dでデザインされたシンプルな"2Dピッチ"で表示される。バリバリ3Dに,ピカッと光ってファインゴールといった激しいエフェクトはないものの,真上からのアングルは各選手の動きが把握しやすく,本作品にもってこいの表示方法だ。オフサイドトラップをくぐり抜けて裏に飛び出す瞬間など,サッカーファンにはグッとくるシーンもしっかりと確認できる。
繰り返しプレイして感じたのは,相手チームが戦術の変更を頻繁に行うことだ。負けている状態で後半に入ると,フォーメーションを超攻撃的な4-2-4に変更してきたこともある。CMシリーズでは試合を何気なく眺めていることが割とあったのだが,本作では細かく相手の戦術をチェックしなければならず,緊張感が増している。
逆に気になったのは,ゴールキックがセンターライン付近の相手選手に直接渡り,そのままドリブルからシュートといった,"ゴールキックから起きる危険なパターン"が1試合中に多く見られた点。とはいっても不満なのはそれくらいで,"サッカーに絶対はない"部分をほどよく表現できている。
ちなみに試合経過は,キックオフからすべてを表示する"フル",ある程度の部分を掻い摘んで表示する"ノーマル",ハイライトシーンだけに絞った"キーのみ",文字だけで経過を伝える"コメントのみ"から選べるのだが,筆者は時間短縮のために"キーのみ"を選んでいた。だが,それだと,表示されるシーンが直接ゴールにつながるものに絞られるため,全体的な試合の流れを把握しにくかった。ディフェンスがまったく機能していないような印象も受けるので,設定はノーマルにするのがよさそうだ。
試合以外の部分では,メディアに対するプレイヤーの振る舞いが,歴代のCMシリーズと比べてより重要になったように思える。受ける質問の回数も多く,返答次第でチームのモチベーションが上がったり下がったりとたいへんだ。プレイするにつれ,メディアが邪魔に思えたり,返答にプレッシャーを感じたりするのは,ある意味リアルかもしれない。
トレーニングに関しては,メニューが細かく用意されているものの,どれがベストな組み合わせなのかまったく割り出せなかった。コーチが自動でスケジュールを組む設定があるので,これを使えばとりあえずは悩まずにすむだろう。
さて,簡単ではあるがゲームの流れを一通り紹介してきた。本作にエンディングは存在しないので,弱小クラブなら残留,名門クラブなら優勝などと,プレイヤーが目標を自由に設定しながら楽しめる。
本作は,何より"最新データを日本語で遊べる"のがウリとなっている。インタフェースはやや難アリなものの,過去のCMシリーズとのシステム面での変化はあまり感じられないので,プレイしたことがある人ならば,すんなりと楽しめるはずだ。初心者にはとっつきにくく,ゲームにかかる時間は半端ではないが,いったん慣れてしまえば長く付き合えるゲームだ。
ユベントスとの一戦。前半,相手は攻撃的な3TOPの布陣を引いて得点する。後半からは,中盤に5人選手を並べたフォーメーションに変更。中盤を支配し,攻撃するスキを与えなかった。この試合でコンピュータは確認できただけで6度も戦術を変更しており,プレイヤーは相手の戦術を細かくチェックして,臨機応変に対処する必要がある |
戦術や補強のポイントついてアシスタントから助言が得られる。すぐに気付く範囲のものだが,初心者にはありがたい | メディアはことあるごとに質問をしてくる。選択した回答がそのままではなく,ねじまげられて文章になる(なるように感じる)ことがあるのは,現実さながらである。右の画面のように,返答次第では選手のモチベーションが上がるので,うまく活用したいところ |